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映画【個人的発掘良品】『エイリアン・コップ』

PEACEMAKER
1990年 アメリカ
監督:ケヴィン・S・テニー
製作:ウェイン・クロフォード/ケイリー・グリーバーマン/アンドリュー・レイン
製作総指揮:チャールズ・W・フライズ/ジョエル・レヴィン
脚本:ケヴィン・S・テニー
撮影:トム・ジェウェット
編集:ダニエル・ダンカン
美術:ロバート・シスマン/タッカー・ジョンストン
衣装:レニー・バリン
メイクアップ:ジョン・ブレイク
特殊効果:ジョン・ブレイク/ジェフリー・S・ファーレー/ジョン・カーター/ボブ・ティラー
音楽:デニス・マイケル・テニー
音響編集:ジョエル・ブルックス/チップ・ブルックス/フランク・A・フラー・Jr/ジェフリー・R・ウィッチャー
助監督:ダーシー・ブラウン/デヴィッド・ロバート・コッブ
第二班監督:BJ・デイヴィス
キャスティング:マイラ・スロー
スタントコーディネーター:BJ・デイヴィス/エディー・ブラウン
出演:ロバート・フォスター/ランス・エドワーズ/ヒラリー・シェパード/ロバート・ダヴィ/バート・レムゼン/ジョン・デノス/ウォーリー・タイラー

 この頃は当時新鋭の映画作家たちが古典SFのアイディアを倣いながらモダン・アイディアを取り入れ新旋風を起こしていくSFアクションものが連作されていました。殺人マシンと未来戦士がひとりの女性を巡って対決する『ターミネーター』、エイリアンを追い詰めるFBIと刑事を描いた『ヒドゥン』、地球人とエイリアンの刑事コンビが事件を捜査する『エイリアン・ネイション』。どれもSF企画にハードなアクションと進化していく特殊技術を掛け合わせた新時代のジャンルムーヴィーとして注目されてきた。2人のエイリアンが地球を舞台に追跡戦を繰り広げる『エイリアン・コップ』はこれらのあとに製作されながら、日本初上陸してから今夏HDリマスター版Blu-rayが発売されるまで、今となってはやや地味目な存在感ではあったが、好事家たちを惹きこんでいく出色のSFアクションスリラーとなっている。秘密エージェントが検視官を巻き込んで凶悪昆虫エイリアンと闘うご存知『メン・イン・ブラック』が製作・公開されたのは、この6,7年後でしたね。

 地球に降り立った2人の異星人。彼らは驚異的な肉体再生能力を備えながら、人間そっくりの姿で瞬く間に社会に適応してみせた。ひとりは凶悪な宇宙犯罪の逃亡犯で、もうひとりがそれを追う"ピースメーカー"(宇宙警察)だという。この異星人たちの追跡戦にロサンゼルスの警察と女性検視官が巻き込まれ、熾烈な闘いが繰り広げられていく。凶悪犯とされるオヤジ・エイリアンを、検視官が巻き込まれながら若手ピースメーカーのヤング・エイリアンとともに追っていくうちに、驚きの事態に陥る。何と追っていたオヤジ・エイリアンは、「自分こそがピースメーカーだ」というのだ。どういうことなのか。段々と、ヤング・エイリアンに不審さを感じはじめ、どちらが悪で、どちらが正義か。奇妙な追跡戦は疑惑を持って揺らいでいく。矢継ぎ早に展開されるアクション、サスペンス。街中のカーチェイスによってロス市警が困らされ、オヤジ・エイリアンはマシンガンを、ヤング・エイリアンはショットガンを手に、ついに銃撃対決。そんな疑心暗鬼のSF決闘がどうなっていくか、宇宙と地球の平和は保たれるのか、そういったお話です。

 この作品の日本再発売にあたって、大きなセールスポイントとなっているのは、総勢57名に及ぶやり手のスタントマンたちによるアクションシーンの連続。カーチェイス、格闘、銃撃、転落。現在でもハリウッドのアクション・SF大作の盛り上げに大きく携わっているスタントマンたちによる息を呑むクラッシュ、演技は映画の熱い見どころとして見事な画になっております。スタント・コーディネーターにあたっているBJ・ラックはチャック・ノリスのアクション映画にアクション監督アシスタントとして携わっているほか、サム・ライミ監督では『ダークマン』『キャプテン・スーパーマーケット』、ジョン・マクティアナン監督のデビュー作である『ノーマッズ』やローランド・エメリッヒ監督のハリウッド進出作品『ユニバーサル・ソルジャー』でスタントを務めているほか、ミュージックビデオやTVシリーズのプロデュースをしているほどの多彩さでエンタメ業界を盛り上げてきた立役者。共同でアクション監督を務めたエディー・ブラウンは『ラッシュアワー』シリーズや『イーグル・アイ』、『トランスフォーマー』シリーズなどマイケル・ベイ作品といった映画からTVシリーズまでカースタントやアクション監督を務め続けている超売れっ子ドライバー兼スタントマンです。

 ところで、この監督、ケヴィン・S・テニーという人なんですが、父親がアメリカ空軍で、自身はホノルルの空軍基地で誕生したそうです。監督デビューは1984年で、南カリフォルニア大学で映画製作を学びますが、初長編の『死霊の世界ウィッチボード』を完成させるために中退。それからは『悪霊たちの館/呪われたハロウィンパーティー』やら『魔獣伝説/ザ・セラー』やら『サイキックハウス/亡霊の館』やら、もういかにもなホラータイトルを発表し続け、この『エイリアン・コップ』は初のアクション映画となりました。子どもの頃から熱心な映画少年で、8ミリカメラでアクションものを撮っていたようです。大学生『ダイ・ハード』であるビデオ映画『トイ・ソルジャー'97』を手掛けていたり、SF、ホラー、サスペンス、ファンタジーを製作と脚本を兼任するほど、ジャンル映画に熱心なひとなんでしょうね。そんな監督作品に多く音楽を提供しているのが実弟のデニス・マイケル・テニー。兄弟睦まじく、風変わりで挑戦的なSFをスリリングなアクションスコアで盛り上げてみせました。

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