ロバの耳と叫ぶ穴の場所
くだらないことでも、真面目なことでも、悩んでいることでも、嬉しいことでも、人には「今、これを言いたい!」ということが、たぶん日々多かれ少なかれあるものだと思っている。
それは、時に「この人に伝えたい」であることもあれば、「とにかく言葉にしたい」というときもある。そうした止むに止まれず叫びたい言葉を、少年は穴の中に叫んだ。「王様の耳はロバの耳ー!」と。
現代に生きるわたしたちにとって、時にこの穴はSNS(Twitter)であるのだろう。リアル世界では叫べない感情を叫ぶ場所としてTwitterを利用しているアカウントは、多々あるものだ。
ただ、この穴は決して“穴”ではない。たとえ穴だとしても、世界に通じている穴なのだ。「王様の耳はロバの耳ー!」と叫んで土に埋めることはできない。(少年は埋めたんだっけ、どうなんだっけ)
感情を吐き出す場所としてSNSを使うこと自体は否定しない。かくいうわたしだって、大概垂れ流しているのだから。とはいっても、そこは決して少年が秘密を叫んだ穴ではないということを、もっと自覚しておきたいなと思う。
わたしにとって、SNSはリアルで伝えられない感情をさらけ出す場所でもあるのだけれど、それは“伝えられない”というよりは、むしろ“口に出せない”に近い。これだけ口達者でマシンガントーカーなのに、わたしは肝心のところだけ、喉の先に出せないのだ。そうした喉元でこんがらがった言葉をほどいて文章にしたのが、SNSであったりnoteであったりする。
だから、さらけ出しているようでいて、実際には「誰かに知られたら困る」ことはどこにも吐いてはいない。……愚痴をたびたび吐いていた頃を知っている人から見れば、「あんなネガティブな愚痴を見られても知られてもいいと思ってたんだ、この人」と思われるのではないかと思うけれど。
そうした意味で、ギリギリのラインかもしれないけれど、わたしにとって「王様の耳はロバの耳」と叫ぶ穴は、SNSではない。
世界は思わぬところでつながっているから、感情を吐き出すことと「ロバの耳」と叫ぶことは、自分の中で切り分けていたい。
……じゃあ、「ロバの耳」と叫べる穴はどこかって?
きっと、ビリビリに破り去って捨てられるメモ紙の裏とかなんじゃないかな。
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