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結婚、離婚、再婚経験のあるBL作者の人

恋人の家に行った時に、BLの薄い本を見つけたことはありますか?
人生さまざまですよね。つい最近、こないだ、タイのBLドラマについての話題が出てくるインタビューしました。
BL熱がここまでくるとは思わなんだ。もはや私がそういった熱波を感じ取るのは、週間少年ジャンプでもなく、コミケ会場でもなく、VTuber葛葉さんのチャンネルでその片鱗を感じ取るばかりなのですが。なんか当たり前になりましたね。いや当たり前っていっても、そういった趣味があるというのが一般的に公に知られている流布されている公告同然というだけでもって、つまりそれは、Chat-GPT4Chat-GPT4Chat-GPT4って言っても別に、誰もがChat-GPT4使ってるわけではなくて、そんな課金勢は少数派でもって、Chat-GPT3を数分使ったことがある程度のことで、よもや世の中の、世界の大多数はほとんど興味がないこと、なんてことなのかもしれません。これは大いにありうるかもしれない。
蕎麦が好きです。20代の終わりころに、蕎麦屋を探しては、蕎麦前と言われる、蕎麦の前に喰うつまみ、玉子焼き、焼きみそなんかを食べながら酒を飲み、〆に蕎麦を喰うということをしました。蕎麦を喰って、末永く生きたいという生命へのこだわり、固着、執着、スティッキネスですね。
はは。ということで無名人インタビューゴッ!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(無名人インタビュー主催)】

今回ご参加いただいたのは 羽多奈緒 さんです!


現在:こんだけ壮絶だから私はすごいっていうものでもない。State of Mindじゃないですか。自分を好きだと思うかとか、幸せだと思うかっていうのは。

Mai:羽多奈緒さんは今何をしている人ですか。

羽多奈緒:今は、大きく三つの顔があります。一つは働く人としての顔。会社員です。これがあるから、あと二つが成り立ってます。重要な生活の糧ですね。普通の日本の4年制の大学を卒業した後に新卒で入社した会社にずっと勤めてます。なので正社員として働いてまして、現在は管理職をしてます。

ずっと同じ会社にいることのメリットデメリットいろいろあるとは思うんですが、過去築いてきたリレーションとか信頼で仕事ができてるので。そこではまた違う名前を名乗ってるんですけど、『羽多ブランド』的に信頼をいただいて仕事がやっぱりできるっていうのでありがたいなと思ってます。

Mai:はい。

二つ目としてはまだアマチュアではあるんですが、小説家をしています。羽多というのは小説家のときの名前です。三つ目の顔としては、プライベートな顔というか、妻。子供はいないんですが、夫がおります。
創作やるってものすごいエネルギーが要ることで、しかも食えない職業なんですよ。プロの作家さんでも言ってるんですよね。なので安定してる職業、さむらい業って言われるような職業とか、そういうものにまずちゃんとついておく。そこの実務をきちんと積んで、それをネタにして小説書けって、知念実希人先生っていうお医者さんでもある作家さんもX(元Twitter)で書いておられたんです。だから、安定した昼職あっての創作活動だなっていうことは、今は思います。

アマチュア小説家として同人活動やってるんで、同人誌作ったり人の本を買ったりするんですけど、そういうときに自分の給料あるんで、夫の顔色を気にしないでお金使えるのも良かったなって思ってます。

あとはそうですね、会社員として言うと、海外でも英語でお仕事できます。入社3年目ぐらいから海外関連の仕事をしてるんです。キャリア形成上、非常によかったなと思ってます。
多分日本だと、入社3年目でしかも女だと、軽く見られがちなんですけど、外国だと、Maiさんも釈迦に説法だと思いますけど、割とそういうの緩いじゃないですか。キーパーソンだと認知してくれれば敬意を持って話聞いてくれる文化があるので。ちゃんと真面目にやってれば私の話聞いてもらえるんだなって。そういう成功体験が若い頃に積めたっていうのが、今日の基礎としてあるかと思ってます。

まぁ、そういうキャリア積んできたんで、小説家としては非常に遅いんですよ。書き始めたのは。そりゃ、そうなんです。20代30代前半、持てる全ての感情とエネルギーと知能を仕事につぎ込んできたので。小説書く余裕はなかったですね。

