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便所料亭


俺の名前は浅野。片道約2時間ぐらいかかる私立に通う高校1年生。地元からかなり離れているため、俺を除いて中学時代の同級生は進学していない。そのことから高校では初対面の連中しかいなかった。

入学式が始まって、皆ぎこちなさが抜け落ちない感じではあった。がしかし、そんなうぶなフレッシュマンでいるのも束の間。1週間経つとすっかりグループがいくつか出来上がり、同級生たちは自分自身の地位を確立していった。

俺は元から友達を作ることが大の苦手である。誰にも話しかけることができず、また話しかけられなかった。そのため俺はいわゆるボッチ陰キャの烙印を押された。

そんなボッチ陰キャの俺でもお昼休みだけが唯一の楽しみであった。俺の高校には、ある珍しい店が存在する。それが便所料亭である。

便所料亭は俺のような人間のために昼休み限定で開かれている食堂だ。入場料は100円だが個室でご飯が食べられるから他の人の視線も気にする必要もない。

しかもオリジナルメニューも用意されており、どれも無料で頼める。メニューには「校長先生の固形物うんち揚げ」や「経血ジュース」などゲテモノどころの騒ぎじゃ済まされないものが用意されている。

便所料亭の欠点を挙げるとしたら、クラスの顔見知りがうんちをする時のブリブリ音が丸聞こえすることぐらいである。

今日もいつも通り便所料亭へ行こうとしたら、休業のチラシが貼ってあった。見てみると、便所料亭で食中毒が大量発生したことから、学校の教職委員会から休業要請を出されたとのことだ。

困ったなぁ、便所で飯食うのが唯一の楽しみだったのにまさかなぁ…

あ、そうだ、学校の便所が無理だったら近くの公園の便所で食えばいいんだ! 

本来であれば、学校の外へ出て飯を食べることは校則違反だった。だがそんなことはお構いなく、ただひたすらがむしゃらに公園の便所を目指し猛ダッシュした。

それをたまたま見て不審に思った先生は俺の後をつけてきた。俺はあまりにも便所で食べたいという思いが強かったためか先生の気配を感じなかった。

公園の便所へ着き、さぁ食べようとしたその瞬間に先生に後ろから空手チョップをくらわされた。気絶した俺は足をビクビクさせながら泡を吹いて生き絶えた。
 
先生「お前如きの陰キャラに相応しい死に場所よ。せいぜいあの世で1人楽しく便所で飯食ってな。」

~The End~

担当:とろろ魔人

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