大学授業一歩前(第65講)
はじめに
今回は予備校講師の新野元基先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。新しく大学生になった皆さまにも是非記事を読んで頂ければと思います。
プロフィール
Q:ご自身のプロフィールを教えてください。
A:新野。 東京都練馬区生まれ。高校卒業後、一浪して東京大学文科三類に入学、文学部思想文化学科卒業。大学1年の4月からある大手塾でアルバイトを始め、学生時代は主に中学受験の算数を教えていましたが、大学院への進学後は高校受験の英語の指導に集中するようになりました。大学院卒業後に1回やめようと思って、ある現役生対象の予備校を受けたら運よく受かったのでそこから大学受験の英語を教え始めましたが、大手塾の方は引き留められて、そのまま掛け持ちしながらその塾の高校入試の責任者にまでなりました。合宿やセミナーなど大きな企画の立案・運営など、貴重な経験を長いことやってきましたが、そろそろ人生どうしようか思っていたときに、ある人から「なんで河合塾受けないの?」と言われてその気になり、試しに受けてみたらこれも運よく採用いただき、今に至ります。
オススメの過ごし方
Q:大学生におすすめの過ごし方を教えてください。
A:「大学の授業に即効性を求めないこと」が大切です。大学の先生の本職は研究であり、授業ではありません。授業が本職の予備校講師とは考え方が違います。予備校の授業に慣れてしまった人は大学の授業がつまらないと思いがちですが、比較すること自体が間違いだと思ってください。とくに文系学部の大半の授業は、今は役に立つとは思えないけど、10年、20年経ったら「じわっと来る」授業なのです。そのことを信じて、授業をちゃんと受けてください。
必須の能力
Q:大学生に必須の能力を教えてください。
A:「積極性」です。高校生は強制的に修学旅行に連れていかれますが、大学生は自分で誘わないと卒業旅行には行けません。高校まではベルトコンベヤーの上に乗っているようなもので、在籍さえしていれば勝手に色々な行事に参加し、授業を受けることになりますが、大学は自分で手を挙げないと4年間何もできずに終わってしまう環境なのです。勇気を出して色々なものにチャレンジし、視野を広げてください。また、大学の先生にも積極的に声をかけましょう。あなたから声をかけないと、大学4年過ごしても誰からも顔と名前を覚えてくれないまま卒業することになりますが、これは非常に不幸なことですよね。
学ぶ意義
Q:先生にとっての学ぶ意義を教えてください。
A:「悪いやつにダマされないようにすること」が学ぶ意義だと考えています。残念なことですが、世の中は嘘であふれていて、自分の利益のために意図的にその嘘を流している人もたくさんいます。今日の情報化社会ではこのことがより鮮明になっていて、現代社会で最も必要な能力は情報を見抜く力、情報リテラシーだと言ってもよいと思うのです。大学で学ぶ中では、論文として認められるものは何か、科学と認められるものはどんなものか、といった学問の本質的な部分に直面することでしょう。一つ一つの学びの機会に真摯に向き合うことで、正しい情報を見抜く力を養い、最終的には悪いやつにダマされない人間になっていけると信じています。
オススメの一冊
Q:オススメの一冊を教えてください。
A:実を言うとあんまり本を読まないのでオススメできるほどのものがありませんが、山田詠美の『ぼくは勉強ができない』と、中島敦の『悟浄歎異』は、受験という苦しい経験の中で、偏ったものの見方をしがちな受験終了組には「リハビリ」としてちょうどよい作品だと思います。
メッセージ
Q:大学生に向けてのメッセージを最後にお願いします。
A:大学の4年間は、何でもできる4年間である反面、何もできないまま終わる4年間にもなりえます。だからこそ、大学になぜ進学したのか、という目的を忘れないでください。大学入学後は3年も経たないうちにすぐまた進路の選択に直面します。今の高校生に将来の夢を聞いても、答えられない人が多いでしょうが、僕はそれでいいと思っています。というのも、高校生のほとんどは仕事を知らない。せいぜい、目の前で働いている学校や塾の先生や、テレビドラマの中でお目にかかる職業くらいしか知らないのです。よく知らない状態で仕事を選ぶというのは難しいことだし、危険なことでもある。だから、大学の中で色々な仕事の本当の姿を知っていく必要があります。アルバイトをするなら自分が知らないような仕事がいいし、色々な会社・職種を経験するのもいい。就職活動に向けて、業界研究をするのもいいでしょう。とにかく積極的に、そして視野を広げてください。視野を広げることがあなたの可能性を高めることにもつながるのですから。
おわりに
今回は予備校講師の新野元基先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。大学の4年間は自由ではありますが、自分から待っていては何も起きない期間です。世界は常に自分に開かれていると思います。次回もお楽しみに!!