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金木犀のない記憶

金木犀って、読みかたも文字も素敵な言葉だなぁと思う。
秋に香る素敵な名前の木。

今年ほど「金木犀」という文字を見る年はなかったと思う。

ドラッグストアの一番いい場所に「金木犀の香り」スペースができてきた。

ハンドクリームも、コロンもあって、大手のハンドソープブランドでも金木犀の香りバージョンを出していた。

noteでも「この時期の思い出の香りといえば金木犀」というかんじの記事をよく見かけて、この匂いが香るとかつての記憶が蘇える、というのを、とても新鮮な気持ちで読んでいる。

正直なところ私は、金木犀という単語を小説で読んではじめて知った。その作中でも香りが象徴的に描写されていて、金木犀とはそんなに独特で良い香りなのか、どんなふうなんだろう、と気になっていた。

でも以前は金木犀の香りの製品はたぶんそんなになくて、未知のままだった。

それが、今年はどこを見ても金木犀だ。

いったいどうしたのかしら。

まぁ、でも、金木犀にまつわるエピソードはたくさん語られているのだから、私には覚えがないだけで案外身近な木だったんだなぁと、今年知った。

さてその香りですが。

ドラッグストアでハンドクリームを手に取って、ようやくその匂いをたしかめることができた。たしかにとても良い香りがしたけれど、嗅いだことのあるようなないような曖昧さで、すこし期待していたのに、特になにか記憶が蘇ってくることはなかった。

やっぱりなぁと思う。

金木犀の記憶があるひとたちが、ちょっと羨ましい。


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