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2023大学ラグビー関東リーグ戦:東海対大東文化を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
南アフリカ対アイルランド戦をリアタイしてない今本です

今回は9/23に行われた関東大学リーグ戦の東海大学対大東文化大学の試合についてレビューをしていこうと思います

それではメンバー表から

次にスタッツです

順番に見ていきましょう


東海のアタック・ディフェンス

東海のアタックシステム

東海は基本的にはおそらくは9シェイプをアタックの起点に戦略を組み立てており、9シェイプに6番のオフィナ選手をはじめとするキャリーに長けた選手をまとめて3人のポッドでキャリーを図っています
FWの選手を主なカードとして使っているイメージですね

9シェイプに入った選手は「もらって・加速」ではなく「加速しながらもらう」キャリースタイルをしており、大東文化のディフェンスが前に出てくる前に浅い位置でコンタクトをすることに成功しています

10シェイプにも3人のFWの選手を立たせており、比較的ボールを受けることの多い10番SOの武藤選手の状況判断・意思決定でパスを投げ分けてキャリーする選手が決まっているように見えます
10シェイプは三角形というよりかは少し平行に近いような立ち方をしており、投げ分けやすいシェイプをしているように思います

エッジエリアでは14番の中川選手が良い働きをしており、自身のスピードやステップで相手を外すことができる上に優れた加速で相手のディフェンスラインが整わないタイミングで自身に有利な状況を作ることができるので、速さで勝負ができる状況が整っています
1−3−3−1感のあるアタックシステムをしているのでエッジにFWの選手が立つ事も多いですが、WTBの選手が優れたランニングスキルを持っている事もありどちらかというと大外まで回した時はBKで勝負している印象が強いです

全体的なモーメンタムに関してはスクラムで圧倒していたりFWのの勢いの良いキャリーが活かせている事もありかなり前方向の勢いを出すことができているように思います
スクラムで圧倒することで大東文化のFWの選手をスクラムにコミットさせてブレイクに時間をかけさせることができており、BK対BKというシンプルな構造に持ち込むことができている感じですね

ラックワーク・ブレイクダウンワークに関しては普通〜比較的良いというような状態だったように思います
かなりの割合でオーバーの選手を2人以内に収めることに成功しており、オーバーの選手がボールを完全に越えた位置でキープすることができているので、SHの山田選手などが綺麗にボールを外に運ぶことができていました

キック戦略は15番FBの谷口選手が中心となりLongを活かしてエリアをかなり意識した攻め方をしているように感じました
23回のキックのうち19回がLongとなっていることからもその戦略を垣間見ることができますね
後半から入ったセブンスター選手のキックがコンパクトなフォームで長い距離を飛ばすことに成功しており、大東文化はエリア的なプレッシャーをかなり受けていたように思います

一方でキックの受けに回った時は少しミスが目立ち、特にボックスエリアのキック処理に回るオフィナ選手が少しハイボールレシーブを苦手としている様子にも見えました
ボールを落としてしまったり、ファンブルしかける状況も何度か見られました

東海のキャリー

キャリー回数は合計で65回となっており、アタックの全体的なフローに比べるとキャリー回数は少なめの値にとどまったかなと思います
ダブルスコアをつけて勝ったチームはキャリー回数から計ることのできるポゼッションが高いことが多いですしね

一方で10回のターンオーバーや6回のハンドリングエラーなど東海側としてはミスが目立つ試合でもありました
ミスに関しても少しイージーとも取れるものだった事もあり、最終的なキャリー回数にはつながっていませんでしたね

キャリーを細かく見ていきましょう
前後半合わせた回数で見ていくと、9シェイプでのキャリーが15回、10シェイプでのキャリーが5回、シェイプ外でのキャリーが20回となっており、単純計算で40回のキャリーがある程度システマチックなキャリーとなっているということができるかもしれません

シェイプ外のキャリーでは中央エリアでのキャリーが10回、エッジエリアでのキャリーが10回と均等な数になっていることから、BKラインに展開した時はどのエリアでもキャリーが起きている、裏を返せばどこに向けてもアタックをすることができている状態です

少し意外だったのは10シェイプの少なさですね
詳細はパスの項目で述べますが、10番の武藤選手や12番の何松選手がバックスライン上の1stレシーバーとして立っていることが多く、回数的にもバックスに回ることは比較的多かったのですが、結果的には10シェイプでのキャリーは5回と少ない数値に落ち着いています
意図的だったのか結果論かは分かりませんが、10シェイプにオフィナ選手を置いてより相手BKに近いエリアでのキャリーを図っても面白いのではないかとも感じました

東海のパス

パスはSHの山田選手や10番の武藤選手によるゲームメイクがキッチリ行われている印象でしたが、結果として良くも悪くもOtherに分類されるようなパスワークが多かったという結果になっていました
アタックの流れで分類が難しいものになる事も多かったですが、パスミスで結果的にOtherに含まれる事も多く、必ずしも意図したパスワークができているというわけでもなさそうです

