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Carl Zeiss S-Planar 60mm f/2.8 AEGを身勝手に評する(虫注意)

Howdy!
うにょーん(@giondoll)でございます。こんな風にリンク貼るぐらいきちんとした前文を書くのは随分久しぶりな気がします。
さて、今回はドイツのCarl Zeiss社製の等倍マクロレンズを身勝手に評していこうと思います。


Carl Zeiss S-Planar 60mm f/2.8

さて、件のレンズでございます。

CONTAX 139 QuartzとS-Planar 60mm f/2.8
蛍光灯由来の線があああ

S-Planar 60mm f/2.8の現代的な見た目とは裏腹に発売は1978年と実に44年前のレンズ(執筆時点)です。少々信じがたいですがレンズに刻印された「Lens made in West Germany」が時代を伝えます。
ドイツ連邦共和国に旧ドイツ人民共和国構成州が編入されたのが1990年です。私なんかはまだ生まれてませんから歴史上の出来事という認識ですが、読者の中には活きた経験として記憶している方もいるかもしれません。

歴史を語るLens made in West Germany

このレンズですが追加リング等を使わずに等倍まで撮影することのできる50mm近辺のレンズとして数少ない選択肢の一つではないでしょうか。今も昔も50mmや60mmのマクロレンズは0.5倍までしか撮れない事が多いのです。
この特性はAPS-Cで等倍撮影を行いたい私のような人間には大変うれしいものです。60mmなら換算90mmですが100mmとなると150mmになってしまい室内で使うにはかなりキツイのです。

撮影倍率を求める式を思い起こすとまぁ当たり前の事なのですが、倍率って受光面積の影響を受けます。具体的に言うと焦点距離と同じ様に撮影倍率も1.5倍になります。
なのでこのレンズをAPS-C機と組み合わせるとかなり寄れて楽しいです。

APS-Cセンサー搭載MILCであるFUJIFILM X-S10と本レンズ。アダプターは中国製の安いもの。
等倍撮影が出来るのが魅力。とてもながーい。

使ってみよう

さて。このレンズの特色といとCarl Zeissの設計による高い光学性能が上がるでしょう。Carl Zeissが設計し製造したレンズですので味付けは実に舶来品のレンズといった味わい。よく解像するが解像だけという訳ではなく雰囲気を作ってくれるよく考えられているレンズです。開放で柔らかく絞れば固いという古いレンズ故の二面性は目をつぶって許してあげましょう。

以下作例はすべてFUJIFILM X-S10によるもの。ですので90mmな感じの窮屈感があります。まぁ素の光学が60mmなので圧縮効果は無いですがね。ボケも変わりませんが、まぁ印象は少し変わりますよねぇ。
本来の画角で評すべきなのでしょうが私フィルムスキャナー持ってないんですよね・・・

よく写る。被写界深度外の物は溶かすというよりも暈すような写り。
良く解像する。小さい埃でさえも。
接写なので当たり前だが被写界深度は浅い。本レンズの太いピントリングが役に立つ。
コインの質感をきちんと表現する。決してただ寄れるだけのレンズでは無い。
埃もばっちり表現するのでガサツな筆者は泣いてしまいます。
少し引いて、少し絞る。普通に使ってよく写る。いいレンズです。
すっごい良く写る
虫を撮るのにはもう少し長い(Macro-Planar 100mmとか)方がいいかもしれない
小雨の後、羽を乾かすトンボ君を被写体に
トンボ君的には災難だった雨だろうけど、私的には助かりました
やはりボケが良いね
やはり接写リング無しで等倍から∞まで使えるのは便利


弱点

さて弱点のコーナーです。まず逆光に大変弱い。
・・・おいTスターコーティングはどうなったんだと思われる方もいるかもしれません。もう少し詳しく説明しましょう。本レンズは上記した通り大変古いレンズなのです。それ故にTスターといえども今現在最新のTスターと同等の性能では無いですし、何より古いレンズほどコーティングが無事に残っている個体というのは少ないか高価なのです。実は私の持っているこの個体もばっちり前玉に前オーナーによる拭き傷が・・・
ですので「俺はデットストック品を購入する予定だぜ!」という方でもそうでない人もコーティングをアテにしない方が良いかなと思います。

大変にハレーション。

では、このレンズの逆光耐性の低さを改善するためにフードを手に入れよう!とすると今度は狂気的なフードシステムと対峙する事になります。
本レンズの純正フードは「67-86リング+メタルフード3番」です。なんと変換リングを介した上でフードを付けろと申される。思わずうそでしょと声が出ました。新品をカメラ屋で購入できた当時ならまだしも、これを中古で入手するとなると大変です。古いレンズマニアにとって、入手難易度は【レンズ<アクセサリー<紙もの/元箱】と大別できるのは有名な話でしょう。アクセサリーの現存数というのは殆どの場合レンズの現存数よりも少なく、本レンズにおいても例外ではありません。熱心なコレクターでないのなら純正を諦めるのも一つの手だと思います。

2022/8/15追記

フード、高くても買おう。純正でなくても揃えておこう(1敗)
自然相手だと逆光だのなんだのは当たり前だけど選べないので手軽にハレ切り出来るフードは必須だった。基本人形と身内の人間しか撮ってない甘々アマチュアカメラマンだからそういう基本的な所抜けてるんだよなぁ私。

いやぁやらかした


総評

総評としては、本レンズは製造から時の経った今でも人に勧める事が出来る程に完成度の高いレンズだと言えます。多少の難点もありますが、こんな古いレンズに興味を持つ人ならこれも個性だと言って愛してしまうかもしれません。
そして何よりも安いのです。APS-Cで等倍まで使う事のできる換算90mmというとZEISS Touit 50mm f/2.8などの高性能AFレンズがありますが、これが新品実売価格約12万円台、オークション/フリーマーケット相場約7万円台なのに対して本レンズは新品無し、オークション/フリーマーケット相場約4万円です。

S-Planar 60mm f/2.8はコストパフォーマンスに優れた優秀な標準域等倍マクロレンズの一つだと言えるでしょう。しかしながら、これは44年前に発売されたレンズです。人間と同じでガタがきてる個体もありますし、最新の物に適合させようとすると不具合もあります。あくまでも自己責任で楽しまなければいけないという事は頭に入れて置かなければなりません。

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