その後、出世もこの辺かな? みたいなのと、死生観変わるような大病もあって。ふっと、結局お前の人生の意味って何だ? 人生通じて何ができたんだよ? 何を問いかけたいのよ? みたいなことを、40ぐらいになって考え始めたっていう感じなんですよね。文章を書き出したのは4年前になります。
まだ素人ではあるんですけど。主にボーイズラブ書いてまして、公募とかにも出してて、まだ芽が出てないですけど。もうちょっと頑張ろうかなと思ってる感じです。

あとは最後三つ目のプライベートの顔、妻としてです。普通の日本人の会社員の夫がおります。子供がいないバツイチ同士の再婚なんです。ええっと、再婚して十年以上になるんですかね。
お互いバツイチなんで、所詮夫婦っていうのは他人だって身にしみているんです。親子の縁ってなかなか切りづらいじゃないですか、切ろうと思えば切れなくはないけど、なかなか切れない。縁を切ったとしても、血は繋がってますよね。DNAは。だけど、夫婦って本当に紙だけの話なんで、離婚届出したら、本当にその日から他人なんですよね。やっぱり最後は他人同士だからこそ気遣いが必要だと思えるのは、再婚同士であることのメリットでしょうか。何かしてもらったらありがとうって言うとか、喧嘩したらごめんねって言う。相手の親を大事にする。そういう普通のことをちゃんとやるのが大事なんだっていうことがわかってて良かったのかなって思ってます。

だから、再婚してからすごい平和で幸せだったんですけど、夫がちょっとメンタル的な疾患になりまして、それでなかなか苦労してる感じです。
私、前の夫もメンヘラで。今回の夫もメンヘラ。あはははは。もうこれはダメンズメーカー。ウォーカーじゃなくてね。私がダメンズにしちゃってるんじゃないかって感じで。ネタにして小説でも書くかみたいなこと、他の小説家と話してるぐらいなんです。

っていう感じが、現在ですかね。会社員、小説家(素人)。あとは妻(闘病中の夫を支えている)みたいな。はい。

Mai:はい、ありがとうございます。三つの顔を持つことに対して、ご自身的にはどうですか?

羽多奈緒:私、会社では、旧姓ずっと名乗り続けてるんですよ。結婚しても離婚しても再婚しても。芸名という意識です。松田聖子さんって、結婚しても離婚しても再婚しても、ずっと松田聖子じゃないですか。それと同じようなもんだと思って。会社で女性マネージャーとして働くっていうのは、見られるのも仕事のうちなんですよね。まだ日本では女性の管理職って少ないですし。私が課長になったときは管理職の打ち合わせに行くと、会議室に女は私しかいないのが当たり前だったんですよ。なので、見られるのはもう仕事の一部。役を演じるようなもんなんで全く違和感ないんですね。芸名として、羽多奈緒でございます、みたいな感じでやるってことは。
プライベートでは本名を名乗ってます。それは戸籍上の名前そうだし、何とかさんの妻としての名前なんで、妻としての役割ですし。そういう意味で、今回なんで羽多奈緒って呼んでくださいって言ってるかっていうと、やっぱり自分として好きなことやってる、小説家として名乗りたいと思ったんでしょうね。
それぞれの役割で名前も変えてるのは、女優さんの演じる役が変わるようなもんだから。違和感もなく、逆にこれでうまくいってるんだなって満足してます。

Mai:ありがとうございます。三つの役を演じ分けられてるってことなんですが、本当のこの、ありのままの自分っていうのは、ありますか?

羽多奈緒:一番ありのままなのは、やっぱり小説家でしょうね。小説って、作家の内面のノンフィクションだと思うんです。当然フィクションとして書いていて、登場人物は私とは違う名前だし、年齢も性別も経歴も違うんですけど。絶対作家の価値観とか、生きざまは出ると思うんです。セリフとか書いてて、あー、これ私言ってそう、と思うこと、よくあります。

Mai:ありがとうございます。ちなみに今お仕事と、その他の二つの小説家と妻っていうのがあると思うんですけど、それはどれが中心に生活が回っていますか? 時間的にもですけど。

羽多奈緒:時間でいうとやっぱり一番拘束されてるのは会社員で。やっぱり1日の3分の1ぐらいは取られますよね。8時間とか取られるわけですから。残業なしだったとしても。始業前の1日2時間ぐらいが、作家の時間。残りの時間が妻の時間(含む睡眠時間)って感じです。あとは土日は割と好きにさせてもらってるんで、作家と妻の時間が半々ぐらいみたいな感じですね。アーリーリタイアメントしたいんですよ。もっと書きたいので。

Mai:今の生活スタイルは満足されてますか? 満足度はどれぐらいですか?

