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写真と人 rumica kaji-012 2024/05/29

今回は7月の個展のお話と、京都での遠征撮影のお話。
まえがき:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

「写真と人」インタビューとは?

作品を作りあげようとする人の心を継続して言葉に残してゆくインタビューシリーズです。
SNSで募集した無名の人たちを撮影するプロジェクトをしているカメラマンのRuluさんへの連続インタビューです。だいたい月に1回、インタビューしています。並行して、一人の人を撮影し続けるプロジェクトも開始しました。
被写体募集はこちらの記事からどうぞ。

これまでの「写真と人」

1回目は2023/8/2に行われた。
 実際に行われたプロジェクトの撮影の様子を聞きつつ、撮影者と被写体の間に「ゆらぎ」があることを発見した。
 ゆらぎとは、撮影者が撮影に没頭し、それまで意識していた被写体である他人という存在を忘れ、ただシャッターを押し続ける状態のことを意味した。
2回目は2023/8/16に行われた。
 実際に行われた撮影の様子を聞きつつ、引き続き、撮影者と被写体の間の「ゆらぎ」について聞いた。
 プロジェクトの始まったきっかけも聞いた。 
3回目は2023/8/30に行われた。
 実際に行われた新宿歌舞伎町の激しい撮影の様子を聞きつつ、Ruluさんの過去についてすこしふれた。
4回目は2023/9/13に行われた。
 実際に行われた撮影の様子を聞いた。部屋での撮影だった。「ゆらぎ」が発生したかどうかについて聞いた。
 Ruluさんが過去に精神科に通院し、自由連想法のように言葉を紡いだ経験があることを聞いた。“単語がバラバラになって、文字がバラバラになって、洗濯機みたいになって、頭の中でぐるぐる回ってるみたいな感覚”
5回目は2023/9/26に行われた。
 実際に行われたプロジェクトの撮影の様子を聞いた。1回目の被写体と同じ被写体だった。撮影者と被写体について、詳しく聞いた。
6回目は2023/10/25に行われた。
 実際に行われた撮影の様子を聞いた。今回も部屋での撮影だった。
 Ruluさんが、「顔が写ってないんですよね」と言った。その他、窓や鏡といったモチーフの写真についても考察した。
7回目は2023/11/29に行われた。写真集を作るためのダミーブック(手作りの試作本)作成について聞いた。過去の撮影を、カメラマンとは違う視点で見返し、新たな物語の再構築をした。
8回目は2023/12/20に行われた。一人の人を継続して追いかけるフォトプロジェクトを開始したことについて聞いた。
9回目は、2024/1/24に行われた。ダミーブックの進捗と、zoomでのリモート撮影について聞いた。
10回目は、2024/3/27に行われた。個展に向けての「コラージュ」試作と、塩竃フォトフェスティバルについて聞いた。
11回目は、2024/4/23に行われた。グループ展について聞いた。

今回は12回目で、5/29に行われた。


2回目のグループ展

qbc:
今日はどんなお話をしましょう?

rumica kaji:
前回は、グループ展の話でしたよね。目黒のグループ展をやったのが4月で、このインタビューが5月なんですけど。今もう一つ、別のグループ展をちょうどやってます。京橋で。

qbc:
あ、そうなんですか。

rumica kaji:
そうですね。去年はとにかく、すごいひたすら勉強する年にしようと思ってて。なんだろう、アウトプットよりも、とにかくインプットする。写真誌だったりとか、いろんな知識をまず入れないとなと思って、去年はいろいろワークショップとかゼミとか積極的に受けて、その成果展っていう形で、4月に一つあって、二つめが今やっていて。

そうだな、その話をしようかな。
そのグループ展は、うちばやしゼミっていう、打林俊さんっていう写真史家の方のゼミで。この方は写真を撮る方とか写真家とかではなくて、写真の評論とか写真の歴史とか、そういうことを専門にやってる人が持ってるゼミで。結構、写真家の方が教えるものって多いんですけど、評論家の方とか、書いたりする側の人の、そういう講座っていうのはあんまり多くないので、受けてみたかったっていうのがあって。

qbc:
はい。

rumica kaji:
で、9ヶ月間かな。月1回、9ヶ月で、最初の3回はレクチャーだけをやる。光と感情の作用とか、ゴシック建築がどうたらとか、そういう話から、3回ぐらい座学の講義をやって。残りの6回は、自分の作品を持ってきて講評してもらったりとか、成果展に向けてどういうふうにそれをアウトプットしていくかみたいなことを、自分なりに進めていって、月1回見てもらってっていう形で進めていく。それで成果展をやるっていう形で。

