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演劇と人 空風ナギ-001 2023/10/11

私qbcが3年前に「無名人インタビュー」を始めた時、見かけたアカウントがあった。
空風ナギさん。俳優さん。今回インタビューしている人です。

野外演劇というのをしている俳優さんで、Youtubeの動画を見てみたら、本当に野外で演劇している。こういうものもあるんだな、とわくわくした。そして、目がとてもぎらぎら、爛爛としている人だった。
同時に不安定さもある人で、noteに書かれる震えた心を写した文章の更新が、私には楽しみだった。
が、いつしかSNSから空風ナギさんはインターネットから姿を消していたんだけど、こないだふいに、note記事がアップされたんですよね。そこに私は「おかえりなさい」とコメントして、それでインタビューが始まりました。


冒頭

——今、何をしている人ですか。

空風ナギ:大学生をやってまして、今大学4年なんですけど、春学期を休学したので、もう1年、4年生をやります。
25卒になるので、実質3年生みたいな生活を送っています。
大学では演劇学専攻で、演劇の歴史や演出を理論的に学んでいます。

大学生活以外では、休業していた俳優を復活させるっていうことで、復活の舞台となる生誕祭の準備とかやってるんですけど。

それから写真を撮ったり撮られたりしています。最近写真集を自主出版して、町田にあるEurekaという書店さんで販売させていただいています。

空風ナギ:あとは、そうですね、犬のお世話くらいですかね。犬を飼っているので。

——俳優は、いつからお休みされているんですか。

空風ナギ:2020年の9月に公演をやったんですけど、それ以降は休んでます。
公開はされてないんですけど、2021年に友人の短編映画に出演、はあったんですけど。

——お休みされた理由はなんですか。

空風ナギ:ちょっともう疲れてしまって、だいぶ。
野外劇をしているので、結構体力を使うっていうことが、まず一つ挙げられるんですけど。
それ以外にも、結構いろんなことが重なって。
ミスiDっていうアイドルコンテストに落ちたりだとか、恋愛でうまくいかなかったりだとか、精神的に疲れていたんですね。

ちなみに野外劇とはこういうものです!

なので、ちょっとこれは一旦休んだ方がいいと思って、お休みしていました。
休んでる間は、大学を一旦卒業したんですけども、また別の大学に入りなおすための受験勉強をしたりだとか、あとは写真がライフワークなので、写真を撮ったりだとか、そういった生活を送っていました。

——お休みの間、どんな気持ちで過ごされていましたか。

空風ナギ:演劇から一旦離れて、少しだけ楽になったような気持ちはありましたね。
あとSNSも休止していたので、更新をしなきゃっていうプレッシャーからも解放されました。

復活

——どうして俳優を復活されようと思ったんですか。

空風ナギ:何だろうな。
ハラスメントと言っていいのかわからないんですけれども、休む前に、ある演劇人の人から、ちょっと嫌な目にあってたんですね。
これは、今繋がっている団体とか組織とは一切関係なくて、もう縁は切れている状態なんですけども。

それで、私を嫌な目にあわせていた人の叔母が常連のネパール料理屋さんがあって。さらに、たまたま私の母親のいとこもそのお店の常連だったんですね。
要するにお互いの親戚同士がそのネパール料理屋さんの常連で。
その人の叔母が、たまたま劇団の話を持ち出した時に、私の親戚が「知ってる! 空風ナギちゃんって親戚ですよ!」と言って、話が繋がったのだったと思います。詳しくはよく覚えていないのですが。

私は、元々親戚から「ディープなネパール料理屋さんがある」という話を聞いていて、気になっていたんです。それで、彼女とそのお店に一緒に行くことになりました。

その時に、相手の親戚の方々もお店にいまして、その相手の親戚の方々、私の親戚、そして私でご飯を食べることになったんです。

そこで私の親戚から「一緒に演劇やってたんだよね?」という話が出て、「実はきついことを言われたりして、嫌だった」と話したんです。

——なるほど。親戚同士がたまたまお店で知り合いで、空風さんが初めてそのお店に行った時に、同席になったと。
で、嫌な目にあった話がでたと。そうですね、めちゃくちゃ偶然ですね。

