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田芋農家の彼女の人

魂もってかれたことって、ありますか?
なんか、もんんんんのすごい景色を見てドギモ抜かれたとか。
なんんか、めっっっっっっっっちゃごっつい衝撃映像見たとか。
なーんかなんかなんか、すばらしししししししししイ感動に出会えたとか。
あります? ありますか?
人生を決定づけるようなできごと。あります?
私qbcはですね、あるかっていうと、ない感じですねー。もちろん、今やってること(例えばインタビューね)が、昔のあることに結びついてたんだ! みたいな驚きはありますけど、出会った瞬間見た瞬間、ふれた刹那にドン! ってワンピース見つかったぜ的な衝撃人生激変天変はない、ですねー。
でも、いくつもいくつもインタビューしていると、そういうインパクトデアイを経験している人にはでくわすことがあって。あーやっぱそういうのあるんだな、と。これはもう、性格とかによるのかもしれないね、同じ景色見ても、そうなる人とそうならない人がいるもんだし。結婚ビビビってやつですかね。松田聖子さんですよね、ビビビって言ったのは。人類初で。
ビビビかあ。私も経験してみたいなあ。
と思う2024年5月4日15時36分に書く無名人インタビュー751回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】

今回ご参加いただいたのは 田芋農家の彼女 さんです!

年齢:20代前半
性別:女
職業:田芋農家の彼女


現在:それに感動して、まだ少しこの状態は残ってるから、これは残していかなきゃいけないな、自分がここで残すために何か仕事したいってすごい思って。

ナカザワ:まず最初に藤崎さんは今何をしている方ですか?

田芋農家の彼女:今は沖縄の伝統野菜の田芋農家さんのもとで一緒に働いてます。

ナカザワ:田芋農家さん。

田芋農家の彼女:はい。

ナカザワ:藤崎さんは農家として今仕事をしてるっていうことですかね?

田芋農家の彼女:代表が彼で私が一緒にそこで働いてるっていう形になります。

ナカザワ:ちなみにいつもどんなお仕事されてるんですか?

田芋農家の彼女:田芋栽培は繁忙期が冬で、夏場は畑管理で重労働が少ないっていうのが特徴的なので、冬は基本的に一緒に農作業やるんですけど、夏場の管理は彼がやって、その間のSNSだったり販路開拓とか、そういった農家さんが手の回らないところを私が担当しているイメージです。

ナカザワ:ちなみに今は繁忙期ではない?

田芋農家の彼女:今が繁忙期です。

ナカザワ:何月くらいまでが忙しいんですか?

田芋農家の彼女:12月から4月が収穫と植え付けをずっともう本当にノンストップ、休まない状態でずっと続けて、出荷は毎週やります。

ナカザワ:1年かけて育つ?

田芋農家の彼女:そうです。

ナカザワ:なるほど。ありがとうございます。お仕事は他に何かしながら?

田芋農家の彼女:他は夏場に他のアルバイト、農業に関するアルバイトをしながらやらせてもらってるっていう。

ナカザワ:なるほど。ちなみに沖縄のどちらに今住んでらっしゃるんでしょう?

田芋農家の彼女:金武町。お金の金に、武士の武で「きん」って読みます。

ナカザワ:「ん」が「武」なんですね。この地域だとこの田芋ですかね、なんか里芋みたいな感じなんですね。

田芋農家の彼女:そうです。里芋の仲間で、国内で一番大きい産地が金武町になります。

ナカザワ:へえ。なるほど。地図で見ると、本島の、何て言ったらいいんでしょうね。真ん中らへん?

田芋農家の彼女:そうですね。真ん中よりちょっと上の東側にあります。

ナカザワ:このお仕事は、どのぐらいやってらっしゃるんですか期間的には。

田芋農家の彼女:去年の春に大学卒業して、今ちょうど1年です。

ナカザワ:なんでここに来ようと思ったんですか?

田芋農家の彼女:元々この田芋とか里芋っていうのがタロイモっていう種類の仲間で、そのタロイモを卒論の作物として大学のときに研究や調査させてもらっていて。知り合いの方に、タロイモ研究してるなら田芋の産地に行った方がいいよって、連れてってもらって田芋を見たのが始まりです。

ナカザワ:実際にその仕事をしてみて今どうですか?

