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大学授業一歩前(第153講)

はじめに

 今回は(教育)社会学を専攻してきた、ちひろ様に記事を寄稿して頂きました。今回も是非、ご一読下さいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えてください。

A: 東京大学大学院教育学研究科で(教育)社会学を専攻してきました。ここで(教育)としたのは、以下で触れるように、自分の研究主題の学際的な性格に引っ張られるかたちで、専攻分野も教育社会学(「教育」)を主軸としつつも、家族社会学(「家庭」)や、福祉社会学(「支援」)、さらには法社会学や教育行政学(「法・条例」)等にまで裾野を広げつつあるためです。

研究内容/関心のあるテーマ

Q:現在、研究している内容とご自身の関心について教えてください。

A:卒業論文から一貫して、「家庭教育支援(法・条例)」を主題として研究を続けてきました。この社会において、「家庭」・「教育」・「支援」は、各々に強い理想や願望が投影される領域であり、その集積点ともいえる「家庭教育支援法・条例」は絶えず是非の論争の的となってきました。
 修士論文では、政治家や市民、支援者などの多様なアクターが、どのような理念のもとで「家庭教育支援」の法制度化を推進したり反対したりしてきたのか、また、実際に制度施行後に「支援」の現場にもたらされた帰結はいかなるものかを実証的に分析しました。

オススメの一冊

Q:オススメの一冊を教えてください。

『シリーズ子どもの貧困③ 教える・学ぶ-教育に何ができるか』(明石書店、2019年)

A:佐々木宏・鳥山まどか編『シリーズ子どもの貧困③ 教える・学ぶ-教育に何ができるか』(明石書店、2019年)を挙げておきます。実は私自身の研究テーマは教育社会学の中でもマイナーでして、一般にメジャーなのは「教育格差」でしょう。私が本書を紹介するのも、まずはこれが大注目の「子どもの貧困と教育支援」を主題とした親しみやすくも良質な文献だからです。  ただし本書は、「教育」・「支援」をひたすら良きものとして称揚する凡庸な議論には与せず、その功罪を批判的に吟味する点が非常に刺激的。直接の対象こそ異なれど、「教育」や「支援」には何ができるか/できないか「教育」や「支援」に何を期待すべきか/期待すべきでないかを、冷静に見極めようとする問題設定は私の研究関心にも通じます。

ご自身の読書術

Q:ご自身が実践されている読書術を教えてください。

A: 圧倒的精読派です。雑に多読しても、思い出せなければ意味がない。内容(知識やロジック)を自家薬籠中の物とするべく、具体的には以下の手順を踏んでいます。
①初読時に要点に黒ボールペンで傍線を引く。
先行研究の批判的検討の箇所には別途青ボールペンで傍線を引く(先行研究の批判から新たな研究の目的や問いを立ち上げるロジックは論文の肝!)。
③一通り読み終わると傍線部のみ再読し、とくに重要な箇所や、そのまま引用したいフレーズに蛍光ペンでマークする。
④(自分の研究に密に関係する文献の場合)先ほどマークした箇所を研究ノートに転記する。その際、漫然と書き写すのではなく、元の文章全体の骨格(ストーリーやロジック)を紙上で端的に再現できるよう、適宜矢印等の記号も用いる。

メッセージ

Q:最後このnoteを読まれている方へのメッセージをお願いします。

A: 「大学授業一歩前」の寄稿者や読者の方々は、物理的・制度的な「大学」を離れた場所に(も)、人的ネットワークとしての「学びの場」を求めていらっしゃる方が多いのではと思います。他でもない私もそうです。学部時代に専攻していた教育学から研究関心が徐々にはみ出していった中で、また、コロナ禍や自身の持病のせいで孤独な時間を持て余す中で、SNSやオンライン上で得られた情報やつながりに助けられることは本当に多かった。  「大学授業一歩前」が、そうしたプラットフォームの一つとして今後さらに成長することを願っています。

おわりに

 今回は(教育)社会学を専攻してらっしゃった、ちひろ様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して下さりありがとうございました。

①初読時に要点に黒ボールペンで傍線を引く。
先行研究の批判的検討の箇所には別途青ボールペンで傍線を引く(先行研究の批判から新たな研究の目的や問いを立ち上げるロジックは論文の肝!)。
③一通り読み終わると傍線部のみ再読し、とくに重要な箇所や、そのまま引用したいフレーズに蛍光ペンでマークする。
④(自分の研究に密に関係する文献の場合)先ほどマークした箇所を研究ノートに転記する。その際、漫然と書き写すのではなく、元の文章全体の骨格(ストーリーやロジック)を紙上で端的に再現できるよう、適宜矢印等の記号も用いる。

 お恥ずかしながら、私は上記のような綿密な精読はいっさいしてこなかったので、非常に参考になります。一冊とどのように向き合うのか、一冊からどれだけの知識を得るかは読み方によって左右されるのだと痛感しております。明日から早速やってみます!次回もお楽しみに。


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