空風ナギ:でも、ここでもう嫌な目に遭ったことは、ちょっと浄化しようみたいな気持ちに、そのときになったんですね。叔母の人が謝ってくれたりもして。

チャンドラ・スーリヤっていうお店なんですけど、そのお店は。
そのチャンドラ・スーリヤの店主のりえさんという人が、「役者なんだったらこのお店で何かイベントやったら?」って薦めてくださって。
それでカレンダーを見ていたら、たまたま11月18日、私の誕生日の日が、ちょうど土曜日だったんですね。
土曜日だったら、何かイベントができると思って。

私、誕生日を一人で過ごすのが、すごい嫌なんですよ。
寂しいので、誰かに祝ってもらいたくて仕方がないんですね。
だから、ちょっと生誕祭を開いてみようと思って。アイドルじゃないんですけど、俳優なんですけど。

それで、りえさんに生誕祭をやりたいんだけどっていうふうに打診して、タイムスケジュールとかいろいろ送ったんです。
でも、そのタイムスケジュールの中には、私のパフォーマンスは入れてなくて。

他の役者とか、芸をする人を誘って出てもらって、私は司会みたいなことをしようとしてたんですね。
でも、りえさんから、それは止めた方がいいと。あなたがパフォーマンスをした方がいいよと。お客さんがそれを見たがっているとおっしゃってくださって。

それで、そうか、と思って。
俳優として何かパフォーマンスをしようと思って、今度、朗読劇をチャンドラ・スーリヤでやって、そこで俳優として復帰しようっていうことを決めました。

——復活を前にして、どんな気持ちですか。

空風ナギ:復活することに関しては、今ドキドキですね。
大勢の人の前で演じることが3年ぶりなので、良い緊張感がありますね。

私は演じることに対して、演劇人から嫌な目にあったりして、ちょっとトラウマがあったんですけども、やっぱり演じること自体は好きなんだなということを、最近稽古していて感じることが多くて。
好きな演劇をやるということを大切に、最近は過ごしています。

——演劇の、どこが好きですか。

空風ナギ:非日常だからだと思いますね。演劇は、日常と地続きなところにあるものではあると思うんですけど。
でも、自分ではない自分でいられるっていう。
そういった意味で、日常とはかけ離れているものだと思っています。

——演劇を始めたきっかけはなんだったんですか。

空風ナギ:元々演じるっていうことが、私にはすごく身近にあって。
父親が、元々文学座という劇団の研究生をやっていて。今はもう辞めて、サラリーマンをやって、今はそれも辞めて自営業をしているんですけど。

でも今でも、彼は趣味で演劇を続けているんですけども。
私もその影響で、小さい頃からたくさん芝居を見せてもらったり、市民劇に参加したりだとか。
演劇がすごく身近なところにあるものだったので、だから演劇は私の中で外せないというか、当たり前になっていたというのが、正直なところですね。

——初めてお芝居をしたのは、いつでしたか。

空風ナギ:9歳ですね。市民劇に参加しました。
その前は、学芸会とか。幼稚園で、ピンクの服を着て、「小さなパラソル」だったかな、ダンスを踊ったりしてるんですけど。
そういったみんなの前で発表するような行事は、好きでしたね。

小学校中学校の頃はいじめられてたんですけど。
私ね、すごく根暗なんですよ。
根暗だし、あんまり自分に。なんでしょうね、自尊心はすごく高いんですけど、自信がないタイプの人間だって、自分では思ってるんですね。
でも演じることによって、そこからちょっと解放されるようなところがあったりして。

自分とは違う人間になれるから。
そこはすごく、私のメンタルにとっても良いことだったなと思います。

——なるほど。

空風ナギ:最近だと、またちょっと自分にとっての演劇が違ってきていて。
演劇の中で自分を語るっていう。
今度の生誕祭でやるのは、そういったことなんですけども。
ちょっとドキュメンタリーっぽい感じはあるんですけども。
でも、入口は「自分とは違う人間になれるから」だと思いますね。

