AIの時代になってしまったので、事業を「手作業ベース」でいちど考えてみる
ChatGPTと戯れていると、有能なエンジニアあがりの秘書のような、何でも知ってるエージェントという感じがしますよね。そこでふと事業の現場でつねづね提案しては却下された、あることができるのではないかと思ってきてしまいました。
それシステム化いります?
エンジニアの方はわかってもらえるかもしれませんが、工数とかがわかるようになってくると「作るより人間を使った方が安い」というような業務があること多いですよね。損益分岐点が見えてくるというか。
歴の長い企業だと、営業マンとか営業事務向けの社内システムがあって、昔は電話で受注してそこに入力していたんだけど、ある段階でそこと接続してお客さんが直接使えるWebアプリケーションを作るながれがおおいとおもうんですよね。オンラインバンク、宿泊申し込み、資材の受発注とかとか。
扱っている商材が複雑な場合、あるいは規制産業の場合、そのシステム化は結構大変だったりします。オーダーメイドに近かったり、営業プロセスが長かったり。さらにはシステムが古くてつなぎ込みが大変だったり。そうしたもので年間の件数が少ないものは、意外とシステム化するより人力で対応したほうが適しているものが多くあると思います。
システムを辞めて人力ですべて受けたらどうなるだろう
その考えをもう一段階進めて、いまシステムで回っているものも、昭和の電話対応に戻したらどうなるだろうと考えてみます。たとえば、展示会で使う印刷パネルを頼むおっちゃんのシナリオです。
客「あーもしもし、あのーこんどさ、展示会で使うパネルの注文お願いしようと思うんだけど、特注でいい感じのできない?」
オペ「ありがとうございます、展示会の日程はいつごろでしょうか、あとパネルといいますと、どれくらいのサイズでしょうか」
客「けっこうね、おっきい奴がいいんだよ。どーーんと、かっこいいやつ。うちの製品教育系だからさ、地味なんだよな。今年の5月のやつでブースが幅10mの大型になったから、いいやつ頼むよ」
オペ「ありがとうございます、5月ですとデザイン含めてもまだ間に合いそうですね、当社のパネルですと立体的に切り抜くやつがインパクトもあって人気ですよ。お値段だいたい3x5mサイズで8万円からできます」
客「いいね、それでお願いするとしたらどうすればいいの?」
オペ「はい、デザイナーさんはいらっしゃいますか?よければ当社でデザインもやっておりますので、その場合カタログなどのデータからおつくりすることになります」
客「ぜんぶデザインもお願いしたいんだよ。カタログとかパンフレットだな。送っとくよ。それで、一応ほかの候補もあわせてパターンで見積もり出してくれるかい?」
これは印刷業界を全然知らない僕が考えたシナリオです。いまはオンラインで通販なんかもあると思いますが、そうすると顧客はこんな感じです。
「えーっと、『展示会 パネル 製作』で検索、あったあった。なるほど、こういうやつがあるんだな。価格と形はわかった。しかしどれがいいか悩むな~商品一覧からだとパッとしないな。」
「ひとまずこれでいいか、納期と価格の確認をして、いったんこれで申し込み、と。あれ、データ入稿?なんだそれ、、デザイン依頼はどこだろう、もっかいGoogleで検索するか」
ちょっとリテラシーが低い顧客を想定して作りましたが、複雑で顧客側に発注経験が少ない商品というのは、えてしてECの自動販売機感がフィットしないものもあるのではないでしょうか。
人力の限界とChatGPTで置き換わる未来
しかし、何でもかんでも電話で受けるわけにはいきません。営業時間があるので夜間休日に受注することができません。あとは待機するオペレータの数も悩みますね。少なすぎるとパンクするし、多すぎると暇を持て余してしまいます。
このような思考実験のあと、このアナログな人力プロセスをChatGPTに置き換えてみるとどうかと考えます。
「あーもしもし、あのーこんどさ、展示会で使うパネルの注文お願いしようと思うんだけど、特注でいい感じのできない?」
→製品カテゴリ 大型パネル 発注形態:カスタマイズあり
→注文には納期確認と大型パネルの商品を決定する必要がある