回数を見ていくとキャリー・パス比は3:5と若干キャリーの比率が高めとなっています
ピック&ゴーがない割にキャリーの比率が高く、武藤選手がゲームコントロールをすることが多い印象の東海にしては少し意外な数値に感じました

106回のパスのうち9シェイプへ放ったパスが16回、バックラインへの展開が19回と、パスの種別だけでいうとBKへの供給回数が多いという結果になっているのですが、結果としてはパス回数が少ない状態でキャリーにつながっており、少しイメージとは異なっています
しかし少し振り返ってみると確かに東海は3パス以上パスを回していた印象も薄く、パス回数が少ない状態でキャリーにつなげていたということができるかもしれません

表裏を使ったアタックの指標にもなるバックドアへのパスや、細かいパスワークを使っている指標にもなるポッド内でのパスは少し少なめで、前者が3回、後者が4回という結果になっています
つまり9シェイプにパスをしたら9シェイプの選手がキャリー、中でもボールを最初に受けた選手がそのままキャリーをするという傾向にあるということです

東海のディフェンス

数値だけをみると基本的には大きな問題はなく試合を締めることができていたように思います
88%を超えていますし、多くのタックルが成功していますしね
しかし、ミスタックルが失点につながっている事もあるので、もし東海がアタックがうまくいかず攻めあぐねているような試合展開になった時は少し難しい結果になっていたかもしれません

特に気になったのは10番の武藤選手のディフェンスで、若干弾かれたり外したり、または相手をつかんでも倒し切るところまでグリップを続けず次のポジショニングをしようとしていたりと、いわゆる「狙い所」になってしまっていたようにも見えました
ちょっとディフェンスも淡白でしたしね
基本的なポジションとしては大外・エッジと呼ばれるようなエリアに立っている事もありましたが、中央エリアやFWとBKの合間の位置にポジショニングしていた時は大東の選手に狙われていたようにも見えます

一方でエッジエリアのディフェンスに関しては質の高いものがあったように見え、特に14番の中川選手は詰めと引きの判断がよく、相手に適切なプレッシャーをかけることができていたように感じました

ディフェンスの傾向としては9シェイプにプレッシャーをかける傾向にあったように見え、実際に大東文化の9シェイプは少し窮屈なキャリーをしていたような印象です
全体的に前に出るような雰囲気はあったので、かなりプレッシャーをかけることができていました

大東文化のアタック・ディフェンス

大東文化のアタックシステム

アタックの形としては10番の小田嶋選手によるところが大きいような印象で、FWを起点としながらも小田嶋選手がタクトを振ってうまくBKをコントロールしていたような印象です
基本的には1stレシーバーも小田嶋選手でしたし、CTBの選手も交えながらアタックを組み立てるという感じではなかったように見えました

10シェイプへのパスがほとんどなかったので4ポッドに分ける形でのアタックシステムは少し見えづらかったのですが、9シェイプには3人の選手が立っており、1−3−3−1に近いような形であったように感じます
とはいえキャリー回数的にもポッドでのキャリーが多く、FWがアタックの中心となっていました

時にはブラインドサイドと呼ばれるような狭いサイドに9シェイプになりうる選手が立ってパスを受けるシーンも見られていたことから、エリアを縦に分けてポッドを配置しているというよりもSHの選手への選択肢として自由に配置をしているといった形かもしれませんね

アタックで少し気になった点を挙げるとすると、ラックによる選手が少し多いという点になります
中央エリアやエッジェリア問わず、ラックでオーバーに入ろうとする選手が3人いることが多く、不要であってもラックの近くに立っている状況が何度もあったように思います
この傾向はシークエンスと言われるような早いフェイズでの取り決めがあるアタックの中でも見られており、ラックに人数をかけすぎているということができますね

そのことによるかどうかまでは判断がつきませんが、全体的なアタックテンポはかなりゆっくりめで、ボールが完全に見えている状態であってもSHの稲葉選手が意図的にテンポを上げようとするシーンはそこまでなかったように思います
FWの選手のポジショニングも少しまばらで、選択肢の準備に時間がかかっていたような印象です

キックに関しては戦略的な要素が少なからず見られていて、基本的にLongでの蹴り合いが多い回数を占めていました
一方でBoxやPuntなども見られていることから、ある程度はハイボールに対する競り合いを意識したアタック、ゲーム運びをしようとしていたように見えます

ただ、全体的な試合運び・エリア獲得は東海の方がうまくいっているように感じ、大東文化は自陣に押し込まれるシチュエーションも多かったため、少し相手のラグビーに付き合いすぎているようにも見えました
中盤でのエリアマネジメント的な選択肢がもう少しあると面白かったかもしれません

