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2023大学ラグビー関東リーグ戦:流通経済対東海を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
リーグ戦の優勝が決まりましたね

今回は11/26に行われた関東大学リーグ戦、流通経済大学対東海大学の試合についてレビューをしていきたいと思います

まずはメンバー表から

次にスタッツです

それでは順番に見ていきましょう


流通経済のアタック・ディフェンス

流通経済のアタックシステム

基本的なシステムは1−3−3−1の様相がありながらも、10番の佐々木選手のゲームコントロールを起点にアタックを組み立てている印象でした
回数的にもラックからの展開として10番が受け手になるシーンが多かったですしね

また、FWの中では8番のロケティ選手がペネトレーターとなって前に出る役割を果たしており、佐々木選手から10シェイプの位置でFWがもらってコンタクトに向かっていました
ロケティ選手は一人で場面を打開できるような強いキャリアーなので、回数こそ目立っていなかったもののボールを持ったら必ずと言っていいほど前に出ることができていました

ただ、10シェイプに関しては東海からの強いプレッシャーを受けていたようにも見えましたね
そもそも東海のディフェンスシステム的にそのエリアで強いプレッシャーをかける傾向があるのに合わせて、東海のペネトレーターであるオフィナ選手が10シェイプが一般的に攻めるエリアでディフェンスとして立っていることが多く、コンタクト場面での質的な優位性を確保するには至っていませんでした

また、12番の杉崎選手は体が強く、FWに混ざってポッドの構成要素になったりと、CTBも積極的にキャリーに関わっていてのが印象的でした
11番の當眞選手、14番のデレナラギ選手も強いキャリアーなので、BKにボールが回った時にはどのエリアでもアタックができるというのが強みではないかと感じました
エッジでのゲインも目立っていましたしね

ボールが回り始めたらさまざまなエリアでアタックを繰り広げている一方でラックからの球出しに関してはそこまで速さはなかったようにも感じました
実際に時間を計測したわけではなくあくまでも印象論ではありますが、他の早いチームと比べるとワンテンポ遅かったように思います

また、少し気になるところで言うとキックはそこまで目立って見て取れる戦略がなかったところでしょうか
あえてあるとしたらエリア取りの部分ですが、荒天の後と言うコンディションも相まってかうまくエリア取りができている様子でもありませんでした

流通経済のキャリー

流経には体の強いランナーが揃っているのが特徴であり、どのエリアでもアタックを繰り広げることができるのが強みということができるかと思います
特にエッジエリアに配置することの多いロケティ選手や篠澤選手といったFWのキャリアーの他にも、今回の試合ではBKである當眞選手やデレナラギ選手などグッと前に出ることが揃っていたのがアタックの安定感につながっていたように感じました

目立っていたところではロケティ選手のキャリーが力強く前に出ることができていましたね
191cm124kgの巨体が突進してくるのは想像しただけで恐ろしいものがありますが、それでも今回の試合で爆発する回数が少なかったのは「スピードをつけてもらうシーンが少なかったから」ではないかと踏んでいます
そもそものキャリー回数もそこまで多くなかったですしね

キャリー回数を見ていくと前後半合わせて83回のキャリー数となっています
一般的なキャリーの回数と比べると数的にはそこまで多くはないということができるかと思いますが、ラインアウトモールからのトライが2回会ったことや東海のキャリー数と比較して考えると、「思っていたよりもトライをとることができていなかった」というふうにも言えるかもしれません

流経は最近のチームにしては珍しく総合してみると10シェイプでのキャリー数が多いチームとなっており、数を見ると前者が11回で後者が8回となっています
比率的には他の大学のチームと比べると10シェイプが多いということができるかと思います

そのような戦略に至った由来は断言できませんが、10番の佐々木選手のボールタッチが多いことも踏まえて考えると、ゲームコントロールの上手い佐々木選手を経由したアタックを中心において戦略を立てているのかもしれませんね
東海も10番の武藤選手が起点となるアタックの組み立てなので、図らずも似たようなアタックの方向性をもつ2チームの対決となっていたわけです

シェイプ外のキャリーは30回となっており、内訳としては中央エリアで15回、エッジエリアで15回となっており、結果的には外と中を同じくらいの割合でアタックしているということになりました
実際はシェイプを用いたアタックを中央エリアで狙っているので総じてみると中央エリアが多くなるのですが、シェイプ外のアタックの傾向を見るとそのチームのアタックが外志向か中志向かがある程度わかってくるので、その点では流経は外志向のチームであるということができるかもしれません

実際にアタック全体を見てみると外のエリアで獲得したラインブレイクも多く、外にロケティ選手・當眞選手・デレナラギ選手といったパワー系のランナーを揃えているのもその志向によるものなのかもしれませんね
中のエリアでのアタックは佐々木選手のゲームコントロールや杉﨑選手の力強いキャリーがあるので、アタックだけをみるとかなりバランスの良いアタックをしていたように見えました