田芋農家の彼女:今は楽しいですね本当に。

ナカザワ:どういうときに楽しさを感じますか。

田芋農家の彼女:田芋畑が、沖縄県内でも宜野湾っていう地域に元々大きい産地があったんですけど、2000年を境に本当に衰退していってしまって、金武町が今メインになってるんですけど、金武町もほとんど生産者も減っていて、国内だと田芋がなくなるんだろうなっていう状態。
学生のときにタロイモのことを教えてもらってる先生に、宜野湾には広大な景色が昔は残ってて、っていう話をずっと聞かされてて、じゃあ見に行ってみようって行ったら全部開拓されて住宅地になっていて、すごい都市化が進んでて、跡形も残ってない状態。本当に少しだけ残ってる感じ。

それがすごいショックっていうか、何もないやっていう驚き。本当にこんなに都市化が進んでたんだっていう、衝撃があって。でも金武町行ったら少しは残っていたんです。
それに感動して、まだ少し田芋は残ってるから、これは残していかなきゃいけないな、自分がここで残すために何か仕事したいってすごい思いました。農家さんたちと話してても、たまたまそのとき出会った農家さんが若手の方たち、彼もそのときは24歳とかでした。もう1人の農家さんも30後半ぐらい。

農家さんが2人とも新規就農数年目で、農家を感じさせない感じ。すごい面白かったんです自分的にツボで。その人たちと、田芋に関わる仕事ができたら、最高だなって思ったのがきっかけです。だけど、新卒で社会人経験なしにこういう選択をするっていうのはちょっとリスクが大きかったり、やっぱり大学の学費も親に払ってもらって、こんなに好き勝手な判断はできないなっていうのがそのときの私の思いがありました。
それで就活してたんですけど、でもどうしてもやりたいっていう想いが捨てられなくて。で内定を切らしていただいて、田芋の方にしてしまったという感じです。

ナカザワ:それが金城さんの所で働いていると。その田芋農家さんっていうのはこの金武町にはどのくらいいらっしゃるんですか。

田芋農家の彼女:ちょっとこれははっきりした数字じゃないんですけど、老後のお小遣い感覚でやってる人が多いので、田芋だけで食べていけるぐらいやってる専業農家っていうのは本当に数えられるぐらい。20もないと思います。

ナカザワ:田芋っていうのはどんな育て方なんでしょうか。イメージがなくて。

田芋農家の彼女:田芋っていうのが、水田で育つ里芋の仲間で、見た目は里芋。里芋の小芋が少ないバージョン。あとは熱帯地域、暑いところでしか育たない、水田でしか育たないっていう特徴を持ってます。

ナカザワ:藤崎さんはやってる中でどのあたりの仕事が好きなんですか。

田芋農家の彼女:仕事は一応全部面白いんですけど、やっぱり一番ほっとする瞬間があって。
田芋って掘って、掘ったときに腐ってるか腐ってないかをまず選別するんですよ。
で、堀った後に、芋の上下をカットする工程があって、この工程でも腐ってないかをまた選別するんです、変色してないかとか傷がないかとか。
そのあとに冷凍庫に入れて、注文分を大きい釜に入れて1時間茹でるんですけど、茹でると白い芋が紫になって、初めてここで芋の善し悪しがわかるんです。美味しい芋と美味しくない芋。この3回の選別が終わった状態の芋が初めて商品になるんです。
私が一番好きなのはこの芋炊き終わったときの、何割ぐらい炊けてるかわかったときの安心感。9割ぐらい炊けてたときにあぁ良かったっていう安心感が好きです。

ナカザワ:実際その瞬間まで、何割ぐらい商品になるかがわからないってことですか?

田芋農家の彼女:そうですね、分からないです。

ナカザワ:なるほど。藤崎さんはここ最近の生活の中で、お仕事も含めてでもいいんですけど、何か楽しいことってどんなことがありますか?

田芋農家の彼女:やっぱりずっと自分がやりたいやりたいって言ってた仕事なんで、本当に毎日楽しいし、この環境に置いてもらってることがとってもありがたいなって思ってます。
でもこのやっぱり1年いると地域の人の目が変わって、最近だと名前覚えてたり、声かけてくれる人が増えたりっていうのが嬉しくて楽しいですね。

ナカザワ:やっぱり1年間経って今っていうところの変化なんですかね。

田芋農家の彼女:多分信頼ができたんですね。やっぱり沖縄の人ってちょっと県外の人にちょっと壁がある感じがあるんですけど、やっぱり毎日仕事してる姿見てもらったりすると声かけてもらうことが増えて、よく頑張ってるよねとか。

ナカザワ:声かけてくださるのって農家さんですか?いろんな周りにいる方ですか?

田芋農家の彼女:そうですね、農家さんもそうですし売店の方とか、地域の人。誰か私もわからないですね。なんか知らないけど一方的に知られてるんで、話しかけられますね。

ナカザワ:なるほど。お仕事いろいろお忙しそうかなと思うのですが、仕事以外に生活の中で何か時間を使ってたり、お金使ってたり楽しんでたりそういったことはありますか。

田芋農家の彼女:仕事以外だと彼が釣り好きなんで一緒に釣り行ったりするんですけど、ちょっとまだ忙しくて他の事ができてなくて今からしたいなって思ってるのが、せっかく沖縄にいるんで、この周りの離島巡りをやってみたいなと思ってます。

ナカザワ:最近お休みの日は何されてるんですか、やっぱり釣りですか?