今回は、前回の目黒区民ギャラリーより、もう少しコンパクトなギャラリーで、そこで11人くらいでやるので、1人あたり使える壁が、1mちょっとぐらいって聞いていて。先月ぐらいに、場所の割り当てっていうのが決まって。

一応、私はもう今回は本を作って、本を展示するっていうことを最初から考えていて。前回作った本と大幅に中身が、全く一から違うっていうわけではなく。ずっと私はもう、何だろう、ゼミそれぞれに違うことをやるっていうよりかは、1個だけ、その今やってるプロジェクトのこと、本筋はもう全部それなので。そのアウトプットの仕方をいろいろ、各ゼミで模索しているような形になると思うんですけど。

qbc:
うんうん。

rumica kaji:
前回は結構、壁にワーッて大きい写真を貼ったりとかして構成していて、それで行ったので。今回は逆にミニマルに、すごくコンパクトにしようと思って。最初は、壁に作り付けの棚を作って本を置いて、写真を1枚ぐらい暗室で焼いて、1枚だけ写真を展示しようかなと思ったんですけど。

1枚写真を焼いて、額に入れてみたんですけど、そしたら何か、1点って言っても、額に入れた特別な写真1点と、本があるみたいな感じで。何でしょう、やっぱり本がおまけみたいに見えちゃうんですね。

qbc:
うん。

rumica kaji:
まず写真を見て、近くに本があったりとか。あとグループ展でよくあるんですけど、自分のブースの近くに、自分が昔作ったZINEだったりとか写真集を置いたり、ポートフォリオのブックを置いたりDMを置いたりとかしてるので、そういう感じにも見えちゃうし、どうなんだろうと思って。先生には、写真をプリントして1枚額装して貼ったやつと本だけ置きますみたいな感じで言ってたんですけど。

結局、いざ作ってみたら、もしかしたら何か違うかもしれないなって、自分でしっくりこなくて。本がおまけみたいに見えるのがすごく嫌で。本を主役にするって今回決めてたから。だからプリントを飾るのはやめようと思って、外して。

でも、さすがに本だけっていうのはちょっとあまりにもあんまりなので、プリントの代わりに、フィルムって。

qbc:
フィルム?

rumica kaji:
フィルムです。飾ろうとしていた写真の、元になるフィルムがあるわけですね。フィルムで撮ったので、ネガフィルムがあって。そのネガを、飾ろうとしてた写真のネガのカットだけ切って、1枚のフィルムを、何でしょう、ガラス、小さな何か、ちょっとアンティークっぽいガラスの、ミニフレームみたいなのがあって、チェーンが付いてて壁に掛けれるような感じの。チェーンじゃないな、紐を付けたんだ。なので、ガラスにフィルムネガをダイレクトに挟んで、プリントを置く予定のところに掛けたような感じです。

qbc:
写真あります?

rumica kaji:
写真……写真は。

qbc:
ないのか。

rumica kaji:
そうですね。グループ展自体の会場風景があって。

qbc:
載ってますよね。はいはい。

rumica kaji:
ちょっと待ってくださいね。会場写真があって、右奥、屏風みたいなのを机に置いてる方が奥にあるのわかりますかね。

qbc:
はいはい。1枚、屏風があって、右?

rumica kaji:
そうです。その右に、茶色の本と、本の右上にちっちゃい丸みたいなのがあるとこがあるんですけど。

qbc:
本の上に丸?

rumica kaji:
(笑)

qbc:
本は、立てかけてある本がありますね。

rumica kaji:
壁に掛かってる本がありますよね。そこが私の本で、私のブースで。その本の右上に、何か壁にポンッて貼ってあるやつがあって。

qbc:
長方形のものがいくつか貼ってあるやつ?

rumica kaji:
いや、違う。

qbc:
違うの見てるのかな。

rumica kaji:
TwitterのDMで送りました、ごめんなさい。

qbc:
すいません。ありがとうございます。

rumica kaji:
ちゃんとした写真をまだ撮ってないけど、こういう感じで。この茶色の本が、作った本で。その奥に置いてある本が、今回、ヒルデガード・ペプロウっていう看護学者の人がいて。看護師で、研究とかをしてるんですけど、対人関係とか関係性の変化とか、その中で相互に及ぼしていく作用とかについて研究した人がいて。それをテーマにしているので、参考文献みたいな感じでその書籍を置いてるのと、あとは右上に、ガラスに入ったフィルムがあって。今回はちゃんとキャプションをつけて(笑)

qbc:
フィルムって、中身は見えないですよね?

