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2023大学ラグビー関東リーグ戦:流通経済対大東文化を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
リーグ戦もついに開幕しましたね

今回は関東大学リーグ戦の流通経済大学対大東文化大学の試合についてレビューをしていこうと思います

まずはメンバー表から

承前:8番佐々木選手が18番、18番藤倉選手が8番をつけていたとのことです

次にスタッツです

順番に見ていきましょう


流通経済のアタック・ディフェンス

流通経済のアタックシステム

基本的には10番の佐々木選手がアタックの中心となり、10シェイプや外への展開を主にしてアタックをしているような印象を受けました
9シェイプが用いられることもありますが、傾向的にはSOの判断を基準にアタックを組み立てているように見えます

アタック自体はかなりシンプルで、強い選手が中央エリアで全身をはかり、ハーフバックス団の状況判断でエッジなどにできたギャップを狙いに行っていました
階層的なアタックという方向性はそこまで見て取れず、外に回す時もワンラインでシンプルなアタック形式だったように思います

システム的に見ると1−3−3−1が比較的近いかなと思います
とはいえ、基本的に9シェイプに3人が立っていましたが、9シェイプをおかずにSOが直接もらうことが多かったのであまり、2つのポッドを常置することに関してはこだわっていないのかもしれません
その中でNO8のロケティ選手は少しポジショニングに自由が与えられていたような印象を受けていて、アングルをつけて走り込んだりポッド外に立っていたりと、SHの判断でキャリーするかどうかを選択していたようにも見えました

ラックにかける人数は全体的には少なめで6〜7割ほどのラックがキャリアーを入れて3人以下の構成で完結していました
SHの武井選手のテンポも良い傾向にあり、大東文化のディフェンスラインが構築される前に左右に振りながらアタックをすることができたように見えました

少し気になった点を挙げるとすれば時々10番の佐々木選手が(おそらく)判断に迷った結果自身でキャリーを図って容易に大東文化のディフェンスラインに止められていたシチュエーションも見られていたため、SOから10シェイプに強いプレッシャーをかけてくるようなチームと相対した時には苦労するかもしれません

キックに関してはそこまで戦術的に用いているようには見えず、基本的には蹴り合いのLongがメインとなっており、時々SHの武井選手の判断でBoxないしはグラバーを蹴っていた印象です
Puntは一度も見られなかったため、戦術的な面でキックからの競り合いを狙っている状況はなかったと思います

流通経済のキャリー

NO8のロケティ選手が最も強烈なキャリアーとして君臨しており、Defenders Beatenのほとんどがロケティ選手によるものだったと記録しています
意図的にBump-Offを狙うような姿勢で当たっているわけではないですが、真っ直ぐ走るだけで相手のタックルを弾くことができていて、一度のキャリーで何度もDefenders Beatenをしていたのが印象に残っています

パス自体が複雑な方針ではないこともあり、キャリーに関してはもらって真っ直ぐ当たることが多かったように思います
特にステップを切ってずらすような選手もそこまでいなかったので、コンタクトしてから足をかいて前に出ようとしていたのかもしれません

回数を見ていくと、前後半合わせても57回と少ないキャリーでトライまで至っていることがわかるかと思います
単純計算でいくと9.5回のキャリーで1つのトライが生まれているということができるので、ある意味ではこれはトライ効率が良いと言い換えることができるかもしれません
実際、ラインアウトモールからのトライやラインアウトのスペシャルムーブからのトライなどが散見されており、少ないキャリー数=少ないフェイズで取り切るシーンが多く見られていました

キャリーの内訳としては比較的バランスの良いアタックをしており、9シェイプ・10シェイプ・シェイプ外の中央エリア・エッジエリアでのキャリーが大まかには同数のカウントとなっています
回数自体が少ないので傾向とまでは断言できないと思いますが、ハーフバックス団の判断や意思決定が重要になってくるようなアタック傾向にあるように思いました

