珈琲
いつも飲んでるインスタントコーヒーが切れた。
コーヒーがないと頭が回らない。
あ!そういえば。
以前久々に買って使っていないコーヒーがあったことを思い出した。
良かった。
まだ賞味期限が残っている。
長らく使われず埃がついたコーヒーメーカーを棚から出して洗って掃除した。
そしていよいよコーヒーの粉をペーパーフィルターに入れ、水を入れてセットする。
コポコポコポ…お湯が沸けてくる音と共に、キッチンに湯気が立ち、コーヒーの良い香りが広がる。
なんていい香り。
とても懐かしい空気。
昔、実家には赤いコーヒーメーカーがあった。
両親がコーヒーに凝っていた頃、実家のキッチンからはいつもこの香りが漂い、冬の寒い日に学校から帰ると、母が新聞を読みながら美味しそうにコーヒーを飲んでいた。
『ただいま〜!コーヒーの匂いする!』
『おかえり!uniちゃんも飲む?今出来たてやから美味しいよ。』
そう言って母は、良い香りがするコーヒーに角砂糖を1つとミルクを入れたコーヒーを、決まったコーヒーカップに入れてくれたのであった。
きちんとお皿がついたカップに入れられたコーヒーは、それだけで美味しそうに見えたものである。
その後、自分たちが大人になるまで活躍した赤いコーヒーメーカーは壊れてしまったが、結婚する時に、どうしてもあの特別なコーヒーカップが欲しくて、実家から2客貰ってきたのであった。
久々にそのカップを出して、出来たてのコーヒーを注いで飲んでみた。
角砂糖もミルクも入れないブラックコーヒーを入れた小ぶりでレトロな花柄のコーヒーカップは、その姿を変えず、堂々と熱いコーヒーを受け止めてくれる。
コーヒーは淹れたてがやはり美味しい。
だからつい、家族に向かって
『コーヒーいる?今出来たてやから美味しいよ!』
と声をかけてしまう。
調子に乗って、どんどんコーヒーメーカーで作っていたら、あっという間にコーヒーが減ってきた。
あかん!切れる前にコーヒーを買いにいかなければ。
インスタントコーヒーはやめて、当分コーヒーメーカーが活躍しそうである。
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