rumica kaji:
そうですね。でも、よく見たらうっすら見えますね。

qbc:
フィルムって巻いてあるやつじゃなくて、1枚のやつ?

rumica kaji:
そうですそうです。35ミリとか写ルンですのフィルムとかだと巻いてあって、すごくちっちゃいんですね。これは、35ミリフィルムの4倍ぐらいの大きさがある中判なんですね。ブローニーサイズっていう。これも一応、巻いてはあるんですけど、12枚しかなくって。1ロール12枚で、それを一つの写真分カットして、1枚だけ入れてある感じですね。ちょうど手のひらサイズぐらいの。

qbc:
うんうん。

rumica kaji:
それでキャプションに、手に取って見てもいいですよっていうふうに書いて。ネガなので反転してるんですけど、ポジだとそのままでも割と綺麗に見えるんですよね。ちょっと見づらいけど、天井のライトとかに向けて透かすと、結構見えるので。そのフィルムの生の状態を見てもらおうと思って、こういう感じにしてますね。

ゼミの3回目のテーマで、パンデミック以降の、写真と身体性のあるものを巡ってっていう講義があって。私がこういう、いろんな人に会い始めたのって、コロナがなかったら多分やってなかった可能性があるんですね。

qbc:
うん。

rumica kaji:
やっぱりコロナですごく、いろんな人と直接会って話すことが制限されたから、その反動じゃないけど、みたいな部分から始まったものも大きいので、そのパンデミックでいこうっていうのと。あとは、コロナの間もSNSの中で話したりとか、Zoomでオンライン飲み会やったりとか、そういう交流っていうのはできたけど。

オンラインのものと違って、やっぱり実際に会って2人で、何だろう、山とか公園に行って暑いとか、木とかを触るとか土を触るとか、葉っぱの上に寝転がってみるとか、そういう身体性のあり方みたいなのが、すごく何でも、なんだろ、むやみやたらに触ってはいけませんみたいな空気がすごいあったじゃないですか。だから何か自然とかに行って、いろんな物をベタベタ触ったりとかして手が真っ黒になったりするのが、無性に楽しかったんですね。

qbc:
うんうん。

rumica kaji:
なのでこのときのエピソードを一番最初に持ってきて。そのとき、この肖像、ポートレート的なものがこのフィルムのネガの中に入っていて。見る人も、ギャラリーに入ってきて、歩きながら壁をスーッて見るわけにはいかないような。グループ展なので、スーッて歩いて見ることもできるとは思うんですけど、それだけだと中身が全然、外からわかんないようにしてあって。

立ち止まって、自分の手で本を持ち上げて本を開くとか。ネガもこのままだと、プリントみたいにパッて、よく見れるものじゃないので。これに何が写ってるのか知るためには、これを取り外して、顔を近づけてみるとか電気にかざしてみるとか、そういう、鑑賞者側の身体の動きっていうのが、そこに発生してくる。

コロナ禍の展示だと、どうぞさわってくださいみたいなのも、すごい多分敬遠されてたと思うので。今になってそういうことが、特別なことじゃないけど、みんな本に触って一つの本を見るっていうこと自体も、許される空気にはなってきている。なんでしょうね。とにかくそういう身体性を使わないと、よく中身がわかんないみたいな感じにして。

qbc:
うん。

rumica kaji:
あなたの作品を見るためにそこまで私はしたくないですって言われたら、もうクルッて回って帰っちゃう人とかだと、なんかよくわかんなかったねっていうことになってしまうとは思うんですけど。

あとすごい寂しかったので、この右下に椅子を置いたんですね。椅子とクッションを置いて。搬入のときに椅子を貸してくださいって言って、借りて。なんか椅子だけだと普通の茶色いパイプ椅子みたいな感じなんで、片付け忘れたのかなって思って撤収されちゃうと悲しいので、搬入のときにそのままニトリに行って、ニトリでクッションを買って、置いて帰りました。

なので、座ってゆっくり読んでもらえたら嬉しいなっていう。読んでくれる人がいたら嬉しいなっていう感じで、やりましたね。なので前回とは結構、全然違う。中身は変わらないはずなんですけど、アウトプットの仕方が、いくらでもあるんだなと思って。

