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【海士町】海士町の水族館の人

水族館! 数えるほどしか行ってないけど、行ってみたい!!!!!
なぜなら、お魚好きだから。なるほどね。お魚ね。大好きです。見るっていうのよりも、食べるのが。
お魚を見るのが好きだったのは、私が昔好きだった人だった。一緒に水族館行ったことないけど、なんか虫とかよく見てたよね。虫。
じっと眺めてた。あれは、生き物好きな女の子かわいいでしょアピールだったのか。それとも?
まあいいや。そうなんですよね、動物というのは見ててあきない。というか人間も見ててあきないですが。あ、そういう意味では、私、人間ばっかり見てて、人間見ててあきないから、他の生き物にあんまり興味ないのかな。どうだろう。どうでしょうね?
ともあれ、人間に対する多大な興味によってできあがっているのがこの無名人インタビューです。たくさん食べていってくださいませね! むしゃむしゃむしゃ。
ということで無名人インタビューゴツ!!!!!
 【まえがき:qbc・栗林康弘(無名人インタビュー主催)】

 今回ご参加いただいたのは 西田拓稔 さんです!

 年齢:30代前半
性別:男
職業:不詳


現在:海士町という離島で水族館やるっていう意味不明なことをする方が面白い

 ナカザワ:西田さんは今何をされてる方ですか。
 
西田:島根の海士町で複業協同組合に属していて、あとは一部個人事業で、海洋教育関係というか水族館に関する事業をしてますね。
 
ナカザワ:ありがとうございます。
複業協同組合でお仕事もしつつ、個人事業の方もされてるというと、毎日どんな生活をされてるんでしょうか。
 
西田:基本は複業の組合で働いています。ちょっと入り組んでるんですけど、複業協働組合っていうのは、海士町の数ある働き先の事業所の中を選んで、掛け持ちで働くことができる。複数の複で複業なんですよね。
一つが隠岐のジオパーク推進機構で、もう一つは、今は海士町のビジネスホテルのあとどっていうところですね。それが普段働いているところです。
https://www.oki-geopark.jp/

個人事業では、海士町で水槽を置いている場所があって。空き家みたいになってる水槽を置いていい場所、というか、もともと水族館にしたいと思ってたという地元の声があったところで。
僕が元々個人事業で移動水族館をやっていたときの水槽をそこに設置したりしてます。普段の複業組合の仕事が終わった後に、飼育作業をしたりとか去年はやってました。今年はそれを増やしたり、次年度の計画を立てたりしているところです。
 
ナカザワ:次年度の計画というのは水族館のですか。
 
西田:そうですね。複業組合で行ってる隠岐のジオパークの方でも移動水族館をしていて。海士町の中にEntoというホテルがあるんですけど、Entoさんは、泊まれるジオパーク拠点施設というふうになっていて。

どういうことかというと、Entoの中にはジオパークの紹介施設がある、つまりホテルの中に客室だけじゃなくて、隠岐の自然と自然から成り立っているその文化を簡単に紹介しているエリアがあって。普段はそこにいることが多いんですけど、元々複業組合として設定してる仕事としては、解説員の業務だけだったんですね。
ただ、僕は元々水族館で働いていたことがある人なのと、水族館を辞めた後に個人事業で移動水族館をしていたので、解説員の業務だけじゃなくてそういった水族の展示をしてほしいということで、ホテルのEntoさんのところに、水槽を持っていったりもします。次年度の計画では、あくまでもまだ計画してるだけなんですけど、島を巡りたいなと、つまり隠岐の諸島ですね。
 
ナカザワ:なるほど、海士町のある島だけじゃなくて。
 
西田:そうです。海士町にはEntoさんっていうジオパークの拠点施設があるんですけど、隠岐ジオパークっていうのは隠岐の4つの有人島を中心としたエリアで構成されているもので、海士町だけじゃないので、そこの4つの島を移動していく移動水族館っていうのを計画しています。
 
ナカザワ:移動水族館っていうのは、そもそも水槽を持っていくものなんですか。
 
西田:人というか業者さんによりますけど、僕がやってたタイプで言うと、水槽を運びます。その地域に。で、その地域で、いろんなルール関係は守った上で、生き物を捕まえていいエリアで、採取を行って。つまり水槽だけを運んで、その地域の生物を展示するということをやっていました。
海士町に来る前からやってて、東京にいながら、水槽だけ運んで、福岡・岡山・奈良・神奈川、そんなところでその地域の生物を捕まえていました。海士町でも構造としては同じで、海士町の捕まえていい場所で、捕まえていい生物を捕まえて展示をするということをやってます。
 
ナカザワ:なるほど、生き物は運ばないんですね。
 
西田:運ぶ人もいますけどね、僕は運んでないですね。
 
ナカザワ:ちなみに海士町で今のような生活をされてからどのぐらい経ってるんですか。
 
西田:もうすぐで1年ぐらいです。去年の4月からなので10ヶ月ですね今は。
 
ナカザワ:海士町だとどんな魚が水族館にいるんですか。
 
西田:全国的に見て珍しいのがいるわけじゃないですね。分かりやすいものだとサメがいます。ネコザメとか。あとはフグとか。ハコフグっていう、さかなクンが帽子で被っているフグ。あれは季節によって海士町にも来てて。回遊してくるんですよね、海は繋がってるので。
あとは、ヒトデとかですね。
 