流通経済のパス

10番でSOを務めている佐々木選手がアタックの中心を務めていることもあってか、傾向的には若干パスが多いアタックシステムをしているように見えました
実際のキャリー・パス比で見ても8:13程度と一般的な傾向である2:3に比べると少しだけパスが多いということができるかと思います

ただ、前後半で分けて考えると前半は4:7、後半はちょうど2:3という数値になっていたので、意識的かどうかはわかりませんがパス比率は後半にかけて減っていたと言えますね

試合展開全体を考えてこの数値を見るとある程度納得できる数値で、後半は追い上げがかかった展開で外にパスを回してミスをすることを避けたいこと、10シェイプにプレッシャーを受けていたために10シェイプでのキャリーが減っていたことなどが要因として考えられるかと思います
前半はそこそこボールを動かしていて、佐々木選手から10シェイプのポッドでキャリーを図るということもしていたのですが、東海のディフェンスの網にかかってしまうことも多く、ダブルタックルを綺麗に食らうシーンも多く見られました

回数を細かく見ていきましょう
キャリー・パス比は先述した通りですが、回数としては131回のパスが生まれています
Otherに分類されるパスも多く、意図的なパスを増やすというところまでは至っていなかったように見えましたが、10シェイプを好んで使うという戦略的傾向もあるので、回数的には意図と合っているというように感じました

ラックからのパスワークは13回が9シェイプへのパス、31回がバックスラインへのボール供給となっており、最終的な数値から見ても佐々木選手を経由したアタックをしているというのが見て取れますね
ラックからの1stレシーバーは基本的に佐々木選手で固定されていたように思うので、佐々木選手のボールタッチも多かったかと感じます

バックスラインへ展開されたボールは10回が10シェイプへのパス、33回がバックスライン上でのパスワークとなっています
10シェイプの利用回数は前半に7回、後半に3回となっているため、数値だけ見ると後半はそこまで10シェイプに偏ったアタックをしていないということができますね
無意識のうちに10シェイプに圧力を受けていたことを感じていたのかもしれませんね

オフロードも少ない数ですが発生しており、アウトカムとしては効果的なものが多かったように思います
オフロードは無理に使うとサポートの人数が減ってピンチを産んでしまうシチュエーションもありますが、流経が今回の試合で使うタイミングは絶妙で、ゲインにうまくつなげることのできるタイミングでオフロードを繋いでいたように感じました

流通経済のディフェンス

特に効果的に働いていたのはダブルタックルの精度の部分ですね
全体的に東海のアタックや特に目立つキャリアーに対してのタックルで2人がかりでうまく体を当てこむことができており、FWのキャリーに関してはディフェンシブなプレッシャーをかけることができていたと思います
特に7番の原田選手が体を張ってタックルをしていたのが印象的でした

システム的には目立ったシステムがある感じではなく、ラインの上がり方に一般的なもの以上のこだわりがあるようには感じ取れませんでした
「ラインを揃えて・前に出る」といった部分ですね
その中でFW勝負の部分で体を当てる要素が強くなっているといったように見受けられます

東海のアタック・ディフェンス

東海のアタックシステム

東海のアタックの肝になるのは武藤選手のゲームコントロールであるというのは周知の事実かと思いますが、今回の試合では武藤選手のギアは徐々にハマっていったように見えました
前半は武藤選手の絡んだプレーが少なく、トライこそ生まれたものの普段のような攻撃性はそこまで感じ取れませんでした

荒天の後ということもありキック処理に選手を割いている傾向が強く、キックに対する対応の部分ではうまくハマっていましたが、ジェネラルアタックの部分で勢いはそこまでなかったように思います
そもそもキャリー数の部分で流経に対して後手に回っており、ミスは少ないもののアタックの回数自体がそこまで得られていなかったことも原因かもしれません

傾向的に見ると今回の試合では東海は9シェイプをかなり意識的に使っていたような気もします
後述しますが比率的に10シェイプに比べると9シェイプを用いていることが見て取ることができ、普段と若干違う傾向を示していることがわかります
武藤選手が絡んでいるアタックが少ないというわけですね

アタックのシステム的には1−3−3−1を起点に強いキャリアーであるオフィナ選手を中心とした、ポッドをさまざまなエリアで作りながら武藤選手が自由にアタックを組み立てるといった形が東海の強みかと思いますが、今回の試合ではBKの選手が総合的にアタックに絡んでバリエーションをさらに増やしていたように思います

