エンタープライズ企業からみたChatGPTの脅威と活用について

本日はいつもサービス運営の話を書いてきたのですが、あまりにChatGPTが衝撃的だったのでエンタープライズ×ChatGPTで1本書こうと思います。また、本内容をもとに2時間くらいのセミナーを行う予定です。有料ですが、その分なんら次のビジネスにつなげたいとかではないので、コンサルや広告代理店の方もご参加、資料をお持ち帰りいただける奴をやります。

初めての方向け:本noteではスライド共有サイトドクセルを運営する中での思ったことを書いてきましたが、別で新規事業やそれを支える情シスを中心としたDXコンサルを4年以上やっており、今日はそんなDXコンサルの視点で書いた記事になります。

結論:エンタープライズは早めにChatGPTで遊ぶべきである

ChatGPTがエンタープライズ企業に届くと起こることは以下のような反応です。

偉い人「うちもなんかChatGPTでAIやったほうがいいんじゃないか」
社員「やべーこれ資料作成とか議事録とかこれで済ませられるじゃん」
情シス「アクセス禁止しなきゃ」

そこで、本エントリでは、ChatGPTの新規事業活用、社内での業務効率化、セキュリティとコンプライアンスについて論じたいと思います。

うちでもChatGPTを使ったビジネスをやるべき!なんかアイデアだそう

エンタープライズにかかわらず、ChatGPTのニュースを何度も見るたびに、自社でも事業機会があるのではないかと感じます。いいですね。ここでは、いくつか注意点を上げたいと思います。

MicrosoftやGoogleなど「本家」が提供する可能性がある

AIを使った議事録の書き起こしと要約をやろう!→MicrosoftがTeamsに標準搭載
AIを使ったドキュメントのライティングアシストをやろう!→GoogleがGoogleDocsに標準搭載
AIを使ってPowerPoint資料を作れるようにしよう→MicrosoftがOfficeに標準搭載

汎用的なものは、だいたい本家が対応してきます。もちろん「ZoomはまだだからZoom用に提供しよう」とか、セグメントを分ければあるかもしれませんが、それもどこかの企業がすぐに提供するかもしれませんね。

いつものことですがAI「以外」の開発力が求められる。

これはブロックチェーンが流行ったころも同じでしたが、総じてエンタープライズ企業は「余剰開発力」がありません。ブロックチェーンエンジニアを一人捕まえてきても、事業化するにはその何倍もの工数を「その他」の一般的なアプリケーション開発に投入する必要があります。

コア技術だけあってもサービスにはならないんだ

AIをちょっと試しに動かしてみて、「なんかいけそうだ!」となってから、サービスに組み込むまでに数か月とか1年かかってしまうのはこのせいです。エンタープライズ企業は本腰を入れて百億単位で取り組むか、社内向けにサクッと作って遊ぶくらいがいいかもしれないですね。個人的には、本気で取り組む価値がある、ゲームチェンジとなる技術だと考えています。

じゃあどうすればいいのか

2つの方向性があります。ひとつめは汎用的でない、インターネット上に出回っていない内部情報を組み合わせたAIサービスを展開します。現状ChatGPT APIでは質問と回答をあわせて4000文字程度しか扱えませんが、うまく内部情報を読み込ませる方法でカスタマイズしたAIアシストを提供することができます。

もう一つは、全社員にChatGPTを使わせることです。何かを作ることに世界中が躍起になっているのであれば、裏をかいて使いこなす方に投資すべきでしょう。ノーコード、ローコードツールを全社員に使わせた企業が注目されていますが、AIもいろんな企業が取り組みだすと「活用の深さ」が勝負になってくる可能性が高いです。そのためには「量が質を作る」を実践すべきフェーズかと思います。

特に、意思決定をする人が「ふわっとした理解」で実行すると危険です。たとえばChatGPTを1週間毎日使っていると、できることの癖がわかったり、自分がAIに感じるの感情の変化も起こります。初日は「ああ、これで知的労働者は不要になる」と感じたのですが2日目には「意外と一般論ばかりでそのままでは仕事につかえない」となり、5日目には「指示出しのスキル次第で賢さが変わる、指示だし(プロンプト)エンジニアの必要性がわかった」「これは言語化能力や、具体と抽象のトレーニングが自分に必要だ」などと、使いこなしに応じて判断が変わります。

これは頭での理解と体験で100倍くらい情報量が変わります。深く深く使ってみることが本当に大切です。

社員によるChatGPTの活用と情シスの憂鬱

では、社内でChatGPTを活用するときに気を付けるポイントは何でしょうか。活用といっても、使ったことがない人に活用を求めるのは難しいので、社内で利用事例を集める必要があります。

その際に、ChatGPT本家の画面を利用するのは避けましょう。こちらは研究用なので、入力結果は分析され、次の製品に生かされてしまいます。うっかり社内情報を将来のAIが回答してしまうということはあるかもしれません。

また、ChatGPT以外にもAIの活用は多岐にわたります。先に挙げたOffice製品やGoogle Workspace、なんだったらこのnoteにも搭載されていますね。こういった製品を社員に使わせて、先に書いたような「深い」「生々しい」アイデアを集約することが大事です。

一方で、情シスやコンプライアンス部門はまた頭を抱えてしまいます。現在のIT人材不足はその多くが利用するツールの多様化からきています。昔はオンプレで自社システムだったので少人数で深く理解できましたが、いまは社内でSaaSが乱立し、「安全に使えるほどの深い理解」が必要なツールがなん十種類も出てきてしまいます。
また増えるのか、、、しかもAPI連携がしたいとか大丈夫なのか・・権限管理、APIキーの管理、、本当に困ります。だからといって禁止したらシャドウITとして利用される懸念もあるし・・

コンプライアンス部門もどうしていいか、企業としてのAI倫理はどうか、顧客に対してAI文面そのまま送って事故にならないか、業界で禁止されている専門分野でのアドバイスなどをやってしまわないか。

これらの製品はTerm of useを確認しつつ「固有名詞や具体的な数字を○○に置き換えて利用すること」などの対策をとってもいいかもしれませんが、「潜在的な脅威」もまた深い理解がないと思い至らない、防げないのも事実です。

ChatGPTのようなAIを禁止してしまえば、競合他社に先を越され、個人でも80点の専門情報を提供できるため企業が独占していた情報の優位性が失われ、サイバー犯罪者がAIで力を得て巧妙化、自動化、大規模化と、AIによるリスクに対応することができません。

まとめ

ChatGPTをはじめとするジェネレーティブAIは人類にとってPoint of no returnとなる状況です。技術だけではありません。世界中の人々が熱狂し使いこなすことによって新しいアイデアが生まれ、それがまた開発に生かされるというサイクルが、年単位から日単位になってしまいました。

エンタープライズ企業は、まだ猶予があります。莫大な情報がありつつも主な価値は情報ではなく物理世界での活動によるところが大きいからです。しかし、ビッグテックによって、何兆円もかけた研究成果が個人にも無料でめちゃくちゃ使いやすい形式で開放された事実は、新たな脅威として全力で追いかける必要があるでしょう。

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