小説「無名人インタビュー物語 ――聞き手たちの冒険」第三部後編
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第一部後編:https://note.com/unknowninterview/n/nec3e4c4ce1ff
第二部前編:https://note.com/unknowninterview/n/n2848dd7b8de3
第二部後編:https://note.com/unknowninterview/n/nd36a82ec0002
第三部前編:https://note.com/unknowninterview/n/n8be14df5411f
第三部後編:この記事です
三部後編:物語が織りなす新たな旅路
心の距離、再び近づく
鷹匠は「木漏れ日」で、実験的なインタビューを行っていた。今回のゲストは、40代のビジネスマン、佐藤雄一。場所は「木漏れ日」の隣にある小さな公園だった。
「佐藤さん、今日は少し変わったインタビューになりますが、よろしいでしょうか?」鷹匠が尋ねると、佐藤は少し戸惑いながらも頷いた。
「では、ジョギングをしながらお話を伺いたいと思います」
二人は並んでゆっくりと走り始めた。最初は気恥ずかしさからか会話が続かなかったが、徐々に時間が経つにつれ、佐藤の口から言葉が溢れ始めた。
「実は...」佐藤は息を整えながら話し始めた。「最近、人生の岐路に立っているんです」
鷹匠は相手の呼吸に合わせるように、質問を投げかけた。「どんな岐路でしょうか?」
汗が滲み出る中、佐藤は自分の人生について語り始めた。仕事の行き詰まり、家族との関係、そして新たな挑戦への憧れ。走ることで体が開放されるにつれ、彼の心も開いていくようだった。
5キロを走り終えた頃、二人は公園のベンチに腰を下ろした。佐藤の表情が、来た時とは明らかに違っていた。
「不思議ですね」佐藤は晴れやかな顔で言った。「走りながら話すことで、自分の気持ちがクリアになった気がします」
鷹匠は満足げに微笑んだ。「体を動かすことで、心も動き出すんですね」
この経験を通じて、鷹匠は新たな可能性を感じていた。従来の静的なインタビューでは引き出せなかった本音が、体を動かすことで自然と溢れ出てくる。
鷹匠は、ジョギングインタビューの成功に勢いを得て、さらに新しい形式のインタビューを試みることにした。
次の挑戦は、サウナインタビューだった。「木漏れ日」の近くにある銭湯の協力を得て、サウナ室を貸し切りにしての企画だ。
今回のゲストは、30代の女性会社員、田中春。鷹匠と春は、サウナの熱気の中で向かい合った。
「田中さん、この暑さの中で話すのは大変かもしれませんが、リラックスして話してください」鷹匠は優しく声をかけた。
「私、最近、仕事と私生活のバランスに悩んでいて...」
蒸気で視界が曇る中、鷹匠は春の言葉に耳を傾けた。高温多湿の極限状態で、人は意外なほど率直に語り始める。そして、水風呂に浸かった時の「ととのい」の瞬間、美咲の表情が一変する様子を目の当たりにした。
「あ、なんだか全てがクリアになった気がします」春は目を輝かせて言った。「仕事も大切だけど、自分の時間も大切にしていいんだって、今やっと気づきました」
鷹匠は、この新しいインタビュー形式の可能性に心躍らせた。
その後も、ネイルサロンでのインタビュー、新幹線での移動中インタビューと、鷹匠は次々と新しい形式を試していった。それぞれの環境が、ゲストの心に独特の影響を与え、思いがけない言葉を引き出していく。
そして挑戦を重ねる鷹匠の中で、新たな疑問が芽生え始めた。
(本当に人の心の奥底にあるものを理解するには、もっと長い時間が必要なのではないか)
ある日、鷹匠は「木漏れ日」で葉山に新しい形式のインタビューについて報告していた。
「葉山さん、ジョギングインタビューやサウナインタビューを試してみて、確かに新しい発見はありました。でも同時に、何か物足りなさも感じているんです」
葉山は興味深そうに尋ねた。「どんな物足りなさですか?」
鷹匠は言葉を選びながら答えた。「どれも短時間のインタビューで、表面的な部分しか捉えられていない気がして...24時間インタビューのときのような深い理解には至れないんです」
葉山は窓の外を見やり、夕暮れの街並みを眺めながら、ふと思い出したように鷹匠に向き直った。
「そういえば、麗子さん」葉山の声には、優しさと少しの気遣いが混ざっていた。「先日、さくらさんに連絡すると仰っていましたね。お話しできましたか?」
鷹匠は一瞬、言葉に詰まった。彼女の目に、わずかな罪悪感の色が浮かぶ。「あ...実は...」
葉山は鷹匠の躊躇いを察し、優しく微笑んだ。「まだでしたか。気持ちはわかります。新しいプロジェクトの準備で忙しかったでしょうから」
鷹匠は小さく息をつき、肩の力を抜いた。「はい...言い訳になってしまいますが、色々と考えることがあって...」
「でも」葉山は静かに、しかし確かな口調で続けた。「さくらさんの存在が、麗子さんにとって特別だったことは間違いないと思うんです。そして、彼女の視点は、きっと私たちのプロジェクトに新しい風を吹き込んでくれるはずです」
鷹匠は葉山の言葉に、自分の中の何かが動くのを感じた。確かに、さくらとの24時間インタビューは、彼女のインタビュアーとしての在り方を大きく変えるきっかけになった。そして今、新たな挑戦を前に、もう一度さくらの視点を必要としているのかもしれない。
「葉山さん...」鷹匠は静かに、しかし決意を込めて言った。「ありがとうございます。今夜、さくらさんに連絡してみます」
葉山は満足げに頷いた。「そうですね。きっと、さくらさんも麗子さんからの連絡を待っているかもしれませんよ」
鷹匠の胸の中で、期待と不安が入り混じる。さくらとの再会が、彼女にどんな影響を与えるのか。そして、「木漏れ日」の新しいプロジェクトにどんな変化をもたらすのか。
カフェの窓から差し込む夕陽が、鷹匠の横顔を優しく照らしていた。その光の中に、新たな物語の予感が漂っているようだった。
その日の夕方、鷹匠は勇気を出してさくらに連絡を取った。
(さくらさん、今どうしているだろう...)
