寸景のマイルストーン
隠し撮りが好きだと言ったら、「やめてよ」と言われた。それでもやっぱり好きだから、懲りずにシャッター切っては、「もう!」と言われている。
そのときにしか訪れない、一瞬の空気の揺らぎ。今にも溢れ落ちそうになっている、「好き」。そのすべてが幸せで、愛おしい。だから、僕はシャッターを切る。その場所の空気の手触りや匂いもすべて、一枚に閉じ込めるように。
「写真を見返したら記憶が呼び戻されるんだよ」
そう彼女に話したら、「カメラちゃんだ」と言われた。児童書らしい。「カシャッて言うと、その場の様子が暗記できる女の子なんだよ」と説明してくれる。「それは瞬間記憶術で、僕のとは違うんじゃないの?」と言うと、「細かいことはいいの」と笑われた。
瞬間、「あ、撮りたい」と思う。「今は一瞬で通り過ぎてしまうから、残しておきたいんだよ」と告げた。「過去のマイルストーンなんだね」と答えた彼女を見つめ、「カシャッ」と呟く。
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