ナカザワ:なるほど。
 
西田:今は、水槽を置くっていうことぐらいしかできてないんですよね。
決定してないことが多いんですけど、いろいろと計画してます。空き家で水族館というのかわからないですけど、水族を展示してる施設としてやっていけたらなということで段取りを組んでる状態です。今は冬なので、人も別にそんなに来るわけじゃないんで、いろんなリサーチをしたりとか。
どうやったらうまくいきそうかっていう見立てて、実験と仮説を繰り返して、みたいな感じですかね。そういうことがしたくて来てるんですよ。海士町に。
 
東京の水族館で働いていて、水族館を辞めた後に全然違う仕事もしていたんですけど、海士町に引っ越す前は、水族館を計画する方の仕事をしてたんですよ。新しい施設を建てる仕事ですね。
水族館の飼育員からそういう仕事をやるのは結構面白かったんですけど、東京とか都会の水族館を扱うことが非常に多かったんですよね。昨今は水族館業界的に言うと都会に水族館を作るというのがデベロッパー的にはブームで。
ただ10年ぐらい前だと、都会に水族館を作るっていうのは結構珍しかったんですよね。ありはしましたけど、事業的にうまくいってなくて、負の遺産ぐらいのことを言われてたような代物だったんです。けど、僕が飼育員として働いていた水族館は新規事業として参入してきて、わりと成功事例として取り上げられるようになったんですね。それがモデルケースになって。別に僕は考えた人じゃないんですけど。ただの飼育員だったんですけどね。
そうするとみんなやりだすわけですよね、他の事業者も。 

ナカザワ:なるほど。

西田:水族館を作る側から計画する方に入って新鮮さはあったんですけど、楽しくもありつつ、何か楽しくもなくなっていく作業というか、やはりテンプレ化された手法論が面白くなくなってきちゃったんです。どちらかというと海士町みたいな離島で水族館やるっていう意味不明なことをする方が面白いのかな、みたいな。
勝ちが確定している都会なんかでやるより、お客様が来る見込みもないような場所で、意味不明なことをしてる方が面白いかなって。
どうしたらいいか方法論がないんで、あやふやなことしかいつも喋れないんですけど、そこらへんの仮説と検証をしながら、実験できそうだなっていう感じで日々生きてますね。
 
ナカザワ:今、水族館というか水槽を置いている中で、実際どんな面白さを感じてますか。
 
西田:環境教育とどう絡めていくかっていうところと、あとは保全事業みたいな話ですね。最近気づいたんですけど、水族館が教育と研究的の施設としてどういう価値作りができるか、そこを開発していくと面白そうだなっていうのは感じていて。
僕はもともと水族館にいた人で、水産業界とか研究業界とかにいたわけじゃないので、いろいろ調べながら考えようとしていますね。
水族館ってどういうふうにやっていってるかっていうと、皆さんご存知の通り、入場料とかお土産ですよね。あれで収益を立てる。
 
ナカザワ:水族館はそのイメージありますね。
 
西田:だから水族館って言ったときに、思考回路上、入場料とかのことを考える方向になりやすいんですね。だから人が多い都会に作ろうって話になる。
水族館ってもともと日本動物園水族館協会が掲げる、動物園と水族館の社会の役割によると、一応4つあるとされていて。
1つが余暇みたいな話で、あとは研究と、教育と、もう1つが生息域外保全保護なんですけど、自然環境がどんどん変わっていっちゃう中で、少なくとも、絶滅しそうな生物は水槽で飼っておけば、野生で絶滅したかもしれないけど絶滅することはない、そういう発想ですね。種の保存みたいな話で。

この4つが役割として存在するんですけど、と言いつつ、入場料とかグッズ収入を考えると、教育活動に特化できるかというとそんなことはないんですよね。
要はお客様を呼ばなきゃいけないので、集客活動を頑張らなきゃいけないんすけど、僕も実際いたから体感としてはわかってるんですけど、教育を銘打った内容で集客が取れるっていう事例はほぼ存在しないんですよね。
 
ただ逆に、こういう海士町みたいな場所でいうと、海士町はすごく教育活動に熱心に取り組んでいて、町としてもすごく大事にしたいと思ってるということは、個人的には感じていて、子どもを大切にしたいということもそうですし。
具体的なビジネスモデルが存在するわけじゃないので何とも言えないんですけど、教育内容をきちんと考える手法を開発して、それが町のためになったり、町の経済的な方向に貢献するような方向性に最終的に繋げていけたらなって、そんなことを考えてます。 

過去:水族館の中が水槽みたいに見えてくるんです

 ナカザワ:西田さんは子どもの頃はどんなお子さんでしたか。
 
西田:内気だったかなと思います。
社会めんどくせえな、みたいなことを思ってました。当時はもちろん「社会」とは思ってないですけど、なんかそういう感じで。水槽の話もそこにつながりますね、結局。
きっかけの一つは親が買ってきて、僕もちょっと面倒見るようになって。1990年代ぐらいなんですけど、当時は観賞魚ブームだったんですね。
水槽の中の世界って人間はいないわけじゃないか、当然ですけど。でも目の前にいる魚ってのは生きてる、命を持ってるっていう単位としては同じで。まあ、当時はそこまで考えてないと思いますけど、こいつらもこいつらでいろいろ大変なことあるんだろうけど、なんか全然違う生き方をしてる。そういうのに癒されてはいましたね。
別にクラスとか学校に友達がいなかったわけじゃないんですけど、閉塞感をずっと感じてる子どもだったと思いますね。
 