「もしもし、さくらさん?」鷹匠の声には、少しの緊張が混じっていた。
「麗子さん!」さくらの声が明るく響いてきた。「お久しぶりです。どうされたんですか?」
「あの...」鷹匠は言葉を選びながら続けた。「インタビューの後、さくらさんのことが気になっていて...お会いできないかなと思いまして」
さくらの声に笑みが感じられた。「もちろんです。実は私も麗子さんに会いたいと思っていたんです」
二人は、週末に「木漏れ日」で会う約束をした。
約束の日、さくらが「木漏れ日」に姿を現した時、鷹匠の心臓が大きく跳ねた。
「さくらさん、来てくれてありがとうございます」鷹匠は微笑みながら言った。
さくらは、鷹匠の姿を見るなり、優しい笑顔を浮かべた。「麗子さん、久しぶり」と柔らかな声で呼びかけた。「お元気でしたか?」
鷹匠は安堵の表情を見せながら答えた。「さくらさん、来てくれてありがとう。元気よ、あなたは?」
さくらは少し首を傾げ、「私は元気です。でも...麗子さん、何か考えこんでいるように見えますね。何かあったんですか?」と優しく尋ねた。
鷹匠は少し躊躇いながら答えた。「実は...『木漏れ日』のことで、色々考えていて」
さくらは静かに頷き、「お話を聞かせてもらえますか?」と促した。
二人がカウンター席に座ると、さくらは鷹匠の話に耳を傾けた。鷹匠がインタビューカフェの構想について語り始めると、さくらの目が徐々に輝きを増していった。
「素敵なアイデアですね」さくらは優しく微笑んだ。「人々の物語を共有できる場所...麗子さんらしい発想だと思います」
鷹匠は安心したように肩の力を抜いた。「ありがとう、さくらさん。でも、まだ具体的にどうすればいいか悩んでいて...」
さくらは静かに考えこんだ後、申し出た。「麗子さん、私にもこのプロジェクト、手伝わせてくれませんか。例えば、デザインの面でアドバイスできるかもしれません。」
鷹匠は嬉しそうに頷いた。「ありがとうございます、さくらさん。あなたの協力が得られるなんて、本当に心強いです」
二人は店内を見回しながら、インタビューカフェ構想について語り合った。穏やかな雰囲気の中で互いのアイデアを共有する。さくらの柔らかな物腰と繊細な感性が、鷹匠の構想にさらなる深みを与えていく。
やがて、鷹匠はカウンターを指さした。
「少し休憩しませんか? コーヒーを淹れましょう」
さくらは微笑んで同意した。「ぜひお願いします。麗子さんの淹れるコーヒー、久しぶりに飲みたいな」
二人はカウンター席に座り、鷹匠が丁寧にコーヒーを淹れる様子を眺めながら、さくらが静かに言った。
「麗子さん、素敵な構想ですね。インタビューから、こんなに大きなアイデアが生まれるなんて。私、インタビューがこんなに可能性を秘めたものだなんて、知らなかった」
鷹匠は少し照れくさそうに頷いた。その瞬間、彼女の頬に微かな紅潮が浮かび、目は柔らかな光を帯びた。「ありがとうございます。実は...さくらさんとの24時間インタビューが、大きなきっかけになったんです」
さくらは興味深そうに尋ねた。首を少し傾げ、鷹匠の言葉に全神経を集中させるように身を乗り出す。「そうなんですか? どんなふうに?」
二人の間に流れる空気は、温かさと期待に満ちていた。鷹匠の目が、過去の記憶を辿るように遠くを見つめる一方で、さくらの表情には、これから聞く話への熱心な興味が表れていた。
鷹匠は言葉を選びながら答えた。「実は、24時間インタビューは一つの実験だったんです。通常の1〜2時間のインタビューでは捉えきれない、その人の人生の深層に迫りたいと思って...」
さくらは興味深そうに聞き入った。
鷹匠は続けた。「その24時間で、さくらさんの日常、仕事、趣味、人間関係...人生のあらゆる側面を見ることができました。朝の習慣から夜の過ごし方まで、さくらさんの一日の流れに寄り添うことで、言葉だけでは表現しきれない部分も感じ取れたんです」
「そうだったんですね」さくらは静かに頷いた。
「例えば、さくらさんが仕事で行き詰まった時の表情や、友人と話す時の声のトーン、夜空を見上げる時の目の輝き...そういった瞬間瞬間に、さくらさんの本質が現れていたように感じました」
さくらはじっと鷹匠の目を見つめた。「麗子さん...私も、あの24時間は特別でした。麗子さんに人生を語ることで、自分自身のことをより深く理解できた気がします。日常の中に隠れている自分の本当の想いや、今まで気づかなかった自分の一面に出会えたんです」
鷹匠は微笑んだ。「そうですか。私にとっても、人の人生により深く寄り添うことの大切さを感じる機会になりました。そして、それをもっと多くの人々と共有したい...そう思ったんです」
「だから、このインタビューカフェの構想が生まれたんですね」さくらは理解したように頷いた。
