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詩ことばの森 (51)「きみの声が」

すっかり秋の色になった空を見ていると、心も澄んでくる気がします。静かな気持ちと一緒に、寂しさも感じつつ、昔のことが懐かしく思えたりして。

きみの声が


ききなれた街の音は
ぼくの耳に
なぜかせつない

せめて
雨でもふってくれたら
しめきった部屋のなかで
ひたすら雨音だけを
耳にしただろう

それでも
いたたまれないときは
古い喫茶店で
苦いコーヒーを
口にふくみながら
雨音を聞いていたろう

雨がやんで
この街を去った
きみの声が
きこえないうちに
一冊の本を読み終える

ありふれていて
つまらない小説は
ひとりになったぼくを
きみのいない世界へと
誘っているようだ

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