田芋農家の彼女:そうですね。お休みがここ半年本当に2週間もないんで。もう寝てるだけです。でもこれもあと1週間終わったら、落ち着くんで。楽しみです。

ナカザワ:そうなんですね。忙しいタイミングでありがとうございます。休みは何したいですか?

田芋農家の彼女:休み、遊びたいですね。元々1人でどっか行くのが好きで。大学時代、1人で日本のあちこちの農家さんを回るのが趣味で、その中の沖縄で田芋農家さんと出会ったんで、時間とお金があれば昔みたいに転々と農家を回りたいです。

ナカザワ:回るって言うのは訪ねるってことですか?

田芋農家の彼女:はい、お手伝いとか。


過去:でもどうしても田芋の近くにいたすぎて、面白すぎて離れたくない、っていう状況だったんで。

ナカザワ:これから過去のことちょっと振り返って聞いていきたいなと思うんですけど。そもそもで、沖縄で生まれたわけではないんですよね?

田芋農家の彼女:はい。全然違います。

ナカザワ:藤崎さんはどちらからいらっしゃったんですか?

田芋農家の彼女:千葉県です。千葉県で生まれ育って、大学が東京農業大学。そこで農業を勉強して、それがきっかけで今こっちにいます。

ナカザワ:大学でさっきおっしゃってたタロイモに出会ったということですね。少し遡っていくんですけど、藤崎さんは、小さい頃はどんなお子さんでしたか?

田芋農家の彼女:小さい頃は弟が3人いて、ずっと弟たちと遊んでる感じ。友達とあんま遊んだ思い出がないです。やっぱり男っぽい遊びが多かったと思います。あんまり覚えてないですけど、キャンプ行ったりとか海行ったりとか、ずっと外に出されてたイメージがあります。

ナカザワ:この弟さん3人っていうのは、年齢近いですか遠いですか?

田芋農家の彼女:そうですね。2個下4個下7個下なんで結構近めだと思います。

ナカザワ:1人1人の感覚は結構近め。

田芋農家の彼女:そうですね。

ナカザワ:なるほど。藤崎さんご自身はどんな遊びが好きだったんですか?

田芋農家の彼女:一番キャンプが好きでしたね。やっぱり外で遊ぶ、なんか何もない状態で生活するっていうのが面白くて。

ナカザワ:どっか楽しかった思い出とかありますか?

田芋農家の彼女:小さい頃ですか?

ナカザワ:はい。

田芋農家の彼女:やっぱりキャンプですかね。キャンプが一番だと思います。キャンプのバーベキューとか普段できないこととかがすごい好きです。

ナカザワ:アウトドア派というか。

田芋農家の彼女:そうですね。

ナカザワ:いつ頃までみんなで一緒にキャンプとか行ってました?

田芋農家の彼女:高校1年生2年生ぐらいまでたぶん行ってたと思います。

ナカザワ:結構大きくなるまで。

田芋農家の彼女:そうですね結構行ってますね。

ナカザワ:友達より弟さんと遊んでたっていうことだったんですけど、学校とかではどんな感じで過ごされてたんですか?

田芋農家の彼女:学校とか小学生のときは本当に静かでした。読書とかが好きなタイプで、みんなとわちゃわちゃするタイプではなかったですね。で中学校になって、自分と同じ小学校から同じ中学校へ行く子が10人ぐらいしかいなくて。
友達が全然いない状況だったんでそっから全然性格が変わりました。運動部に入ったっていうのもあったのか、逆に、いつも爆笑してるね、いつも本当にうるさいよねみたいな感じで言われてました。

ナカザワ:どういうきっかけでそんな変わっていったんですか?

田芋農家の彼女:自分もこれといったきっかけがわからないんですけど、多分友達がいない状況で、自分の小学校は10人に対して、1つの学校が何百人とかの単位で入ってくる小学校があって、こっちの小学校は結構性格強い人が多かったんです。
ノリノリな人間が多くて、多分自分もそっちに合わせなきゃって思ったんだと思うんです。

ナカザワ:中学生でちょっと元気に。
ご自身としてはどうでしたかそれに対して?

田芋農家の彼女:やっぱり変わったねって、そのときはよく言われてましたね。でも自分としては中学校の方が楽しかったんで、これはこれでよかったなって思ってます。

ナカザワ:なるほど。高校まで千葉で過ごされた?

田芋農家の彼女:そうです。高校は千葉です。

ナカザワ:高校生のときはどうでしたか?

