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明日死んでもいいように生きる人

むかしむかし、ある山里に、一期(いちご)という名の老人が住んでいました。一期は「明日死んでもいいように生きる」という言葉を座右の銘としていました。
村人たちは一期のことを不思議に思っていました。「なぜそんな悲しいことを考えながら生きているのですか?」と、ある若者が尋ねました。
一期は穏やかな笑みを浮かべて答えました。「それは悲しいことではない。むしろ、今この瞬間を大切に生きるための教えじゃよ」
一期は毎日を丁寧に、そして精一杯生きていました。朝は早く起き、美しい朝日に感謝し、畑仕事に励みました。昼は村人たちと語らい、夕暮れには一日の出来事を振り返りました。
困っている人がいれば、一期はすぐに手を差し伸べました。「今助けなければ、明日では遅いかもしれない」と言いながら。
美しい花を見れば、「明日には散るかもしれない」と言って、じっくりとその姿を目に焼き付けました。
愛する人たちには「明日別れが来ても後悔しないように」と、心を込めて接していました。
ある日、村を大きな嵐が襲いました。一期は「明日までこの世にいないかもしれない」と言いながらも、冷静に村人たちを導き、安全な場所へと避難させました。
嵐が去った後、村人たちは一期の言葉の真意を理解しました。一期の生き方は、死を恐れるのではなく、今この瞬間を最大限に生きることだったのです。
やがて一期は、穏やかに最期の時を迎えました。息を引き取る直前、一期はこうつぶやいたそうです。「私は明日に備えて今日を精一杯生きた。だから、今ここで目を閉じても悔いはない」と。
一期の教えは村人たちの心に深く刻まれ、「明日死んでもいいように今日を生きよ」ということわざとして、長く語り継がれていったとさ。
めでたし、めでたし。
と思う2024年8月26日16時25分に書く無名人インタビュー867回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】

今回ご参加いただいたのは 谷本洋之 さんです!

年齢:30代前半
性別:男
職業:会社員
X:https://x.com/h_tanimoto
instagaram:https://www.instagram.com/hiroyuki_tanimoto_90/


現在:自分自身に対する問いかけとして、自分ってただのペニスの影にすぎないんじゃないかなっていうふうに、急に思っちゃって。自分にはなんだかんだで、性欲があって、その性欲の充足のためにいろいろ振り回されて生きてるような感覚がして。なんかそこから離れて生きてくためにはどうしたらいいんだろうっていう。

🐳くじら:
今、何をしている人でしょうか。

谷本洋之:
今は会社員をやっています。ただ、2ヶ月後、9月いっぱいで辞めることが決定してます。

🐳くじら:
絵を描かれているとのことですが。

谷本洋之:
そうですね、2年前ぐらいから描き始めて、2週間前ぐらいに文章を書き始めました。

🐳くじら:
仕事で絵を描かれているっていうことですか。

谷本洋之:
全く関係ないです。

🐳くじら:
あ、そうなんですね。

谷本洋之:
仕事に関して言いますと、検査関係の仕事をしてます。

🐳くじら:
お仕事は9月いっぱいで辞めて、その後はどういうご予定なんですか。

谷本洋之:
とりあえずは失業保険なんかもらいながら3ヶ月ぐらいは無職で過ごして、その間はひたすらやりたいことをやるという予定です。

🐳くじら:
やりたいことというのは?

谷本洋之:
2週間前くらいに文章を書き始めてから、もう書きたいっていう気持ちがすごくて。
元々文章を読んだり小説読んだり、あと哲学とか精神分析とかに興味があって、そういう本を読んでるんですけど、やっぱ自分もそういう表現がしたいんだって、2週間前ぐらいに急に気づいて。で、もうとにかく書きたいっていうのが一つ。
それから絵も描きたいし、写真も撮りたいし。そうですね、やりたいって思った事をとにかくやって生きていこうかなって思ってます。

🐳くじら:
2週間前に急に思い立ったっていうことですけど、それ以前は書くということに対してどういうスタンスだったんですか。

谷本洋之:
そのうちきっと何か文章を書いたりするんじゃないかなくらいに思っていました。
2年前に絵を描き始めたのも突然だったし、また最近でいうとキックボクシングを始めたりとか。なんかちょっと興味持ったらやってみる、みたいなことをここ2年くらいやってきてるんですけど、その延長上できっと文章を書くとか、演技をやってみるとか、多分そのうちやるんだろうなって思ってたんですけど、2週間前に急に「あ、今だな。」ってなって。それからは毎日ちょっとずつ絵を描いたり、文章を書いたりしてます。

