チキンカレー(20191123スパイス体験講座)

講座の際に試食いただいたメニュー、これでようやくひととおりということになります。遅筆なものでスミマセン。。。

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おそらくは、スパイスからカレーを作ってみよう、インドのカレーを作ろうという方の多くが初めにチャレンジなさるのがチキンカレーかと思います。私の場合はいきなりチキンビリヤニに挑戦してあえなく失敗しました。スパイス入り鶏肉粥と化した何か食べ物のようなもので満たされた鍋の前で呆然と立ち尽くし、最初にマスターすべきはチキンカレーだったかと反省したことがあります。だってビリヤニってカレーとお米を重ねていくんですもの、カレーが作れなきゃどうにもならない。

レシピ本をいろいろめくってみても、本の顔ともいえる一番手に据えられているのはやはりチキンカレー。著者の想いがいろいろ詰まっています。持てる技術と経験のすべてをチキンカレーのレシピ表現に注ぎ込んでいると言っても過言ではないでしょう。

さて、こちらのレシピはどうかといいますと、こんな想いで作成しました。

・家庭料理のレパートリーに加えてもらえるシンプルさ

・スパイス以外は馴染みのある材料であること

・カレーを作るのに最低限必要なスパイスだけにすること

・カレー作りの基本を体験できる調理手順であること

ではこしらえてみましょう。はじめに、玉ねぎを炒めるわけですけれども、『ザ・男の料理!目指せ飴色玉ねぎ!弱火でじっくり1時間!』みたいなスタンスはおすすめしません。だってめんどくさいですもの。下ごしらえのさらに序の口で1時間もかける家庭料理があってはいけません。鍋やフライパンのコーティングを傷めない程度の強めの中火で数分での決着を目指しましょう。炒めていく途中、玉ねぎが色づき始める瞬間がやってきます。そこからはお好みの茶色になるまであまり時間はかかりません。何度か試すうちに、このときの炒め具合で味が変わるような気がするようになれます。実際、玉ねぎの切り方や炒め方でカレーの仕上がりが左右されるのですが、これについてはまたあらためて書きたいと思います。

次に切ったトマトとにんにく・生姜・塩を加えますが、トマトの切り方はどんなでも構いません。出来上がりの見た目を重視するなら湯剥きしたものでもよいです。ただしリコピン量が少なくなります。トマトは潰しながら混ぜてもいいのですが、鍋に付き添わずに放っておいても勝手にやわらかくなりますので、それまで他の調理や準備などしているのが賢いかもしれません。トマトの持つ水分がある程度飛んで全体がねっとりするまで炒めていきますが、ここでまた少し時間がかかるので稿を改めて別の方法もご紹介します。にんにくと生姜は、切り刻んだりおろしたり指に匂いがついたりというのがお手間でしたら、チューブ入りのペーストでもOKです。私はエスビーのお徳用サイズを愛用していますが、他人にお出しする際は生のにんにくと生姜を使います。そのほうがやっぱり美味しいからです。塩も加えてひとまぜふたまぜすると、赤っぽいぐちゃっとした、でも香りのよい何かが出来上がりです。あれ?イタリアン作ってるんだっけ?という錯覚に陥りそうになりますが、そこはぐっとこらえてカレーを目指してください。

さあここからがカレー作りのハイライトです。いったん火をとろ火ぐらいまで落としてください。なんだったら止めてもいいです。これから加えるスパイスを焦がしてしまうとすべてが終わってしまうからです。とはいっても、火の勢いはそのままに鍋肌にスパイスを叩きつけるようなことさえしなければ大丈夫です。パウダースパイスをちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃと4つ投入し、全体を混ぜて馴染ませます(Karee Masaala #1 をお使いの場合は大さじ1と小さじ1ほど、すなわち小さじ4杯です)。このとき、少量の水を入れてあげると鍋の温度を落ち着かせることができ、同時に混ぜやすくもなります。そうしてスパイスに熱が入るにつれ香りが惹起されてきます。これを鍋の真ん前で嗅ぎまくれるのは作る人の特権です。カレー作りでいちばん愉しい瞬間のひとつです。一杯やりながら作っているときなどは、たまらない至福のひとときです。そしてこれでカレーのベースが出来上がりました。ちょっと味見してみてください。美味しい、と感じたら、そのカレーには幸せな未来が待っています。15分後には家族の笑顔とあなたへの敬愛の眼差しが注がれることでしょう。もしも、物足りないなと感じたら、スパイスではなく塩をひとつまみふたつまみ、ちょっとだけ足してください。この調整はいちばん最後でもかまいません。

中火に戻して鶏肉を投入し、肉の表面になんとなく火が通るまで炒め合わせていきます。鶏肉は、もも肉であれば皮を剥いでください。そのままだとおそろしく脂っこいカレーになります。もも肉は皮の占める割合がかなり大きいので、4人分なら思い切って3枚ぐらい使っちゃいましょう。胸肉なら2枚でも。あらかじめ、フライパンで肉に焼き色をつけてから入れると、手間にはなりますがそのぶんランクアップした美味しさになります。

お湯を足したらあとは煮込むだけ。10分も煮れば充分です。1時間も煮込んではいけません。香りが換気扇の彼方へと飛んで行ってしまいます。もしも、お手持ちのガラムマサラを使ってみたい!ということでしたら、あと2分か3分で出来上がりというタイミングで小さじ半分か一杯ほど投入してください。味見をして物足りなければちょっとだけ塩を足して、あなたのチキンカレーの出来上がりです。

おそらく、普段から料理をされている方であれば、玉ねぎを切るところから始めて30分ほどで出来上がります。そのとき食べる分だけをサッと作れるので、ご家庭の普段のレパートリーにも加えやすいかと思います。

最後に、このカレーでホールスパイスをどう使えばいいのか書いておきます。準備するのは3種類、シナモンとクローブとカルダモンです。シナモンには、あの葉巻のように巻かれているセイロンシナモンというものと、どこからどう見ても樹の皮なカシアの2種類があります。スーパーで置いているのはもっぱらセイロンのほうですが、インドやネパールの方が経営するショップで取り扱っているのはカシア(あるいは両方)が多い印象です。当薬局ではカシアを販売しています。カシアのほうは野趣あふれる力強い香り、セイロンは上品でマイルドな雰囲気です。このレシピに使う量は、シナモンは約2cm、クローブは3個か4個、カルダモンも同じく3個か4個です。最初に油を温めたところで投入すると、ぶわあああああああ、と得も言われぬ香りが音を立てて(いるかのように)立ち上ってきます。もう初手からカレー作りのハイライトです。いきなり至福タイムです。そうしたら玉ねぎを投入し、あとはレシピ通りに進めるだけ。パウダースパイスだけで作るよりも立体的で深い香りを楽しみながらいただくことができます。ぜひチャレンジしてみてください。こちら3種のホールスパイスのセットもご準備しています。




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