Ura

いつか文章を書く仕事がしたくて、今からnoteを始めてみました。僕という人間の想像力を…

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いつか文章を書く仕事がしたくて、今からnoteを始めてみました。僕という人間の想像力を文章化する取り組みです。

最近の記事

昔からの悩み

誰かが、何かが僕を呼んでいる。 そんな感覚に取り憑かれてから何年経っただろうか。 実際に道端で誰かに話しかけられたり、遠くから名前を呼ばれたりしたわけでは無論ない。それでもなぜか、何かから呼ばれている気がしてならない。 それは、「ここではないどこか」を求める僕の内なる心の叫びなのだと、最近は思うようにしていた。どこか別の遠い場所、慣れていない、見たことのない景色に囲まれた狭い一軒家-あるいはそれに類するどこか-に身を置きたい、そんな逃避欲を正当化するべく生み出した言い訳な

    • エッセイ|「怪物」

      どんどん! またあの地下室だ。昔からあそこには化け物が棲みついていて、時々暴れてうるさかったのが、最近どうやら激しくなっている。 とうとうここも、もう厳しいか... どんどん! 俺はこの化け物に心底恐れている。しかしそいつから離れてどこかへ行くことはできないで、少しでもそいつから意識を遠のけようと部屋を転々とするだけでいる。 部屋は無数にあって、大体どこも同じ様相を呈しているんだけれど、少しずつ違う。例えば鏡があったりなかったり、女がいたりいなかったり、南向きだったり

      • 短編小説|「あしたはきっといい日になる」

        今度の旅行は、雨が降りそうです。 Yahoo!の天気予報を見る限り、降水確率は90%なので、ほぼ確実に降ります。嘘だと思って雨雲レーダーの予測を見てみても、やっぱり直撃です。 どうにかならないものかと思って、僕は偉い人にお願いに行くことにしました。 と言っても僕の知り合いにそんなに偉い人はいません。一番偉いのは誰か...と考えて思い当たったのは、僕がいつもお世話になっている小さなインテリアメーカーの社長さんでした。 社長さんに、 「今度の旅行の日、なんとかして雨が降

        • 広辞苑旅行|「研究者」

          僕は高足駄を履いて家を出た。随分と歩きにくい。あまり外出したくはないのだが、久方ぶりの節会に持っていく仮晶を採らないといけないということで、仕方なく出かけている。おまけに今夜は旬政もあるときた。最近はなんだか忙しい。 ついでに、産みが月に入った嫁の見舞いに、もみじの樹葉でも持っていってやるか。と言って、持っていったところで、無口なあいつのことだ、黙り黙りして、特に何とも言わないだろうな。 ここのところ、フランシウムとかいう放射性元素の発生の研究をしてばかりで、ストレスから

        昔からの悩み

          エッセイ|「ブルトンという場所」

          ブルトン。そこは、あらゆる矛盾やルールが存在しない場所。 それがどこにあるか、そこに何があるか、そこがどういう見た目をしているか、どんな音が聞こえるか、地面はどんな踏み心地か、それらはすべて、そこに行ったものの意思に従う。 ルールがないので、あらゆる当たり前が通用しない。必ずしもものが重力に従うとは限らない。人以外の生物もいれば、生きていない物もある。あるものもあれば、ないという特徴を持って存在するものもある。もちろん、ないといってないものもある。それは必ずしも目に見える

          エッセイ|「ブルトンという場所」

          嘘日記|「完璧な君」

          ふと思い立って、家を出された。 なんの靴を履いたかも忘れながら、今に集中して、夜の道をずかずかと歩く。 行き先は決まっていない、と心の中で呟きながら、約束の場所へまっすぐ向かう。 左腕を見る癖がついたままだが、腕時計のついていない今ではその癖はただの抜け殻だ。 スマホで時間を確認、23:09。 小走りで駅に向かう。ほおを切る冷たい風が、内側から少しずつ吹き出す汗とぶつかって、痒い。 改札を抜ける。 エレベーターに乗る。 電車に乗る。 電車を降りる。 エレベーターに乗

          嘘日記|「完璧な君」

          詩|「反抗鬼」

          僕は、小さい時の地下道をひたひた歩いている 日が当たらないから、コンクリートはひんやりと冷たい 左足に溜め込んでおいた血が、右足にどんどん吸い込まれていく たしかに、痛い まるでいびつな平均台を上っているみたいだ 向こう側から下りてきた一人が僕に呼びかける …まだやるの? 同じものが、僕のドアを数回ノックする ここの作りがそうなっているからだ …まだやらなければならないの? 僕はキャッチしたものを変形させて頼りなく放り返す ごと、と鈍い音がした それで

          詩|「反抗鬼」

          詩|「自由ってなんですか」

          自由ってなんですか 有ることですか、無いことですか することですか、しないことですか 知っていることですか、知らないことですか 見ることですか、見ないことですか ーーー アルファベットが二つしかない世界の「AかBか」という問いの先に、自由とは何かの答えはきっとない たぶん自由は、どこにでもあるし、どこにもない でも時間や空間のルールにしたがって一つに決まる「僕から見える世界」の中には、自由どころか、何もない、だから見つけられない 点が線になって、線が面になっ

          詩|「自由ってなんですか」