→また、カスタマイズありの場合データ入稿の有無を確認が必要
「けっこうね、おっきい奴がいいんだよ。どーーんと、かっこいいやつ。うちの製品教育系だからさ、地味なんだよな。今年の5月のやつでブースが幅10mの大型になったから、いいやつ頼むよ」
→大型パネルのうち、一番大きいサイズのカテゴリから、人気商品をピック
→納期は5月、1日としてもまだ発注期限まで3週間の余裕がある
ここまでの情報から、「納期:1週間以上、製品カテゴリ:大型パネル、サブカテゴリ:特大、ソート順:人気順」 で自社ECに検索クエリをかけ製品を取得します。ECから返却された文字列をChatGPTは要約して顧客に勧めます。
「いいね、それでお願いするとしたらどうすればいいの?」
→上の会話のやりとりから、自社のFAQを検索するべきとChatGPTが判断します。
→「カスタマイズあり 注文の流れ」でFAQ検索、帰ってきた内容を分かりやすく言い換えて伝えます。
「ぜんぶデザインもお願いしたいんだよ。カタログとかパンフレットだな。送っとくよ。それで、一応ほかの候補もあわせてパターンで見積もり出してくれるかい?」
→デザインオプション込み、社内のデザイナーに引き継ぎます
→見積依頼、基本的なヒアリング情報と、ECからランキング2位と3位、もう一段階下のサイズの1位も価格情報を作ってSalesForceに仮登録を行います
ChatGPTで「ヒアリング」「レコメンド」「検索」「引継ぎ」を代替
これらはいまのGTP-4がAPI経由で動くようになれば、頑張って開発すれば十分に実現できる世界です。そうでなくても、途中までは発注側がChatGPTを使えばできそうですね。「展示会で使うパネルを作るにはどうしたらいい?」とか。優秀なアシスタントを、発注側に置くか、受注側に置くかの違いでしかありません。
さて、既存システム側の人類は、以下のものを用意してあげる必要があります。
事前のコンテキスト
あなたは印刷業者です。取り扱っている製品は○○、××・・です。注文を受けるには、以下の情報が必要です。顧客との会話の中でヒアリングしてください。
○○・・・納期、サイズ、カスタマイズの有無
カスタマイズには以下の方法があります~
取得可能なデータソース
あなたが参照可能なデータソースは◎つです。
1.商品マスタ、ここにはカテゴリに応じた商品があります、パラメータは以下の通りです
query ・・・商品名
order・・・[rank|latest]
categoery・・・[チラシ|名刺|パネル・・]
2.FAQ、ここにはよくある質問が提供されています。パラメータは以下の通りです
term・・・調べたいキーワード
最終的なデータの保存
お客様が注文に至った場合は以下のJSONを出力してください
{
"type": 注文種別,
"customerId": 顧客ID
"price": 価格
・・・
}
また、追加の見積もりが必要な場合は~
また、カスタマイズの場合は~
現在の3.5ベースのAPIでは、入力と出力合わせて4000文字程度しか使えませんので、なかなかこれらすべてを指示するのは難しいと思います。しかし、8K、32Kに対応したGPT-4ベースのAPIを使えば、このような流れも可能になってきます。
もちろん、不確実な案内をしないか、という懸念はあると思いますが、それは新人のオペレータも同じこと。しばらくの間はモニタリングしてあげて、エスカレーションするように指示を与えればよいと思います。出力をフィルタリングすることも公式ドキュメントでは解説されていますね。
まとめ:アナログ時代に戻る思考実験は有効
長々と書いてしまいましたが、ChatGPTによってアナログとデジタルのいいとこどりが本来の意味で実現できる可能性が出てきました。
サービスを提供する側の我々としては、いままで積み上げてきたアプリケーション開発の定石みたいなものをアンラーニングするために、アナログ時代ならどうしていたかを思考実験するのはとても面白い試みです。
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