「おすすめの本ある?」ときかれたら
「おすすめの本ある?」
そう聞かれたらなんて返えそうか。
と、考えたことはありますか?
私はよく考えます。聞かれたことなんて、ほとんどないけど。
まがりなりにも読書好き本好きを称している身としては、おすすめ本のラインナップを時折整理していつでも出せるようにしておくのも、ひとつのたしなみみたいなものかな、と思ったりしています。
でもってこの問い、すこし考えるとわかるけどけっこう難しい。
「すきな本」じゃなくて「おすすめの本」だから、私個人の趣味が強すぎる本なんかではたぶん駄目。おすすめする以上は、目の前の質問者が読んですこしでも面白いと思う本であってほしい。
「本屋大賞を受賞してる本は読みやすくて面白いよ」
だと、的外れではないだろうけど面白みがない気がする。せっかく聞いてくれた以上私なりの視点もいれて紹介したいもの。
同じ趣味だとすでにわかっている友人におすすめするのは簡単だけど、そうじゃないときは質問者の読書傾向の聞き込みからはじめる必要があると思っている。
普段読むジャンルはなにか、すきな作家さんの傾向はあるか、そもそも読書はたくさんするほうなのかそうでないか。などなど。
なのでもちろんこんな状況も想定してる。
「なにか趣味とかありますか?」
「読書ですかね」
「へー。いいですね読書。なにかおすすめってありますか?」
the美容院、的なこの状況。「おすすめの本ある?」界隈のなかで最難関のシチュエーションではないでしょうか。
かなり難しいけど、腕が鳴る。
答えるときはまず「基本小説しか読まないんですけど」と前置きする必要はあるだろう。
私は「読書=小説を読む」だけど、相手が「読書=自己啓発本を読む」だと期待していたら申し訳がないのであらかじめことわっておく。自己啓発とか実用書で私が出る幕はない。
その後で相手の好みを聞いていこう。
と、思っているんだけど、最近気づいてしまった。
『朝井リョウ』さんを出せば、いろんな好みをカバーできるのでは?
と。
むせかえるような青春なら『桐島、部活やめるってよ』
キュンキュンしたいなら『少女は卒業しない』
あっと驚くヒリヒリした読書体験なら『何者』
どっしりとした読み応えなら『正欲』
文章が素晴らしく、作品ごとの色の違いがはっきりしていてそれぞれの良さを楽しめる。
どろどろしたところのない文体も、ひとに薦めやすい。
なにより小説が苦手なひとにもおすすめできる強烈なエッセイがある。
強い……。
「おすすめの本」問答は、朝井リョウさんという解に落ち着きそうな今日このごろです。
おすすめの本、ありますか?
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