田芋農家の彼女:高校生のときは頭があまりよくないタイプでした。みんなにちょっとバカにされるって言うか、頭悪いよねみたいな感じの。特徴という特徴はなかったかもしれないですね。
部活を途中でやめて、高校から自由になりました。高校になると結構グループがあるじゃないですか、1軍2軍3軍とか。これがすごい嫌いで苦手で、どのグループにも属さないように、本当に自分がこの人といたいっていう友達だけといるっていう感じでした。

ナカザワ:部活を辞めたのは何かきっかけとかあったんですか?

田芋農家の彼女:ある日突然すごい嫌になってしまって、でも、部活が嫌って悩んでる時間もすごい勿体ないし。ただ部活辞めたいです、の一言で、部活やめられるんだよなって気づいて。当たり前のことなんですけど。やっぱりみんな辞めたい辞めたいって言うんだけど、続ける人が大半。
でも実際そういう人たちも後悔してないと思うんですよ。終わった後にいろんなものを得られるし、結局友達も残るし、やって良かったっていう人が大半なんですけど、実際に辞めたらどうなんだろうって思って。
中学校のときに3年間部活やって、逆にやめたらどんな感じになるんだろうと思って、よし、やめようって言いに行こうって突然思ってその日に辞めますって言いにいったんです。

ナカザワ:中学から同じ部活ですか?

田芋農家の彼女:そうです。ずっとバレーボール。

ナカザワ:言ってみてどうでしたか?実際。

田芋農家の彼女:言ってみて、自分が動いたら変わるというか、本当にやめますって言ったらやめてしまうわけじゃないですか。親に決めてもらったりとか友達がみんなあっち行くからあっち行こうとかって、自分の意思であんまり動いたことがなくて。そのとき初めて自分の決断を下したときだったんですよ。

ナカザワ:やめてみたときに実際にどんなことをおもいましたか?

田芋農家の彼女:自分が動いたら、それなりの結果というか、なんていうんですかね。行動したら人も変わるんだなっていう。自分の意思で動けるんだ、なんかそんな感じでした。自分1人でもやればできるんだなみたいな。

ナカザワ:そこから高校生活は変わったこととかありましたか?

田芋農家の彼女:特になかったですね。やっぱり自分が心配してたのが部活やめて、部活一緒だった子たちがすごい自分のことを嫌いになったりとか、すごい距離取られたりとか、気まずくなったら嫌だなっていうのが一番の心配だったんですけど。
全然そんなことなくて、普通に卒業までみんな一緒に仲良くしてくれて。考えたことってあんまり起こらないんだなっていうか、全然違うようになるんだなって気づきました。

ナカザワ:途中で部活をやめ、大学進学っていうところになると思うんですけど、農業大学に入るきっかけはどんなのがあったんですか?

田芋農家の彼女:高校のときに教科書を見てて、食料危機のワードが出てきたんです。
そのときは全然勉強も何もしてなくって、単純だったんで、食糧危機だったら野菜作ればいい話じゃんって思ってたんですよ、単純に。
で、じゃあ自分がもし野菜作れるスキルとか勉強したら、この人たちを助けることができるんじゃないかって思ったのがきっかけで、海外青年協力隊に興味が湧きました。
あとは自分が元々アウトドアだったのもあって、ITとかではないなっていう、コースを絞ったときに看護でもないし、だったら一番農業が興味あるから、という理由でそっちにしました。

ナカザワ:その時知った食糧危機って言うのは、海外の話ですか。

田芋農家の彼女:そうです。アフリカとかの写真とかが出てきて、野菜作ったらみんながハッピーになれるじゃんって単純な考えだったんで、それから興味を持つようになりました。

ナカザワ:最初は野菜作りたいっていうより、その人たちを救いたいみたいな思いなんですか?

田芋農家の彼女:なんか部活を辞めたいとか、高校のときって色々悩む時期だと思うんですよ、大学進学将来どうしようとか。
悩んでたときに、この悩みって、ご飯3食食べれて自分のおうちがあって、お父さんとお母さん弟たち家族みんなでいれて、っていうこの環境があっての悩みだなっていうことに気づいたんですよ。
普段の当たり前の日常があってこそ自分悩めるんだってことに気づいて。この教科書に載ってるような子たちはもうこのラインにも絶対立てないわけじゃないですか。どんだけ頑張っても。
立てられる時点ですごいありがたいことなんだなって、そのとき気づいて、悩めるって逆にすごい幸せなことなんだ、恵まれてることなんだって思ったのがきっかけ。

ナカザワ:なるほど、そういう回路でその人たちのためにっていうか。

田芋農家の彼女:そうですね、自分はご飯も食べれてるから体も動かせるから、こんな自分でもできることがあるんじゃないのかなって思って。

ナカザワ:なるほど。それで受験、農大へっていう道なんですね。

田芋農家の彼女:はいそうです。

ナカザワ:農業自体は何かその気付きまでは、農業やりたいとか将来何になりたいみたいなので農家っていうのが思ってたわけではないんですか?