どう見せたいか、どう見せるのが一番適してるのかっていうのは、ちょっとまだわからないので。こうやって模索中っていう感じですね。

qbc:
撮ってるときと展示作ってるときって、どっちが楽しいですか?

rumica kaji:
どっちが楽しいかな。うーん。どっちも楽しくないかもしれない(笑)

qbc:
はい。

rumica kaji:
撮ってるとき。結構、どうなんだろう。会って話を聞くことはすごく楽しいけど、写真撮ることが楽しいのかな。楽しくて撮ってるというよりは多分、自分が考えてることとかを形にするためには撮らないといけない、作らないといけない、人に伝わるように展示しないといけないと思うんですけど、どれも得意なことではないので、何か、しんどいのが大きいかもしれない。

qbc:
何のために撮ってるんですかね?

rumica kaji:
何のために。何のために撮ってるのかな。こういうことやってると、すごく人間が好きなんですねってすごい言われるんですけど。人間。なんかそうでもなかった気がするんですよね、自分の中で。友達が多いかって言ったらそんなに多くないし。友達ができても、長く友達関係を続けるっていうのも、そんなに何かこう、まめに連絡を取り合ったりとか、定期的に誘ってランチに行ったりとかしないので、だんだんだんだん、本当に用事がなければ疎遠になっていくみたいなタイプで。

それよりも、本当に家に1人でいる方が好きだし。でもなんかそれじゃいけない気はして。これで風景とかに行っちゃうと、本当になんかもう、一生誰とも喋らなくなりそうだから。撮る対象が人になると、まずやっぱりコミュニケーションを取って連絡を取り合って、会いに行って話を聞いてっていうことをして。実際に会いに行くと、それが嫌ではないんですね。

qbc:
はいはい。

rumica kaji:
それで話を聞くと、みんなこういうふうに生きてるんだみたいな。すごい楽しくて、写真撮ってるときも。でも最近、写真撮るのも、楽しくなってきたかもしれないです。前は、なんか本当に全然楽しくないと思いながら写真を撮ってたんですよ。最初の頃。撮ってる意味って、なんなんでしょうね。

qbc:
写真の、何が楽しいですか?

rumica kaji:
何が楽しいのかな。コミュニケーションのツールになるし。

自分の中で答えが出てない、とりあえず何か保留にされてるようなことって、いっぱいあるじゃないですか。

qbc:
うん。

rumica kaji:
そういうものが、ボタンを押したら、シャッターを押したら出てくる。それがその、自分の中で保留されている段階では、答えってわかんないけど。とりあえず撮っておけば、それが2、3年経って、保留にしてたことがちょっとわかるようになりましたとか、写真を見たときにまた別の解釈ができるとか、そういうことが楽しいような気もしますね。

KYOTOGRAPHIE

qbc:
その他は?

rumica kaji:
5月に、福岡に帰省をして。その頃ちょうど京都で、KYOTOGRAPHIE、京都国際写真祭というイベントがやっていて。せっかく西の方に行くので、福岡から東京に帰る途中に、1回京都で降りて、京都で1泊をして、KYOTOGRAPHIEを見て、東京に帰ろうと思って。そのKYOTOGRAPHIEをいろいろ回った写真があったり。

せっかく京都に行くので、京都の人も同じように、同じような縛りで撮りたいなと思って、募集をして。2人手を挙げてくださった方がいたので、福岡から京都に行って、KYOTOGRAPHIEを見て、その夜に1人撮影をして、次の日の朝7時に集合して、7時から10時までの間、1人撮影をして、またKYOTOGRAPHIEを回って。その後、夜行バスで帰る予定にしてて。

夜行バスまでの間に、本当はもうあと1人撮る予定だったんですけど、ちょっとその人の仕事が押してしまって。大阪から京都に来てくれると言っていたけど、京都に着く頃には、私がバスに乗るまであと20分ぐらいしかないみたいな時間だったので。それでも来ますって言ってたんですけど、さすがに20分って、ちょっと本当に挨拶してたら終わってしまいそうで申し訳ないので、また次回にって言って、帰って。

