看護大学教員は研究フィールドをどのように作るか
看護学という分野は、実学であり、そこに看護を提供できるフィールドがあることが前提の学問だ。
そのため、大学教員になる前に働いていた病院や自治体などの現場を研究フィールドとして持っておくと良い。
私も以前、保健師として働いていた自治体とは今も交流がある。しかしながら、退職して数年が経過し、親しくしていた上司・同僚の退職や異動、組織再編成もあり、「現場で研究させてくださ~い!」と気軽に言えるような関係性ではなくなっちゃったのだ。
医師のように臨床しながら大学に所属する、という形が看護ではほとんど存在しないため、それもまた看護大学教員の研究しにくさにつながっている。(多忙すぎて臨床に行く時間もガッツもない…詳細は過去の記事を参照)
ではどうすれば研究フィールドを確保するか。自力で研究フィールドを確保するために四苦八苦している大学教員の叫びを以下に紹介したい。
1.大学院に所属しよう
身も蓋もない提案だが、やはり大学院に所属すると、大学院の研究フィールドを活用することができる。
私は現在博士課程3年(4年次まである)だが、一人で研究する限界を感じていたので、研究フィールドがあって滅茶苦茶ありがたく感じている。
修了した後も、指導教授が許せば客員研究員などで籍を置いてもらうつもりだ。
少し注意したいのが、大学院のフィールドがあるからと言って、既に誰かが過去に収集し、誰も手を付けていないデータを使用して研究することは、あまりお勧めしない。
自力で研究計画を立て、倫理委員会を通し、データを集め、分析する。その過程を経験するのが大学院であり、一人前の研究者になる訓練のために重要だ(自分に言い聞かせてる)。
特に看護の修士・博士課程は、特にそのプロセスを重視しているため、既存のデータを扱うだけの研究は、最悪修了要件を満たさない可能性がある。近道に見えて、遠回りだ。
2.他の研究に参加させてもらおう
同じようなテーマで研究をしている研究者が身近に意外といたりする。研究の世界は本当に狭いので、先行研究を概観していると、「え!この先生がこの研究やってたの!」みたいなことが良くある。
そんな時、私は連絡をとったり、学会で挨拶するようにしている。人脈を広げ、あわよくば一緒に研究したいという下心を抜きにしても、やっぱり自分の関心ある分野の研究の話を聞くのは楽しい。
そこから「You俺の研究にJoinしなよ!」なんて言われた日には舞い上がってしまうものだ。
3.学生を対象にした研究をしよう
看護学生は将来の看護職の卵、いわば光る原石。私も学生を見ていると、ゴンやキルアを見守るビスケット・クルーガーのような優しい気持ちになるものだ…。
実際に看護教育学会などもあり、看護教育の方法論に関する研究はますます盛んになっている。
「教育は好きだけど研究はいや!」というそこのあなた。看護教育を研究すればいいじゃない。学生ならいつでも会えるので研究データも収集しやすい。
ただ、教員と学生というパワーバランスが働くので、研究に当たっての倫理審査は少し通しにくいことは予め伝えておく。また、かなり掘られている分野でもあるので、オリジナリティを良く検討することが必要だと思う。他の学科とのコラボなんかもいいね。
4.フィールドがなくてもいいじゃん
「おいおい、フィールドを増やそうって話じゃなかったのかい?ついにとち狂ったかコイツ!」
という声が聞こえてきそうだ。
確かに、フィールドはあるに越したことはない。
でも、なくたって研究はできる。代表的なものは、文献レビューだ。
実際、自分が関心のあるテーマで文献を探していると、文献レビュー研究が見つかることがあり、様々な論文を簡潔にまとめたり、分析してくれている。最新の知見が手っ取り早く把握できて本当に助かる。
もちろんシステマティックレビュー(系統的で明示的な方法を用いて、適切な研究を同定、選択、評価を行うレビュー)など、よりエビデンスレベルの高いレビュー研究ができれば素晴らしいが、そこまでいかなくても文献レビューはできる。
私が文献レビュー研究を行うにあたり、参照している本はこれだ。
文献レビューのノウハウが、私みたいなアンポンタンでも簡単に理解できるように嚙み砕いて説明されており、大変勉強になる。公開データを分析するのであれば倫理委員会を通す必要もないため、比較的スピーディーな研究ができるのも良い。
これを機に、ぜひ文献レビューをしてみてはいかがか。
あとは、ラボを持っている貴重な看護系研究室もあるという。正直クッソうらやましい。
以上、私の頭の中にある研究フィールドの作り方をさらけ出しました。他にもいろいろな工夫をしてフィールドを創り出している教員はたくさんいると思うので、ぜひ、みなさんのアイデアを聞かせてください。
はるまあ
https://twitter.com/unkokangokyoin
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