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ミニコラム:ラグビーにおける階層構造を描写する

みなさんこんにちは
パリオリンピックでメダリストが続々と生まれている中、いかがお過ごしでしょうか

さて、直近ではあまり記事を上げることができていませんでしたが、今回は自分自身の思考の整理も兼ねてテーマを決めてその内容について記事を書いていこうと思います
今回のテーマは「ラグビーにおける階層構造」です

それでは見ていきましょう


階層構造とは何か

「階層構造とは何か」といったものを考えた時、個人的な考えとしてものすごく単純化すると「表と裏を使ったアタック形態」という言葉にまとめることができるかと思います
言葉としてはシンプルながら、その形の表現の範囲に収まるものであれば階層構造として捉えることができると感じています

大学レベルではガチガチに階層構造を作るようなアタック形態をしているチームはあまり見られてはいませんが、インターナショナルではアイルランドがかなり階層構造を作る傾向があるチームの一つであると思います
後述しますがシンプルな階層構造は多くのチームが用いており、その中でさまざまなバリエーションがあるイメージです

階層構造に関わる用語

それでは階層構造に関わる用語について考えていきましょう
ただ、ここで列挙する用語はUNIVERSISが普段定義している用語であり、一般的な用語とは違うという点にご注意ください

1. 単層的階層構造・複層的階層構造

階層構造の中でも一つのエリアのみで階層構造があり、その階層構造をボールが抜けた後は主に直線的なアタックラインが形成されているような形のことをUNIVERISISでは「単層的階層構造」と呼んでいます
読んで字の如く、アタックラインの中で階層構造が構築されているのが一つであるため、そのエリアでディフェンスラインに抑え込まれてしまうと外側のエリアでは個人レベルでの勝負に持ち込まれてしまう状態になります

また、前者とは違い複数の階層構造、複数のエリアで表と裏の関係性の選手が並んでいる状態の構造のことを「複層的階層構造」と呼びます
大きな定義では9シェイプと10シェイプを同時に構築することで二つの階層構造を作る形から、細かく表裏を作って多層的に階層構造を作るチームも見られています

単層的階層構造は多くのチームが用いており、9シェイプの位置で階層構造ができていたり、10シェイプの位置で階層構造ができていたりと、いわゆるポッドが構築されているエリアで表と裏ができている形になります
逆にいうと、ポッドを用いた階層構造以外で単層的であることはほとんどなく、少なくてもその階層構造の中では2人以上のFWの選手が絡んでくることが多いと感じています

ある一定レベル以上のチームになってくると単層構造であることは減ってくるので、おおまかに9シェイプから裏に繋いで10シェイプに繋いだり、たとえば日本代表のスタイルのように10シェイプを経由したループプレーで展開したりといった二層以上の階層構造を作るシーンが増えてきます
アタックのテンポによっては単層的になるシーンも多々ありますが、セットピースからの早いフェイズなどでは複層的構造であることが多く、ユニオンとは違いますがラグビーリーグなどでは一層あたりにかける人数を減らすことで多層的なアタックを繰り広げる様子が見られます

2. 静的階層構造・動的階層構造

UNIVERSISではボールが動き始める前の段階で階層構造を作っているものを「静的階層構造」、ボールが動いていく中で階層構造になる瞬間を構築していくものを「動的階層構造」と呼んでいます
この二つについて順番に見ていきましょう

静的階層構造はいわゆる「準備された」階層構造であり、主にセットピースを起点とした際のフェイズやFWでのキャリーを重ねて展開する準備を整えた時に多く見られるタイプの構造となっています
複雑な動きをすることも可能ですが、スピードで振り切る形というよりかは複雑な階層性や位置的な優位性をあらかじめ作っておくことによって相手との勝負に勝つといった様相が多く見られるかと思います

動的階層構造は静的なものとは異なり動きの中で階層構造を構築していくものであり、シンプルなものでいうとループプレーのような一度パスを放った選手が移動しながら表の選手の裏に入ってパスを受けるといった形が挙げられます
日本代表が近年好んで用いる形でもあり、特にラックからSHがパスアウトした後にFWのポッドの裏に再度ボールを受け取りに行く形が多く見られていますね

最近の試合ではニュージーランド代表が使うシーンが比較的多かったように感じられ、マッケンジー選手がパスをした後にループプレーとしてボールを再度受けに行く形が多かったように思います
動的階層構造のメリットとしては、複雑性が担保されない一方で移動しながら構造を作ることができるので相手の一手先を動くことができ、特にループプレーでは横方向の移動量も生じるので縦向きに上がってくるディフェンスに対して移動量で上回ることができるのが大きいと思っています

