短編小説「品出し殺人」
まさか信じられない。あんなに親切なパートのおばちゃんが犯人だったなんて。
スタッフ一同は冷たい沈黙を貫いていた。
「なんで、なんでおばちゃんは店長を殴り殺したんですか?」
俺は、沈黙を切り裂き、皆が知りたい事件の本質をおばちゃんに追及した。黙り込んでいたおばちゃんはついに口を開いた。
「…店長が…あの人が悪いんだよ…40年勤めてるあちきに余ったお惣菜をくれないから…」
おばちゃんは肩を震わせながら今にも泣きそうな声になりながら答えた。そして無理矢理歪んだ笑顔を作って俺に尋ねた。
「なぜあちきが犯人だってわかったんだい?」
俺は犯行を見破った者として説明責任を果たすべくおばちゃんの目を見て言った。
「品物が崩れてなかったとですよ」
皆、理解していないようだったので俺は続けた。
「品物の裏側に店長の血痕が確認されました。つまり、店長殺害後に犯人が積み上げたんです。品物をここまできれいに崩さず詰むことができるのは40年間勤めているおばちゃん、あなたしかいません。
おばちゃんは微笑み、膝から崩れ落ちた。
「馬鹿だねぇ、あちきは…品物は崩したことはないのに…アリバイは崩しちまうなんてねぇ…」
その瞬間おばちゃんは体中に巻きつけていたダイナマイトのスイッチを押した。
凄まじい爆風とともに、店は木っ端微塵になり俺は全身に纏わり付いた炎に焼かれながらおばちゃんの犯行を見破ったことを後悔した。
ー完ー
作者 : 脳溶け夫
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