大東文化のキャリー

要所要所でラインブレイクを生み出すことができており、特に中央エリアで相手のディフェンスを掻い潜ってビッグゲインをすることができている状況が多々見られました
全体的にはキャリーは押し込まれることが多かったようにも見えましたが、一発でチャンスを作り出すことはできていたように思います

特に目立っていたのは3番のフィナウ選手や13番のヴァイレア選手で、9シェイプで先頭に立っていたりラックからの1stレシーバーになったりと、チームとしてもこれらの選手に早くボールを回す、もしくは効果的なキャリーができるように展開を作るといった傾向があるように感じました
また、時にはそういった選手が囮となって裏表をうまく使ったアタックもできており、12番の神田選手が体をうまく使いながら前に出る事もできていましたね

キャリーの回数を見ていくと全体では74回のキャリーと、試合には敗れてはいますがある程度はポゼッションを確保して戦うことができていたということができるかと思います
少ないフェイズでビッグゲイン、ラインブレイクを生み出すシチュエーションはそこまでありませんでしたが、押し込まれながらも先述したような選手がじわりと前に出て、徐々に前に進むことができてるようなイメージです

ただ、テンポが遅かったりする事もあり、モーメンタムを生み出した後やターンオーバー後のキャリーなどでも勢いを継続することはうまくできていなかったかもしれません
単発のアタックになってしまっていた感じですね

回数としては9シェイプでのキャリーが28回、10シェイプでのキャリーが1回、シェイプ外のキャリーが16回と少しFWの特に9シェイプに偏っているような印象を受けるアタック傾向を示しています
シェイプ外のキャリーは10回の中央エリアでのキャリー、6回のエッジエリアでのキャリーに分けられ、少し中央エリア寄りかなと思います

大東文化のパス

キャリー・パス比は7:8と、結果的な数値だけをみるとかなりキャリーの比率が多い結果となっています
ピック&ゴーのような0パスでキャリーをするようなアタックがそこまで多くないということを鑑みると、1パスでキャリーまで至っている回数が多めということができるかと思います

実際に1パスでキャリーに至る9シェイプでのキャリーが多いですし、シェイプ外では中央エリアでのキャリーが多いことから、パスを複数回組み合わせて外まで回す傾向は少なめであることがわかります
優秀なキャリアーである13番のヴァイレア選手が中央に寄り気味で外に立っていることが少なかったことからもこの傾向は見て取れるかと思います
逆に外にいることの多いオト選手は終始キック処理に回っていたような印象を受けますしね

パスワーク自体もシンプルで、ポッド内での細かいパスが2回、ポッドからバックドアへのパスが3回と、ある程度思考的に難易度の高いパスに関しては回数が少ない結果となっており、10シェイプへのパスも前後半合わせて1回と基本的にはシンプルにFW対FWの勝負をラックに比較的近いエリアで繰り広げていたような形になっていました

大東文化のディフェンス

タックル成功率でかなり後手に回っており、Defenders Beatenが直接的なスコアにつながっていたわけではないと思いますが、結果的には成功率が80%
強という少し低めの値となっています

ミスタックルを誘発していたのが相手を弾くタイプのNO8のオフィナ選手という事もありそこからランでビッグゲインをされるというシチュエーションは少なかったですが、ラックからの球出しを容易にされていることからモーメンタムの阻止にはつながっていませんでした

ディフェンスの意向を見てとることはうまくできませんでしたが、FW戦の部分ではうまく立ち回っていたかと思います
被トライの多くがそれ以外の部分での失点になっていましたしね

問題となってくるのはセットピースの部分になるかと思います
特にスクラムはほぼ圧倒されていたと言えるような状態で、マイボールのシチュエーションでこそダイレクトフッキングと呼ばれるようなNO8まで素早くボールを掻き出すスタイルで対応していましたが、相手ボールでのスクラムはかなり押し込められていて、ペナルティを誘われたりスクラムに注力した結果ディフェンスの展開が遅れてスコアに繋げられたりと、正直散々な結果だったように思います

基本的には優れたボールキャリアーでもある3番のフィナウ選手側でプレッシャーをかけていたのかなと思いましたが、今回の試合では東海がトイメンとなる位置にオトゥホウマ選手を置いて強さで対抗してきていたため、うまくプレッシャーをかけられず、むしろ相手のプレッシャーに耐えきれないという状態に陥っていました

まとめ

大東文化も健闘はしたかと思いますが、セットピースで圧倒した東海がスクラムトライも含めて6トライ奪い、結果的には解消する結果となりました

大東文化に優れたキャリアーがいないわけではないと思うので、意図的にテンポを上げて相手にプレッシャーをかけたり、ミスをなくしてボールを継続したりすることがうまくはまれば、流通経済大山のように良い試合、ないしは勝利を収められるような試合展開に持ち込むことができるかと思います

今回は以上になります
それではまた!



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