田芋農家の彼女:はい。全くないですね。

ナカザワ:小さいころなりたかったものとかはあったんですか?

田芋農家の彼女:動物園の飼育員。

ナカザワ:農家になりたいと思わなかったらそっちになってたかもしれないってことですか。

田芋農家の彼女:そうですね。動物系の学校も受けてたんで、もしかしたらそっちに行ってたかもしれない。

ナカザワ:なるほど。ちなみに、農業大学に行ってその専攻っていうのは入る前に決めるんですか、それとも入った後に?

田芋農家の彼女:入る前ですね。

ナカザワ:前なんですね。

田芋農家の彼女:研究室とか専攻を決めるのはその後です。

ナカザワ:なるほど。芋の研究をしようと思ったのはいつのことですか?

田芋農家の彼女:この学部学科自体が海外青年協力隊とかそういう系に専攻してる学部学科で、授業自体が特化していて、大学1年生のときに、芋って主食になりうるっていう話を先生が話していたんです。
でも芋の研究があまり進んでないっていうことで。途上国とかでは芋を主食にする地域が多いけど、研究をしたいっていう人が少ない。で先進国の中でも日本は芋の文化が強いっていう話をしてて、あ、面白いと思いました。
それから自分も芋に興味持ちました。確かに主食って一番大事。お腹にたまる。だったら自分も芋作りたいなって思ったのがきっかけです。

ナカザワ:知らなかったんですけど、海外青年協力隊になるための勉強するための学部が東京農業大学にはあるんですね。

田芋農家の彼女:なるためのっていうか、授業全体が途上国の農業とかに特化している学部学科があります。

ナカザワ:そこで芋に出会った。

田芋農家の彼女:そうです。

ナカザワ:なるほど。芋の研究としてはどんなことを学んでたんですか?

田芋農家の彼女:イモってサツマイモとかジャガイモとかいろいろある中で、特に研究が進んでいないのがタロイモっていうふうに習いました。
あとは水田の中で作られる主食作物が稲以外でタロイモしかない。っていう強みだったり。稲よりも昔から食べられてる芋としてもタロイモがあったり。種類が本当に多いとか、畑でもできる、どこでもできるみたいな、強みが結構あるのに、研究が進んでないっていうと戸を知りました。
土台となるベースとなる研究をやってみたいなと興味を持って、タロイモにしました。

ナカザワ:芋の何て言うのかな基礎的な研究ということですね。それがどういう何か加工ができるかとかなんかそういうレベルの話じゃなくて。そのものについての。

田芋農家の彼女:そうですね。種類は何かとか、染色体は何本かとか。
基礎情報がわからなきゃ、新品種を作るときに、情報がなかったらできないっていう話で。そもそもこいつが誰かっていうのを、ただひたすら特定するっていうことを私はやってました。

ナカザワ:そういう研究もできるんですね、なるほど。食料危機からたどり着いて実際研究してみてどうでしたか?

田芋農家の彼女:これは進まないだろうなってぐらい、地道で辛かったです。里芋も日本でもあまり普及してないから、論文が日本語のものがないっていうのがすごい自分的にきつくて、全部英語だったり。これを読んで書いてくのかっていうのがすごい負担で。

ナカザワ:そういう面もあるんですね。研究をして今農家になるという道を選ばれたわけですけれども。元々その海外へみたいなところもある中で、その今の選択は、ご自身にとってどういうものだったんでしょうか?

田芋農家の彼女:そのタロイモを研究してて、田芋の産地に行って感動して、そのときの教授に頭下げて、どうしてもお願いしますって言って田芋の調査させてくださいってタロイモから田芋の調査に変更をお願いしたんです。
そっから今の農家さんのところに来て、調査させてもらってました。卒業まで。そこでそのときはちょっと無茶なことしてるなってやっぱりみんなに思われてましたし、卒論発表も沖縄からオンラインでやらせてもらって。

やりたい放題やってるな、みたいな。でもどうしても田芋の近くにいたすぎて、どうしても面白すぎて離れたくない、っていう状況だったんです。そっから仕事も田芋でやるってなりました。
でも、日本の農家さんで転々としたときに気づいたのは、自分が海外に行っても何もできないなっていうのを実感しました。日本の農業ですらこんなに課題抱えてて自分たちの食も危ういのに、海外のことを気にしてる余裕はないなっていうのが自分の考えだったのと、農家さんのところに行って自分の力不足、知識不足を痛感して、自分は何言ってたんだろうっていうのに気づかされました。