夜行バスも、降りたところにラウンジがあって、化粧直しできたり着替えたり、コーヒー飲んだりするとこがあってびっくりしたりとか。夜行バスって楽しい、面白いですね。面白かったです、っていう日記的な。

qbc:
はい。この和風建築みたいなの、これはKYOTOGRAPHIEか。

rumica kaji:
そうそう。KYOTOGRAPHIEです。本当になんだろう、京都らしい、歴史ある建物の中に写真があったりとかして。あとは新聞工場の跡地で、海外のアーティストの大きい写真展をやったりとか。その、特に京都の町家とかだと、何でしょう、それを生かして展示空間を作らないといけないので。真っ白い四角いギャラリーとかじゃないから、その空間の使い方とかはすごく今、いろいろ私も考え始めたところなので、すごく勉強になりました。

qbc:
ふうん。すごいですね。これ、建物は何だったんですか。古民家?

rumica kaji:
ちゃんとした、多分、歴史的な建造物だと思うんですけどね。ちょっと今ど忘れして出てこなくなっちゃった。本当にすごい素敵な建物で。入ってまず普通の、その古民家があって、渡り廊下があって、勝手口から外に出て、裏に蔵があるんですよ。その蔵の中でも展示があって、人ひとりしか通れないようなもう狭い、RPGに出てきそうな秘密の、土壁みたいな螺旋階段があって。そこを登っていったところにまた展示があったりとかして、楽しかったですね。

何て読むのかな。誉っていう字に、田んぼの田に、屋台の屋に、源兵衛って書いてあります。そういう建物みたいです。

qbc:
人の家なんですかね?

rumica kaji:
です。読み方は絶対違うんですけど誉田屋源兵衛、竹院の間です。あと黒蔵、何かです。何かとか言うと怒られちゃう。

qbc:
はいはい。誉田屋源兵衛で見つかりました。「こんだや」って読むみたいですね。

rumica kaji:
こんだ?

qbc:
こんだや。

rumica kaji:
へえ。こんだや。

qbc:
帯匠。

rumica kaji:
へええ。帯屋さん。

qbc:
KYOTOGRAPHIEって書いてあるから、合ってます。大正時代の京町家。会社として、まだそこを使ってるんですかね。どうなんだろ。

rumica kaji:
普段は使ってるんですかね。

qbc:
社屋って書いてあったから、使ってるのかもしれない。

rumica kaji:
じゃあ、その時期だけ協力してくださってるのかもしれないですね。あとは、メインの展示は二条城であったりとかしてますね。二条城は行ってないんですけど。なので今年はもう終わったんですけど、毎年やってて。関西方面の方は、ぜひ楽しいので行ってみてください。

京都での撮影

qbc:
京都での撮影は1日に何人?

rumica kaji:
1日に1人ですね。1泊2日でやってたので。

qbc:
どうでした?

rumica kaji:
夜の公園みたいな写真とかがある方が、1日目のやつで。もともと違う場所に住んでいて、ちょっと学校に行けなくなったりとかしてた時期に、お母さんに勧められて、京都のウィークリーマンションに1ヶ月ぐらい一人暮らしをしたっていう女の子なんですけど。

それでウィークリーマンションの真ん前を電車が通っていて、電車の音がすごく聞こえる。だけど、何だろう、ウィークリーマンションから駅までの線路で、あの電車沿いの道、その電車の音を歩くのが好きだったっていうことで、その場所に2人で行って。

梶世界では珍しい正面

夜、歩いてウィークリーマンションまで行って、ウィークリーマンションの近くに公園があったので、そこの公園で飲み物買って。近くにカフェみたいなのがなかったので、そこで話を聞いて、ノートを書いてもらったりしたっていうのが、一つ目の撮影で。

qbc:
うんうん。

rumica kaji:
二つ目の撮影は、この方は写真を撮られるフォトグラファーの方なんですけど、自分も機会があったらぜひ撮ってほしいっていうことで、関西方面に来ることあったら声かけてくださいって言っていて。KYOTOGRAPHIEに行きますけどって言ったら、彼女は岡山に住んでるんですけど、ちょうどKYOTOGRAPHIEに出展していたので、もともと来る予定があったから始発で行きますって言って。

朝7時に京都の西院っていうところで待ち合わせをして。そのときに、通っていた学校に行きたいっていうことで、朝からその学校に行って、外からしか見れないかなって言ってたんですけど、警備員の方に卒業生なんですけど中に入ってもいいですかって聞いたら、いいって言ってもらえて、中に入ったりしてまた話を聞いて。そのときに、住んでいたアパートの方まで歩いていって、っていう感じでした。

そうだな。今はもうほとんど関東圏でばっかり撮影してるので、場所が京都になると、何か変わるのかなって思ったんですけど、変わらないなと思いました(笑)

qbc:
なるほど。

rumica kaji:
特に、東京に行っても京都に行っても、観光地とかに行くわけではないから、そんなになんか、見た目も別に混ぜちゃっても、東京で撮ったとか京都で撮ったとか、言わなければわかんない感じだし。それが何だろう、再確認できたっていうのがよかったかもしれないですね。