「はい。人々が自然に集まり、互いの人生の物語を共有できる場所。そんな空間を作りたいと思ったんです」
二人の間に、一瞬の沈黙が流れた。その沈黙は、言葉以上に多くのことを語っているようだった。
鷹匠の目は、遠い記憶を追いかけるように柔らかく揺らめいていた。彼女の指先が、無意識のうちにカップの縁をなぞり、その動きは微かな緊張を滲ませていた。深呼吸をする度に、胸の高鳴りが静まっていくのを感じる。
一方、さくらは身を乗り出したまま、鷹匠の言葉を待っていた。彼女の瞳には、好奇心と共に、どこか切ない光が宿っていた。唇を軽く噛みながら、次の言葉を待つ姿勢には、期待と不安が入り混じっていた。
二人の間に漂う空気は、温かく、しかし同時に不思議な緊張感に満ちていた。カフェの柔らかな照明が、二人の表情に繊細な陰影を落としている。この沈黙の中で、言葉にならない感情が、静かに、しかし確実に交錯していた。
鷹匠は、少し躊躇いながらも続けた。「さくらさん、このプロジェクトについて、あなたの意見を聞もっとかせてもらえませんか?」
さくらは嬉しそうに頷いた。「もちろんです。私にできることがあれば、喜んで協力させていただきます」
「ありがとうございます」鷹匠は心からの感謝をこめて言った。「でも...いや、協力というか、むしろ。さくらさん、プロジェクトのメンバーになってくれませんか? 二人で一緒にこのプロジェクトを進められたら、こんなに心強いことはないです」
さくらは優しく微笑んだ。「私も、麗子さんと一緒のプロジェクトにいられることが、楽しみです。一緒に素敵な場所を作り上げていけたらいいですね」
二人は、これからの「木漏れ日」について熱心に話し合い始めた。その会話の中で、互いへの理解と信頼が少しずつ深まっていくのを感じていた。
この日以降、さくらは「木漏れ日」の常連となり、時にはコンセプトアドバイザーとして、時にはチーフデザイナーとして、鷹匠のプロジェクトに参加するようになった。二人の関係は、プロフェッショナルな協力関係を基盤としながら、徐々に個人的な関係へと発展していった。
「Untitled」の誕生 - 名もなき物語の始まり
インタビューカフェ「木漏れ日」のオープン日、鷹匠は緊張と期待で胸を躍らせていた。さくらと共に準備してきたこの日を、彼女はようやく迎えることができた。
オープンの瞬間、思いがけない来客があった。
「久しぶり、鷹匠さん」
その声に振り向くと、そこにはqbcの姿があった。病から回復し、穏やかな笑顔を浮かべている。
「qbcさん!」鷹匠は驚きと喜びを隠せずに駆け寄った。「お元気になられて、本当によかった」
qbcは優しく頷いた。「ええ、やっと復帰できました。そして、こんな素晴らしい瞬間に立ち会えて光栄です」
qbcは店内を見回し、静かに話し始めた。「鷹匠さん、このカフェの開店に際して、村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチを思い出しました」
鷹匠は興味深そうに耳を傾けた。
qbcは続けた。「村上さんはこう言っています。『小説家はうまい嘘をつくことによって、本当のように見える虚構を創り出すことによって、真実を別の場所に引っ張り出し、その姿に別の光をあてることができる』と。このカフェも同じような役割を果たせるのではないでしょうか。小説家が虚構を通じて真実に迫るように、このカフェでは人々の実際の物語を聴き、共有することで、日常では見えにくい真実を浮かび上がらせる場所になるのではないかと」
鷹匠は深く頷いた。qbcは更に語り続けた。
「そして、村上さんはこうも言っています。『もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます』と。このカフェが、社会というシステムの中で傷つきやすい個人の側に立ち、その魂の尊厳を守る場所になることを願っています」
qbcの言葉に、鷹匠は深く感銘を受けた。「qbcさん、ありがとうございます。このカフェがそんな場所になれるよう、全力を尽くします」
qbcは優しく微笑んだ。「私も力を尽くしましょう。人々の物語を聴き、共有し、新たな真実を見出していく。それが私たちの使命です」
この日を境に、「木漏れ日」は単なるカフェを超えた、人々の魂が交差する特別な場所としての第一歩を踏み出したのだった。
オープンから数週間が経ち、「木漏れ日」は徐々に軌道に乗り始めていた。インタビューマナー講習やワークショップを経た人々が、互いの物語を共有する姿を見るたびに、鷹匠は胸が温かくなるのを感じた。
ある木曜の午後、カフェ内は穏やかな活気に包まれていた。