で、まずは自分が住んでる日本で勉強してからだなって思ったのと、田芋と出会ったのがタイミング的に良くて、自分は熱帯の作物が興味あったんで、ちょっと離れた沖縄で、まず身近にある課題から解決していこうかな、目の前のことからやっていこうっていう、自分にできることからっていうことで田芋でやるって決断しました。自分的にはすごいありがたいことだなって思ってます。後悔は何もないです。

ナカザワ:やっぱりどうしても田芋やりたいっていうのは先ほどと話していただいたような、なくなっちゃうかもしれないとか。

田芋農家の彼女:そうです。なくなるかもしれないっていうのと、単なる自分が好きなんですよね。なんでそんなに残したいの?って言われたら好きだからって、単純に。もちろん残したいっていう気持ちもありますけど。

ナカザワ:田芋のどういうところが好きですか?推しポイントとか。

田芋農家の彼女:推しポイントはたくさんあるんですけど。まず見た目がハートっぽくてかわいいっていうのと、水田で育つっていう、作物の強さ。
あとは、苗が里芋とかは芋なんですけど、田芋は芋の上部と茎をカットしたものを植えるんですよ。なんで永遠に同じ苗が使えるっていう。半永久的に自分で苗が取れるようになってて、種とか苗のお金がかからない。

田芋は植え付けも1本1本田植えみたいに手作業なんです。機械化ができてなくて。収穫作業も3万、下手したら4万株ぐらいを1人の農家さんが、全部手作業で1個1個掘っていく。切るのも全部手作業で、農家さんの目と感覚、芋を切ったときの音とかそういったもので全部選抜。炊く時間とかも全部農家さんの感覚で、炊いた後の良し悪しも農家さんの経験でしかわからない。

稲より昔から日本にいる作物なのにほとんど進歩していない。全て人間がやっているっていうところにすごい魅力を感じて、他にこんな作物ないんじゃないかなって思います。昔から同じ形で残されている。やっぱり稲より昔からいて、今まで残されてるってことは、それだけ昔の人類を支えてきた歴史があって大切にされてきた。
沖縄だと正月とかお盆とか、結婚式出産祝いとかお祝い事で食べるんです。
スマート農業とかITとかが進んでる中で、あえて全部手作業っていうところにすごい惹かれました。私にとっては、そこが一番の魅力ですね。

ナカザワ:味はどんな感じなんですか?普通の里芋っぽい感じなんですか?

田芋農家の彼女:ちょっと違くて、多分里芋だとスイーツにするにはちょっと考え難いんですけど、田芋だとスイーツ系が美味しいんですよ。潰したり。あとパイにするのが沖縄の伝統料理で、田芋パイというのがあったり。パイです。

ナカザワ:ほんとだ。インスタとかの写真にありますね。

田芋農家の彼女:そうですね。台湾のタロイモスイーツとか結構味が近いと思います。日本だとたぶんないと思います。

ナカザワ:あんまりちょっと表現しにくい味というか。

田芋農家の彼女:そうですね、聞かれてもいつも例えられないです。

ナカザワ:気になります。

未来:農家さんってすごいかっこよくって、農家さんがいなかったら自分らは生活できない。農家さんのかっこよさをもっとみんなに知ってほしい。

ナカザワ:ちょっと未来の話も聞いていきたいんですけれども、藤崎さんは今後、将来についてはどんなイメージをお持ちですか?

田芋農家の彼女:田芋を残していきたいっていうのももちろんあるんですけど。何か農業で生活できるっていうスタイルを確立したいなと思ってて。

子供が憧れる職業ではないんですけど、農家さんってすごいかっこよくって、農家さんがいなかったら自分らは生活できない。農家さんのかっこよさをもっとみんなに知ってほしい。農業の面白さ、こんなこともできるしあんなこともできるんだよっていうのも、もっといろんな人に伝えていけたらいいなって。
あとは自分たちみたいな、彼が26歳、私が23歳で、若い人たちでも、余裕があるわけではないけど、こうやって楽しく、自分らはすごい満足して生活できてるんだよっていうのを伝えていきたいなと思います。

ナカザワ:そのためにどういうことをやっていきたいですか?例えば1年後、5年後とか。

田芋農家の彼女:ちょっと非現実的ではあるんですけど、地元の小学生とかに教えたいな、と思っています。田芋の授業をやってみたいなっていうのが今の目標というか、考えてることですね。

ナカザワ:地元、その金武町だったりとかこの地域の子どもたちに。

田芋農家の彼女:彼もずっと金武で育ってるんですけど、農業やるまで田芋はどうやって育ってるかとかも知らないしどこでやってるかも知らない、食べたこともないって言ってて。
やっぱり若い子たちが全く触れる機会がないので。どうせなら、女性でも、そして20代でもできるし、自分の目線から教えられることがあるかなと思ったんです。

ナカザワ:今ってちなみに農業で芋を作るのをやってらっしゃると思うんですけど、地域の人とか子どもとかの関わりってあるんですか?