🐳くじら:
最近書き始めた文章っていうのはどういう内容のものなんですか。

谷本洋之:
基本的にはもう自由に書けることを書いてるっていう感じなんですけど、基本的にはそうですねエッセイっぽいものとか。あとはちょっと日常の、実際に経験したことをちょっと小説っぽくして書くとか。とりあえず今書けることを書いてるっていう感じですね。

🐳くじら:
文章を書いてみて何か今どういう気持ちですか。

谷本洋之:
まず書くことによって、自分が経験したことを整理できるし、1日の出来事の中でこういうことがあって、僕はそのときこういう反応したんだなとか、そこに自分の弱点みたいなものを見出したり、こういうときに俺焦ったりしてるなっていうのがよくわかって。そういうことを自分にフィードバックしやすいなっていうのをよく感じます。
それから単純にもう何て言うんですかね、ただ出来事をすごい観察して文章化して、そのリズムを楽しむっていうのがもうただただ、それがただ楽しいなっていうふうに感じてます。

🐳くじら:
楽しいっていう気持ちが強い?

谷本洋之:
そうですね、そこが一番強いですね。伝えたいと思うことがいっぱいあるので、それをどうやって伝えたらいいんだろうなとか、書きながら一生懸命考えたりしてますね。

🐳くじら:
2年くらい前に絵を描き始めたのはどういう感じでしたか。

谷本洋之:
それまではなんていうか、何もなかったんですよね。自分が何者かっていうことにすごい悩み始めたというか、空っぽなんじゃないかっていうのがちょっと怖くなってきて。そういうのを多分考え始めた頃で。それでとりあえず絵を書いてみようっていう気持ちになって、そしたら思った以上に楽しくて。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
大体そんなきっかけで、何者かになりたいって思って絵を描き始めたところはあります。

🐳くじら:
ちなみに絵はどうやって書かれてるんですか。水彩とか。

谷本洋之:
最初は、百均でアクリル絵の具を買ってきて、それで描いてて。
えんぴつで下書きした上にアクリル絵の具で描いて、しばらくアクリルメインで書いて、たまに水彩なんかもやったりはしてました。
今年入ってからはずっと版画をやってて。自分の中で、版画で表現したい物語みたいなのがあって、つい最近それが「ああ、これで完成だな」ってふと思って。

🐳くじら:
へえ

谷本洋之:
はい。とりあえず一旦それで版画は終わりにしようかなとは思ってるんすけど、またやるかもしんないですけど。そのタイミングでちょうどギャラリーでの展示も決まって、これでちょっとひと区切りだなっていうふうに感じてます。

🐳くじら:
書きたいっていうか表現したいものって何なんですか。

谷本洋之:
それも結構変わってきてはいるんですけども、版画を始めたときには、自分自身に対する問いかけとして、自分ってただのペニスの影にすぎないんじゃないかなっていうふうに、急に思っちゃって。自分には何だかんだで、性欲があって、その性欲の充足のためにいろいろ振り回されて生きてるような感覚がして。なんかそこから離れて生きてくためにはどうしたらいいんだろうっていう。そのときに、その探求の旅が始まったみたいな感じで。そうですね、その探求の過程を表現したい、みたいなことを感じていて。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
結果としてその中で、ペニスの影が自分の体を手に入れるみたいな、その過程をちょっと表現したいと思うんです。その一環としてキックボクシングを始めてみたり、単純に鍛えることによって体を作るみたいなところから始めてみたり。いろいろあったんですけど、大体そんな感じですかね。僕今34なんですけど、30代ぐらい、30代前半とか20代後半ぐらいの、なんていうか、自分の存在感、存在の希薄さというか、寄る辺のなさっていうか、何かに捕まってないと立てないみたいな、なんかそういう感じ。

🐳くじら:
うん。

谷本洋之:
そういう感じからどうにか抜け出したいっていう、そういう思いを抱えてる人はいっぱいいると思うんです。その人が自覚してる、しないに関わらず。自分もそれに悩んできたので、自分自身もその活路を探しながら、同じように悩んでる人たちにも何か伝えられないかなって、そんなふうに考えていましたね。

🐳くじら:
ありがとうございます。ご自身の性格については何と言われることが多いですか。

谷本洋之:
割と優柔不断…いや、我慢強いって言われましたね、最近。僕自身全くそんなこと思ってなくて、むしろ弱い方だと思ってたんですけど、そうなんだ俺って我慢しちゃう性質なんだっていうのを最近気づきました。

🐳くじら:
具体的に何を我慢されてたんですか。

谷本洋之:
それこそ今やりたいことをやるっていうふうに決めてるわけですけど、やりたいよりも、わがままを言ったら見放されるとか、見離されて死んじゃうんじゃないかとか孤独になっちゃうんじゃないかっていう恐怖が非常に強くて。なので、周りの顔色をうかがって、自分のやりたいこととか欲望を我慢してしまうっていうような、そういったようなことですかね。

🐳くじら:
はいはい。

谷本洋之:
我慢の蓋っていうか、その欲望の蓋を外す作業をこの1.2年でずっと取り組んできて、やっとその蓋がパーンって開いた状態になって。それで今の仕事を辞めて、全然違う生き方を探そうかなっていう。やりたいことをやるための生き方をこれから探していこうって思ってるんです。

🐳くじら:
では今の会社は自分にとってやりたいことではない?