でも東京はまた東京で、ちょっと特殊な部分があるから。東京の人たちをずっと撮っていくと、地方から上京してきた理由がやっぱりね、いろいろあったりとか。あとはその東京の、何でしょう、多様性に対する許容度が広いというか。

もしくは、他人にすごく無関心。ちょっと変な人がいたりとか、おかしなことが起こってても、そんなに大騒ぎされない。地方とかだとやっぱりすごく目立ってしまうから。東京は、写真はすごく撮りやすいけど、そういうことがあるなとか、そういう違いはあるかなって思うけど。

でもやっぱり個人の、1人1人のそのパーソナルな思い出に残る場所とか、行きたい場所とかって、なんかすごく、写真で見ると、どこにでもありそうな、多分何の変哲もない、どこかにありそうな公園とか、そんな感じで。それが面白いな、いいなって思いますね。っていうことがわかり。

京都もまだ2人しか撮影してないから、私の京都に対する解像度がすごく低いので、何人も撮っていくと、また違ってくるのかなとは思うんですけどね。

qbc:
今回写真を撮った2人は、どちらも京都の人ではない?

rumica kaji:
そうですね。出身は京都ではないですね。1人目の子は、1ヶ月ウィークリーマンションで過ごして、また1回地元に帰った後に、今年、京都の学校に進学をしたんですね。今は京都在住で。上京をしてきて、在住してる人と。

もう1人は全然岡山で、学生時代に京都を過ごしましたっていう人。だから生粋の京都、京都で生まれ育ったみたいな人だと、また違うエピソードが聞けるかもしれないですね。

qbc:
京都と東京で、人の違いってありました?

rumica kaji:
人の違い。あんまり、ないかもしれないですね。

qbc:
逆に、共通点は?

rumica kaji:
共通点。うーん。特に、その1人目の子がすごく印象に残ってるんだけど、この子は地方から上京してきた子で。東京でも割と、地方から上京してきた、九州から東京に来たとかそういう人が多いので、結構同じような感覚で。上京した先が京都だったのか、東京だったのかとか。

彼女も九州出身だったんですけど、九州からすると、九州を脱出して上京したいって思ったときに、東京っていう選択肢もあるし。でも親があんまり遠くに行かないで欲しいとか、いろんな理由とかで、その間を取って、みたいなので、大阪とか関西になったりとかすることが結構あったので。関西派か、関東派かみたいな。そのくらいの違いだなっていう感じでしたね。

qbc:
ふうん。

rumica kaji:
でもそこに好きな場所ができて、そこに移住するっていうのは、いいことかもしれないですね。

個展

qbc:
そして、個展ですね。

rumica kaji:
個展。そうですね、7月。それで、個展のDMを、今回デザイナーさんに依頼して、すごくかっこいいのを作ってもらいました。昨日入稿したばっかりなので、来週ぐらいには出来上がってくる予定です。

qbc:
タイトル決まった?

rumica kaji:
タイトル決まりました。「Sugar For The Pill」っていうタイトルです。

qbc:
タイトルの説明をしていただいてもいいですか?

rumica kaji:
説明、難しいですね。

qbc:
これはどこかにあったフレーズじゃなくて、考えたフレーズ?

rumica kaji:
タイトルが本当に、全然浮かばなくて。みんな何か、「準備してるうちに、ふと降ってくる」とか言うんですよ。どうやって決めるんですかって聞いたら。だから準備してたら降ってくるかなと思って、待ってたけど降ってこなくて。タイトル決まらないことにはちょっと告知もできないので、焦って。

金村ワークショップの企画なので、先生たちにも相談するんですけど。タイトル出てこないならもう、100本ノックやるしかないねって言われて。とりあえずもうとにかく、何でもかんでもタイトルになりそうなものを100個書き出して、持って行ってみんなに見せるという。それで、100個はちょっと無理だったんですけど、一週間で60、70個ぐらい考えて。