ナカザワ:魚を見て、人間とは違う生物の存在を、 見る・知るみたいなのって何歳ぐらいのときに思ってたんですか。
 
西田:体感で言うと、8歳か9歳ぐらいとか。水槽を見てるときに思いました。
僕、大人になるまで水族館ファンではなくて。
若干盛って喋っちゃいますけど、僕多分図鑑に載ってる魚、いわゆる観賞魚図鑑とか、そういう本に載ってる魚は大概飼ったことあるんです。サンゴとか、イソギンチャクとかそういうの全部含めて飼ったことあるんです。家ではそのくらい飼ってたんですけど、僕の地元の佐賀県って水族館がない県なんですよ。
 
ナカザワ:なるほど。
 
西田:たまに福岡のマリンワールド海の中道に連れていってもらったりとか、長崎の海きららっていう水族館に連れていってもらったりすることはあったんですけど、1年に1回も行かないぐらいですよね。2、3年に1回くらい、たまに連れていってもらえる場所で。
水槽とかアクアリウムという文化には親しみを持っていたし、好きだったんですけど、水族館という施設にはそこまで親近感を持ってないタイプだったんすよね。
 
ただ魚のことは好きだったんで高校卒業したあとは魚の勉強しに専門学校に行くんですよね。で、就職しなきゃいけないってことで、消去法ですね、水族館に行ったのは。
もうここしか生きていく道はないんじゃないのか、社会で生きていける場所はここぐらいしかないんじゃないか、ぐらいの感覚で、いろいろ応募して、たまたま東京の水族館に受かって、働きました。
だから、さっきはなんかちょっとかっこつけて、大義というか、水族館でこういうチャレンジをしてみたい、とか言いましたけど、そういうモチベーションを持ったのは25歳以降ですね。働きだしてから数年経った後。水族館をこうしたいとか、水族館に関することでなにかチャレンジしてみたいって思ったのは、水族館で働き出した後ですね。
 
ナカザワ:それは何かきっかけがあったんですか。
 
西田:やっぱり、さっき言ったみたいに、閉塞感を感じながら生きていたタイプなんで最初に水族館で働き出したときも、水族館の求人倍率って結構すごくて、僕のときですけど、平均求人倍率が大体50倍だというふうに言われて。新規の施設だと、あくまで予測だけど100倍ぐらいじゃないかって言ってたんです。
僕は新規の施設に受かったんです。だからみんなから褒めちぎられるんですよ。なんせ予測といえど100倍の倍率ですから、その世界の中では。
でも、自分で言うと、もうここしか生きていく場所がないから頑張って試験を受けて頑張ってたらたまたま受かっちゃった、みたいな感覚なんですよね。だから働き出したときも、周りには頑張りますよとかって言いますけど、本音としては、なんていうか、生活させていただけるというか、お給料をいただけるとか、そんな後ろ向きな感覚でしたね。

ナカザワ:なるほど。

西田:生物を飼ってることなんて、社会の役に立ってるなんて思ってないわけです。自分が癒されたいからとか、自分がちょっと心を落ち着かせられる場所が欲しいからとか、そういうのでやってた趣味の延長線上でお仕事をさせてもらってて、ついてるなってくらいの感じで働いてるわけですね。だから、毎日申し訳ないなと思ってました。
水族館に来るお客さんなんて意味不明だと思って見てましたから、失礼ですけど。こんな混んでる場所にわざわざ来て、2000円も払って、楽しいの?みたいな。俺が2000円使うなら一人でホームセンター行って1000円で水槽買って、あとは網とか買って、近所の魚捕まえて家で眺めてるけどな、みたいな。同じ2000円なのになんでこの人たちは違う使い方をするんだろうか、とか。俺は人が少ないところで静かにしたいのに、お客さんの前に出ろとかって言われるし、すこし不謹慎な感じだったんですよね。だから上司にもいつも怒られてました。
 
なんですけど、働き出して、わかってくるんですよね。徐々に。水族館は経済価値を作るためにさっき言ったみたいなことしてる部分もあるんだけど、やっぱり社会的な価値というのも存在するというか。
結局、家族の余暇とか恋人と余暇を過ごすとか友達と余暇を過ごすって意味では実際に機能してるんですね。お客さんを観察してるとわかるんですよ。つまり水族館の中が水槽みたいに見えてくるんです、今度は。
この魚とこの魚はこういう関係性だと分析するのと同じように、家族とか見たりすると、おそらくそうらしいってことが何となく体感とわかってくるんですよね。1人で過ごす人は1人で過ごす人で、静かに過ごしたりとか。
つまりその性格的な違いはあれど、すごく根本的なところで意味不明だったお客様と自分とそんなに変わらないんだって捉えられるというか。
 
ナカザワ:ああ、水族館に来ている人たちが、西田さん自身と同じだと。
 
西田:そうですね、癒しとかうるおいみたいなものを求めてるっていう発想と、根源的なところは変わらない。そこに対するお金の使い道とか時間の、その水族館に来るっていう方法とか使うかどうかとか、そこら辺のルートが違うだけで、求めてるものというか、ある種の目的地みたいなものは大きな目で一緒だと理解していけると、自分の仕事にも多少意味あるのかな、っていうのは何か考えられるようになって。
それから考え方が変わってきて、もうちょっと仕事も頑張った方がいいんだろうみたいな。
 
