意思決定権を持たない者の戦い方―長島伸一『ナイチンゲール』を読む

 看護婦(看護師)と大学職員は、高度に専門的な職業である医師や大学教授の傍で働くがゆえに、しばしば副次的な存在として扱われてきたという点でもよく似ている、そんなことを考えさせられた一冊です。
 フローレンス・ナイチンゲール(1820~1910)は「クリミアの天使」「近代看護の先駆者」として有名ですが、私が興味深く思ったのは彼女が統計学者でもあり、膨大な政府白書の読込みと統計手法を駆使した丹念な分析が社会変革の種を産み落としていったという伝記的事実です。
 これ、大学で言うところのIR(Institutional Research)なんですよね。データを収集・分析することによって事実を突きつけ、政策形成を促す。最終的な意思決定権を持たない者ならではの戦い方です。


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