羽多奈緒:そうですねー。まぁ70点から80点ぐらい、80点ですかね。

Mai:旦那さんとの今のご関係はどうですか?

羽多奈緒:いやあー、これ前の結婚のときにも、夫がメンヘラになったときそうだったんですけど、病気になる前は良好だったんですよ。Maiさんの周りにもしそういう方がいらっしゃったら想像いただきたいんですけど、シンママで子供は障害児みたいな感じです。もう、夫じゃないんですよ。普通、夫として妻のケアして、妻は夫のケアしてみたいな感じで互いに労わり合って生きていくのが夫婦ってもんだと思うんですけど、今の彼はもう生きる屍みたいな感じなので。
例えば土日だと、文字通り布団に一日中寝っ転がってYouTube見てるんです。多分、気力が沸かないんでしょうね。前は土日となれば、大体どっちか1日ゴルフに行ってて。今日は何とかさんと、みたいな感じで、ばんばん出かけて。いってらっしゃいって送り出したら、私は1人で好きに小説書く感じだったんですけど。もう今は1日寝てるんで。
食事一つとっても、今うちの夫は何かを決めたり考えたりが億劫な状態なので、「お昼何にする?」と聞いても答えられない。考えられないんです。だから「Aにする? Bにする?」みたいな感じだったら、選べる。かろうじて言える。でも家事もほぼできないです。自分でトイレに行ったり風呂に入ったりとかはできるからそこはかろうじていいけど。そういうレベルです。
休職して、今は一応会社に行ってはいるので。まぁ、そういう状態の人のお世話をしなきゃいけないってなると、私に負担が来るんです。特にメンタルにくるのが、コミュニケーション不全ですよね。「何々ってこうだよね?」みたいなことを言うと、今までだとぱっと文脈的に、「奈緒が言うのってこういうことだよな」と読み取ってくれたのが、まず聞き返される。認知がちょっと落ちてるから「何?」みたいな感じで聞き返してくるんですけど、その聞き方もきついんですよ。だから、聞かれる方としてはすごいつらくなる。「え!(そこからかよ)」って、まずそこで1回ちょっとダメージが来る。「いや、あのAってBだよねって言ったんだけど」って返すと、「その前提条件ってさー」みたいに言われたりするんですよ。だから「そういう会話がしたいんじゃなかったんだけどなー」って。だから「もういいよ」みたいな感じになってしまって、こっちも面倒くさいから、あまり話しかけないです。

前夫は、現夫とは違う病気でした。発症率で言うと、前夫も1%くらいの病気で、現夫も1%ぐらい。2人と結婚してて、両方がそうって、なかなかレアだよなって。

Mai:どんな風に羽多さん自身のケアは?

羽多奈緒:そこはノーコメントとさせてください……。

ちなみに、前夫の時に出ていた典型的な症状は幻聴でした。何か常に何かを自分のことを責めてるような声が頭の中で聞こえるとか言うんです。あとは被害妄想とか、極端に怒りっぽくなるとか。そういうの全部出てたんですよ。だから私が「○○に行くね」って言ったら、「誰と何しに行くんだよ」みたいな感じですごい疑われたり。「責められてる感じがして怖いから俺の方を見ないでくれ」みたいなこと言うんですよ。え、見ないでくれって、どういうこと? みたいな感じじゃないですか。
夜中に何か目を覚まして、「奈緒ちゃんが折り鶴を作って、きゃははって楽しそうにしてて、その折り鶴が僕に向かって飛んできて俺をつついていじめる、そういう夢を見ちゃったんだ」みたいなことを、夜中の3時とかに私を叩き起こして言ってくるんです。怖くないですか? なかなかホラーですよね。