ナカザワ:うんうん。
 
西田:あとさっき上司に怒られてた話もしましたけど、それも良かったですね。
ただただ怒ってくるだけの上司だったら、嫌な人だなとしか思わなかったと思うんですけど、その上司が結構スキルフルな人っていうか、事細かに教えられるんですよ。よく怒られてたんですけど、お客さんとの接し方とか、かなり具体的に怒られるんですよ。
 
例えば何かを解説するプログラムがあって。そのプログラム時間が10分だとしたときに、終わったのが10分5秒だったのかな。そういうときに、「時間管理も全てサービスなんだよ」とか、1つずつ言ったらきりがないぐらい怒られるんですよ。この解説の内容はこれをテーマに伝えようとしてるんだ、とか、クラゲの生活はクラゲの一生を理解してもらうことが重要なんだとか、話の腰はこれなんだよとか、話と話を繋げるときの枕詞が面白くないんだよとか、いろいろ言われるんですよ。
最初はなんか、面倒くさいなと思ってるんですけど、もう脅迫的なプレッシャーがあるんで、ふてくされても変えるしかないんです(笑)。多分今はいないタイプの上司だと思うんですけど。
でも言われて変えた後にびっくりしたのが、お客さんの反応が実際に明らかに変わってるんですよね。
 
ナカザワ:へえ。
 
西田:つまり裏で何が起きてるのかって話じゃなくて、お客さんの笑顔が増えてたりとか、頷きが増えたりとか、現実でお客さんの受け取り方が変わっていくところを見たときに、素直に話を聞いた方がいいんだなと思ったんです
だから、あれです。そう。そういう水族館での業務の経験とかも通して思ったのは、人間って面倒くさいなとか、気難しいなとか、大変だなとかって思っていた自分なんですけど、そう感じる理由の一つは、自分の技術不足。
そういうこと面倒くさいとか癒されたいって思うことは別に間違いじゃないし、人間の欲求としてあると思うんですけど、一方でそれに向き合ってないっていうのも一つの課題なんだなというか。
正直、人付き合い面倒くさいなっていうのでただ放置してると何も解決されないというか。ちょっと拡大解釈かもしれませんけど。プログラムとかそういう水族館での業務の経験とか。水族館って結局魚マニアだけじゃやっていけないんですよ。飼育員やるって。お客さんと接さなきゃいけないんで。一定の社会性の重要さを学んだって話ですね。水族館で。
 
ナカザワ:確かに今のところ魚の話はないですね。
 
西田:そうそう。だからなんか僕あれなんですよ、途中から生物マニアでいることに飽きちゃったっていうか。不思議と僕の場合はそっちでしたね。
僕、飼育員してる当時は相当詳しい方だと自負があったし、先輩の飼育員さんからも褒められたりするっていうか、よくもの知ってるよねとか言われたりすることも結構あったんですけど。
でもなんか、いっぱいいるんですよね、そういう人って。そうすると、それに価値を感じなくなってきちゃったんですよ。生物に詳しくなることとか、生き物好きなんです僕、みたいなアピールすることがくだらなく思えて。
それより水族館の社会的な意義とか、人に対してどう貢献してるのかっていうことそのものの方が面白く感じ始めてきたんすよね。
 
ナカザワ:うんうん。

西田:僕はそうだったって話ですけど、生き物マニアとしてのキャラクターを構成し続けて、水族館で頑張り続けてると、絶対どっかで息切れするなって思ったタイプですね。
ペットショップとかの場合は違うと思うんすけど、結局人に対してどう貢献できてるのかっていうところとか、社会とかどういうものに還元できるのかってことが実感としてないと、なんか自己満でやってるだけなんで。
例えばもっと給料のいい仕事なんていっぱいあるし、それこそ、上司とかからうるさいこと言われずに家で水槽で自分の好きな魚を飼ってる方が生物マニアとしては楽しいと思うんですよね。僕は。
水族館の職員になったら担当生物の希望は出せますけど、自分で決められもしませんし、プログラムもやれって言われるし、人と接さなきゃいけないし、いっぱいあるんですよねそういうの。そういうこと考えたときに、生物屋として深めるっていうことは、仕事として必要な分はきちんとやるんですけど、なんていうのかな、さかなクンみたいになる必要あるか?、って思っちゃったんですよね。
 
ナカザワ:なるほど。
 
西田:さかなクンはいるし、さかなクンじゃなくてもそういう人いっぱいいるし、みたいな、なんか周りを見渡したらふと思ったんですよね。だから水族館の話したときに具体的な魚の話とかっていうのは、あんまり僕は言うことないですね。
 
ナカザワ:ちなみに水族館の仕事から離れたのはどんなきっかけだったんですか。
 
西田:元々水族館に入ったら、最初から数年働いたらやめようと何となく思ってて。なんか独立したいっていう気持ちはあったんですよね。なんかわからんけど独立したい、みたいな。ずっと会社で働きたくないなみたいな、漠然としたのはあって。数年働いたらやめようと思ってて5年ぐらい働いてたんですけど。
それと、新しい水族館だったので、オープニングスタッフとして働き始めたので、最初は新しいことをやってることが非常に多かったんですけど、数年経ってくると、新しいことっていうのはやらなくなるんですよね。
僕の推測でしかないんですけど、新規でオープンするときっていうのは、元々計算してる需要予測があったりとか、収支の見込みとか存在するはずなので、それで運用しちゃえばいいんだけど、とはいえ、目標値に達してるかどうかというのは非常に不安がある中で、やっぱり新しいこと、当初企画しなかったこととかもちょっと企画した方が良いとか、目標に達してないなら集客するための新しい対応をしなきゃいけないとか、そういう話ってやっぱり最初の数年は、水族館を作っていくなかで結構起きると思うんです。その時は楽しいです。新しい企画がどんどんきますから。
でも、計算通りに安定しだしてくると、大きな勝負をする必要性はなくなってくるだろうなっていうのを感じていて、そうすると、「君たちはルーチンワークやってもらえればそれでOKだからね」っていう雰囲気になっていく。
 
