真新しいつなぎ服。
お昼どきになると、近くのお店で働く人たちがランチに向かう姿を見かける。
今日見かけたのは、ある自動車メーカーの整備士さんたちのグループだった。
みんなお揃いのつなぎ服を着ている。
ちょっと日差しが強くなり、暑いのか袖を捲りあげている人たちが多い。
つなぎ服が少し汚れている人もいて、「働く男」を感じさせる。
私は車を運転するのが好きだけれど、車の整備はまるで何が何やらなメカ音痴である。
遠い昔、スキーに行くとき、雪道になってきたのを見計らって、男の子たちがジャッキでタイヤを持ち上げてタイヤにチェーンを巻きつける作業をするのをうっとり見ていたクチなので、整備士さんには憧れの気持ちがある。
私にとって、男性のつなぎ服姿は格好いい男の象徴なのである。
そんな整備士さんたちの中に、袖を捲りあげず、きちんとおろしたままのピカピカのつなぎ服を着ている若い男の子がいるのに気がついた。
たぶん新入社員さんだ。
どこの職場に就職しても、まずは先輩や上司たちとお昼のランチを一緒に食べることからスタートするんだなぁとしみじみ。
慣れない環境の中、緊張しながらまだ相手のことがよくわからないうちに先輩たちと一緒にランチを食べる気持ちはなんとも言えない気分だったことを思いだす。
先輩たちの話のノリについていけず、半笑いしながら食べたランチ。
家族や親しい仲間と食べるご飯とは違う感覚を始めて味わったのも春だった。
季節が流れ、何度も一緒にご飯を食べているうちに、いつしか家族や親しい仲間と食べるご飯に近しい感情を持ち始める。
そしていつしか、家族や親しい仲間よりも一緒にいる時間が長い職場の人たちが、一番親しい人たちに変わっていることに気づく。
はじめはちょっと寂しいランチタイムが待ち遠しい時間になる。
ピカピカのつなぎ服をきちんと着て、少し気後れしているように見えた彼にも、そんな日がきっとくるのだろう。
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