入口近くには「本日のワークショップ:聞き方の基本」という看板が立てられ、新規参加者たちが熱心にメモを取っている。葉山がファシリテーターとなり、相手の話を深く聞くコツや、適切な質問の仕方について説明している。
窓際の小さなテーブルでは、事前にインタビューマナー講習を受けた70代の元教師と20代の大学生が向かい合って座っていた。二人は世代を超えて、教育について語り合っている。若者が質問を投げかけ、年配者が丁寧に答える。その姿からは、講習で学んだ技術が活かされているのが見て取れた。
カウンター席では、スーツ姿のビジネスマンが一人、構造化インタビューの手法を使って、主婦の日常生活について詳しく聞き取りを行っている。二人の間には、インタビューガイドラインが置かれ、時折それを確認しながら会話を進めていた。
奥のソファーコーナーでは、小さなグループがフォーカスグループインタビューを実施していた。さくらがモデレーターとなり、「人生で最も大切にしているもの」というテーマで参加者たちの意見を引き出している。参加者たちは、お互いの発言を尊重しながら、建設的な議論を展開していた。
壁には来店者の言葉や写真が飾られ、その日のテーマに沿った質問が黒板に大きく書かれている。「あなたの人生を変えた出来事は?」その下には、この質問を深掘りするためのサブクエスチョンのリストも添えられていた。
鷹匠は静かにカフェを見渡し、須田に近づいた。「見て」と小声で言う。「みんな、学んだ技術を使って、上手に話を引き出しているわ」
須田も満足げに頷いた。「本当ですね。ワークショップの効果が出ています。ここは単なるカフェじゃない。人々がインタビューのスキルを磨き、互いの物語を深く理解し合える特別な場所になってるんです」
その時、新しい客が入ってきた。少し緊張した様子の中年女性だ。鷹匠が優しく微笑みかけると、女性はほっとした表情を見せ、カウンターに近づいてきた。
「あの...インタビューマナー講習を受けたいのですが」
鷹匠は静かに頷いた。「もちろんです。次回の講習日程をご案内しますね。その後、実際のインタビューに参加していただけます」
そうして、また新たな物語の語り手と聞き手が「木漏れ日」に加わろうとしていた。
★交差する物語、響き合う魂
鷹匠が閉店の準備を始めたころ、外では雨が激しく降り始めていた。
ちょうどその時、ドアが勢いよく開き、ずぶ濡れのさくらが飛びこんできた。
「麗子さん、ごめんなさい。傘を忘れちゃって...」さくらは申し訳なさそうに言った。
鷹匠は驚きつつも優しく微笑んだ。「大丈夫よ、さくら。まずは体を拭かないと。風邪をひいちゃうわ」
鷹匠はバックヤードからタオルを持ってきて、さくらに渡した。さくらが髪や顔を拭いている間に、鷹匠は温かい紅茶を淹れた。
「ありがとう、麗子さん」さくらは感謝の笑みを浮かべた。「こんな状態で飛びこんできてごめんね」
「気にしないで」鷹匠は優しく答えた。「ちょうどお茶の時間だから、一緒にどう? 今日のことを聞かせてくれると嬉しいわ」
二人はカウンターに座り、鷹匠が淹れた温かい紅茶を手に取った。静かに雨音を聞きながら、彼女たちは今日あったことを語り合う。
「今日ね」鷹匠が話し始めた。「面白いお客さんがいたの。80歳のおばあちゃんで、初めてタトゥーを入れたんだって」
さくらは目を丸くした。「え、80歳で?すごいわね」
こうして、雨の夜のカフェで、二人の親密な会話が続いていった。
さくらは目を丸くした。「え、80歳で? すごいわね」
鷹匠は頷いた。「うん、『人生に遅すぎることなんてない』って言ってたわ。その言葉に、私もハッとさせられて...」
さくらはじっと鷹匠の目を見つめた。「麗子さんも、何か新しいことを始めたいの?」
鷹匠は少し考えこんだ後、ゆっくりと答えた。「そうね...実は、インタビューカフェの活動をもっと広げていきたいと思っているの。でも、どうすればいいのか、まだ具体的なアイデアが浮かばなくて」
さくらは優しく微笑んだ。「そう、それならきっと良いアイデアが見つかるわ。麗子さんならできるはず」
その会話から数日後、葉山が新しい提案を持ってきた。
「麗子さん、インタビューカフェの取り組みをさらに広げてみてはどうでしょうか」葉山は静かに言った。
鷹匠は興味深そうに尋ねた。「具体的にどんなことを考えているんですか?」
「例えば、映像を使ったドキュメンタリー制作はどうでしょう」葉山は目を輝かせながら説明した。「インタビューの様子を映像で記録し、それを編集して小さなドキュメンタリーを作る。そうすれば、より多くの人々に物語を共有できるはずです」
鷹匠は深く考えこんだ。確かに、映像には言葉では伝えきれない力がある。しかし、同時に新たな課題も生まれるだろう。さくらとの会話を思い出し、新しいことへの挑戦に胸が高鳴るのを感じた。
