映画館で拍手したことある?

海外とか観劇の世界ではよく「スタンディングオベーション」なるものがあるという事を聞くのだけど、私はあまり経験が無い。それも自分からでは無くて、大体「あっ周りの人が立ってるから立って拍手しよう」みたいな感じ。スポーツ観戦だと結構そういうことあったりするのかな。

タイトルの件。
目の前に人がいるなら拍手するのは当然だけど、映画ってなるとそこまでそういう文化が無いのかなって気がします。よほどのことが無い限り見終わった後はみんな「良かったね」とか「終わったー」とかで済ませて、その後映画の感想を言いあったりするよね。あの時間好き

そんな私が今まで1回だけ映画館での拍手に遭遇したのが、2018年公開の「カメラを止めるな!」でした。
この作品の音楽を担当してた鈴木伸宏さんのバンドのファンだったのでTwitterで告知を見て知ったのですが、私はその時拗らせ人間だったので、製作スタッフ陣が公開までのカウントダウンを毎日画像付きでアップしてたりしてるのを正直「内輪ノリ寒いな」って思ってました。
最初は上映館も少なかったしそんなに期待していなかったです。レイトショーで見に行って意外とお客さんがいることにびっくりしたくらい。
まあ音楽良ければそれでいいかな、ぐらいに思ってました。本当にすいませんでした。

内容知ってる人も多いと思うのでアレなんだけど、最初のノンストップワンカットクソ映画シーンね。あそこまでは普通に見てました。これ画面酔いする人いるだろうな、えっこれが話題になるのか…?みたいな。
全然そんなんじゃなかったんだけど。

なんだろう…「我が子がはじめてのおつかいにたったひとりで行って、道中転んだりお財布落としたりいろいろあったのに我慢して泣かないでちゃんと帰ってきて卵とホットケーキミックス買ってきて、お母さんの顔見たら泣き出しちゃったんだけどその後一生懸命作ってくれた形の悪いホットケーキを出された」みたいな感情…?
砂糖もメープルも生クリームも乗ってないしなんなら中は生焼けだし外は黒焦げだし堅いしマズいんですよ。でもそのパンケーキ、なんとしても食べるべきでしょ?!

90分間ぐらいの映画だったけれど、45分を過ぎたあたりからゾクゾクが止まらなかった。途中声出して笑ってた横の全然知らないおばちゃんと目が合ったのを覚えてます。おばちゃんもびっくりしてた。
私は結構感激屋で涙腺よわよわな方なんだけど、まじで振り切れると驚きの方がすごくて涙出ないんだな…って今になって思います。
気が付くと登場人物全員が愛しくて大好きで応援したくてしょうがなくて、ずっとどきどきハラハラして、映画を見ているというよりは運動会とかを見ている様な感覚でした。
エンドロールはもちろん誰一人立たず、帰る人なんていなくて。音楽が終わった瞬間はしんと静まり返っていて。誰かがどっかで小さな拍手をしたのを皮切りに、劇場内がわっと拍手に包まれました。「雰囲気に呑まれる」はもちろんあったと思うのだけど、この感覚は本当に不思議で言葉では言い表せないです。なんだったんだろうアレ。

その後金曜ロードショーでもやってたけど、たぶんその体験とは全然違うんじゃないかな…その場にいたみんながみんな驚かされて、感動して、それを全く知らない人同士で言葉も無く一瞬で分かち合う、みたいな。生きている間に経験できて本当に良かったです。一人で見に来てたからそのまま黙って車に戻って、5分ぐらいわんわん泣いた。

たぶんめちゃくちゃ良いタイミングで、良い形で映画体験をすることができたんだろうな……だからこの作品は一生好きでいられると思うし大事にしたい。
家に帰ってTwitter開いて、フォローしている鈴木伸宏さんのアカウントに震える手で「本当に素晴らしかったです」的なリプをしました(今考えると失礼だったかも)
そんで感想ツイートをハッシュタグ付きでいくつか流すとそれにぽちぽちといいねがついてくんですけど、どれもこれも演者さんのアカウントだったんですよね。しかも鈴木さんからは返信リプまで頂いてしまいました…お忙しいだろうに…
映画の続きがここにある、と思ってまたその場で泣いてしまった……

人がどう思おうと関係なく私は間違いなくこの映画に出会えてよかったし、常に斜に構えて物事を見ていた私の姿勢を変えてくれた作品だなあと思ってます。

おしまい

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