流通経済のパス

キャリー・パス比は7:10くらいの値をとっていることから、一般的な傾向に比べるとキャリーの比率が多いように思えます
多くのキャリーが1パスか2パスで接点ができているということですね

厳密なポッドはそこまで組まれていなかったように思いますが、ポッドの形は基本的な三角形に準拠していて先頭の選手がもらうことを基本としており、SHの選手から展開する時の選択的な負荷は少し小さいように感じました
BKに展開するときはFWが9シェイプに配置されていないことも多かったですしね

前後半通じてバックドアと呼ばれるようなポッドやアングルをつけて走り込んでくる選手の裏へ深いパスを放るパスワークは見られず、同様にポッド内でのパスワークも見られなかったことから、基本的にはパスを受け取ったキャリアーに対して準備されている選択肢はそこまでなかったのではないかと予想しています
ロケティ選手のような個人で高いできる選手もいましたしね

パスの回数を総じて見てみると、ラックからFWが1stレシーバーとなるパスが計9回、ラックからBKに展開するパスが24回と、BK展開を意図したパスワークが多かったということが結果として見えてきています
同様にバックスライン上でのパスも前後半で18回と、キャリーが比率的には多いとはいえ、回す時と少ないパスでキャリーする時の差ははっきりしているように思えました

流通経済のディフェンス

基本的にはタックル成功率は悪くない数値となっています
ミスタックルにカウントされたプレーは前後半で18回となっていますが、トライに直結するようなミスはそこまで多くなく、モールトライやゴール前の繰り返しのキャリーで少しずつ前進されたことが結果的にはトライにつながっていたように思います

とはいえ、大東文化もどちらかというとシンプルなアタックをしていたようにも見えたので、最低限意識は向けたほうがいいようにも見えました
ステップで外されているというよりはスピードで振り切られたり相手の体の強さで弾かれたりしているシーンが見られたので、ディフェンススキルとしての体の使い方も要チェックかもしれませんね

タックル自体はダブルタックルも適宜決めることができていたので、うまく行ったタックルに関しては質が高いということができると思います
一人で倒し切るタックルもしっかりできていたように見えます

大東文化のアタック・ディフェンス

方針としては9シェイプを基本として、相手のディフェンスが崩れたと判断された時やラインブレイクが起きた時にBKへボールを供給するといった形をとっていたように見えました
回数としても少ないパスでキャリーまで持ち込むようなプレーが多かったですしね

9シェイプは3人立っている一方で10シェイプはほとんど見られず、ポッドを用いた意思決定はそこまでされていないような印象です
意図的にキャリーをするエリアをコントロールしているというよりかはひとまずFWのキャリーで前進を図って、状況判断で外に回すかどうかを決めるといった感じです

FWにもBKにもタイプは違いますが外国出身の優れたキャリアーがいるため、そういった選手がアタックの起点になっていることからSHやSOにかかる意思決定的な判断負荷は低いように感じます
重要なキャリアーにいかにパスを回すかというところが基本となり、どのエリアでアタックをするかということに関係する思考を減らすこともできるからですね

キックに関しても戦略的な運用はされていないような印象で、こぼれ球をGrubberで蹴った1回以外は自陣からの脱出や蹴り合いになった時のLongが主となっていました
こちらも流通経済と同様に競り合ってポゼッションをキープするというよりかは、まずは脱出して何かしらの手段でターンオーバーが起きたらポゼッションを高めてボールをキープしながらアタックするといった感じでしょうか

大東文化のキャリー

目立ったキャリアーとしては3番のフィナウ選手、13番のヴァイレア選手が今回の試合ではピックアップされることかと思います

フィナウ選手はビッグゲインこそしていませんがコンタクトした後に倒れるまでの時間が長く、その間に足をかいて前に出ることができるという点で優れており、ヴァイレア選手はBKの中でも高い走能力を生かして相手を振り切るような形で前に出ることができていました