田芋農家の彼女:子どもは全くないですね。

ナカザワ:金武町の地図を見たんですけど、ほとんど山なんですか。

田芋農家の彼女:そうなんです。金武町の7割近くが米軍基地って言われてます。全部山の方が米軍基地になってて、海側も米軍基地なんでちょっと挟まれてる感じです。

ナカザワ:この平地の何て言うんですか、道路の周りが人が住んでるところ。

田芋農家の彼女:そうです。

ナカザワ:でダムがあって、山があって。

田芋農家の彼女:そうですね。だから、多分SNSで見えてる景色って畑とか、のんびり楽しそうにやってるんだなっていうイメージを持たれると思うんですけど、実際は米軍基地に囲まれてるんで、訓練の砲撃とかの音がすんごいんですよ。爆音で
パンパンパンみたいな。なんか銃撃の練習音とか。あと自分らの頭の上でヘリコプターが訓練練習してたり、戦争を目の前に感じます。普段から。

ナカザワ:生活してて人の動きよりはそういう訓練の様子とかのほうが見るんですかね。

田芋農家の彼女:畑にいるときはそっちの方が見る機会が多いかもしれないです。歩いてても、アメリカ人もたくさんいるんで。

ナカザワ:なるほど。芋を子どもたちに伝えるという目標に繋がるにはどうしたらいいんでしょうね。どうしたらそれが実現するのか。

田芋農家の彼女:まず自分らが知識や経験をもっと身につけていきたいなと思ってます。だから今は勉強中です。

ナカザワ:ちょうど丸一年働いて多分繁忙期をもうすぐ終えようとしてるところかと思うんですけど、来年とか、次のクールというか迎えるまでに何かどういうことをやりたいとかありますか?やってみたいとか。

田芋農家の彼女:田芋に関してですよね。

ナカザワ:そうですね。

田芋農家の彼女:学生のときに書いた論文に、もう一度手をつけて、形にしたいなと思っています。

ナカザワ:ちなみに田芋の論文っていうのはやっぱり、生態系じゃないけど、生物としての分析とかがされている?

田芋農家の彼女:田芋に関しては分析とか全くしてないです。例えばどんな風に植えてるかとか、どんなサイクルで育ててるか、どんぐらいの収穫量とか最低限の情報をまとめたものになってます。
例えば病気とか異変があったら、県の普及所だったり専門家が呼ばれるんですけど、田芋に関しては、彼が呼ばれるんですよ。まだ経験が4年しかないのに。

ナカザワ:農家さんが呼ばれる。

田芋農家の彼女:そうです。それって解決できるわけないじゃないですか。経験が4年しかない人を呼ぶぐらい、情報が乏しいです。
最低限の情報をまず、まとめていきたいなと思ってます。

ナカザワ:ありがとうございます。藤崎さんは今はすごい田芋にフォーカスしてやってらっしゃると思うんですけど、ちょっと抽象的に、人生生きる中で、やってみたい、叶えたい夢とかありますか?

田芋農家の彼女:叶えたい夢。、農家さんと付き合って、農業やってっていうのが自分のずっと目標だったんで、今もう叶ってしまってる感じです。
強いて言うなら次やりたいことはこのタロイモの産地が、水田で作る産地は日本とあとは台湾、ハワイとかがメインなんで、台湾やハワイの生産者との交流をしたいなと思ってます。

ナカザワ:気候が近いところというか。

田芋農家の彼女:そうですね。栽培方法とかもほとんど一緒なので。

ナカザワ:見てる世界観としてはやっぱり、世界規模なんですね。

田芋農家の彼女:そうなりますね。

ナカザワ:日本で育てられるとこ多分沖縄しかないですもんね。

田芋農家の彼女:そうなんですよね。でも沖縄でもなくなってしまうなら、ちょっと出てみたいなっていうふうに。やっぱり海外に憧れがあるんで。

ナカザワ:なるほど。ありがとうございます。いろいろお話聞く中で、食料危機について考えて、自分が悩めるってことが贅沢なことだったんだなっていうふうに気づく、その瞬間がもしなかったら。ここがなかった場合はどんな人生だったと思いますか?