Mai:うん。

羽多奈緒:なので、1年ぐらい面倒見たんですけど、一応寛解っていうか働けるぐらい元気になったんで、ごめん、もう愛情ないから別れようって離婚したんです。もう本当になんかもう、最後は責任感だけで一緒にいた感じ。
その前にもいろいろうまくいってないこともあったんで。共通の友人とかも結構多くて。彼が転職した時、多方面に不義理をしまして。みんな私に聞いてくるわけですよ。「あの件どうなってんの?」って。「彼に頼まれたからこうしてるんだけど。返事が来ないんだよね。どうなってる?」みたいな感じで。で、私が彼の代わりに謝りまくる。「いやいや別に奈緒ちゃんのことは悪いとは思ってないから。なんで彼は返事くれないの? この状況で、なんでブログ更新したりして遊んでるのか、もう全然理解できない」って言われました。「ごめん、ごめんね。本当ごめんね」みたいな感じで。離婚しようと思ってたら、彼が病気になってしまって、離婚の時期が延びたっていう感じですかね。
すごい印象的だったのが、私と彼の両方知ってる親しい友人に、「なんで3年前に離婚しなかったの?」って言われたんですよ。だからもう、端から見たらもう、別れた方がいいって思われてたんですね。

Mai:ご自身について、性格とかどう思われますか?

羽多奈緒:うーん、多分何かあったときに、まず乗り越えようっていう気持ちが強いんでしょうね。普通だったら「もうだめだめ、そんなのできないよ」ってなっちゃうのを、どうにかしようって思いすぎちゃうんだろうなって思いますね。だから先に体とかが。

Mai:そんな自分についてどう思いますか?

羽多奈緒:嫌いじゃないんですよね(笑) あはははははは。何て言うんですかね……、無名人インタビューのいろんな方のを読ませていただくと、皆さんすごい。結構、壮絶じゃないですか。だから、こんだけ壮絶だから私はすごいっていうものでもない。State of Mindじゃないですか。自分を好きだと思うかとか、幸せだと思うかっていうのは。

逆に物質的な面で言うと、うちはダブルインカムですし、私がそれなりの大企業で管理職とかしてるので、経済的にはそんなに不安はないわけですよね。それだけでも、お金に困ってる方からしてみれば贅沢な悩みだよって思われるかもしれない。だから上を見ても下を見てもきりがない。いいとか悪いとかじゃなく。ダメンズメーカーかもしれないけど、これが私だと思って。もう開き直りの境地というか。むしろ小説家になったことによって、全てがネタに。これネタにできないかなって次の瞬間思うみたいな。芸人魂みたいな感じですかね。

Mai:今一番欲しいものって何ですか?

羽多奈緒:時間ですね。

Mai:あー。

羽多奈緒:時間です。

Mai:それは何をするための?

羽多奈緒:そうですねー、半分ぐらいは休養をして、半分ぐらいで小説を書きたいですね。やっぱり、脳をめちゃめちゃ使うんですよねー。だから多分インタビューとかもそうだと思うんですけど、文章をまとめるのってすごいエネルギーいるじゃないですか。

Mai:うん。

羽多奈緒:はい。なんで、半分ぐらいの時間は休んで、残りの半分ぐらいの時間で書く。それができたら最高ですね。だから週3日勤務とかあったらいいのになーって思いますね。

Mai:ありがとうございます。

羽多奈緒:はい。


過去:子供の二世はそういう親を見てるから、頑張って勉強していい大学に入って、いい会社に入ってお給料稼ぐっていう。そういう意味では私は『移民二世』みたいなものだなと思ったんですよ。

Mai:では過去の質問に移ろうと思うんですけれども。羽多さんは子供のときはどんな子供でしたか?

羽多奈緒:ぶっちゃけ優等生でした。

Mai:うん。

羽多奈緒:わかりやすく言うと、新学期始まって学級委員とか決めるじゃないですか。
そういうときに大体、羽多さんがいいと思いますって周りから言われるタイプ。先生からも他のクラスメイトからも、羽多さんは成績も割と良いし、しっかりしてるから、あの子に任せておけば大丈夫だよねみたいな。だけど、クラスの中で喧嘩が起きたりするじゃないすか。学級委員だから仲裁してよみたいな感じで言われたりして、困って責任を感じて泣くみたいな。そういう子でしたね。
で、小学校中学校、割となんかそういう感じで、割と優等生で来て。だから高校に入ったときすごい楽しかったんですよね。周りがみんなそういう子ばっかりだったから。クラスに、元生徒会長でしたっていう子がいっぱいいたんです。その地域の中では1番か2番って言われるような偏差値高いって言われる高校に入れたんで。話が通じるからすごい楽だったんですよ。
で、まぁ挫折し始めたのが高校2年生のときで。そういう、地域で一番の高校みたいな感じだったんで、みんないい大学に進学していくんですよ。私、地方出身なんですけど、東京の大学に行きたいって親に訴えたんです。そしたら、いや、うちにはそういう金はないから、家から通える国公立大学じゃないとお前を4年制の大学に通わせるってことはできないよ、って言われて。それで家の通帳を見せられたんです。そのとき。

