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Rugby Championshipのアルゼンチン代表の試合展開からW杯を見据えてみた

みなさんこんにちは
トンガ戦の見逃し配信を見ながら記事を書いている今本です

今回は大学ラグビーからは離れますが、少し趣向を変えて日本代表がワールドカップで挑戦することとなるアルゼンチン代表について、今月行われたRugby Championshipの試合からアルゼンチン代表の試合をピックアップして振り返ってみました

実際はワールドカップでアルゼンチン代表と試合をするのは最後なので、分析対象になるのは大会中の試合+αになるかとは思いますが、今の段階でちょうどいいのがRugby Championshipだったのでご了承をば

それでは3試合のメンバー表を見てみましょう

表のうちピンク色で塗りつぶされているのは3試合全てにスタメンとして出場した選手になります
チェイカHCにとってもかなり重要視している選手なのではないかと予想することができますね

それでは順番にポイントを見ていきましょう


アルゼンチンのアタック

強み

アルゼンチンのアタックを自分が見て感じたものを言葉にすると、「テンポ・アングル・スピード」になります
一般的なアタック構想と言ってしまうこともできるのですが、「ラックからのリサイクルスピードを早め、レシーバーはアングルをつけたりスピードに乗ってボールをもらいに行く」というイメージをアルゼンチンのアタックからは感じました

スタッツやLQB(ラックからボールが出るまでのスピード)をとっているわけではないので正確に論ずることは難しいのですが、アルゼンチンがいいアタックをしている時やおそらく意図に沿ったアタックをしている時は必ずボール出しまでの早さがかなり関係しているように感じます

また、ボールレシーバーがさまざまな角度でボールをもらいに行っていることも印象的でしたね
もちろんアウトサイドからインサイドに向かってもらいにいくいわゆる「カットイン」も多いのですが、外に流れながらもらうプレーや「カットアウト」や「スワーブ」と呼ばれる真っ直ぐ走っているランコースを外に急激にないしは緩やかに変化させるランニングをしているのも見てとることができました

特に南アフリカ戦では好勝負の影にランニングスピードの改善があるように感じられ、ニュージーランド戦やオーストラリア戦に比べると全体の平均速度は上がっていたのではないかと考えます
南アフリカはラッシュアップと呼ばれることもある「ディフェンスラインの素早い上がり」が特徴とされることもあり、一人一人のランナーの質が担保されていることからテンポ良くスピードを持って選手が走り込むことで相手のディフェンスラインの整備よりも早くアタックをすることができていたように思います

テンポとスピードを重要視していることもあり、おそらく深いアタックラインは好んでいないような印象を受けました
アタックライン・パスラインをよりフラットに、という感じですね
実際、南アフリカ戦にかけてバックドアへのスイベルパスは徐々に増えてきたような印象ですが、初戦のニュージーランド戦ではあまり深いパスムーブは見られず、9シェイプやSOのカレーラス選手からの10シェイプが多かったのではないでしょうか

弱み

一方で、テンポが速いことも相まってかアタック時のポッド形成、シェイプ形成に関しては揃っていないことも多かったように感じられます
レシーバーが孤立してしまったり、おそらくは意図していない形で選手がボールをもらっていたりと「ハマっていない」瞬間が随所に見られ、結果としてターンオーバーされたりペナルティにつながっているような場面も見られました

また、基本的にはスイベルパスは少なめなので1人のボールキャリアーに対するパスの選択肢としてはそこまで多くはないイメージであり、ステップワークやランニングコースによって相手を揺さぶっているような印象を受けます
そのため、アメリカンフットボールでいうところの「スイム」のように前に立っているダミーの選手を避けてディフェンスをする動きが上手い選手との相性は悪いのではないかと予想しました
ポッド内のパス交換は少なめなので、「キャリアーがそのままキャリーしてくる」か「バックドアへのスイベルパス」の2つの選択肢について判断ができればある程度抑えることができるように思います

アルゼンチンのディフェンス

強み

一人一人の強さが何よりもまず強みになってくるかと思います
特にLO陣の体の強さには注目していきたいものです
ラヴァニニ選手とかはわかりやすいアルゼンチンのLOって感じがしますよね
また、BK陣のディフェンスの質も高く、相手にビッグゲインを許した後も最後まで追いつくことのできる走力とタックルスキルも強みになると思います

さらに着目していきたいのはキックオフから相手の数フェイズのアタックに対するプレッシャーですね
ニュージーランド戦ではキックオフを少し深めに蹴り込んでプレッシャーをかけることでチャージダウンまで至っていました
南アフリカ戦でもさらにプレッシャーは強まっており、アンラッキーな選手同士のコリジョンがあったりもしましたが、キックオフでのプレッシャーは南アフリカを相手にしても効果的に活用されています