「面白い提案ですね」鷹匠は慎重に答えた。「でも、映像制作となると、私たちにはノウハウがありません」
その時、さくらが会話に加わった。「私、映像制作の経験がある友人を知っています。須田颯太くんというんですが、フリーランスのドキュメンタリー映像作家なんです」
鷹匠とさくらは顔を見合わせた。「それは興味深いわ」鷹匠は言った。「その須田さんに会ってみたいですね」
数日後、須田颯太が「木漏れ日」を訪れた。28歳の彼は、鋭い眼差しと柔らかな物腰が印象的な青年だった。
「はじめまして、須田です」彼は丁寧に挨拶した。「鷹匠さんのインタビュー手法に深く感銘を受けました。ぜひ、映像という観点からお手伝いさせていただきたいです」
鷹匠は須田の熱意に心を動かされた。「ぜひお願いします。新しい視点が加わるのは心強いです」
須田の参加により、プロジェクトは新たな展開を見せ始めた。彼の映像技術と鷹匠のインタビュー手法が融合し、より深みのあるドキュメンタリーが生まれていった。
「鷹匠さん、インタビューの瞬間だけでなく、その前後の様子も大切だと思うんです。人々の日常の中にこそ、真実があるように感じます」高橋颯太は熱心に語った。
鷹匠はその言葉に強く頷いた。「そうですね。人生という旅の中の一場面として、インタビューを捉える。そんな視点が必要かもしれません」
このように、「木漏れ日」のプロジェクトは、鷹匠、さくら、葉山、そして須田という四人の異なる視点と才能が融合することで、より豊かな広がりを見せていった。
しかし、プロジェクトが発展するにつれ、新たな課題も浮上してきた。特に、プライバシーの問題が大きな壁となった。
ある日、須田が編集した映像を四人で確認していた時のことだった。そこには、「木漏れ日」の常連客である高橋さん(IT企業の経営者)と美咲さん(シングルマザー)が、カフェの外で偶然出会い、親しげに話をする様子が映っていた。
「これは...」鷹匠が困惑した表情で言った。「二人の関係を匂わせるような映像ですね」
さくらも心配そうに付け加えた。「確かに二人とも独身ですが、このような私的な様子を公開するのは...」
葉山は眉をひそめた。「そうですね。たとえ交際していたとしても、それを公にするかどうかは本人たちが決めることです。このような映像が出回れば、不必要な憶測を呼ぶかもしれません」
須田は少し躊躇しながら言った。「でも、この自然な交流こそが人々の本当の姿を映し出しているんじゃないでしょうか。編集で切り取ってしまうのは...」
四人の間に重苦しい空気が流れた。インタビューの深さと広がり、そして個人のプライバシーの尊重。これらのバランスをどうとるべきか、簡単な答えは見つからない。
鷹匠は深く息を吐いた。「この問題、慎重に考える必要がありそうですね。高橋さんと美咲さんにも確認を取らないといけないでしょう。たとえ二人が実際に親しい関係だったとしても、それを公開するかどうかは別問題です」
この出来事をきっかけに、チームは改めてプロジェクトの倫理的側面について、真剣に向き合うことになった。人々の素顔や自然な交流を伝えることの意義と、個人のプライバシーを守ることの重要性。その難しいバランスを取ることが、彼らの新たな課題となったのだった。
この出来事をきっかけに、チームは改めてプロジェクトの倫理的側面について、真剣に向き合うことになった。人々の物語を伝えることの意義と、個人のプライバシーを守ることの重要性。その難しいバランスを取ることが、彼らの新たな課題となったのだった。
そんなある日、鷹匠は「木漏れ日」の屋上で、夜空を見上げながら物思いに耽っていた。
鷹匠が夜空を見上げていると、後ろから静かな足音が聞こえた。振り返ると、そこにはさくらの姿があった。
「麗子さん、こんな所にいたんですね」さくらは優しく微笑んだ。
「さくらさん...」鷹匠は少し驚いた様子で答えた。「ええ、少し考え事をしていて」
さくらは鷹匠の隣に立ち、共に夜空を見上げた。「最近、色々なことがあって大変そうですね」
鷹匠は深いため息をついた。「ええ...プロジェクトが大きくなればなるほど、新しい課題が出てきて。時々、自分がやろうとしていることの本質を見失いそうになるんです」
さくらは静かに鷹匠の手を取った。「でも、麗子さんは決して本質を見失わない人だと思います。だからこそ、私たちはあなたについていけるんです」
鷹匠はさくらの言葉に心を打たれ、彼女の手をぎゅっと握り返した。
「ありがとう、さくらさん。あなたがいてくれて本当に良かった」
二人は静かに寄り添いながら、しばらく夜空を見つめていた。
その時、屋上のドアが開く音がした。葉山と須田が現れた。