谷本洋之:
そうですね。やりたいかって言われたら、やりたいことでは別に。やれるからやってるっていうだけで。

🐳くじら:
ご自身ではご自分の性格のことはどう思いますか。

谷本洋之:
今も結構自分に対する印象も変わりつつあるので何とも言えないんですけど、基本的には臆病なんだとは思います。

🐳くじら:
臆病?

谷本洋之:
自分の臆病さをどうしようかなってずっと考えてきて、現実的に勇気をつけられるような行動を考えたり、本を読んで勉強したりして実践してきたので、そういうところを見ると、根本的に真面目だなとも思います。現実的にどうしたらいいかっていう考えが昔から何となく頭ん中にある気がして、それで諦めずにコツコツやってきたんだなって思うと、真面目って表現するのがいいのかなと思います。

🐳くじら:
臆病さってのはどういうものに対する臆病さですか。

谷本洋之:
さっきの我慢の話にも繋がってくるんですけど、無くなってしまう、何かを失ってしまうんじゃないかとか、そういったことに対する、恐怖というか、臆病さだと思います。
このことに関していうと、最近エッセイにも書いたんですけど、私ラーメンっていうものを最近まであんまり食べなかったんですけど。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
なぜラーメン食べないかっていうと、ラーメンって美味しいのになくなっちゃうから嫌だって思ってたんですよね。

🐳くじら:
へえ

谷本洋之:
ラーメンこんなに美味しいのに食べ終わったらなくなっちゃうっていう悲しみが嫌だから、ラーメンを好きにならない方がいいみたいな。こういう臆病さがずっとあったんだなって最近気づいて。最近になってラーメンをよく食べるようになったんですけど。
なんかそれって恋愛とかにも似てるなっていうか、傷つくのが怖いから好きにならないとか。あともっといえば死ぬのが怖いから、安心を高い金を払って買ったりとかして。
で、今を楽しめてないというか、そういうところにも繋がってくるなって思って。そんな感じですね。

🐳くじら:
最近一番笑ったことって何かありますか。

谷本洋之:
笑ったこと…ジョイマンで笑いました。

🐳くじら:
ジョイマン?

谷本洋之:
これ本当面白いというかすごいなって思って大爆笑してました。ジョイマンのネタってあまり見たことなかったんですけど、ふと気になって見てみたら、ツッコミの池谷さんが最初悩んでて、そこに高木さんが現れて、その悩みを解決するよって言いながら、ただラップをして踊って。これ、悩みを脱意味化してリズムゲームとして遊んでるんだなって思って。これは面白いなって感心するのと同時に、もう単純に面白くて爆笑しちゃったっていう。

🐳くじら:
ふう。

谷本洋之:
なんかこういう生き方できたら面白いなと思って、悩みもあんまり共感しすぎるんじゃなくて、そうやって笑い飛ばすような感覚で生きられたら非常にいいなっていうのをちょっと思いました。
また、そういうことを文章で表現していけたらいいかなって思ってます。

🐳くじら:
ご自分の思ったこと考えたことを感じたことを文章にするときなんか言語化をスッとできますか。

谷本洋之:
割とできますね。気になったことや問いをまず最初に置いてみたら、その後に言葉がどんどん続いてきてっていう感じで。むしろ紙に書くことによって言語化してる。言語化して書いているというよりは、書くことによって言語化しているっていう感覚も少しあるかなと思います

🐳くじら:
うん。

谷本洋之:
もちろん後で並べ替えたり、細かいところを削ったりっていうのはあるんですけども、書くって行為がそのまま言語化っていう感じなので、すっと出ますね。ものを考えるのと同じ感じで書ける。

🐳くじら:
キックボクシングを始められたっておっしゃってましたが、趣味っていうと何が出てきますか。

谷本洋之:
やってること全部趣味みたいなもんなんですけど、並べるとすれば、読書と絵を描くこととキックボクシング。あとは映画鑑賞とかっていうのが一番妥当かもしれないですね。

