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インタビュー 安野ゆり子-002 2023/08/25

一人の人を隔週でインタビューして変化を追う名前の決まってないインタビュー企画。
歌人、Youtuberの安野ゆり子さん篇の第2回です。前回はこちら。
まえがき:qbc(無名人インタビュー主催・作家)


冒頭

——前回のインタビューから何か変化はありましたか。

YouTube撮りました、久しぶりに。
昨日と一昨日で1本分なんですけど、前半後半で撮って、7ヶ月ぶりぐらいですかね。
今まで夫がスタッフで撮ってくれたのを自分1人でやってるんで、段取りから大変で。
特に私の動画って、前半は洋服で撮って、途中から「コーディネートを決めたので着替えてきます」って着替えて、こんなのになりましたっていう展開なんですけど。

そうすると、動画の撮影機材組み立てて、それから着物に着替えて、ピンマイクをしてない状態でインサートの素材をいろいろ撮って。そこから今度ピンマイクして動画を撮り始めるっていうので、すごく時間かかってしまって。しかもそれを着物が着崩れないようにしないといけないし。
今までは夫に動いてもらってたんで、着崩れとかは大丈夫だったんですけど。

ただ、夫は女の子をかわいく撮るっていうのができなくて、結構NGも多くて。
撮ってみたけど写真駄目みたいなのも多かったんで、そこは私一人のほうが早いんですけどね。

——体調はどうですか?

大体元気で、活動をちょっとし過ぎぐらいですね。
セーブしないとそろそろ倒れるぞって感じはあるんですけど。

鑑賞

——今日はあらかじめお伝えしておりました通り、離婚される予定の現在のパートナーの方と知りあった頃に作られた短歌を鑑賞してみようと思っております。

はい。noteの記事(短歌23)の最初の二首は夫の前に好きだった人についての歌ですね。
「使い捨て歯ブラシのある家にいる」からが夫のことを詠んだ歌です。

使い捨て歯ブラシのある家にいる好意だけ告げられた一月

note(短歌23)に添えてある文章の通り、好きだった人への恋を諦めて、好きと言ってくれる人と付き合うことにした、と。
夫の方からグイグイきてきてくれたので、仲良くなった感じですね。

——使い捨て歯ブラシがあるのは、どちらの家なんですかね。

これは相手ですね。そっか、自分の家とも読めるのか。
いつ女の子が来てもいいように、使い捨て歯ブラシを常備している男の家に泊まったという歌ですね。
使い捨て歯ブラシがある人、初めて見て衝撃だったんです。元カノの歯ブラシとかじゃなくて。

心地よく胸骨軋む殊のほか重くはなくて男の身体

短歌って、先に作者が解説しちゃうのってあんまりよくないんですよ。先に栗林さんがこういうふうに読んだんですけど、って言ってくれる方が私は喋りやすいかもしれないです。

——そうしたらこの歌は、そうですね、正常位の歌ですかね。

そう。そういうことをして、男の人ってなんか軽いな、みたいな。

刺青の映える背中と褒められつ我が目の知らぬ白に触れきて

——安野さん、刺青を入れてるんですか。

入ってないんですけど、そうか、そういうことになるんですね。
確かに刺青が入ってるようにも読めますね。

——なるほど、入ってない読みですね。そうすると、刺青を入れたらきっと映えるよねと言われたと。肌の白と、幻の刺青のコントラストの感じられる歌ですね。

そうそう。自分の背中がどうなってるかってよくわからないし、刺青を入れるとか思ったことないけど、そんな褒められ方をした、と。

一滴ずつ落ちるコーヒー見守って溜めてる日曜朝の仕事も

——これは、最初の行為の翌朝なのか、それともしばらく経ってからの朝なのかでちょっと読みが変わりますが。
パートナーの方が日曜の朝にコーヒーが落ちていくのを眺めているのを、安野さんが眺めているような感じですかね。二人にとっての日常が形づくられていくような感じ。

私、コーヒー飲まないんですよね。だから、一滴ずつ落ちるところを眺めてみたことなんかないんですけど。その様子を二人で一緒に見守ってるというところですね。

——あ、二人で見守ってるんですね。なるほど。

そうですね。二人とは書いてないけど。
結婚しちゃった後は勝手に夫がやってるんですけど、付き合い始めだから、わざわざ2人で見てるみたいな。そういう新鮮さが思い返されます。

私は、一首で意味が完結する歌が好きなんですよね。
前後の歌の関係とか、作者の情報を頭に入れておいて読む方法もあるんですけど。
私は、三十一音だけでわかるっていうのが好きですね。

でもこうやって喋りながら自分の作品を見ると、やっぱり抜け落ちてる情報とか、あるな。
あるなっていうか、別にそんなの無理やり入れなくていいんですけど、三十一音の中で情報の取捨選択をしないといけないので。

