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大学授業一歩前(第143講)

はじめに

 今回は明治大学名誉教授の細野はるみ先生に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。是非、今回もご一読下さいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えて下さい。

A:細野はるみ、元情報コミュニケーション学部教授、現在は名誉教授です。明治大学には短期大学と情コミ学部併せて1979年~2019年まで40年間おりました。
 専門は日本文学、特に源氏物語ですが、情コミの授業では広く古代から現代までの日本文学や学際的科目(多様性理解など)も扱いました。情コミジェンダーセンターの設立に関わってその関係の活動にも力を入れました。

オススメの過ごし方

Q:大学生にオススメの過ごし方を教えて下さい。

A:コロナ禍の中で入学した皆さんは様々なところで制限の多い学生生活を送っていることと思います。こういう時だからこそ、今までの自分ではやらなかったような活動を試してみるのもいいかもしれません。体を使うことが好きな人は1日図書館で過ごすとか、逆の傾向の人は1日近場の山歩きをするとかしてみて、新しい自分を発見してください。

必須の能力

Q:大学生に必須の能力を教えて下さい。
 「大学生だから」とか「○○学部だから」とか、自分を限定せずに諸方にアンテナを張って貪欲に探究する姿勢
 情報を手に入れる際、結論を急がず経過を読み込む姿勢。ショートカットで本や映画を見る、倍速で話を聞く、などに慣れてしまうと、ある現象を見るのにその対象の現在の姿のみでなく、そこに至る経緯をじっくり考えることが面倒になってしまうかもしれません。でも、そこにこそ深く理解する手掛かりがあるでしょう。

学ぶことの意義

Q:先生にとっての学ぶことの意義を教えて下さい

A:若い時の学びは全体が見えていないという自覚はありつつも、がむしゃらで傲慢でした。経験を積んでからの学びは違うようでいて、自分の興味の持ち方、探求の方法はやはり変わっていないなと感じます。仏教では「無学」というのはすっかり学び尽くした聖者(阿羅漢)を指し、学びつつもまだ学ぶことが残っているのが「有学(うがく)」ですが、俗人である私はずっと途上で学び続けることになると思います。

オススメの一冊

Q:今だからこそ大学生に読んでおいてほしい一冊を教えて下さい。

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A:1)トーマス・マン著・高橋義孝訳『魔の山』(新潮文庫)。

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A:2)ジョージ・オーウェル著・高橋和久訳『一九八四年』(ハヤカワepi文庫・早川書房)。

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A:3)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著・三浦みどり訳『戦争は女の顔をしていない』(岩波現代文庫)。
 まさかの戦争が起こってしまったので、やはりそれについて考えてほしいです。戦争・感染症・自然災害などの大きな災禍は人間を個人としてより名前のない群衆として捉えがちですが、一人一人を忘れないで。1)は意外かもしれませんが最後まで読めばわかります。
 1冊との指定に対して3冊を挙げてしまいました。

メッセージ

Q:最後に学生に向けてのメッセージをお願いします。

A:既に書いたことにも通じますが、大学生活は人生の中での限定された時間です。そのことを時折意識しつつ、長い目で見て、質の高い自分の人生を切り開いていってください。
A:特に変化の多い今の時代は、今後世の中がどう変化していくのか冷静に見極めていく目が必要になってくるでしょう。

おわりに

 今回は明治大学名誉教授の細野はるみ先生に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。

 ショートカットで本や映画を見る、倍速で話を聞く、などに慣れてしまうと、ある現象を見るのにその対象の現在の姿のみでなく、そこに至る経緯をじっくり考えることが面倒になってしまうかもしれません。でも、そこにこそ深く理解する手掛かりがあるでしょう。

 早く進む社会の中でも、その本質を見極めるためにはじっくり、ゆっくり考える時間が必要だと改めて認識しました。私も腰を据えて考え抜いていきたいです。

 細野先生とは明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンターの👇のイベントでお会いしました。とても面白かった講演会でした。大学ではこのようにたくさんのイベントを実施していると思うので、皆様も是非調べてみて下さい。次回もお楽しみに!!


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