FWの選手のキャリーは9シェイプが多いということもあり中央エリアでのコンタクトが主となっていて、ステップを切るというよりかは安定したコンタクトからラックを作ることに重きを置いているように感じられます
オフロードパスも見せていることから、当たる際のボディコントロールも悪くなさそうですしね

回数を見ていくと前後半合わせて102回のキャリーがカウントされており、流通経済の倍近くのキャリー回数となっていることからポゼッション的には相手を上回っていたような印象です
ゴール前での攻防も長い時間実行していましたし、ゾーン的には流通経済とトントンくらいになっているように見えました

内訳としてはシステム通りに9シェイプでのキャリーが合計30回と最も多くなっており、FWのキャリーが中心となっていることが見て取れます
BKの選手がキャリーする回数も少なくはなかったと思いますが、意図的にラックを作ると言うよりかは勝負するようなキャリーが多かったことから、システマチックにBKのキャリー回数をどうこうしようといった方針はそこまで見て取れませんでした

また、シェイプ外のキャリーについて見ていくと、合計19回のキャリーのうち14回が中央エリアでのキャリーとなっていて、9シェイプでのキャリーも基本的には中央エリアで発生していたことから、意図して15mよりも外のエリアでラックを作っている印象はあまりなかったです
15m付近でラックができてもブラインドサイドに人を配置するよりかはワンラインでアタックを構築しているように見え、ラックにかける人数も比較的多かったことから、そこまでブラインドサイドを使ったりグラウンドを広く使ったりといったアタックはできていない・もしくは考えていないようにも見えました

大東文化のパス

パスワークは至ってシンプルで9シェイプでキャリーさせることを意図したアタックが多く、SOを経由させたアタックは二の次と言うような印象を受けました
後半に至っては9シェイプへのパスが18回、バックスへのパスが4回と圧倒的にFWに偏っていることが見て取れます

また、9シェイプは少し近い位置にポジショニングしていることからSHからのパスでラック周辺のディフェンスを着るような意図はそこまで感じられませんでした
ポッド内でのパスも後半に一度見られたっきりと、9シェイプからの拡張性はそこまでなかったように思います

一方でバックドアへのパスは流通経済のパスワークに比べると多めで、ポッドを交えていないBKのみのアタックラインの時も、フラットにくる選手がアングルをつけて走り込むことで裏へのパスのオプションを可能にしていました

大東文化のディフェンス

総合的に見てもなかなか厳しいタックル成功率を示しているように思います
最低でも80%はないと最終的に勝ちにつなげることは難しいでしょう
主にミスタックルを誘発していたのが流通経済のロケティ選手ということもあり、この試合にのみ関していえば彼をシャットアウトしていればもう少し成功率自体は上がったように思います

タックルミスの要因としては、タックラーが少し飛び込み気味にタックルに行こうとしている傾向が影響しているかと思います
高く入ろうとして相手選手に弾かれるというよりは、下に入ろうとして足の動きが死んだ結果タックル状態をキープできずに振り切られるようなシチュエーションが多かったように見えました

また、ディフェンスラインの上がりは少し早めである一方で、外側のディフェンスがおそらく個人の判断で詰める傾向も見られており、システムに沿っていないプレーによるエラーも散見されました
その結果、ビッグゲインを許したりミスタックルとしては計上されないポジショニングエラーが起きたりしているというわけですね

まとめ

春季大会のカテゴリーで見ると流通経済大学がAグループ、大東文化大学がCグループだったため、結果だけを見ると大東文化大学が健闘した試合だったということができるかと思います

一方で両チームともにシステム的に相手のことを崩すことはそこまでできておらず、少数の優れたキャリアーが結果に影響していたようにも見えたので、まだチームとしてのアタック・ディフェンスを寝ることはできるようにも感じました

今回は以上になります
それではまた!


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