特にセブンスター選手のチームへの馴染み具合は試合を重ねるごとに増してきているように感じていて、最初はキックがメインの出番だったセブンスター選手が徐々にアタックの中心選手になってきているように思います
ランニングの安定感やサポートコースの選択、オフロードを繋ぐチョイスなどチームの戦略に対して「ハマってきている」姿が見受けられました

キック戦略の部分ではLongをメインに少しPunt系を交えながらキックを蹴っていた印象で、相手のキックに対する対策の部分では人数を後ろのエリアにかけて守っていたように見えました
11番の岡村選手や15番のセブンスター選手などハイボールに強い選手もいたので、もう少し戦略的にハイボールを使うのもありなのかな、とも感じましたね

東海のキャリー

今日の試合では普段はNO8に入ることの多いオフィナ選手が4番に入っていたのが印象的でしたね
強いキャリアーとしていつも目立っているオフィナ選手ですが、今回の試合でもその体の強さを遺憾なく発揮していたように思います

キャリーの回数的に見ると試合全体を通じて62回のキャリーに止まっており、ポゼッション的には流経に比べるとボールを持つことができなかったということができるかと思います
そこまでキックを蹴っていないにも関わらずポゼッションをとることができていないため、シンプルに相手にボールを持たれる時間が長かったわけですね

一方で前後半で平均31回ずつのキャリーに止まっているにも関わらずそれぞれ2トライずつトライを取ることができていたのは大きいですね
トライの取り方に関してもFWとBKを交えながらさまざまなバリエーションで取ることができていたので、アタックは見ていて楽しかったですね

キャリーを種別に見ていくと、9シェイプでのキャリーが14回で10シェイプでのキャリーが5回と、回数的に見ても10シェイプが普段よりも少ないということができると思います
選手が全く立っていないわけでもなかったので、意図的な戦術的選択であるように感じました

シェイプ外のキャリーは14回となっており、内訳は中央エリアで11回、エッジエリアで3回となっています
傾向的に見ると中央エリアでのキャリーが多いわけですね
確かにエッジではそこまで勝負していたようには見えなかったので、印象とはある程度一致した結果となりました

東海のパス

キャリーと同様に、パスに関しても普段の試合に比べると少ない印象を受けますね
キャリー・パス比を見ても3:4となっており、普段の試合とは違う様相を見せています

特に前半に関していうとかなりパスの比率が少なかったように感じていて、武藤選手のボールタッチが少なかったのが露骨に響いているような気もします
前半は10シェイプへのパスも1回限りとなっており、普段の試合で見せるような表裏を使った幅感のあるアタックはそこまでできていなかったように思います

実数値を見ていくと、試合通じてパス回数は80回となっています
普段は100回を超えている印象があるので、普段と比べるとはるかに「ボールを回していない」印象です
後半にかけてボール保持率も上がっていた影響か、前半は26回、後半は36回のキャリーとなっています

ラックからのボールは20回が9シェイプ、12回がバックスラインへと回っており、これも普段より9シェイプが比率的には多く使われている傾向にあるかと思います
ただ、9シェイプからバックドアへのスイベルパスは前後半合わせて6回となっており、こだわりレベルかはわかりませんがかなり意識して使っていることが見て取れました

バックスラインへと回ったボールは6回が10シェイプ、5回がバックスライン上でのパスワークとなっています
ほとんどバックスライン上でのパスワークがないのが逆に驚異的ですね
Otherに組み込まれているパスもある程度はあるかと思いますが、エッジでのキャリーが少ないことや外方向へのパスワークがほとんどないことから、今回の試合での東海の主戦場は中央エリアであることが容易に予想できるかと思います

東海のディフェンス

今回の試合では東海のディフェンスは相手のポッドに対する圧力をかなり強めている印象を受けました
体の強いオフィナ選手が主に中央エリア、10シェイプがクラッシュすることの多いエリアに張っていたこともありFW戦の部分ではかなり前に出ることができていたように思います

流経のアタックの肝は東海と似て10番を起点としたボールワークであると感じているので、10番の周りのエリアでプレッシャーをかけることができた東海はかなり優位に立つことができていたと思います
ゲインラインも下げることに成功していましたし、特にFWの選手たちのダブルタックルが強烈でしたね

ただ、気になる部分としてはラインアウトモールに対するディフェンスの部分です
詳しいことは解説できないのですが、後半だけで2トライをモールから奪われているのは戦略を除いた部分で厳しいものがあるのではないかと思います
相手の回す動きに対応することができていなかったというか、モールに対してアプローチする選手の動きが統一されていないようにも感じました

まとめ

この試合はリーグ戦の優勝チームを決める試合だったこともあって、熱のこもったいい試合になったと思います
流経は最後の数分間のスコアフローがもう少し上手くいっていればまた違う展開が待っていたかもしれませんね

今回は以上になります
それではまた!

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