「おや、二人ともここにいたんですか」葉山が声をかけた。
須田も笑顔で加わった。「みんなで集まれて良かった。実は提案があるんです」
四人は屋上の隅にあるテーブルに集まった。須田が話し始めた。
「最近のプロジェクトを振り返って、一つのアイデアを思いつきました。インタビューゲストハウスはどうでしょうか」
「インタビューゲストハウス?」鷹匠が興味深そうに尋ねた。
須田は熱心に説明を続けた。「はい。ゲストハウスで、そこに滞在する人々の人生をじっくりと記録する。滞在者同士も互いの物語を共有し合う。そんな場所を作れないかと思ったんです」
葉山は深く考えこんだ後、ゆっくりと頷いた。「面白いアイデアですね。『木漏れ日』での経験を、さらに深く、長期的な形で実現できる可能性がある」
さくらも目を輝かせた。「素敵なアイデアだと思います。人々の日常をより自然な形で捉えられそうですし、その瞬間を捉えたインタビューもできますし、長期的な変化を見つめるインタビューもできそうです」
鷹匠は静かに聞いていたが、徐々に表情が明るくなっていった。
「みなさん...」鷹匠は感動した様子で言った。「このアイデア、私たちの目指してきたものの集大成になるかもしれません。人々の物語を、より深く、より自然に捉える場所...」
四人は互いの顔を見合わせ、そこには新たな挑戦への期待と決意が浮かんでいた。
「では、このインタビューゲストハウスのプロジェクトを進めていきましょう」鷹匠が言うと、全員が力強く頷いた。
その夜、「木漏れ日」の屋上で、新たな夢が芽生えた。インタビューゲストハウスという、人々の物語が交差し、新たな物語が生まれる特別な場所の構想が、四人の心の中で静かに、しかし確実に形作られ始めていた。
翌日、四人は「木漏れ日」のミーティングルームに集まり、インタビューゲストハウスの具体的な計画を立て始めた。
「まず、場所の選定が重要ですね」葉山が口火を切った。「静かで落ち着いた環境が必要だと思います」
須田が続いた。「そうですね。でも、あまり孤立した場所だと、日常生活との接点が失われてしまう。そのバランスが大切だと思います」
さくらはノートに何かをスケッチしながら言った。「個室はもちろん必要ですが、共有スペースも重要です。そこで自然な交流が生まれるような設計にしたいですね」
鷹匠は皆の意見を聞きながら、静かに考えを巡らせていた。そして、ふと思いついたように言った。
素晴らしいアイデアです。それでは、その名前会議の場面を書いてみましょう。
「では、ゲストハウスの名前について話し合いましょう」鷹匠が切り出した。
葉山が最初に口を開いた。「私からは3つ提案があります。まず『クロスロード』。人生の岐路に立つ人々が集まる場所という意味です。次に『ウェイポイント』。人生の道程における重要な地点というイメージです。最後に『ナラティブネクサス』。物語の結節点という意味合いを込めました」
さくらが続いた。「私は『ストーリーウィーブ』を提案します。物語を織り上げるイメージです。それから『ライフスケープ』。人生の風景を描く場所という意味です。最後に『メモワールガーデン』。思い出の庭園というイメージです」
須田も意見を述べた。「僕は『クロニクルハウス』を推したいです。年代記のように人生を記録する場所です。それから『ビオグラフィーベース』。伝記の基地、って意味」
鷹匠も自分のアイデアを出した。「私は『ライフタペストリー』を考えていました。人生という織物を紡ぐ場所というイメージです。それから『ストーリーアンカー』。物語の錨というコンセプトです」
しばらく熱い議論が交わされた後、葉山が思わず笑い出した。
「どうしたんですか?」鷹匠が尋ねた。
葉山は笑いを抑えながら言った。「いや、私たち、無名人のインタビューを大切にしてきたのに、随分と名前にこだわっているなと思って」
一瞬の静寂の後、全員が笑い出した。
さくらが涙を拭いながら言った。「本当ですね。名前よりも、そこで紡がれる物語の方が大切なんですよね」
須田も頷いた。「結局のところ、どんな名前をつけても、そこに集まる人々とその物語が場所を作り上げていくんだと思います」
しばらくの沈黙の後、須田が静かに口を開いた。「でも、現実的には何か仮の名前が必要になりますよね。書類上の問題とか...」
鷹匠は頷いた。「そうですね。法的な問題は確かにあります」
葉山が提案した。「では、仮称として『Untitled』はどうでしょうか。『無題』という意味ですが、それ自体が私たちの理念を表しているように思います」
さくらの目が輝いた。「素敵ですね。『Untitled』...まだ題名のついていない物語、これから紡がれていく物語という感じがします」