🐳くじら:
何かおすすめの映画とかありますか。良かった映画とか。

谷本洋之:
昔からすごい好きなのはジムジャームッシュのパターソンとか大好きなんですけど。

🐳くじら:
パターソン。

谷本洋之:
はい。生活のリズムとその単調に見えるようなリズムの中でちょっとした、イレギュラーな出来事がたまにあったりして。繰り返されるリズムの中にちょっとした違和感があるっていうそのリズムを楽しんでいくっていうような、ざっくり言うとそんな映画なので。それがすごい気持ちいいなっていうのと、そういう生き方ができたら面白いなって思います。
あと最近見た映画だとルックバックが面白かったですね。
🐳くじら:
ああ、アニメの。

谷本洋之:
はい、めちゃくちゃ面白かったです。しばらく立てなくなりました。2日連続で見に行ったんですけど、2日連続とも立てなくなりました。

🐳くじら:
何がそんなに感動的でしたか。

谷本洋之:
具体的な内容も非常に面白いんですけど、やっぱ後半にかけて主人公の感情の渦というか、そういったものがどんどん大きくなっていって。巨大な感情の渦みたいなのがもうどんどんワーッと広がってって。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
その大きくなった渦が、鎮まるというわけでもなく、自分の小さい体の中に、すぽっ、って収まってしまうような。なんかそういう気持ちよさがあって。その渦がなくなってしまったわけじゃないけど、その渦がスポッと収まってしまう、その感覚でちょっと放心しちゃって。もうしばらくその余韻に浸ってボーっとしてました。


過去:せめて僕から母に大変だったねって、ただお互い大変だったねってただそれだけ言えればいいかなと思ってます。

🐳くじら:
ありがとうございます。
では、過去のお話に移っていこうと思います。谷本さんが子供のときはどんなお子さんでしたか。

谷本洋之:
恥ずかしがり屋だったような気もするし、どうですかね。優しかったんじゃないかなって思います。優しい子だったような気がします。

🐳くじら:
具体的に出てくる場面とかありますか。

谷本洋之:
小学校5年生くらいのとき、僕は転校生だったんですけど、その時期クラス内にいじめがあったと思うんですけど。でもそういうのがよくわからなかったんですよね。その雰囲気とか。それはたまたま転校生だからかもしれないですけど。
それでいじめられてる子とか特に何の隔たりもなく普通に接してたんですけども。ただそうするとやっぱり僕の方もいじめの標的になってしまうわけで。それでからかわれたりとか、また相手が女の子だったので、それですごいからかわれたりして。割とそういう純真みたいなところがあったなという気がします。
でもその事件がきっかけでそういうふうに純真でいると、自分が標的にされるんだなっていうことがどんどん怖くなっていったような気はします。

🐳くじら:
中学生あたりはどうでしたか。

谷本洋之:
この頃はもう、そこは逆にさっきの話の反動というか。僕は中学校のときみんなと違う友達もあまりいない中学校に行ってしまったので、友達が最初あんまりできなくて。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
今度は、すごい頑張って何とか周りに合わせて、とにかく1人ぽっちになりたくないっていう気持ちがすごい強かったと思います。クラスのカーストの中で高い位置にいるやつにくっついて回ったりとか、そんな感じだったように思います。全然自分なんてなかったですね。

🐳くじら:
高校あたりはどうですか。

谷本洋之:
高校からバンドをやってたんですけど、そのときもやっぱりバンドのリーダーというか、相方というか、自分の一番仲いい友達がいたんですけど、彼にすごい引っ張ってもらってて、いつも。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
なんか自分もすげえんだぜってふりしてたけど、実は空っぽだったなっていうか。そういう印象ですかね。虚勢張ってたなっていうのはよく思い出します。あとやっぱり真面目。それなりに勉強は真面目にやってたかなっていう気はします。
ただ勉強を真面目にしてたのも、何となく勉強はするべきものだからしてたっていう感じで。やりたいから勉強してるっていうよりは、特にやりたいことがないからとりあえず最低限勉強しておくみたいな感じで。テストの点は良かったんですけどあんまり意欲的に学んでたとは言えなくて、だからあまり学んだことはそんなに覚えてないって感じですかね。

