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詩作品

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記事一覧

[詩] 雪国

生まれるまえの岸辺 はじめから 櫂を持たない子らのなかに わたしもいた 眠るのは 葦に囲まれ…

ほんの短い詩と詩。「雪みち」から「はるのはじめ」のひとひらへ。

 今年の秋に発行した詩誌「アンリエット」。  ここにどんな詩が並ぶのかは具体的には言えな…

[詩] 白い紙

わたしが生まれるまえ ながいゆきみちで 暖を取るためにまだ若い母が燃やした手紙を けさも…

[詩] あかつきやみ

黴臭く重い半纏にくるまれてはいるものの、北風が木戸をゆらす明けがたには頰の冷たさにふと目…

[詩] ヒヤシンス

家の近くに、だれも住んでいない古い木造の洋館が建っていた。屋根は雨に朽ちかけ、壁や柱の白…

[詩] 音楽

今夜、はつゆき、 降るのでしょうか 窓のそと 静まっていく足音に 目と耳が吸い込まれ 冬にな…

[詩] ペルピニャン発

ひとつの車輛のなかで いくつかの言語の息がささやきあう ねむたげな 真昼 長距離列車がようやく 速度をあげはじめ 乗客の胸のうちの 重い火種がほどかれ 空は 夏を吐く ひまわりの油に濡れた車窓 馬の腹のかたちに流れる地平は さまざまな肌の色をした マリアとマリアと、マリアたちの 笑い声と 花の匂いをまぶされ 黒い歌声のように熟れる さきに列車を降りたひとは さきかけの 白い カメリアの気配 まどろみの淵に届いた よい旅を、という スペイン語のささやき 水差しに溜まる

[詩] 伝言

振り返ったひとが もういちど振り返るのを恐れ わたしは振り返らずに別れたのか 振り返ったと…

[詩] 食卓

学生のころ ひと冬だけ イザベルの住む家で過ごした 石畳のうえで冷えたスーツケースを 部屋…

[詩] 水しるべ

濡れた木陰に 雨雲の疱瘡のように浮かぶ うすあおい花の球体を たよりない明かりとして 神楽坂…

[詩] 花びらと

食卓に 花びらが落ちている ちる音を いちども聞かないうちに また夜になり アパートの 隣の部…

[詩」 嗚咽

十年前には 花市がたち パントマイムに 歓声があがっていたはずの 広場には 飲みかけのペット…

空へと手放すために。

自分の外側にいま存在する、何かのために、誰かのために、詩を書く、のではなく。 わたしが忘…

[詩] 転居

雨は めぐりあえない花を追うように 路地を濡らしていった 荷物を送ったあとの 畳の 水の匂いのうえに 去年の 蟬の翅が落ちている それを かりそめとも ゆめとも 呼んではいけない、と かつて 姉のような蛍は教えた 叶わなかった願いは からだが 朽ちても 遠い灯の群れのなかに 残るのだから ひとにも 家にも なじまないうちに 離れてゆく そのたびに震えるあかりを こころ、と呼んでもいいのだろうか あかりに いちどだけふれたひともまた 花のような蛍に導かれ すでに遠い灯の