その中で、他にもナラティブっていうワードを使った、彼女たちの物語だとか、物語に触れるとか、そういうフレーズとかもあったんですけど。そういうのも気になりつつ、でもSugar For The Pillってなんかいいねってなって。他の先生たちも、うん、なんかいいねみたいな感じになって、決まりましたね。

qbc:
はい。

rumica kaji:
この元ネタは、スロウダイヴっていうアーティストの曲なんですね。ネタが本当に尽きて、70個出そうと思うと本当に、本とかから引っ張ってくるのも、ちょっと尽きたので、Spotifyで適当に音楽を普段流して聞いてるんですけど、それでなんかちょっと好きだった音楽見たら、この曲だったんですね。スロウダイヴのSugar For The Pillっていう。

それで、そのシュガーっていうのが、やっぱり私の中では女の子たちのことを連想するし。ピルは薬だから医療者として、何でしょう、関係がないわけでもないし。

あとは自分の中の解釈としては、言い換えると、ペルソナみたいなことなんですよね。もともと苦くて飲みにくいようなお薬とかを、結局糖衣錠みたいな感じで砂糖でコーティングして、いやなものを見えにくくするとか、苦いものを感じさせないようにするとか、そうした、まやかしではないけど、表面的には綺麗で甘くて美味しくてみたいな、そういう感じの解釈なので。

女性に限らずだけど、やっぱり何かしらのペルソナだったり鎧だったり、いろんなものを、適応して生きていくために作り出して、日々をサバイバルしているというか、そういう解釈とも繋がるので。

ぱっと見はちょっとキャッチーな、ちょっとポップさもありキャッチーな感じなんだけど、そういうものをはらんでるみたいな感じが、なんかちょっと面白いかなと思って、これになりました。

qbc:
有力没案とか、他のタイトル案も教えてもらっていいですか?

rumica kaji:
有力没案は、何だったかな。「in the Narrative」とか「Social Overdose」とかだったかな。でも、最後にどれか絞って揉めるっていうよりかは、結構もう、これいいんじゃないみたいな感じで、スルスルスルッと決まった感じですね。

qbc:
この写真を告知用のDMに選んだ理由っていうのは?

rumica kaji:
多分これも4枚5枚ぐらいに絞った候補の写真の中から、これって感じで。結構イメージもタイトルも、もう直感的にパパッて決まった感じですね。

この写真は、私の中では重要な写真ですね。鏡があって、顔が見えなくて。なんだろう。鏡か窓か、みたいな話って、写真をやってる人の中では、すごくよく議論されるんですけど。

qbc:
はい。

rumica kaji:
窓を開けて外に行くのか、鏡を見るのかみたいな。

qbc:
うん。

rumica kaji:
私もそれはすごく、何回も何回も定期的に立ち止まって考えて、最初は完全に窓だったはずなんだけど。最近、自分のことなのか被写体のことなのかってなって、ちょっと混ざってきたときに、窓だけじゃなくて、でも実際は鏡なのかなとか。鏡のようで実はマジックミラーで、やっぱり見えてるのかなとか、片方からだけは見えるとか。

難しいですけど、でもそういう意味で、鏡があって、その鏡の後ろには相手の女性がいて、でもこの鏡に映ってるのが、自分が写ってるわけでもなく、なんでしょうね。でも今の心境的にもすごくしっくりくる、近い、1枚のような感じもします。鏡があるのが大事ですね。

それで裏面の文字組は、デザイナーさん曰く、写真のテーブルの、台形みたいなラインを基準に文字組みしましたって言われてて、なんかかっこいいからあー素敵ですって言ったんですけど、どういうことだろって思って。分かるようで分からなくてずっと見てます。

qbc:
どこから見てるんだろうね。

rumica kaji:
そうですね。どうなってるんだろう。

qbc:
横から見てんのかな、これ。

rumica kaji:
ですかね。

qbc:
個展、どういう気持ちですか?

rumica kaji:
楽しみだけど、グループ展だと壁一面だから、まだ想像がつくというか、イメージがまだつくけど。今度は平面じゃなくて四角になるので、想像つかなくて。あとはグループ展だと、自分のが好みじゃなくてつまんなかったとしても、他の誰かの別の作品が刺さったりとか、来た甲斐があったなって思って、帰ってもらえたりとか、ちょっと無責任ではないけど、そういう部分もあるんですけど。

個展は、自分1人しかこの空間にないので、わざわざ神保町まで行って、来た価値がなかったなってがっかりされたらとか、ちょっと不安になってネガティブになったりとか、ちょっとしてますね。間に合うかなとか。

qbc:
個展の展示プランは?

rumica kaji:
結構もう、二転三転。

qbc:
0から始まって、完成が100だとしたら、今どれぐらいですか?