🐳くじら:
初めに性欲に引っ張られて、振り回されていたっていうふうにおっしゃってましたが、どういう場面からそういう感覚になったんですか。

谷本洋之:
20代前半とか20代ぐらいって、やっぱり前提としてモテたいって思ってたと思うんですよね。でもモテたいって感じを出すのがかっこ悪いと思ってるから、蓋をしてるけど蓋した結果、そのモテたいっていうのがすごいこじれて、すごいヘンテコなことやり始めたり。ヘンテコだし全然素直になれてないとか、変なカッコつけしたりっていうのが、20代のときあったと思うんですけど。30代に入ってくると、なんかこのままじゃ駄目だなっていう気がしてきて。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
30代になって絵を描き始める少し前に付き合った彼女がいるんですけど、やっぱりなんかそれも結局のところ、非常に僕は依存してしまって、結果的に別れてしまったんですけど。その精神的に依存するっていうのもやっぱりどっか性欲に関係してんのかなっていう感じがして。
性欲も何ていうか、問いただしていけば、母親の代わりをすごい追い求めてるような感覚がちょっとあって。

🐳くじら:
うん。

谷本洋之:
何ていうかやっぱ母親と同一化して安心したいみたいな。そういった感じが克服できてない感じがすごいして。それが性欲として表れてるのかなって。今新しいパートナーがいるんですけど、何とかそこを越えていかないと、パートナーと今後一緒に暮らしていく上でも、そういう依存したいっていう気持ち、いわゆるそれが性欲として出てくるのかなんなのか、いろんな形で出てきてしまうと思うんですけど。
そこら辺をうまく自分で折り合いつけないとパートナーに対しても、いつまでもその依存する対象としてのパートナーになってしまうので。そうするとパートナーがいつまでたっても自由になれないというか、お互いが幸せになるために一緒にいるっていうふうにしたいのに、僕が依存するために一緒にいてもらってるみたいな感覚になっちゃうなと思って。彼女も彼女で、きっとその甘やかしてるっていうのに多少快感もあるかもしれないけど、なんかやっぱこのままだと、嫌だなって思って。
そういったこともあって、そういった性欲とか自分の誰かに依存したい甘えたいっていう気持ちと向き合うために絵を描き始めたりしたのかなって思ってます。

🐳くじら:
依存しているとき、どういう感覚なんですか。

谷本洋之:
前の彼女のときの話になるんですけど、本当にひどくて。もうLINEとかが返ってこないと不安になるし、LINEが来たら仕事中でもまず返信しなきゃってなっちゃったり。とにかく彼女からどう思われてるかっていうことがまず第1なんですよね。そのときはちょっと精神的にも変だったと思うんですけど、彼女に捨てられるか否かっていうことしか頭になくて。他のことが何もできないというか、仕事にも全然集中できない。
そういうストレスを周りの人にぶつけたりしてたような状態でした。今のパートナーのときはそんなにそこまではひどくないんですけど、それでもやっぱりちょっとした嫉妬心があったり。

🐳くじら:
うん。

谷本洋之:
彼女が遊びに行くのを引き止めたりしたことも過去にあります。自由にしてほしいって思うのに、別に浮気されるんじゃないかとか。信頼したいと思ってるのに、やっぱり嫉妬して引き止めてしまう。そういう心をどうにかして変えていきたい。またその嫉妬してしまうのはやっぱり依存してるからだと思いますし。

🐳くじら:
母親を求めてってさっきちょっとおっしゃってましたが、ご家族関係はどんな感じだったんですか。

谷本洋之:
12年前から母とはちょっとすれ違いがあって、ずっともう連絡を取ってなかったんです。
実の兄以外の家族とは12年来、連絡を取ってなかったんです。最近私が文章を書き始めたので、それがたまたま母親の目に入ったらしくて。そこにちょっと母のことを多少書いてたんですけども、それがきっかけで母からメッセージが飛んできて。

🐳くじら:
うん、

谷本洋之:
そのときに母が経験してきた12年間というか、その12年前のことについて母が話すことと、私が知ってること、私が感じてきた12年前のストーリーと全く別なものだっていうことに気づいたんですね。
それはどっちが正しいとかじゃなくて、お互いがそういうストーリーをただ生きてきただけだから、もう今更それのどっちが正しいとか突き詰めて、お前が悪いとかって言ってももうどうしようもない。ただのお互い不完全な人間でしかないんだからもういいかってなって。それですっきりしちゃって、それで実は来週12年ぶりに母に会いに行くことになったんです。

🐳くじら:
会いに行こうと決めたのはご自身で?