Mai:はい。

羽多奈緒:私の実家って自営業だったんですよね。だから親が日々働いて苦労しているのを見てる。家でやってるから。それで金がないって通帳見せられたら、もうそれ以上わがまま言えないですよね。下にきょうだいも2人いたんで。私だけわがまま言ってきょうだいにも迷惑かけるわけにもいかない。もう大学進学のときは、公務員になるって思ってました。堅実にお給料もらえて一生働けるから。それに一番有利だから、法学部に行ったんです。地元で一番いい大学の。だってそれ以上の大学に行きたいって言ったけど無理って親に言われたので。そしたらもう、そこしか選択肢が無い。

Mai:うん。

羽多奈緒:結果論、手に職つけようと思ってIT業界の民間企業に就職したんですけども、堅実に一生働けるとか、そんなこと言う高校生・大学生います? 「羽多さん、新卒で入った会社に何十年も働いてて、そんなお給料とかもらえていいわね」みたいなことを言う人もいます。世の中には、もっと経済的に大変な方もいて、大学になんてそもそも行けなかったよって方もいると思うんで。そういう意味では大学行かせてくれた親にはとても感謝してます。でも、他の方にどういう捉えられ方されるかは、ちょっとわからないんですけど、正直な気持ちを言うと、夢とか何だとか言えるのは、お金に困ってないから言えるんです。私はそう思ってます。

Mai:うん。

羽多奈緒:だから、安定した稼ぎを得ることが大切だっていうことを身をもって教えてくれたっていう意味で、親の教育には感謝してますね。日本もアメリカも今は貧富の差が、世代を超えて固定化されてるっていうのが常識になりつつあると思うんですけど。未だにアメリカンドリームって言うじゃないですか。アメリカの新聞で読んだ記事なんですけど、移民一世、最初に移民した人は、すごい低賃金で身を粉にして子供のために頑張って稼いで。だけど、子供の二世はそういう親を見てるから、頑張って勉強していい大学に入って、いい会社に入ってお給料稼ぐっていう。そういう意味では私は『移民二世』みたいなものだなと思ったんですよ。実際に移民したわけじゃないけど、世代超える時にクラス(階級)を超えるっていう意味でですね。
普通のサラリーマンの割には、お金を稼ぐことに対するこだわりはすごいあると思います。会社入ってびっくりしたのは、あ、会社に行けばお金もらえるんだ! って。入社2、3年目のくらいの頃から、私は自分がもらってるお金とか自分に対して会社がかけてるコストに見合った売り上げとか価値を生んでるかっていうことは意識してましたね。まぁ2、3年目の子がそこまで意識して頑張ってたら、だいぶ差がつくと思うんですよね。今、自分の部下とか後輩とか見てても。売り上げは立つし、お客様や他組織からも一目置かれて影響力発揮できるし、やればやっただけ結果ついてくるからもう楽しくて、仕事楽しくてしょうがなかったんですよね。あの頃は。

そんな生い立ちで、なんで英語? って疑問をお持ちじゃないかと思うんですけど。英語を習得したのは通信教育でした。当時片道2時間通勤してたんです。お客様の都合で。そうすると往復4時間あるじゃないですか。時間もったいないなと思って。それで4時間ずーっとヒアリングやって、1ヶ月で200点以上スコアが上がったんです、TOEICの。そうすると、700点以上あったんで「英語できるんだったら、海外の仕事とかもちょっとやってみる?」みたいな感じでチャンスが回ってきて。で、日本にいながら海外の会社の人と一つのプロジェクトを遂行するみたいな仕事をやるようになりまして。
帰国子女なんですか? って聞かれるんですけど、全然そんなことなくて。通信教育だし、たたき上げのいわば『移民二世』なんですよっていう。

ある時、父が言ってたらしいです。「俺がやりたかったことは全部奈緒がやってくれた」って。直接私にじゃなくて、母とか妹にですけど。技術系の職業で、きちんとプロとして認められて、彼が憧れていた外国にも行って。父が誇りに思ってくれるようなキャリアを歩んでこれたのは自称『移民二世』として達成感はありましたね。

Mai:ふうん。

羽多奈緒:「英語できていいね。どうやって勉強したの?」って聞かれて、毎回、通信教育がいいよって勧めてます。やった人誰もいませんけれども(笑)

Mai:移民二世っていう話をしていただいたんですが、そのときどういうお気持ちでしたか?