田芋農家の彼女:ここにはいないと思います。間違いなく沖縄にはいないし、多分おそらく千葉で普通に就活して。特に自分のやりたいこととかも特に見つからなかったと思います。目の前の悩みだけで精一杯になってたりとか、そんな感じだったと思います。

ナカザワ:そもそもなんですけど、そこの、自分の悩みに集中せずに、環境のおかげなんだみたいな、その気づきっていうのは何でできたんだと思いますか?

田芋農家の彼女:すごい考えた時期があって、悩んでることに。
付き合う人がいたってことは好きになれる人がいたから。好きになる人がいるってことは自分が人を好きになる余裕があったから、みたいな元を考える癖が元々あって。それでたどり着いたのがご飯食べてるからなんだ、です。

ナカザワ:ええ。めっちゃたどりましたね。

田芋農家の彼女:めっちゃたどりました。何かそこまでたどると、結構悩んでるとき、いつも楽になるんですよ。もっと感謝しなきゃって思って。もっと困ってる人なんてたくさんいるのに何でこんなことで悩んでるんだろうって思えるんですよ。

ナカザワ:楽になったことで結構実際行動が変わったりとか、気持ちが変わったりはしてるってことなんですか?

田芋農家の彼女:そうです。気持ちは結構変わります。こんだけご飯も食べて、特に不自由もなく過ごしてるんだから、とりあえず目の前のことに感謝しなきゃっていう、もう全くフォーカスが変わります、悩んでることから感謝に。

ナカザワ:なるほど、ありがとうございます。大きな話がいろいろありすぎてちょっと脇に置いておいてしまったんですが、千葉から沖縄に行くっていうことは、結構大きな選択の一つではあるのかなと思ったんですけど。実際、縁もゆかりもないところに引っ越してみて、沖縄という場所はどうですか?

田芋農家の彼女:面白いですね。日本じゃないみたいです。住まなきゃ、日本のリゾート地っていう印象だったんですけど、何もかもが自分らの住んできた環境と全部が違って。食も違えば人も違うし、考えも違うし。
だから、大学行くっていうのがそもそも私の中では、言ってしまえば普通。いきたいより行かなきゃ就職しなきゃっていう、考えだったんすよ。
でもこっちの人は、やりたいことがあるなら訓練校行って、その仕事就けばいいみたいな。遠回りをしないっていうんですかね、結構真っすぐ。沖縄の人は、結婚も早いし出産も早いし、やりたいことをすぐ手に入れるような人たちが多い印象があります。なんか野性的というか、人間的っていうんですかね。

ナカザワ:なるほど。結構住む場所変わってその辺も見る景色は変わってるんですね。

田芋農家の彼女:そうですね。全然違いますね。

ナカザワ:千葉って言っても広いですけど、千葉のどの辺ですか。

田芋農家の彼女:東京の隣。

ナカザワ:いわゆる関東の都心寄りの千葉ってことですよね。全然環境違うんですね。

田芋農家の彼女:もう全く違います。

ナカザワ:実際その沖縄生活を選んでみて、どうでしたか?ずっと住みたいですか?

田芋農家の彼女:田舎で近すぎるがゆえに、ちょっと住みにくいところもあったりするけどその分人が優しいっていうのもあるので。自分はこのまま住み続けてもいいのかなっていう思いもあります。
やっぱり、海外にはちょっと行ってみたいなっていう思いもありますが。このままずっと住み続けることができるのであれば沖縄でもいいかなと思ってます。

ナカザワ:ありがとうございます。藤崎さんが最後にこれまでちょっと話せてなかったこととか、言い残していたこととか何かあれば、最後にお聞きしたいんですけどどうですか?

田芋農家の彼女:特にないです。大丈夫です。

ナカザワ:ありがとうございます。

田芋と農家の魅力を写真や文章で発信しています。是非見てください。

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あとがき

考えるエネルギーが行動の原理を作り出す、そんなパワフルなお話でした。

「沖縄の人は遠回りをしない」という言葉がシンプルにおもしろいなと思いました。逆算思考だったり、将来のことを不安に思えたりするのって、明日も生きていられると分かっているからなんですよね。遠回りをするのも人間の特権。
一方で、やりたいことはできるだけ早く叶えようとする姿勢は、野性的で原始的な印象を受けます。

沖縄の風土の何がそういう差につながっているのかわかりませんが、まさに「食が違えば人も違う」。これも、考え抜いて少し引いた視野から世界を見ている藤崎さんだからこそ見えたことなのかもしれません。

明日も生きられるようになった時代から(ギリシャの哲学者とか?)、人間は、人間が生きることについて、世界の理について考え続けてきた分けですが、
自分が生きている未来が見えるがゆえに、今を生きることに向き合いきれずに生きづらくなってしまうところもあるのかもしれないな、と思ってしまいました。

【インタビュー・あとがき:ナカザワ】

【編集:本州】

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