谷本洋之:
そうですね、私の方から会いに行っていいかいって聞いて。なんだかんだ喜んでくれてると思います。

🐳くじら:
12年前にすれ違う前はどんな関係性だったんですか。

谷本洋之:
それこそ僕は母に依存してたと思います。非常に。本当にそのときも僕は依存して離れたくなくて。でもちょっとその頃は、家族みんなが大変な思いをしてて、その大変な思いをしてるのはやっぱりそれぞれお互いのせいとか誰かのせいにしてたので。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
それで結果的にすれ違って離れることになったんですけど。私も母に依存していながらやっぱり母が悪いってどこかで思ってましたし。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
当時、母もまた大変で、そのときこういう大変なことがあってこうだったとかいろいろ電話で話してくれて。なるほどなって思いましたけど。12年ぶりに話を聞いてたら、僕も母がやってくれないから悪いみたいな、そういうふうなものの考え方ばかりしてたなっていうのをちょっと反省して。そうだったんだなと思って。

ただ、今は、僕が言ってもらわなくてもいいんですけど、せめて僕から母に大変だったねって、ただお互い大変だったねってただそれだけ言えればいいかなと思ってます。
できれば母からも大変だったんだねって言ってもらえればすごくいいんですけどそこはあんまり期待しないでいようかなと思って。お互いの生きてきたストーリーを否定することなく尊重し合いたいなって思って。それができれば一番いいなって思ってます。

🐳くじら:
なぜご自身がお母さんに依存していたんだと思いますか。

谷本洋之:
多かれ少なかれみんな生まれたときは母がいないと生きていけないわけですし、それが徐々に離れても生きていけるようになっていくものだとは思うんですけど。
それが何で、特に僕はひどかったかっていうと、いろんな環境の問題があるとは思いますが、一概になんでっていうのは言えないかなと思います。
当時20歳ぐらいのとき、それこそ母を離れてまでやりたいこととか、そういうことを多分何も見つけられなくて。どこかで母と一緒にいるために、母を助けるために俺はここにいるんだ、みたいなことを何となく思ってたように思います。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
母を助けたいんじゃなくて母と一緒にいたい。ただそれだけなんですけど、何かそういう言い換えをしていたと思います。なので親を1人の人間として見てなかったというか、母親は完璧な母親であるべきっていう考え方が無意識にあったと思います。それは今の社会で生きてても、なんか同じような構造のものがいっぱいあるなって思います。会社とかシステムとか国とか、会社が悪いとか国が悪いとかって言っちゃうとき、それってなんか母に依存してたように、会社に依存してるとか国に依存してるとか、そういうことなんだなって思います。

🐳くじら:
つまり一つの個性、一人の人間とか会社だとかそういうふうに見れてないっていうことですか。

谷本洋之:
そうですね、なんていうか、あくまで会社も母も国も元を正せば人じゃないですか。だから完璧じゃないのなんて当たり前じゃないですか。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
なのに会社に依存してる、母に依存してる、国に依存してる。ただの人で不完全なものに過ぎないのにそこに依存してるから、何か嫌なことがあったときに、母のせいだ、会社のせいだ国のせいだって言ってしまう。
それが不完全であるっていうことを認めていない。要は人の個性を認めていないっていうのと同義になると思いますね。

未来:こういうことが明日死んでもいいように生きるっていうことなんだなと。それが、何かが今達成されてなくても、その達成に向かってやりたいことのために向かって努力できてるというか、歩けているっていう。その瞬間こそが幸せであって、その瞬間の中で死んでいけるんだったら、特に悔いはないんだなっていうことを、実感として感じてます。

🐳くじら:
ありがとうございます。時間が来たので、未来の質問に入っていこうと思います。
5年後、10年後、あるいは死ぬときまでを想像していただいて、未来についてどんなイメージをお持ちですか。

谷本洋之:
未来については、もう明日死ぬと思って生きてるので。明日死んでも悔いのないように。さっきラーメンの話しましたけど、ラーメンがなくなってしまっても悔いがないようにラーメンを楽しむっていうのと同じように、いつ人生が終わってしまっても悔いのないように、今を楽しむっていうような生き方をもう始める覚悟ができたので。未来もいろいろ大変なことがあるだろうけど、基本的には何とかなるっていうイメージが、確固たる何とかなるっていうイメージがあります。言葉は曖昧ですけどそれは確実に何とかなると思ってます。

🐳くじら:
ええ。

谷本洋之:
近いところで言うと、今文章とか絵を書いたりしてるので、そういう一番好きなことをやりながら生きていくっていうことを実践するためにどうしたらいいのかっていうのを今考えてる最中なんですけども。そのためにはやっぱり人脈とか、人とコミュニケーションを取ることがまず何より大事だなって思って。
これからはそのやりたいことをやりながら、やりたいことをやろうとしてる人を、またその仲間にして、そういう人たちと協力したり連携したりしながら輪を広げていったら、そういう何か会社に依存したりしなくてもきっと生きていけるなっていうふうに考えてまして。それを今実践していこうって思ってますね。