羽多奈緒:あ、私これだなって思ったんですよね。なんで、モヤモヤしていたものに、言葉がついたりカテゴライズしたり、仲間ができたりみたいな感じで。概念として明確化できて表現ができるようになったっていうことへの爽快感みたいなものがありましたね。自分をそう定義したときは。

Mai:その前にお持ちだったモヤモヤ感っていうのは、どういったものですか?

羽多奈緒:うーん、やっぱり、自分の努力だけでは変えられない人生の大きな選択をせざるを得なかったっていうことに対する、何とも言えない諦め。親を恨んではいないです。でも諦めるには諦めきれない、仕方ないんだけど、この気持ちの落ち着きどころがないみたいな気持ちは、やっぱりあったんだと思うんですよ。
ただまぁ、就職して、自分も頑張ったとは思うんですけど、チャンスをいただけて、昇華できたっていうんですかね。うん、昇華。その言い方が一番しっくり来ますね。

Mai:その諦めがついて昇華できたっていうそのときのお気持ちと、先ほどお話いただいた現在の部分での旦那さんとのご関係だったりとか自分の今のポジションというところが、
諦めっていうのと何か共通点だったり、似てる部分っていうのは何かありそうですか?

羽多奈緒:そうですねー……。今の方がすごいフリーハンドだと思ってまして。っていうのは、まぁぶっちゃけ離婚しようと思えばできるんですよ。まぁ、2回も離婚したくはないですけど(笑)
だって離婚しても私は別に経済的に困らないし。紙1枚って言ったらあれですけど、紙を出せば別れられる関係なので。あとは夫が回復するのをどこまで待つのか、それに対して私がどこまで関与するのか。その我慢を超えたらどうすんのかっていうのは、全部自分で決められますし。
あと最近、なるほどなーって思うのは、卒婚って言うじゃないですか。籍抜くとかっていうと親族とか周囲のこともいろいろあるから、ゆる-く別居するとか。いろいろ選択肢があるから、行きたい大学を目指すことすらできなかったときに比べれば、はるかに気が楽だなとは思いますね。

Mai:ありがとうございます。過去の話の中で、これだけは話しておきたいとか、話し残したなっていうこと何かありますか。

羽多奈緒:そうですね……。新卒で就職するときに「一生働ける会社に入りたいです」って考えてた大学生は、少なくとも当時は、あんまりいなかったんじゃないかなと思いますね。最近はまた違うのかなあ? 後悔はしてません。入った会社での仕事は想像以上に面白かったし、ちゃんと今も働けているので。だから夫選びに関してはともかく、会社選びは上出来かなって。……でもまぁ、会社も夫もどっちもうまくいってたら、嫌味じゃないです?(笑) だから話としてはこのほうが面白いと思うんで。はい。

Mai:ありがとうございます。過去全体を通して家族関係だったりとかも含めて、人間関係はどんな感じでしたか?

羽多奈緒:他の人から複数回言われたことがあるのは、「誰とでもうまくやれる人だね」って。自己認識っていうより、他の人から何度も言われたことがあるので、まぁそうなんじゃないか、そうなのかなって思ってます。

Mai:ご自身ではどう思いましたか?それを聞いたとき。

羽多奈緒:あぁ、そうなんだって思って、嬉しかったですね。自己主張をしすぎてないかなみたいなことを気にしていたので、はい。

Mai:ありがとうございます。


未来:なんとか羽多先生の新刊を読むまで私死ねないわとか、この新刊の尊みが過ぎて寿命が3年延びましたーみたいな。楽しそうじゃないです? そういう老人ホーム作りたいなーと思ってまして。

Mai:5年後10年後、あるいは死ぬまでを想像して、未来についてどういったイメージをお持ちですか?