弱み

弱点というほど絶対的なネックはないかと思いますが、特にFWの選手について少しDFのレンジが狭いような印象を受けていて、相手に対して強いプレッシャーをかけるのとトレードオフで1対1についてコミットしすぎているようなイメージがありました
つまり、自分がトイメンに立っている=自分がマークしている選手に対して少し前のめりになりすぎているということですね

1体1が強いということもあって狭いレンジでのアタックに対しての強さは前面に押し出されているかと思いますが、一方で最後まで相手の動きを注視することなく早い段階で選択肢を切ってしまい、細かいパスワークに対する弱さが露呈していたように思います
何度か相手のポッドやシェイプの中のパス繋ぎでゲインを切られるシーンが見られていますね

同様に、いわゆるブラインドサイド=狭いサイドへのアタックに関して少し苦手意識を持っているというか、狭いサイドでビッグゲインを許す場面も複数回見られていました
BK3の選手のコネクションがあまり強くないということも影響しているかとは思いますが、一番はオープンサイドへ移動する意識が強いことにあるかと考えます
ある程度は相手選手の立ち位置を見ながらディフェンスをしているとは思うのですが、少しだけ順目方向に回りがちという傾向も見てとれます

また、タックルそのものについても体を当てるという点に関しては全く問題ないかと思うのですが、ロータックル=相手の腰より下にタックルに入る選手に関しては足が死んでしまっている、チェイスフィートが上手く踏むことができていないように感じました

最後にキックレシーブに関して言うと、全体的に少し勤勉ではないようなイメージを感じています
要するに、キックを受ける選手に対するサポートについて一生懸命さはそこまで感じられませんでした
ブロックの選手もそこまでおらず、キックリターンのアタックをするときに重要になるCTB陣の戻りも遅かったように思います

ピックアッププレイヤー

PR トマス・ガジョ

スクラムに関しては専門のコーチにお任せするとして、ガジョ選手に関してはボールキャリアーとしての強みを紹介したいと思います
コンタクト自体の高さはそこまで極端に上手いわけではないのですが、当たった後の前に出るモーメンタム、またそれに伴うボディコントロールに関していうとかなり優れているということができると思います

ボールレシーブに際してもスピードを上げて受け取ることができており、モーメンタムを生み出すことのできるようなキャリーにつながっています
そこでボールを弾いたり落とすこともないので重用されるのも納得ですね

BR パブロ・マテーラ

三重ヒートに所属する同選手ですが、アルゼンチン代表においても重要な選手の座を守り続けています
体の強さを活かしたボールキャリーやブレイクダウンでのファイトも目立つ選手ですが、自分がかなり重要視しているのはその「総合力」になります

アタックでのキャリーは言わずもがな、ディフェンスにおけるタックルについても強さ・巧さを遺憾無く発揮しており、アタックに特に注目すると(良し悪しはありますが)ワンハンドキャリーからのオフロードパスも得意としています
キックも少なからずできますし、「トータル・フットボーラー」と呼んで差し支えないかと思います

日本代表の現在地と戦略予想

日本代表の試合をここまで数試合(All Blacks XV、サモア代表、トンガ代表)見てきた中で、以下の点が課題になってくるかと思います

  • ハンドリングエラー

  • ペナルティ

  • 「トライを取り切る力」の欠如

致命的と言えばどれも致命的で基本的なものなのですが、アルゼンチンと今後試合をしていく上では特にペナルティを減らしていくことが重要になってくるでしょうか
サンティアゴ・カレーラス選手やボフェリ選手といったキッカーとして優れた選手が多いこともあり、ペナルティを相手に与えてしまうと一気に陣地を取られてしまったりPGを献上することになってしまうかと思います

アタック面で言うと日本は比較的ポッド内でのパスワークは得意分野である方だと思うので、細かいパス繋ぎを少し広めのポッド幅で、かつレシーバーがスピードを持ってキャリーへと繋ぐことができれば優位に立つことができるのではないでしょうか

ディフェンス面に関しては強いキャリアーに対して一発で倒し切ることができるかといった点ですかね
ダブルタックルで入るのもよし、1人で倒し切るのもよしだとは思いますが重要になってくるのは「倒し切る」の一点に尽きます
最近の日本代表はこの点に関してティア1相当のチームと互角に戦い切ることができていないと思うので、こだわっている点でもあるでしょうし頑張って欲しいものです

まとめ

アルゼンチンは負けることも多めですがW杯で強さを遺憾なく発揮すると言うのは周知の事実だと思いますし、負けてる相手もティア1の上位チームと実力が上(とされているチーム)のチームに対する敗戦だと思うので、日本を相手取る時は勝ちにこだわってメンバーを組んでくるかと思います
なので、日本にとっても重要かつ実力の試金石になる相手ではないかと
実際のところW杯で最後に当たる相手なので、上手くいけば決勝トーナメントに行くチームを分ける重要な戦いになるのは間違いないですね

不安半分楽しみ半分といったところでしょうか
これからの両チームに注目ですね

今回は以上となります
それではまた!


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