🐳くじら:
明日死んでも悔いがないようにというのは、いつ頃からそういう心持ちで生きてるんですか。

谷本洋之:
本当につい最近というか、昔からその言葉はあったし、そういうふうに生きるのがいいんだよなって頭ん中にあったんですけど。それが本当にどういう意味なのか、どういう生き方なのかっていうのに気づいたのは、それこそ文章書き始めた瞬間からだと思います。
頭でわかってても全然できてなかったんだな今までは、っていうふうに気づきました。

🐳くじら:
そういう気持ちになってから、ご自身はどういうふうに変わりましたか。

谷本洋之:
基本的に楽しいですね。

🐳くじら:
へえ。

谷本洋之:
明日死ぬから急に死ぬかもしんないから、もう快楽的に享楽的に生きろとか、そういうことではないんだなっていうことがよくわかって。やりたいことを実現するためにどうしたらいいかっていうこととか、あとは自分の本当の欲望に目を向けるっていうことがすごい大事で。その自分の欲望っていうのは割と自分の汚い部分でもあったり隠しておきたい部分でもあるので、なかなか目がつかないんですけど、毎日そういったことに目を向けながら、本当に自分のやりたいことっていうのを少しずつ実現するために、毎日努力していくっていうこと。

こういうことが明日死んでもいいように生きるっていうことなんだなと。何かが今達成されてなくても、その達成に向かってやりたいことのために向かって努力できてるというか、歩けているっていう。その瞬間こそが幸せであって、その瞬間の中で死んでいけるんだったら、特に悔いはないんだなっていうことを、実感として感じてます。

🐳くじら:
今ストレスみたいなのはないですか。

谷本洋之:
かなりなくなってます。まだちょっと仕事とかがあるので、なんか今日すごく作りたい気分、描きたい気分だけど今日は仕事だと思うときはやっぱりそのストレスにはなりますけど。そのときはそのときで仕事もあとちょっとだし、逆に仕事を観察してみて何か楽しいことないかなっていうふうに頭を切り替えるようにはしてます。

🐳くじら:
へえ。

谷本洋之:
だから、仕事の中で普段使ってる道具とかをじっと見て観察してみてその観察から小説を書いてみたりとか、なんかそういったような楽しみ方をしてますね。あまり忙しかったり疲れたりすると、それはできなくなっちゃうんですけど。残業とかはやっぱりちょっとストレスです。

🐳くじら:
もしもの未来質問で、谷本さんがもし誰にも依存しないような人間だったら、どういう人生になってたと思いますか。

谷本洋之:
うーん、だとしたら、結局なんかしら芸術家とかになってるんじゃないかなって気がしますけど(笑)。

🐳くじら:
芸術家に。

谷本洋之:
自分の思った通り好きなことを表現するような人間に、というかこれから僕が多分なろうとしてる自分にもうただなってるんじゃないかなと思います。

🐳くじら:
ああ、先回りして。

谷本洋之:
そうですね。それは僕が目指したいところではあるので。依存しないとか、期待しないとか。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
不完全なものというかこういうもんなんだなっていうのを、世界に対して、それをありのままの世界をそのまま受け入れる。その上で観察して楽しむっていうような、そういった生き方をしていきたいと思うんですけど。もしもこうだったらっておっしゃったのはまさしくそれと繋がるというものなのかなと思うんですね。

🐳くじら:
最初っから誰にも依存せず、期待せずっていう人が芸術家になって何を表現すると思いますか。

谷本洋之:
難しいですね…最初から依存せずっていうのがそもそも前提として…面白いなどうなるんですかね(笑)。とても不思議なものを作るんじゃないかなって思いますが。やっぱり人が作ったものって、どんな訳わかんないものでも、何となく頭ん中でそのストーリー考えちゃうじゃないですか。こういう意味なんじゃないかっていう、多分そういったものがもっと感じ取りづらいものを作ってるんじゃないかなっていう気がします。本当になんだかよくわからないけど、なんかすごいもんみたいな。

🐳くじら:
なるほど。

谷本洋之:
もっともっと自由というか、もっと意味を排除したところのものを作れるというか、多分そんなような気がします。

🐳くじら:
今後ご自身が文章か何かで自分を表現するってなったときとは、また別のものになりますか。

谷本洋之:
いやあ、多分それも突き詰めていけば、繋がるんじゃないかなって思いますけど。ただそこまでできるかなって。詰めれば本当にそういう今言ったようなものになっていくんじゃないかなとは思いますけど、どうでしょうね。

🐳くじら:
わかりました。ありがとうございます。何かこれをやるまではちょっと死ねないなみたいなのってありますか。

谷本洋之:
そうですね、とりあえず母親に会わずに死ねないなと思ってます。
思ったことはできるだけすぐ実現するように行動するようにしているので。飛行機さえ取っちゃえば実現できる。なのでそういうことはすぐやることにしています。