「良いアイディアです」鷹匠も賛同した。「正式名称は後で考えるとして、当面は『Untitled』を使いましょう。そして、この場所を訪れる人々に、自由に呼んでもらいましょう」
「Untitled...」鷹匠が言葉を噛みしめるように繰り返した。「でも、これって本当に名前をつけられないのか、それとも意図的に名前をつけさせないのか、どちらなんでしょうね」
葉山が思慮深げに答えた。「そこが面白いところだと思います。両方の解釈ができる。名付けられないほど多様な物語が集まる場所という意味にも、固定的な名前によって制限されない自由な場所という意味にもなる」
さくらが付け加えた。「そうですね。『Untitled』という名前自体が、私たちのプロジェクトの本質を表しているような気がします。まだ名付けられていない、これから紡がれていく無数の物語」
須田も熱心に話に加わった。「僕は、あえて名前をつけさせないという意味合いが強いと思います。それによって、訪れる人々の想像力を刺激し、自由な解釈を促すことができる」
鷹匠は深く頷いた。「みなさんの意見を聞いて、『Untitled』の持つ可能性がより明確になりました。名付けられないのか、名付けさせないのか、その曖昧さこそが大切なのかもしれません」
「そうですね」葉山が同意した。「その曖昧さ、解釈の自由さこそが、私たちが目指す場所の本質なのではないでしょうか」
鷹匠は決意を込めて言った。「では、この『Untitled』という名前で進めましょう。そして、この名前の意味するところを、訪れる人々と一緒に探っていけたらいいですね」
全員が頷き、新たな決意と期待を胸に、プロジェクトは動き出すことになった。「Untitled」 - それは名付けられない物語の宝庫であり、同時に誰にも固定的な名前をつけさせない自由な空間。その両義性こそが、彼らの目指す場所の本質を表現していたのだ。
会議が終わり、四人は「木漏れ日」の屋上に上がった。夕暮れ時の東京の街並みが、オレンジ色に染まって広がっている。
鷹匠は深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。「私たちの旅は、ここからが本当の始まりですね」
さくらが静かに頷いた。「そうですね。これからどんな物語に出会えるのか、考えるだけでわくわくします」
「でも、課題も山積みです」葉山が現実的な視点を提供した。「資金調達、運営方法、倫理的な問題...乗り越えなければならないハードルはたくさんあります」
須田は空を見上げながら言った。「それでも、きっと乗り越えられる。なぜなら、私たちにはみんなの物語があるから」
鷹匠は四人を見渡し、微笑んだ。「そうですね。私たち自身も、この過程で物語を紡いでいるんです」
風が吹き、四人の髪を優しく撫でた。その瞬間、彼らは言葉にできない何かを共有した気がした。
「さあ、行きましょう」鷹匠が言った。「私たちの、そしてみんなの『Untitled』な物語を紡ぎに」
四人は無言で頷き合い、夕陽に向かって歩き出した。彼らの背中には、まだ見ぬ千の物語の影が揺らめいていた。
そして、新たな章が始まろうとしていた。
(第三部後編:物語が織りなす新たな旅路 終)
エピローグ:物語は続く
東京・銀座の喧騒から少し離れた路地裏。リニューアルオープンして1年が経った「木漏れ日」は、今日、ささやかな一周年記念イベントの日を迎えていた。温かな光に包まれたカフェは、いつもより少し特別な空気に満ちている。
鷹匠麗子は、カウンター越しに店内を見渡した。休日の午後、カフェには普段よりも多くの人が集まり、穏やかながらも活気のある雰囲気が漂っていた。
窓際の席では、高校生らしき少年が年配の男性にインタビューをしている。記念イベントの一環として行われている「一日インタビュアー体験」の参加者だ。少年の真剣なまなざしと、男性の穏やかな笑顔が印象的で、鷹匠は思わず微笑んだ。
鷹匠は、二人の間に生まれている特別な空間を感じ取った。それは、目に見えない風景のようでもあり、同時に「二人だけのサードプレイス」とも呼べるものだった。家でも職場でもない、二人だけの特別な場所。そこでは、日常のペルソナを脱ぎ捨て、本当の自分と向き合うことができる。鷹匠は、この一年間で成長を遂げた無名人インタビューの持つ力を、改めて実感していた。
そして、qbcに教えられたばかりの「インタビューフルネス」という言葉も、鷹匠の脳裏をよぎる。インタビューに没頭することで訪れる、特別な集中と解放の状態。今、目の前の二人は、まさにその状態にあるように見えた。
奥のソファーでは、小さなグループがグループインタビューを行っている。大型のディスプレイには、Untitledからオンラインで参加している須田の顔が映し出されていた。彼は熱心に話を聞きながら、時折鋭い質問を投げかけている。参加者たちの目には、「聞欲(ききよく)」と呼ぶべき、他者の物語を聴きたいという強い欲求が宿っていた。