今度の生誕祭では、自分を演じてるけども、演じることによって、また違う自分になるというか。
なんて言ったらいいんでしょう。
演劇だと、何をやっても許されると私は思っているので、空も飛べるし、宇宙にも行けるし、どこにだって行けるし、何にでもなれるし。
だから、自分が自分ではあるけれども、自分じゃないみたいな。
そういった姿が見せられたら良いかなと思っています。

——ちなみに、中高のあたりは、どんな演劇活動をされていたんですか。

空風ナギ:中学時代はダンスの発表会があって、そのためにちょっと稽古をしたりだとか。友達と台本を書きあって、ちょっと読んでみたりだとか。演劇ごっこみたいなことはやっていたんですね。
でもそこまで本格的な活動はしていなくて。

高校では演劇部に入るんですけど、その演劇部の仲間が全員バイトに行って稽古が成り立たないって状態が発生して。
それが嫌になって、外部の企画に出演するようになって。でも一時的な企画だったので、企画が終わると他に行き場がなくなって、どうしようもないというか。

それで大学入学と同時にENBUゼミナールという演劇の養成所のようなスクールがあるんですけども、そこに通い始めて、そこからは空風ナギという名前を名乗って活動をし始めましたね。2017年ですね。

そこを2018年に卒業してからは、小劇場の舞台に立ったり、野外劇を演じたり、そういった機会に恵まれるようになりましたね。

——空風ナギさんは、どんな性格の方なんでしょうか。

空風ナギ:結構、一言では言い表しづらい性格だと思います。
今、好きな人がいて、最近告白したらあなたの性格がよくわからないと言われて、今答えを保留にされているんですけれど。自分でも性格がよくわからなくて。私は、長くなりますけども、真面目だし、不真面目だし、怠惰だし、でも正しいことが好きだし。あとは、そうですね。うん。私は優しいし、でも時には残酷だし、結構落ちこみやすいし。
かと思えば自尊心が高いし、プライドがすごく高いし。
わがままだし、でも人に気を遣えるし。といった様子で、ちょっと自分でも、収拾がつかないくらいたくさんの自分を、自分の中に飼っているんですね。

なので、まともに人とコミュニケーションが取れるくらいの能力はあると自分では勝手に思ってるんですけども、性格としては、いろんな性格が自分の中で分裂しているので、人前では基本的に、緊張していたりすると猫をかぶって、真面目なおとなしい人間のふりをしています。
けど、いろんな自分がいるので、どんな性格って言われると、答えるのが難しいなと思います。

——一言で表すのが難しいのであれば、色で言うとなんでしょう。

空風ナギ:色。
虹色とか言いたいけど、そんな綺麗な色でもないですよね。なんか混沌としている。
泥じゃないですか、泥。

——山手線の駅で言うと、どうでしょう。

空風ナギ:山手線の駅。

——中央線でもいいですよ。

空風ナギ:そうですね。中央線の駅には、私の性格は存在しないですね。高円寺とか本当は言いたかったけど、言えないですね。

——演劇人の方にされた嫌なことというのは、話せますか。

空風ナギ:そうですね。私からの視点なので、あくまで向こうからすると違うよってことがあるかもしれないんですけど。
私が実際に嫌だったと思ったのは、体を触られたりとか、あとくれるといった役をくれなかったりとか。あと、人の悪口を聞かされたりとか。そういったことですかね。
他にもいろいろと嫌なことはあったはずなんですけど、ちょっと思い出しにくいところもありまして。

私に嫌なことをしたその人は、生誕祭があることを知っていて。でも自分は行かないと言っているということを、叔母さんが店長のりえさんに言っていたというのを、私は聞いたんですけども。
それは、納得いかないから行かないっていうことだったらしいので、その人にもいろいろあるんだなと思って、仕方ないなと思っているんですけども。

——今回のネパール料理店の出来事がなければ、俳優の復活はなかったんでしょうか。

空風ナギ:この出来事がなかったら、生誕祭をやろうとは思わなかったと思います。

——いつか俳優を復活させるつもりでは、ありましたか。

空風ナギ:半分あったし、半分なかったですね。
いつかはまた演劇をやりたいなって気持ちも、自分の中であるときもあれば、もうやらずにこのままフェードアウトして、普通の、演劇をやらない人生を歩んでいこうっていう気持ちもありましたね。