子育てをしたき心地を性欲と呼べば触れられること怖くなし

——これは、男から子育てしてるみたいって言われながら愛撫されていて、そう思うと嫌な気持ちじゃないな、て感じですかね。

なるほど。確かにそうも読めるなと思いました。毎回いつも同じこと言ってますけど。
これは、この人とだったら子育てしたいなっていうか、この人はいいお父さんになりそうだ、という気持ちでした。
遊びで男の人と触れあうのは怖いけど、この人は怖くないなみたいな。そういう前向きな感じ。

——あーなるほど。なんというか、さっきの自分の読みはかなり男性視点って感じですね。

そこが短歌の性質でもあって。読者が自分で勝手に解釈して、共感しやすいみたいな。
小説だと全部に共感するのは難しいけど、短歌とか俳句だったら、自分なりに思い込みをして、「めっちゃわかる」ってなる。だからずっと心の中に留められるんですよね。

洗濯と掃除に午前中を終え丼に盛るレトルトパスタ

——これは、二人ので生活がなじんできて、パパパパって家事をこなして、若者的にとりあえず食べられればいいやって感じの丼に盛った飾らないパスタ、って感じの歌ですかね。

そうですね。大体そんな感じです。
付き合いたての頃よりだいぶ仲良くなった感じで。丼だしレトルトだし。

恋人の部屋に留守番せりチェアの高さわずかに下げてそのまま

——いたずら心の歌ですかね。恋人の椅子の高さを自分に合わせていじったんだけれど、それをそのままにしちゃうっていう。

「いたずらしよう」までは考えてなかったんですけど、こういうことが許される関係の歌ですね。
お客さんとして行ってたら椅子の高さを直すんですけど、そういうところがルーズになっているっていう。

馴れ初め

——この短歌の作られた、お付き合いしだした頃っていつ頃なんですか?

2017年かな。12月に句会のメンバーで忘年会があったんですね。
その前から夫も句会に出入りしていたはずなんですけど、なぜか遭遇したことはなく、その忘年会で初めて会いました。
夫が出し物かビンゴかを仕切ってたんですけど、「その箱置いとくと酔っぱらった〇〇さんがいたずらするから持ってて」って預けられて。
それが最初の会話でしたね。会ったこともない人から「これ持ってて」って言われて。
いつまで持ってればいいんだと思ってずっと持ってたっていう。

一次会が終わって、みんな団体行動できないから、みんなバラバラで二次会会場に移動したんですけど、私と夫と、あと二人で電車に乗ってて。でも他は寝ちゃってて。私は夫と喋るしかなくて。
二次会三次会も多分最後まで私も夫もいて、朝かな。始発だから駅行こうかって時に、一緒に行って。
それまでは何を話したか忘れちゃったけど、俳句の話とか、まともな話っていうか、みんなに合わせたような話をしてたのに、2人になったときに、「おっぱい大きいね」って言ってきたりして、なんだこいつみたいな。
などと思っていたら、連絡先を交換する流れになり。連絡先を交換しちゃったら、次の日ぐらいからやたら電話がかかってくるようになり、でもまあ喋るの楽しい人なんで。
二、三日連続で毎日3時間くらい喋ったんですよ、電話で。

それで池袋の水族館行くことになって、ここで衝撃だったのが、「まだ時間ある?」って聞かれたんで、「あるよ」って言ったら、車で行こうかって言ってタクシー乗ったら家だったっていう。
時間あるって言ったけど自宅かよって思ったんですけど、まあいっかと思って、そっからズルズル、いろいろ始まってしまったっていう。

——なるほど。

私、当時、なんかね、粘着質な、ちょっと虚言癖みたいなのがある人から、付き合っていることにされてて。私は困ってたんですね。

私もその時はあんまり人に対して強く出れなかったりとか。あと私、人を疑うことを知らないので、その人が「腫瘍ができちゃって今度手術を受けるんだけど、成功するかわかんないから最後に会ってほしい」みたいな、そういうことを言ってきたりして。
でも当時は私、疑うことを知らなかったので、しょうがないから会いに行ったりとかしてて。
こっちから、もう会わないですみたいなことを言っても、Twitterで何個もアカウント作ってフォローしてきたりとかしてきて、ほとほと困っていたんです。

そのときに、夫は、「こういう文面で断ってみな」とか助けてくれて。それで年上ってすごい頼りになるなって信頼度が上がって。
夫の考え方では「絶対LINEはブロックしちゃ駄目だ、人間関係でLINEをブロックしちゃいけない」ということをすごい言ってて、でもあまりにしつこいんでブロックすることを許されて、それでその人とは縁が切れたと。