ナカザワ:うんうん。
 
西田:いやなんか、毎年同じことするんやったら、もういいかみたいな。そこら辺も影響して辞めたって感じっすかね。それで何となく見切りをつけて、5年ぐらいでやめたって感じがします。
 
ナカザワ:移動水族館をやろうとしたのは何でだったんですか。
 
西田:そのあと全然違う仕事を数年やって、さっき言った水族館の計画をする方の仕事をして、その仕事も辞めた後に、さっきなんか何となく独立したかったって言ったじゃないすか。ずっと何となくって言ってて、結局何もしてねえな、と思って。
とはいえ結局、生物のことしかしてないわけで、しかも、会社に属してることしかやってないわけで。チャレンジをしていないな、と。それで、お金儲けられなくていいからとりあえずやろうみたいな、とりあえず始めようっていうのが最初のきっかけでしたね。
 
ナカザワ:同じことをずっとしてるよりは、いろんなことやりたいんですか。
 
西田:それはありますね。だからそういう意味では多分飼育員には向いてないっすね。根本的には。一応自己理解としてはそうなんで、模索してるって感じですよね。
 
ナカザワ:なるほど。魚と関わっている期間の長い人生だったと思いますが、あんまり魚の話出てきてないですね。
 
西田:根本的には、魚を見てるけど魚は見てないところがあるかもしれないですね。メタ的にみるっていうか、ひとつの対象として見てるっていうか。
一つ具体的なところで言うと、影響を受けたのは、ネイチャーアクアリウムっていうのがあって。ADAっていう会社があるんですけど、調べたら綺麗な水槽が出てくると思います。水草が生えてる。

水草を育てて、水槽の中で景色を作るみたいな。一つの文化みたいになってるんですけど、これを作った最初の天野尚さんという方がいて。もう亡くなっちゃったんですけど、ネイチャーアクアリウムを最初に開発した人なんです。小学生のときにその人の存在を知ったんですけど、まずそのネイチャーアクアリウムっていうのが面白くて。
今でこそ普通というか、水槽の世界での常識になってますけど、1980年代から90年代、水草っていうのは消耗品だったんですよね。育てられないものだった。ただ綺麗だから入れて装飾して、ちょっと楽しくなるくらいの代物だったんですけど、天野さんはその水草を育てようと考えた人なんですね。維持管理しようってことですね、もうちょっと言うと、持続可能ですよね。
相当うまくいかなくて大変だったみたいですけどね。水草が育つには光が必要なんですけど、光を当てても育たないんです。それがなぜかっていうのって当時はみんなほとんどわかってなかったんですよね。今となっては常識になってますけど、研究の結果、水中の中で暮らしている植物たちってのは陸上の植物たちと利用する光の波長が違うことがわかって。
 
ナカザワ:なるほど。
 
西田:陸上の植物たちは赤色の光を強く使うんですけど、水中は赤色の光を最初に吸収するので、水中の植物は青色の光を利用するんです。
だからパナソニックとかと連携して水草育成のライトを開発したりとか。あとは、多分これが一番革命的なんですけど、二酸化炭素を強制添加するっていう方法を使ったんです。
植物は光合成するときに二酸化炭素が必要ってのはみんな理科の授業で知ってますよね。人工の環境下の水中っていうのは、何もしていないと二酸化炭素が減っていっちゃうんです。天然の環境下だと補給され続けてるんですが、水槽の環境だと減ってっちゃうんですよね。
だからそれをどうするかというと、強制的に添加するっていう方法で。居酒屋とかのキッチン裏とかで見かけるようなら、ミドボンと言われるものですけど、緑色のビールとかの炭酸とかを作るような、ボンベを使って、細かく気泡にして二酸化炭素を水中に溶け込ませるっていうことをやったんですよね。そしたら光合成したんですよ。
 
ナカザワ:なるほど。
 
西田:仕組みもそうなんですけど、概念的な話が面白くて。みんなが知らないときは、二酸化炭素を強制添加するなんて、何してんの、みたいな話ですね、だって魚が死ぬじゃないって。
 
ナカザワ:うんうん。
 
西田:二酸化炭素を強制添加すると魚は死んでしまうんじゃないかって思ったけど、二酸化炭素を強制添加しても魚は死なない。なぜかというと植物たちがそれで光合成するから。植物は生きて、植物が生きた環境の中で魚が生きてるっていう。
 
ナカザワ:なるほど。
 
西田:つまり地球の生態系を再現するって話なんですよね。地球の生態系の中の二酸化炭素は悪いものみたいに言われてるかもしれないけど、植物が二酸化炭素を利用してくれて僕たちは生きてるっていうことなんですよね。二酸化炭素があるから地球は悪くなってくって話じゃないですよね。
そういう地球の複雑な動きみたいなものを具現化してるというか。