🐳くじら:
うん。

谷本洋之:
やらないと死ねないなっていうのは割と今、なんでも手前に持ってきてるので。で、今で言えば母親と会うことです。

🐳くじら:
他には特に出てきませんか。

谷本洋之:
特には、そうですね、本を出したいとか。
本を出すのもそれこそ僕が悩んできたこととか、そういったことに対して、何かを伝えられるものが作れたらいいなとは思っています。そういうことを伝えるためにきっと文章を書き続けるのかなっていう気もするんですけど。

🐳くじら:
うん。

谷本洋之:
ただそれは何ていうか、そこに向かって毎日少しずつ努力しているので、それがまたどこまでいったら達成かっていうことは特に決められないと思うんですよ。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
なので、死ぬまでにやっておかないと死にきれないような感覚はあんまり持ってないですね。達成したいことのために今もうちゃんと一歩ずつ歩んでるので。言うとしたらその死ぬまでに達成していきたいっていうことは、そういう何かを伝えたいっていうことですけど。それは達成したいというか死ぬまで続けることだと思って。どこで終わりっていうものが決められないし。だから挙げるとすれば、やっぱり母と会うことかなっていうぐらいですね。

🐳くじら:
パートナーの方がいるっておっしゃってましたが、その方と今後例えば結婚するとか、そういったことを特に考えていませんか。

谷本洋之:
考えてはいますけど、結婚かどうかはともかく、僕自身が幸せになりたいっていうのと別で、2人で幸せになれたらいいなっていうのを思ってるので。やりたいことの中にやっぱり僕1人で幸せになるっていうことと、2人で幸せになるっていうこと、それがどっちも僕のやりたいことの中に入ってるので。その手段として結婚というものを意思表示のツールとして使うかもしれないですね。結婚はあくまで意思表示のツールぐらいにしか思ってないです。するかもしれないし。

🐳くじら:
わかりました。最後に言い残したこととして、何か読者に向けてとか、ご自身に対してとか、あと全体を通した感想でも何でもいいんですが、何か最後に言いたいことがあれば、ぜひお伺いしたいです。

谷本洋之:
まず感想から言わせてもらうと、質問していただいて喋るっていうこういうコミュニケーションを取るっていうことがまず非常に面白いなと思ったのと、自分の頭の整理にもなりますし。
まず読者に伝えたいことは、この企画自体がとても素晴らしいものだと思いますと伝えたいですね。

🐳くじら:
ありがとうございます。

谷本洋之:
インタビューを読むのも、自分がインタビューを受けるっていうのも非常にいい経験だと思います。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
あと伝えたいことは、僕のラーメンの話なんかみたいに、そこから押し広げて考えていくと、恋愛のことだったり人生のことだったりっていうのがフラクタルに繋がってることとかがいっぱいあると思うんですよ。

ラーメンの食べ方から生き方って話をしたんですけど、そういったいうふうに何かちょっとしたことでもそういった人生についての知見が見つけられることもあるので。そういった物事をよく観察するっていうこと、そういうのをみんなやってみたらいいんじゃないかなと思います。
割とそこが第一歩なのかもしれないなっていう気もします。

🐳くじら:
はい。

谷本洋之:
それぐらいかな。あとは仕事をしすぎないで休んだ方がいいよっていうことです。休んでゆっくり考えたら、やりたいこと見えてくるかもしれないよっていうことですね。

🐳くじら:
うん。

谷本洋之:
忙しかったり疲れてたり焦ったりしてるときは自分のやりたいことってなかなか見えてこないので、まずは銭湯なんか行ってのんびり過ごすことを皆さんにおすすめします。

🐳くじら:
ではインタビューはここで終わりでよろしいですか。

谷本洋之:
はい、ありがとうございました。

🐳くじら:
ありがとうございました。

あとがき

🐳くじら自身は書くという作業にずっと苦手意識があって、なんか何を書いても自分の思っていることの10分の1も表現できていないな、と感じて凹むことが多いのです。だから、さらさらと自分の考えたことを豊かに文章で表現できる人ってすごいよな〜って思います。
絵を描いたり、文章を書いたり、その過程もまたその人の人生という物語の一部なので、人生そのものがその人の作品ですよね。無名人インタビューを受けられる方ってやはりnote繋がりもあって文章を書く方が多いように思いますが、その方達の人生(作品)の制作過程を覗かせていただいているんだな、と改めて感じるようなインタビューでした。
【インタビュー・編集・あとがき:くじら】

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