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夜明けのオリオン

カフェ、マクドナルドとはしごをして仕事を終えたのは、日付を回るギリギリのこと。アドレナリンが出すぎて眠気が一切訪れなかったため、ぼんやりとマクドナルドに居座っていた。

noteを書き、近々納期がくる仕事をふたつ完了させる。時間は3時半になっていた。

4時から24時間営業のスパがモーニングタイムになる。1000円未満でお風呂とサウナに入れるのだ。岩盤浴が営業外なことだけが残念なのだけれど、贅沢は言えない。だって、4時だから。

まだゲームをしていたらしい夫からのLINEに「お風呂入ってから帰る」と返信をして、マクドナルドを出た。

朝4時の空は、まだ夜中だ。だんだんと日の出が遅くなってきているのを感じながら、車を走らせる。4時を境に、ラジオは放送を終えた。ザーッという雨音のようなノイズが、深夜と早朝の間の時間を満たしていった。


簡易宿泊施設があるため、朝風呂に入る人がひとりふたりいたほかは、誰もいない。貸切状態の薬湯に浸かり、温まったところで露天風呂に出た。夜が明けていく空を眺めたかったのだ。

白んでいく空には、オリオンが光っていた。オリオン座は冬のイメージが強いから、季節感があいまいになる。

お湯の流れる水音と、遠くに聞こえる走行音。風の音はしない。だんだん明るんでいく空の色の変化を、ただぼんやりと眺めていた。

誰かと来られたらなあとも思うけれど、あいにくこんな時間に風呂に入りに行ける友達はいない。そもそも、こんなに早い時間に入浴しているのは、おばあちゃんばかりだ。わたしは完全に浮いていた。

テレビもない、スマホもない、誰かの会話すらない露天風呂で、ゆるゆると過ごす。とりとめもない思考が、ぽかりと浮かび、しゅわりと消える。湯あたりをせぬよう、足湯に切り替えて空を見上げ続けた。

朝を迎えてから、浴場に戻る。やっぱりまだ人はほとんどいなくて、サウナも水風呂も貸切だった。

サウナ内のテレビは、安室奈美恵の引退や樹木希林の訃報を繰り返し伝えている。いろいろなものが終わって、それでもまた朝がくるんだよなあなんてことを思いながら、わたしはひとり汗をだらだら流していた。

サウナをひとしきり楽しんだあと、もう一度露天風呂に入る。6時。すでに空は青かった。オリオンはもう見えない。目を凝らしてみたけれど、光に包まれて同化してしまった。

足湯をしたまま寝てしまいそうになり、ふわふわしながらお風呂をあとにする。丸一日パソコンにかじりついていた肩の血行も、きっと良くなっただろう。これで、またものが書ける。


コーヒー牛乳を買って、ロビーでぐびぐび飲み干す。そして、今このnoteをつらつらと書いている。

玄関口から入り込む光は、すでに強い。夜と朝の間のようなあいまいさは、もうそこにはない。

もう少し、このぼんやりした時間を味わってから帰ろう。帰ったら、エネルギーの塊が、きっとわたしを待っている。


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