壁には来店者の言葉や写真が所狭しと飾られ、その日のテーマに沿った質問が黒板に大きく書かれている。「あなたの人生を変えた瞬間は?」
鷹匠は微笑みながら、コーヒーを淹れ始めた。
「麗子さん」
振り向くと、そこには葉山の姿があった。
「今日は特別な日ですね」葉山が優しく微笑んだ。
鷹匠は頷いた。「ええ。リニューアルオープンから1年。そして...」
「そして、無名人書房から出る、新しい『無名人インタビュー』の本の発売日」葉山が言葉を継いだ。
鷹匠は嬉しそうに頷いた。「はい。みんなの協力があってこそです」
その時、カフェのドアが開き、懐かしい顔ぶれが入ってきた。
高橋、美咲、そして...「葵!」鷹匠の声が弾んだ。
葵は照れくさそうに微笑んだ。「お久しぶりです、鷹匠さん」
「来てくれて嬉しいわ」鷹匠は心からの笑顔を向けた。
葵は少し照れながらも、しっかりとした口調で言った。「結局、クエスチョンデザイナーもほとんどお手伝いできず申し訳ありませんでした。実は、会社で新しいプロジェクトを任されたんです。そこで、鷹匠さんたちのインタビュー手法を参考にしたいと思って」
鷹匠は驚きと喜びを隠せない様子で聞き入った。
「それで...」葵は少し言葉を詰まらせたが、すぐに続けた。「調子のいい話なのは重々わかっているのですが、また、クエスチョンデザイナーとしても協力させていただけたらと思って」
鷹匠は温かく微笑んだ。「もちろんよ、葵。あなたの帰りを待っていたのよ」
その時、カフェの奥のドアが開き、qbcが姿を現した。彼の表情には、かつての病の影は見られない。
「みなさん、お集まりいただきありがとうございます」qbcは静かに、しかし力強く語り始めた。「今日、私たちは新たな一歩を踏み出します。『無名人インタビュー』は、これからも進化し続けます」
qbcは一人一人の顔を見渡した。「しかし、その本質は変わりません。人々の声に耳を傾け、その物語を丁寧に紡いでいく。そして、その過程で私たち自身も成長していく」
qbcは続けた。「インタビューとは、二人の間に生まれる特別な風景です。その風景の中で、私たちは『インタビューフルネス』という深い集中と解放の状態を体験します。それは、人々の中にある『聞欲』、つまり他者の物語を聴きたいという根源的な欲求に応えた結果なのです」
鷹匠は、自然と目頭が熱くなるのを感じた。この1年間の苦労と喜び、そして新たな挑戦への期待が、彼女の中で大きな波となって押し寄せてきた。
「これからも、私たちは『Quiet but curious』の精神を胸に、人々の物語に寄り添い続けます。そして、その物語は、きっと誰かの人生を変える力となるでしょう」
カフェ内に、静かな拍手が響いた。
鷹匠は、カウンターに並ぶコーヒーカップを見つめた。それぞれのカップには、異なる物語が詰まっている。そして、これからもまだ見ぬ無数の物語が、この場所で紡がれていくのだ。
窓の外では、銀杏並木の葉が風に揺れていた。季節は移ろい、人は変わっていく。しかし、物語を聴くことの大切さは、これからも変わることはない。
鷹匠は深呼吸をして、新しいお客さんを迎える準備を始めた。彼女の瞳には、まだ見ぬ物語への期待が輝いていた。そして、その瞳に映る風景は、きっと誰かとの間に生まれる、新たな「二人だけのサードプレイス」なのだろう。
物語は、これからも続いていく。そして、その物語を聴く耳を持つ人々がいる限り、世界はきっと少しずつ、でも確実に、より理解と共感に満ちた場所になっていくのだ。
(了)
各話URL
第一部前編:https://note.com/unknowninterview/n/n7948dce6dd6f
第一部後編:https://note.com/unknowninterview/n/nec3e4c4ce1ff
第二部前編:https://note.com/unknowninterview/n/n2848dd7b8de3
第二部後編:https://note.com/unknowninterview/n/nd36a82ec0002
第三部前編:https://note.com/unknowninterview/n/n8be14df5411f
第三部後編:この記事です。
この物語は、「無名人インタビュー」をテーマに書かれました。
執筆:Claude 3.5 Sonnet by Anthropic
監修:qbc(無名人インタビュー主催・作家)
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