rumica kaji:
3ぐらいですかね(笑)

qbc:
(笑)先月も話してませんでした?

rumica kaji:
そうですね。話してたはずなんですけど。

qbc:
うん。

rumica kaji:
最初、コラージュやるっていうプランがあって。でも目黒のグループ展で写真を大きく伸ばしたときに、やっぱりその写真だけが持ってる力もあるな、みたいな。なので、コラージュを最初メインにして、ちっちゃい写真とかで繋いでいくっていうイメージだったのが、写真を大きく伸ばして直張りでやったら、額とか入れなくてもすごい何か、力があっていいなって思ったから、大伸ばしの写真を中心にレイアウトして、逆にそれをコラージュで繋いでいくっていう案があって。

その次は、写真の質感とコラージュで使っていた用紙の感じがちょっと合わないので、作っていたコラージュはボツにして、写真自体に直接グラフィティじゃないけど、ペイントみたいな感じで書き込みを入れていく、っていう案で持って行ってて。先週、それの習作みたいな感じで、練習とかをしてたんですけど。

今、もう6月になって、そうするとあと1ヶ月ちょっとぐらいしかないんですけど、気がついたら。そうなってくると、小さい紙に練習している場合ではなく。まず何でしょう、基本となる写真をセレクトして選んで、今まで撮ったやつ、撮った全員の中からまた選んでいくので、すごい膨大な数があるんですけど、でもその中からセレクトをやって。

まずは1列、どの写真で構成するか、ペイントとかコラージュをしなくても、その写真だけでも納得できるような形で構成できるように作ることっていうのを、まずやらないと。書き込みを入れていくにしろ、選んだ後に、大きいサイズのものを発注して、一発書きで書き込んでいって、書き込む量によって作業時間とか読めなかったりとか、失敗したらもう一回また印刷頼んで送ってもらって、書き込みを入れてっていうことをやっていかないといけないな、じゃないと間に合わないなっていうことに、先週気がつきましたっていう段階です。

qbc:
(笑)なるほどね。

rumica kaji:
今、写真を選び始めた感じですね。

qbc:
この個展の期間って、結構長いですよね。

rumica kaji:
そうなんですよ。すごく長い期間いただいて。大体展覧会って、2週間ぐらいがメジャーなんですけど、東京はすごく高いので、2週間借りたら多分、場所代だけで20万弱ぐらいするんですよね。

qbc:
はい。

rumica kaji:
福岡でやったときとか、やることを考えると、やっぱ2倍ぐらいかかるので。ちょっと予算の関係で1週間になったりとか、大体2週間か1週間の会期が多いんですけど。基本は、金村ワークショップの企画も2週間なんですけど。個展のスペースのThe Whiteを運営している方も、澤田育久さんっていうアーティストの方なんですけど、「3週間使っていいですよ」っていうことになったので、そうなんですよ。3週間あってありがたいんです。

qbc:
楽しみですね。

rumica kaji:
楽しみですね。胸を張ってみんなに来てくださいって言えるように、頑張らないといけないんですね。

qbc:
私は普通に、グリッドで並んでても大丈夫ですよ。

rumica kaji:
そうですね(笑)散々なんか、ずっとずっと言ってたけど結局これで、でもそれもありえます。

qbc:
それでも全然、伝わると思いますし。写真家の人から見たら膨大じゃないかもしれないですけど、1人1人の写真をピックアップするって考えると、量はかなりあるんだなと。

rumica kaji:
そうなんですよね。結局、紆余曲折したあげくすごくシンプル、ベーシックになってるかもしれないし。

qbc:
プロジェクト的にはシンプルなものでも、フィットするのは間違いないんですけどね。

rumica kaji:
そうなんですよ。だから、余計なことをしない方がいい説もある。

qbc:
シナリオとしては残りますよね。

rumica kaji:
(笑)ありながらも、最初から小さくまとまるのはなんなので。寄り道したあげく、結局は戻りましたみたいな。

qbc:
前の二つが、ちょっと尖ってる部分はありありとあるので。もしかしたら、最初の個展とは言え、スタンダードへ還ろうっていうようなことは、あるのかなとは思います。

rumica kaji:
そうですね。もう、そのときの心の動き、気がついたら言ってることと違うことやってるみたいなことが多々あるので。

qbc:
ありがとうございます。楽しみにしております。

rumica kaji:
ありがとうございました。

終わりに

個展! みんなも見に行くよな!!!!!

制作・まえがき・あとがき:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

編集:なずなはな(ライター)

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