しかも、ネイチャーアクアリウムが優れているのはビジュアル的にも優れてるというか、こういうなんかうんちくみたいな話だけじゃなくて、明らかに見たときにすごく癒される。
石を組んだデザインのものなんかもありますが、天野さんのやり方は例えば京都の石庭、あれの組み方とかも全て研究した上で配置を決めてたりとか。アクアリウムというその単なる水槽を鑑賞するみたいな分野の中に、かなり具体的なデザイン性を持ち込んで、アートの領域まで進化させるみたいな。サイエンスとアートの領域を融合させるみたいな、結構そういう話がびびっときますね。

魚類の生物学はどうたらこうたらみたいな話とか魚のうんちくみたいな話より、生命の世界観みたいなものをデザインしていくというか、ここらへんの話はすごく好きですね。
水族館っていうのも、僕は概念的な水族館の話をするときもあるんですけど、結局生物マニアの話をされても1ミリも興味おきないっていうか、本読めばわかるしみたいな。あと最近でいったらChatGPTに聞けばいいしみたいな話になってきますよね。
どっちかというと僕が面白いと思ってるのは、水族館が対話の場所になったりする、コミュニケーション空間として成立していくってことの方が多分価値があるんじゃないのかっていうふうに思ったりしてますね。
 
ナカザワ:確かにメタですね。
 
西田:もう知識や情報みたいなものを統合的につなげて高速で展開することが可能になっている世の中じゃないですか。そういう中で、解説することは大事ですけど、そこに焦点を絞る考え方っていうか、生き物のことを知ってもらおうという発想は、僕はしないかなと思ってて。
それよりも海の世界観みたいなものを表現できる、暗黙知的に眠ってる海の世界観みたいなものを表現するっていうことが、重要かなと思ってますね。

これもちょっと概念的ですけど、結局海の世界ってのは、明らかに多様な生物が存在してるっていうのが重要なポイントで、つまり、食う食われるみたいなすごく残酷な世界もあれど、たくさんの生物は共存してるっていう世界観が存在するってことですよね。人類っていうのはこういうことはなかなかうまくできないわけですよね。戦争したりするし。
ここら辺の、実は存在する多様性のあり方みたいなものとか、なぜお互い共存することが可能なのかとか、こういったものを紐解いた上で展示物とかを作って。社会にどう還元していくのかっていう発想でつくっていったほうがいいんじゃないかなって個人的に思いますね。ちょっと概念的ですけど。

例えばジェンダーレスみたいな話とか、2010年代からジェンダーレスとか性の差別をなくそうみたいな、特殊な性を受け入れようとか、いろいろとありますけど、そういう性のありようなんて魚を見てたら普通なんですよね。性転換する魚は普通にいる。
魚たちが何百万年も何千年も前からそういうことやってきたわけでしょ、みたいな。人類の先達みたいなことで。あいつら見てたら性のことであれこれ言ってるのってあほくさいなって。もうそんなことなんていちいち議論する余地もなく、地球の歴史において魚たちを観察していけばわかりきってることで。変わった人がいてもつべこべ言わずに受け入れたらいいんですよ。
 
ナカザワ:うんうん。
 
西田:だからそういう話をした方がいいんじゃないかってことですね。生物学を語るというよりは、魚を観察した上で、社会に還元できる何かを統合というか紐付けてクリエイティブをし直していくっていうか。
実際ちょっと難しくなり過ぎると人は来ないと思うので、あんまり高尚にはしすぎない方がいいかなと思ってますけど、生物学を追求するみたいな水族館は、個人的には作らないですかね。他で素晴らしい展示やっている方がいっぱいいらっしゃいますし。

未来:地域であまり扱われてないけど、みんな知ってる、一般的な生物みたいなものを、どう紹介していくかとか、どう発信していくかとか、今後ちゃんとやっていけたらなと思ってます

ナカザワ:西田さんは死ぬまでにどういうことをやりたいと思いますか。
 
西田:水族館の活動なのか海洋系に関することなのか、わからないですけど、これも概念的な話になっちゃうんですけど、イメージとして、窓を作るっていうか。
僕的には、水槽っていうのは、窓なんですよね。
ネイチャーアクアリウムの世界だと、海外の熱帯魚とかそういうものを使って、地球の生態系を再現していて、佐賀の片田舎の閉塞的な環境の中で、その水槽を見たときに、自分はどこかでこの素晴らしいこの世界と繋がってるのか、みたいな。
地球の生態系の営みの美しい景色みたいなものがどこかにあったりとか、こういう綺麗な魚たちがどこかにいて、実際その野生地のどこかにいて。地球とかこの世界の物理的な広さみたいなものを想像する楽しさがあるっていうか。

ナカザワ:なるほど。

西田:水族館や動物園は檻に閉じ込めて悪いことをやっているという人もいますけど、飼い方は大事ですけど、僕からすると檻ではなくて窓なんですよね。想像を広げるものであって。
特に子どものときとかっていうのは、まあ今はインターネットとかいろんなものあるんで、代替をなすものはあるかもしれないけど、地元の水中の世界とか、いろんなものを知的好奇心を持って見ることができるツールっていうのはそんなに多くはないと思うので。
水生生物とかを通して、たくさんの子どもたちが好奇心とか、考える楽しさみたいなことをを持てることを広く届けていけたらなと。
 
ナカザワ:うんうん。
 
西田:海士町は一つのモデルみたいな感じにできたらなと。
移動水族館をやっていて思ったのは、実際水族館がない地域で移動水族館をやると非常に喜ばれるんですよね。ローカルって結構コンテンツ不足だったりするところもあるんで、単純に何かやってくるだけでちょっと嬉しいっていうのと、やっぱりその地域の自然が大事だっていうことを伝えたいって思っていても、伝え方がわからないとか、そういった人たちにも喜んでいただけたら嬉しいかなと。

