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自粛警察24時

2020年1月、某国でコロリウィルスの感染が最初に確認された後、世界中でウィルスの感染拡大が広がった。

ここ日乃丸共和国でもコロリウィルスが流行してしまい、国民全体が自粛生活を強いられている。

俺は人一倍正義感が強い方だ。俺も含め、国民がこの凶悪なウィルスを共に克服しようと奮闘しているにも関わらず、飲み屋や外で馬鹿騒ぎして感染を助長する輩どもがうじゃうじゃいる。

俺はこういうどうしようもない連中を罰すべく、活動している。世間では俺みたいな人を”自粛警察”と呼ぶ。だが、俺はそんなこと構いやしなかった。1日でも感染者が減れば、この日乃丸共和国が幸せになる。

俺は細菌研究所に勤めてるウィルス学者だ。コロリウィルスをはじめとする数多くの細菌を取り扱っている。本来であれば、違法行為に該当するが、コロリウィルスのサンプルを自宅に持ち帰っている。

こんな状況下だというのに、自粛しない愚民どもが甚だ許せなかった。奴らを思い知らせるために、持ち帰ったコロリウィルスのサンプルを密かに居酒屋や人々が多く集まる娯楽施設にばら撒いている。

こういう連中は1度痛い目に遭ってもらわねば、ウィルスの恐ろしさは分かるまい。

俺はいつも通り居酒屋の店裏の前でウィルスの入った袋を地面に置き、傘で突っついてばら撒いた。これで今日も皆がクラスター感染して、少しでも自粛の大切を分かってくれるだろうと期待した矢先、俺の体調に異変が出てきた。

身体中に倦怠感が増し、咳が酷くなった。もしや俺も感染してしまったと考えた瞬間、ある恐ろしいことを知った。俺は通常より50倍感染力が強い変異種のウィルスを誤ってばら撒いてしまったのである。

皮肉なことにコロリウィルスの怖さを教え、少しでも感染者を減らそうと奮闘していた俺までが罹ってしまった。自暴自棄になった俺は他の人にも俺と同じ目に遭わせようと、公共交通機関を利用して感染拡大を目指した。

駅構内に設置してある検温画面で39°の熱が表示されたことから、アラームが鳴り駅員が俺を押さえ込もうとしたが、それらを振り解き必死に走って電車の中に駆け込んだ。

俺はマスクを外し、思いっきり咳をして周りの人に飛沫感染させた。周囲の乗客も徐々に気分が悪くなり、俺と同じように咳をし出した。俺の目論見は成就したかのように思えた。が、次の駅で俺が初めに入場した駅の職員の通報により、防護服を着た警察官たちが待ち伏せていた。

電車は緊急停止し、警察官は俺を捕らえようとした。自粛警察の俺が本物の警察官に捕まるなんてお笑いにもほどがある。

俺はすかさず1人の警官の持っている銃を素早く取り上げ、世間の冷ややかな目から逃れるべく自死を決意し、こめかみに銃弾をぶち込んだ。

俺はまた世間にコロリウィルスの恐ろしさを伝えることができたので、後悔はなかった。

The End

担当:とろろ魔人

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