羽多奈緒:そうですねー。まず、割と近くの未来でいうと、やっぱり商業小説家として出版したいと思ってます。『小説を書く意味』って、あると思うんです。それぞれの作家さんにとって。私に影響を与えてくれた小説家さんは天童荒太さんなんですけど。その方の『永遠の仔』っていう小説があるんですけど、この最後のセリフがすごいんですよ……。こういうふうに人に思わせられるような、話を書きたいなって思ってます。

Mai:ふうん。

羽多奈緒:それが作家の存在意義だとしても、まずは自分が捻り出せるネタは何だっていうので、さっきまで話してきた「ダメンズネタ」。あるいは、サラリーマンの悲哀は散々味わったので、それをエンタメにっていう野望もあります。異業種他社の友達に仕事の相談とかされても「どうしてそんなに見てきたかのようにうちの営業部のことわかるの?」みたいなことを言われたりするので。それがまぁ近場でやりたいことで。

で、もうちょっと先で、老後にやりたいこともありまして。先ほど申し上げたようにボーイズラブの同人活動とかもしてるんですね。なので、BL同人好きなおばあちゃんが集まった老人ホームを作りたいなと思ってまして。コミティアとかコミケとかあるじゃないですか。ビッグサイトで。あれのBL版を小さく、老人ホームで数ヶ月に1回やりたいんですよ。

Mai:はい(笑)

羽多奈緒:で、作家さん同士で「新刊の進捗がやばみなの、徹夜しちゃった」「そんなの駄目よ、寿命が縮むわよお!」とか。冗談なのか冗談じゃないのか笑えるのか笑えないのかそんな微妙なトークをしたり。
食堂とかのテーブルに、それぞれのサークルの敷き布を引いて本を並べて、お土産の交換するんですよね、即売会に行って知り合いの作家さんとかに会うと。羽多ですー、今回もまた新刊いただきに来ましたーって。それを老人ホームでもやる。
「なんとか羽多先生の新刊を読むまで私死ねないわ」とか、「この新刊の尊みが過ぎて寿命が3年延びました」みたいな感想で萌え転がってみんなで楽しく長生きしたいです。楽しそうじゃないです? そのために頑張って働こうかーと思ってます。

Mai:同人誌にご興味が出たきっかけって何だったんですか?

羽多奈緒:プライベートでも仲のいい友達の作家さんから、「奈緒さんは人生波乱万丈だから、絶対小説とか書いたらいいよ。ネタいっぱいあるじゃん」って言われて書き始めたんですけど。その子に「即売会楽しそうだから、ちょっと行ってみようかな」って言ったら、「いやいや、一般参加だとめちゃめちゃ列に並ぶし大変だから、YOU、サークル参加しちゃいなよ。ついでに本にちょちょっと作って売ってくればいいのよ、ちょっとは売れるでしょ?」みたいなこと言われて。あーそうかーって思ってサークル参加申し込んで。申し込んだら本作らなきゃいけないんじゃないですか。で、本作って。
牛に曳かれて善光寺参り的に出てみたら、楽しいんですよね。今までも小説投稿サイトとかで公開してるんですけど。たまにコメントくださる方とかもいらっしゃるんですけど、わかんないじゃないですか。ページビュー見たら読まれてはいるみたいだけど、誰が・どんな人が読んでるんだろう? みたいな。そしたらそういう人が即売会に来てくれて。頑張ってください、いつも読んでるんで応援してます、みたいな事を言ってくれたりとかすると、すごい嬉しいー、やっててよかったーって思って。なんで、商業作家になっても、なるべく即売会には出たいなと思ってます。

Mai:ふーん。

羽多奈緒:お店やさんごっこみたいな、あと大人の文化祭みたいな感じなんですよね。しかも今って、1冊からでも作ってくれる印刷会社さんもありますし。素人でも、本当に本屋さんで売ってるような綺麗な本が作れるんですよ。だからやっぱり、字書き・絵描きなら、絶対作品を綺麗な本にしたいって思うんじゃないかなと。

3月10日にも、東京ビッグサイト・西ホールで開催される一次創作BLの同人誌即売会「J.GARDEN55」にサークル参加しますので、あんまりいないかもですけど、無名人インタビュー読んで、羽多ってどんな奴なんだろうと思った方はぜひ遊びに来てください。

manaさんという作家さんとの合同サークルでして、彼女も過去無名人インタビューを受けてるんですよ。

左下:ホログラムで表紙にキラキラ加工したもの、右下:パール調の紙を使ったもの。どちらも同人誌向け印刷会社さん(大阪印刷株式会社様)にて作っていただいた羽多の同人誌

Mai:もしも過去行きたい大学に行けてたら、いいよ東京でも行っておいでって言われたら、どんな人生になってましたか?