もう一つは子どものときの自分を勝手に当て込んでしまいますけど、やっぱり何か、子どもにはもうちょっと希望を持っていただけた方がいいかなと。
僕はその、暗かったですけど希望は持ってたと思うので。水槽に対しては希望を持ってたっていうか、水槽の中の世界に対して、ネイチャーアクアリウムとかそういったものを通して、期待を持っていたところはあるので。
それに近しいことができたら、例えばちょっと自分の世界観を広げてみようとか、そういった気持ちになってくる子どもが少しでも増えたらいいかなと思ったりしますし、そういうものができたらいいかなと。
と、同時に自分は自立していけたらいいなと、そんなこと思ってますけど。
 
ナカザワ:なるほど。西田さんが見せたい、作りたい水槽は、具体的にどんなものですか。
 
西田:飽き性だって話もしたんですけど、作る水槽はそのときそのときで結構気分で変わってくるんですけど、ローカル、地域の水槽作りの何か手法というか、それをちゃんと開発していけるようになりたいなと思ってますね。
都会で水族館をやる場合っていうのは外から生物を連れてくるわけですよね。そもそも都会に展示生物として使える生物はいないので、連れてくるってことですよね。
ど田舎の場合はどうなってくるかっていうと、そんなことをしてもお金の無駄になるだけという側面もあるので、地域の資源を利用するわけなんですけど、そのときにスター生物っていないんですよ。
全国一般的なスター生物の話ですけど、ジンベエザメとか、シャチなんていないので、いても扱えるわけないので。
そのときにこれまでみんなが興味を持ってなかった生物、つまり、さっきサメとかフグみたいな話をしましたけど、例えば海士町で言うと、例えばサザエがたくさんいますけど、サザエなんてスターでも何でもないですよ。食べ物ですよね。

でもこういった生物をどうよく伝えるようにしていけるか。見せたい水槽っていうか、あり方というか、テクニカル的な話になるんですけど、それを水族館としてどう盛り上げていくかっていうところをやっていけたらなと思ってますけどね。
スターではなくて、元々その地域に住んでる生物をどう魅力的に、って言うことの方がローカルで水族館を行う上では結構重要になってくる。
 
ナカザワ:うんうん。
 
西田:観光集積地とか都会でやる場合はスターを連れてきてそれでワーッて言ってもらえばそれでいいと思うんですけど。やっぱり田舎でそんなことやるのはいろんな意味で無駄ですし、昨今の価値観的にも、元々その地域として眠っていた、眠っていたというか使われていなかった地域資源をきちんと扱えるようになっていくっていうことが、社会的にも、地域社会としても喜ばれることかなと感じるので。
僕が元々、イルカショーとかそういうものにそもそもあまり興味がなかったタイプっていうのもあるんですけど、あんなんサイン出してやってるから芸して当然だ、ぐらいのひねくれた目で見てたタイプなんで。なんていうんすかね、海士町にきて、海士町でもそうですし、僕どっちかというと変な生物飼ってることの方が多いタイプで、そんな生物好きなんか、ファンなんていないっていうか。でもそういう生物でも、飼ってて僕は楽しかった、みたいな生物はいっぱいいるんですよね。

海っていうのは、学校の教室で言ったらいろんなやつらがいるわけなんだけど、そのクラスの中心人物なんかよりも隅っこにいる奴のほうが全然面白かったりするんですよね、詳しく話を聞いてみたら。
そういうことと一緒で、海の中も、みんなが興味持ってないような生物をじっと見てる方が楽しかったりするんです。そういう思いは自分の価値観の中にそもそもあるんですけど、それと地域っていうのが結構マッチしてるなと最近思ってて。

ナカザワ:なるほど。

西田:今日もちょっと町で海藻の話とかしてたんですよ。海士町とか隠岐諸島って海藻が多いんですけど、海藻とか入れるといいかもしんないっすね、みたいなことを話すとすごく乗り気になってくれるというか、それができたすごくうれしいな、って言ってくれたりするんですよね。海藻で何かできたらいいよね、みたいな。
別の地域でも、要はその地域に住んでる生物にフォーカスして紹介したいと思ってるんですけど、と言うとわりと皆さん喜ぶんですよね。
僕としてもそっちの方が面白かったりするんで、そういう、地域であまり扱われてないけど、みんな知ってる、一般的な生物みたいなものを、どう紹介していくかとか、どう発信していくかとか、今後ちゃんとやっていけたらなと思ってます。
 
ナカザワ:確かに海士町でやる面白さってそういうとこかもしれないですね。
 
西田:そうですね、海藻とかも僕はそんなにやってきたことはないんで。単純に育てるのが難しいんですよね。
専門家の方がいらっしゃったりしますけど、水族館とかでもそんな取り組んでいるところは少なかったりとかするような、そんな領域になってくるんですけど。それで盛り上げられるようなことができたら面白いかなとか思ったりしてますね。
 
ナカザワ:すごく小さなときに、魚とか水槽を見る、育てるに出会ったわけだと思うんですけど、会わなかったらどんなふうになっていたと思いますか。
 
西田:何をしてるんでしょうね。
あ、最近読んでないけどなんかSF小説を高校生のとき読んだときに、なんだったかな。
SF小説について解説をする文章で面白かったのがあって。なんかエクストラレボリューションっていう概念があるんですけど、もとは数学用語らしいんですけど。
ある仮設の状況を立てたときに、その仮設の状況をふまえてまた新しい仮説が生まれるみたいな話があって、そこからSFの世界を作っていくっていう意味なんですよね。