3. トライブロック・クアドブロック

これは完全に個人的な概念なのですが、最近自分はラグビーにおけるポッドシステムに変わる概念として「ブロック」という呼称でアタッキンググループをまとめています

「ブロック」の定義としては「ボールキャリアーに対して角度の違う2パターン以上のパスコースが準備されており、参加する選手によって一つの空間が作られている状態」といった形のものが挙げられるかと思います
SO以降の場所に位置する選手のみを包含した概念といったところも特徴になるかもしれません

それぞれの位置関係の呼称としては、最初にボールを受ける位置にいる選手を「キャリアー」、いわゆる10シェイプのようにフロントラインでボールを受けることのできる位置にいる選手を「フロント」、キャリアーに対して近くて深い位置に立つ選手を「シャドー」、大きく見るとフロントの裏に立つ選手を「バック」と呼ぶことを考えています

また、ブロックシステムの中でもキャリアー・フロント・バックの3人ないしはフロントを中心としてポッドで構成される構造をトライブロック、それにシャドーが入ったものをクアドブロックと呼称しています
さらに、フロントを中心として構築されるポッド様の少人数の集団に関わっている人数によって「+1」や「+2」といったワードをブロックの後につけることでそのブロックを表現します

なぜブロックという概念を考えたかというと、ポッドシステムの概念だけではFWのグループが崩れた時などにどこまでをポッドと呼ぶかなどの統一感がイメージしづらく、ポッドがアタックの終端になってしまうことが多いことからアタックの連続性を記述しずらいという印象を持っていたためです
あくまでも個人の感覚でしかないので異論はあるかとは思いますが、「個人的にはその方が考えやすかった」という範囲なのでご了承いただければと思います

トライブロックは最もシンプルなブロック構造で、ポッドを用いる多くのチームがこの形を実質的に形成しているということができるかと思います
最小構成人数は3人となりますが、3人で構成された10シェイプなどを含むため多くのパターンで+1や+2になっているシーンが多いですね

クアドブロックは少し複雑性を増した構造ではありますが、多くのチームが無意識のうちに構築しているシステムでもあると思っています
よく見られるシーンとしては「SO役が9シェイプの裏でスイベルパスを受ける→10シェイプの裏にいる1人を飛ばして外の選手にパスを出す」といった形でしょうか
SO役がキャリアー、10シェイプの構成員がフロント、10シェイプの裏がシャドー、外でボールを受ける選手がバックという構造になっており、ボールの動きとしては平行四辺形の対角線上で動く様な形となっています

ブロック構造を作ることによるメリットを挙げるとすると、キャリアーからバックと呼ばれる対角線上の選手へのパスコースにバリエーションを作ることができる点でしょうか
特に後列の2選手の位置関係をうまく調整することができればフロントからシャドーに下げることもバックに下げることも可能となっており、基本的には方向性の生まれるアタックラインの中に複数のパスコースを作ることができるようになっています

また、動的階層構造との組み合わせによりシャドーの選手の位置関係によってはさらに動きながらの階層構造の構築を組み合わせることができる様になり、「準備された選択肢」と「構築する選択肢」で勝負に出ることも可能になっています
FBやWTBの選手のスキルやIQが高ければこのあたりの複雑性やモーメンタムも効果的に使うことができると思うので、ある程度ゲーム理解度の高い選手をバックフィールドに置いておく良さはこういったところに出てくるかと思います

まとめ

今回は階層構造の用語をまとめながら自分の思考回路をまとめる形の記事を書いてきました

最近のラグビーではディフェンス面で強いプレッシャーを相手にかける様な動きを繰り出してくるチームが増えた結果、表と裏を準備したアタックシステムを構築するチームが増えています
ただ、表と裏を作るだけではより深い位置に向けて刺しにくるチームも増えてきているためにうまくアタックを展開できないシーンも見られており、その中で横方向のベクトルを使いながら幅感を使ったアタックをするチームが増えてきている様な印象です

今回はあくまでも自身の思考回路をまとめる形だったために極めて独自的な用語展開をしてきましたが、この辺りが用語としてまとまってくると最近のトレンドといった部分も文章的に描写できる様になってくると思うので、議論が深まっていくことを祈っています

今回は以上になります
それではまた!


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