羽多奈緒:えー? いやぁ、考えたことなかった! ……どうなんでしょうね? でも、あそこまで真面目に就職考えてなかったでしょうね。
いっぱい、断られたんですよ。内定は複数もらいましたけど、内定される会社の10倍ぐらい受けてる訳です。だから、本当にそのときは世のサラリーマンを見て、「ほんとすげえなー、このつらいのを乗り越えて就職したんだー」って思ってたんですね。
だから、そういうの考えると、私はあれがあったから、「自分の力で今の場所を抜け出して思い描いた理想の環境に行けるのはこのチャンスしかない」って、頑張って就職活動したんですけど。そこまでの思いはなかったかもしれないから、今のポジションまでこれてないかもしれないですね。もしかしたら。わかんないですけどね。

Mai:それを踏まえて、今のやってきた人生に点数をつけるとしたら何点ぐらいになります?

羽多奈緒:そうですねー。いやあ、結婚以外は……あはははは。結婚以外は、大体いいんじゃないすかね? 結婚はー……まぁ、うーん。でも、結婚したときはわかんないですもんね。だって、前回も結構長い年数結婚してたし。今回も10年以上結婚してて病気になったので。そんなの、結婚前に見抜けないですよね。
だから夫の病気は私のせいじゃない。私のせいじゃないことは、私の失点じゃないから、100点で。自己肯定感、高っ!(笑) あははは。

Mai:もしもアメリカンドリームがつかめていたら、どういう人生になっていたか、もしくはなっていくと思いますか?

羽多奈緒:うーん……そうですねー。夫の病気が治る治らないに関わらず、商業作家としてもちゃんと名を出してるんじゃないですかね。

Mai:うん。

羽多奈緒:会社にどのタイミングで言うかは、ヒット作が出てから考えます。今はしてないんです。お金稼いでないので。

Mai:うんうん。

羽多奈緒:きちんと手続きさえとれば、副業をすることはできるようになってきていますので。世の中的にも副業を認める流れにありますしね。

Mai:物を作ってるときとか書いてるときってどんな気持ちなんですか?

羽多奈緒:どういう場面書いてるかにもよるんですけど。悲しい場面の時とかは泣きながら書いてることもあります。すごい集中してますね。やっぱり時間限られてるので。「その小説の世界入り込めるまで時間とか掛かるんじゃないの?」とか聞かれるんですけど。「いや、そんな暇は私にはないんだよ」って。
ルーティンはあります。一つの作品書くときは、常に同じ曲をずっとローテーションして、ヘビーローテーションしてずっとそればっかり聞くとか。するとパブロフの犬みたいに、曲を聞くとその小説の世界にスッと入りこめるんですよ。今書いてる小説のテーマソングは、あいみょんの『愛を知るまでは』ですね。

Mai:未来について想像したとき、5年10年後、自分は作家としてこうなってるだろうなっていうイメージって何かありますか?

羽多奈緒:そうですねー。いやー、本を出していたいですね。ちゃんと商業のレーベルから。商業から出しつつ、同人もやって。自分がいいなと思うものを書いて、喜んでいただける人にお届けしてっていうのをやっていきたいですね。

Mai:なるほど。ありがとうございます。最後にいい残したこと、読者に向けても自分に対する独り言感想なんかでも大丈夫なんですが、何かありますか?

羽多奈緒:どんな人の人生にもドラマはある、って実は前々から私の信念なんですよ。なので、「無名人インタビュー」ってコンセプトにすごく惹かれたし共感しました。継続が決定したそうなので、本が出るよう応援してます。頑張ってください!

Mai:はい。

あとがき

どんなアップダウンもネタにできたら、人生怖いものなしなんじゃないかなって思うんです。
いいも悪いも、ツライも楽しいも、全てはその人の価値観。人生面白いことばかり起こる人は、起きた出来事をきっとそういう風に捉えてるんですよね。
常にポジティブでいる必要はないけど、出来る限り前向きに捉えられたら愉快な人生だろうなぁ。
人が本当に手に入れたいものって、地位や名声、お金ではなく、実は愉快さなんじゃないかなって、そんなことを思ったりして。

【インタビュー・あとがき:Mai】

【編集:mii】

#無名人インタビュー #インタビュー #離婚 #再婚

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