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8月23日(水)

トーマス・マンが、フロムが、ツェランが、僕に与えた言葉はなんだったか。夏の激しい日差しと耳鳴りが、脳を溶かし、文法を溶かし、文字の一画一画をふつふつと煮立たせてゆく。海水を沸騰させて残るのが塩分なら、僕の脳を沸騰させて残るのは、萎びた国語辞典だけかもしれない。なんてつまらない結末だろう。あなたを語るための文法も、レトリックも持たない僕は、きみを抱きしめてあげることもできない。

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