例えば人が宇宙で生活をし始めたらどうなるんだろうっていう仮説があったとして。
ここからはある種適当なんですけど、例えばそれが太陽の近くだった場合だったら、生まれる仮説というのは大量被ばく社会とか。太陽というのは、放射線を出してるので大量被ばく社会になってる宇宙コロニーの世界観っていうのは、どういう社会なんだろうかっていうふうに仮設を広げていくと、高い医療技術を持ってる社会があるんじゃないかとか。
そういう、「高い医療技術を持ってるんじゃないか」っていう仮説を立てて実際に構築していた先に、それを一つの例え話として、今度は実際の現実の社会で起きている医療問題とか、そういったものと照らし合わせるように見える形で、物語を作っていく、そういう解説を読んだことがあるんすけど。
なんかあんまり何か勉強とかするタイプの子どもじゃなかったんですけど、想像を膨らませて考えることはこんなに面白いのか、と思いました。
それがすごく記憶に残っていて、だから、自分なりに考えながら物事を見るみたいなのは、それで楽しんで生活してたんじゃないのかなっていうのは、僕自身は思いますけどね。
 
ナカザワ:そのきっかけの一つがたまたま水槽だったり、魚だったりしたと。
 
西田:ある種、自分のその現実的な状態と、比較物として見ていくと面白いなという。
こいつら喧嘩するけど、実際自分たちも喧嘩することがあるけど、喧嘩しないときもあるけど、なぜなんだろう、とか。そういうものとして。
あと、生物の中でもなんで魚とか水生生物なのかっていう話なんですけど、犬とか猫は、面倒見る生物としては嫌で。なんかコミュニケーションとってくるじゃないすか。
 
 ナカザワ:確かに。
 
西田:陸上生物っていうのはこっちに干渉してくることが可能なんですよね。水生生物は干渉できないんです。
しかも水生生物ってのは、水槽の環境が重要なんですね、どっちかっていうと。環境を作る、さっきの地球の生態系を再現するみたいな話は壮大ですけど、もっと現実的に落とし込んでいくと、水を綺麗にしたりとか、隠れ家があるとか、環境を用意してあげれば、別の世界をしてあげたら、死なないんで。死なないっていうか元気になることが多いんですよね。シビアな生物は死んじゃいますけど。

要はその別の世界を作ってあげるっていうことの方が重要なんですよね。犬とか猫とかは同じ世界にいるから、関係性が大事になってくる。犬なんてもう最悪で、ずっとこいつは上か下かみたいなことを分析してくるみたいな感じ、見られてる気がするっていうか。
だから人が飼ってる犬と接するのはいいんですけど、自分で飼おうとは思わないですね。疲れるというか。
捉え方の問題だと思うんですけど、だからイルカをやってる人っていうのは会話をするとかコミュニケーションするっていうことが好きな雰囲気の人がやっぱり多くなるっていうのはそういうことなのかなと思うでんすよね。
 
ナカザワ:なるほど。環境を作る、そうですね。社会を映す何か別の世界のものとして成立する。
 
西田:でも共通して概念的に捉えることができる部分もなくはないので、そこら辺を見てるとちょっと面白かったりしますね。
 
ナカザワ:水族館の話をされてるときも、ずっとなんか人間を見ていた感じがして、そっち側も水槽だったんだなと思っちゃったりしました。西田さんにとっては人間界側も水槽だったんだなと。
 
西田:そうですね。循環してるものが違うんだってことですね。循環はしてるっていう。例えばお金でもそうですし、感情的なものもそうですし。
拡大解釈しすぎるとちょっと仕事に影響するのでよくないんですけど、現実的に考えなきゃいけないときもあったりするので。なんかでもそういうふうに考えたりするときは結構楽しいですね。

ナカザワ:ありがとうございました。 

あとがき

「窓」を手に入れた人生は最高だ、そう思いました。
西田さんにとっての水槽は、自分の内側の世界と人間の世界の間を翻訳するようにつなぐ窓だったというのは、本当に素敵な言葉だと思いました。

西田さんはどちらかと言うと外の世界に向けて開く窓だったかもしれませんが、インターネットでなんでも見れちゃう今の社会、立て付けの悪い窓が増えて、勝手に開いたりして困ってる人にとっては、閉めるための窓もあってもいいのかなと思ったりもしました。
ある意味その窓があることで守られることもあるし、たまには換気も必要ですが、まぁ、窓ですから外は見えてますし。

仙台に住んでいた頃、ちょうどオープンしたばかりのうみの杜水族館に行きました。入ってすぐ客を出迎えるのは、東北の味覚、ホヤ。全然かわいくもかっこよくもない、食べ物ですね。

もともとは松島市にあったマリンピア松島水族館が閉館するタイミングで生き物たちが移転してきた水族館です。
マリンピア松島水族館は「アザラシの毛の匂いを嗅いでみよう」というあまりにシュールな展示センスが好きだったんですが、レジャースポット色が強くなったうみの杜水族館でも、入口のホヤ展示に受け継がれたセンスを感じてうれしかったことを思い出しました。

【インタビュー・編集・あとがき:ナカザワ】

【編集:ナカザワ】

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