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読むだけでピアノが上手くなる方法② ショパン マズルカ編

ピアノに限らず、全ての楽器演奏においてアナリーゼ(音楽作品を形式や様式の観点から分析すること)は演奏するうえで大切です。

役者がその役に成りきるためにできるだけその役について調べるのと同じです。玉木宏は「のだめカンタービレ」を撮影した時アナリーゼも学んだと言っておりました。

ここにひと手間かけることでより深く、魅力的な演奏ができるようになるのですから試さないのは勿体ない!頭の片隅に入れて、意識するだけでも変わります。


ショパン マズルカ


●マズルカの起源


この舞踊はポーランドの首都ワルシャワにあるマゾヴィア地方に古くから伝わるマズールMazurと呼ばれる踊りに起源をもつ。

マズールというのはその土地の人々に対する名称だったがその人々との踊りをマズルカと呼ぶようになった。

しかし、その土地の女性のことをマズルカと呼んだことから、いつのまにか舞踊がマズルカと呼ばれるようになったそう。

この舞曲はもともと歌に合わせて6組か8組の男女が円形になって踊ったもの。


その音楽は8小節からなるフレーズが

2、ないし4つで構成され

それぞれのフレーズは繰り返された。


踊りは男性は自分の相手の女性を見せびらかすように手から離してクルクル回転させたり・・・恋の喜びをあらわすかのように

足を踏みならしたり・・・

かかとを鳴らしたり・・・

また、恋をささやくようにやさしく・・・

という具合にテンポをゆれるように変えて気ままな感じで踊られていたらしい。


この舞踊はバッハの時代にポーランド →ドイツ → パリ → 英国へと伝わっており、歴史はかなり古い。

ショパンがパリに住んでいた頃パリでとくに大流行したという。

革命後の自由を求める風潮のなかでマズルカ特有の自由なリズム、メヌエットには許されなかったシンコペーション、それに即興の自由のあることがパリの人々には魅力だったようである。




●リズムの特徴

マズルカのリズムの特徴は3/8拍子か3/4拍子で二拍目や三拍目に非常によくアクセントがくること。

・ 一拍が付点リズムになっている。

・ フレーズが8小節単位になっている。

・ 低音部にしばしば主音保続音が用いられている。

前に述べたように、独特なふうに足を踏みならしたり、自由にテンポやリズムを変えたりする舞踊の特徴はショパンのマズルカにも表れており演奏の難しい点である。

二拍目にアクセントがきたあと、三拍目にきたり

二拍目のアクセントと三拍目のアクセントが交互にきたり

同一小節内に二拍目、三拍目の両方にアクセントがきたり

さまざま、です。


Op.33-2

三拍目にアクセントのくる曲だが、これなどは明るい感じの曲で全体の気分もつかみやすいので、三拍目にアクセントをおく勉強に最適ではないかと思う。


Op.24-2

二拍目にアクセントのくるもの


Op.7-5

右手が二拍目、左手が三拍目にアクセントがくる


Op.68-3

低音に保続音のあるものがあるが、これは古いマズルカがバグパイプの伴奏に合わせて踊られたことからきた形である。

↑こういう箇所は貴族的な雰囲気のあるショパンのマズルカのなかでもポーランドの田舎の踊りを思わせ素朴な味わいがある。


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〜マズルカについてのエピソードをご紹介〜

ショパンがパリのあるサロンでマズルカ33-3を弾いていたときマイヤベーアが入ってきて

「それは2/4拍子だ」と言った。

ショパンは「3/4拍子だ!」

と言ったが他の作曲家もマイヤベーアの肩をもったので・・・

最後にショパンは

「このようにリズムのあいまいなのがマズルカなのだ!文句あるか?」と。

マズルカ特有のリズムの性格を伺わせる逸話であるが、一曲、一曲、気分の異なったショパンのマズルカをそれぞれの曲の気分の範囲内で独特なリズムを表現することは非常に難しいと思う。


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5年に一度開催されているショパンコンクールが今年は開催される予定でした。(コロナで、今後どうなるのでしょう・・・)

数あるコンクールの中でもピアノで最も権威のあるコンクールであり、ここで優勝するのはオリンピックの金メダルを手にするのと同じ。

1位から6位までの順位の他に

 ・ ポロネーズ賞

 ・ マズルカ賞

 ・ コンチェルト賞

 ・ ソナタ賞

といろいろあり。

コンチェルト、ソナタという形式の楽曲は他の作曲家にも書かれているのでマズルカ、ポロネーズがよりショパンらしさを持つ楽曲ということになる。

ポロネーズはもともとポーランドにあったものではないが、マズルカは説明した通り、もともと土地に根付いていた古い舞踊である。

そして、他の作曲者がいろんな楽器での音楽を作曲しているなか、ショパンだけが作曲のほとんどをピアノ独奏曲としている。(他はピアノコンチェルトが2曲のみ)

それだけに最も権威あるコンクールにショパンと名前がつけられたのも、その所以ではなかろうか?

そのショパンの出身地がポーランドでありそのポーランドらしさが最も色濃く表現されている舞踊がマズルカである。

なのでマズルカ賞は『ショパンが愛した母国ポーランドを最も理解している者』に贈られるべきもので、ショパンコンクールでマズルカ賞を受賞することは大変な名誉だ。


✳︎


アナリーゼからは離れるが、私の愛するアルゲリッチは1965年のショパンコンクールで1位とマズルカ賞を同時に受賞している。

が、しかし

2005年にラファウ・ブレハッチが

・ 一位優勝

・ ポロネーズ賞

・ マズルカ賞

・ コンチェルト賞

・ ソナタ賞

と全てをかっさらってアルゲリッチの記録を塗り替えていってしまった!!

しかも「2位なし」の優勝!!で史上初という歴史をも作ってしまった。

この方、ポーランド人で30年ぶりのポーランド人受賞という快挙もつくり、顔や雰囲気もショパンに似ているとコンクール中は話題になりました。


〜終わり〜


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