それまでの一応の私の認識では、「付き合ってないけど付き合ったことにされてる、彼氏らしい人がいるからもう1人と付き合うにはいかないな」みたいに思ってたんですけど。
でも正式にそっちと縁が切れたから、夫と付き合い始めたって感じですね。

——具体的には、いつ頃なんですか。

1月の半ばぐらいですね。知り合って1ヶ月ぐらいですかね。

好きって、私はあんまり思ってたかわかんないけど、相手は熱心に私のことが好きらしいし。
私は一緒にいて楽しいし、助けてもらったし、付き合えばいっかみたいな。
なんか私の方から好き好きって感じではなくて、まあいっかな、みたいな感じでした。

——夫さんは、どんな人ですか?

夫はアクティブな人なんで、いろんなとこ行ったりとか。
よく覚えてるのが、付き合い始めたのが、大学4年の1月で、卒業するぐらいだったんですね。それで、卒業旅行に友達と国内に1泊2日で行くって言ったら、夫が足りない、もっと行けみたいに言ってきて、いや行かないと言ったら、じゃあ俺が行くみたいになって、なぜか。
2人で1週間、夜行列車に乗って、滋賀県からぐるっと紀伊半島を巡って、名古屋あたりに帰ってくるっていう関西旅行したりとか。
あと卒業式に行きたいって言ってきて、夫は仕事がちょっと入ってたらしいんですけど、ギリギリの時間でお花持って学校まで来たりとか。誕生日プレゼントに、いらないって言ってるのに机を買ってくれたりとか。
大変熱烈だったっていう感じです。

男性

——安野さんの好きなタイプってどんな人ですか?

好きになる系統は大体一緒で、すごいお喋りな人。
遊び人みたいな人が好きで、変わってないですね。

私が惚れっぽいので、中学生ぐらいまでは、好きになって、しばらくするとある程度気持ちが冷めてまた次の人を好きになってって、コロコロコロコロ好きな人が変わるタイプ。
クラス替えがあると、また違う人を好きになるみたいな。

高校以降は、自分から告白する。好きになったら告白しちゃう。その結果で嬉しがったりへこんだりを繰り返してましたね。
大学の時、1年生の時は自分から告白して振られたり、2年の時に付き合ってた人は、やっぱり最初に体の関係があって。ホテルで「私とどうなりたいの?」って訊いたら、「付き合いたい」って言われたから付き合い始めたり。自分から訊いちゃう。
この間、弟にも「グイグイ行きすぎるのは駄目」って言われて。「相手が引くから駄目だよ」って言われて。
そういう意味で、あっちからすごいアプローチしてくるっていうのは、夫が初めてでしたね。初めて告白されたのが夫でした。

それまで告白されたことなかったです。
私は結構目立つタイプで、学校の中心人物だったりもするので、周りがちょっと声かけづらいってこともありますけど。友達にはなれても、その先に進みづらいような。
高校卒業するときに、国語の先生から、「ゆり子ちゃんを好きって言ってた男の子、3人知ってる」って言われて。誰も告白してこないじゃんみたいな。

——安野さんは恋愛が多いタイプなんだろうなとは思ってました。

夫と私は、「浮気して当たり前」って言ってて。
夫の本心はわかんないですが、私は本気でそう思ってたんで。
一瞬なびいた男の子が1人いましたけど、でもその子とはちょっと常識が食い違い過ぎたんで、すぐ終わっちゃったんです。
それ以降は今好きになってる男の子ぐらいですかね。
いうほど浮気もしてないですよ。
もうずっと夫のことが好きだったんで。
遊びの恋愛とかも全然なく、夜の街で飲んでるわりに、そういうことはほとんどない感じですね。

——お酒は強いんですか。

昔は一晩中ずっと酒飲めるみたいな感じだったんですけど、最近はあんまり飲めなくなってて。
でも飲むのがウイスキーなので、強いねとは言われます。

——ウィスキーはどんな飲み方をされるんですか。

氷なしの水割り、トワイスアップが好きですね。チェイサーと一緒に、40分ぐらいかけて一杯飲むぐらい。
バーボンが好きなんで、フォアローゼズのブラックが一番おいしいなって思ってるんですけど、普段はジャックダニエルかな。

あとがき

短歌の読み解きを作者の人とするって贅沢な時間をすごしつつ、なんというか、インタビューに参加いただく人の輪郭というものが見えてきたような気のする2回目のインタビューでした。おぼろげにね。
自分からグイグイ行くのって特徴的でしたね。

これからの予定は、さらに恋愛を追っていくルートか、安野ゆり子という人物がどう作られたのかを見るほうか、って見当ですかね。

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

#無名人インタビュー #インタビュー #コミュニケーション #短歌 #俳句


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