でもそんなことを言いつつ、休んでいる間に、私は演劇学専攻が設置されている大学に入り直すという選択肢を選んでいたので、演じるっていう視点以外から、演劇に関わることを、もう既に選んでいたので。
なんだかんだ演劇は、自分の人生だっていうことは、思っていたんだと思います。

引越演劇

——本格復活となる生誕祭の前にされるという、引越演劇について教えてください。

空風ナギ:Dさんという方がいらっしゃるんですけども。
その方が今度、引っ越しをされるということで。それで、今住んでる家に、バルコニーがついていて、そのバルコニーで何かできないかって思った時に、彼は、ロミジュリをやりたいなという提案をして。ロミオとジュリエットが夜逃げする話ですね。それに私を誘ってくださって。

あと、今度生誕祭にも協力してくださるまぼろし🐼ポイポイさんって方がいらっしゃるんですけども、パンダの着ぐるみを着て活動してらっしゃる方で、その方も一緒に。
まぼろし🐼ポイポイさんがジュリエット役で、私がロミオ役をやることになりました。

——あ、Dさんは出られないんですか。

空風ナギ:Dさん、神父役らしいです。
ただですね、問題があって。台本がまだ出来上がっていないんですね。
さっき電話がちょうどDさんからありまして、ちょっと台本まだ書けてなくて、最後ハッピーエンドにしたいけど、どうすればいいかわからないから相談したいということを言っていて。なので、ちょっといろんな提案をしてみて、ていう感じで準備をしている状態です。
てんやわんやです。

——生誕祭の前に、引越演劇は、ご自身の中でどんな位置づけなのでしょう。

空風ナギ:完全な復活は、生誕祭でやるっていうつもりなので、その準備段階みたいな感じです。
引越演劇は、気軽にみんなで参加して楽しむような演劇になると思います。参加する気持ちとしては、台本すらまだ出来上がってない段階なので、ドキドキでしかないですね。
緊張と楽しみだなという気持ちと、両方ですね。

ちなみに台本は見ながら演じてもいいということなので、台本を見ながら演じます。

——引越演劇をする日の前に、インタビューを公開できたほうがいいですよね。

空風ナギ:いえ、野外でゲリラっぽくやるので、そんなに大丈夫だと思います。qbcさんのご都合の良い時という感じで。

——引越演劇は、動画撮影されるんでしょうか。もし動画があれば、次回はその動画を解説してもらいながらのインタビューができたら良いなと思っていて。オーディオコメンタリーですね。

空風ナギ:ちょっと動画に残せるかが、わからなくて。撮ってくれる人が来てくれるかわからないので。
生誕祭は撮ってくれる方に声をかけているのですが、引越演劇はバタバタしすぎてて、もうそれどころじゃないので、主に上演ができればいいという感じなので。
引越演劇は、欲を言えば映像に残してもらいたいけど、お客さんにそこまで高望みはできない。

——なるほど。演じたい欲求と見られたい欲求は、どちらが上なんでしょう。

空風ナギ:見られたいっていう欲求は、ありますけど。できれば見られたい。
でも、演じることが楽しみですね。純粋に楽しみっていう気持ちの方が強いです。

——今回の引越演劇に参加するにあたってのモチベーションは、なんでしょうか。

空風ナギ:Dさんと一緒に演劇をやるのが面白そうだなって。あと🐼さんも好きだし。
共演者のことを私はまず好きだし面白いと思ってるってことが、まず一つです。

あとは、引越演劇って響きがちょっと面白いなと思っていて。Dさんが実際に今のバルコニーつきの家から違うおうちに引っ越すっていう、その事実を活用して演劇をするっていうところが面白いなと。

——ちなみに、野外劇ってどれくらいされているんですかね。

空風ナギ:野外劇ですか。何回目だろう。
ちょっと数えてないのでもうわからないんですけど、気持ち的には15本くらいやってるつもりです。けど、そんなにやってないかもしれないです。

——なるほど。

終わりに

引越演劇、楽しそうですね。素晴らしい。

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

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