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2023大学ラグビー関東リーグ戦:大東文化対東洋を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
大学シーズンもレギュラーシーズンは折り返しが近くなってきましたね

今回は10/21に行われた関東大学リーグ戦、大東文化大学対東洋大学の試合についてレビューしていこうと思います

まずはメンバー表から

選手交代があまり起きない試合でしたね
次にスタッツです

それでは順番に見ていきましょう


大東文化のアタック・ディフェンス

大東文化のアタックシステム

大東文化は基本的には1−3−3−1の形を基礎としながら、強いランナーである両CTBのヴァイレア選手、ラトゥ選手を活用しながらアタックを積み重ねていくスタイルのように見えました
両選手のラインブレイクの数が抜群に多いというわけではないのですが、ポッドの先頭でボールをもらったりするなどボールタッチの回数がかなり多く、キャリー回数もそれに応じて多くなっていたように思います

その中で両選手は自身がキャリーするだけではなく、しっかり長短のパスを投げ分けることもできていることから、アタックで重要な役割を果たしていたことがわかるか思います
シンプルに強いのも高評価のポイントですね

基本的なアタックはシェイプをある程度きっちり固めながらやっていこうとしているように見えますが、アタック全体のコネクション自体は強いとは思えず、少しフォーメーションや立ち位置の部分がまばらになっているように見えるシーンもありました
アタックの傾向としても何人かの選手ではアングルをつけて走り込むスタイルが強く、フォーメーションが少しまばらであってもアタックとしては成り立つという形になっていたかと思います

9シェイプは主に3人の選手が走り込んでくるスタイルとなっていますが、ある程度固定された形がありながらもSHの判断で投げ分けているようにも見えました
またポッド内のパスワークもある程度あったので、相手とのコンタクト位置をずらしながらキャリーに持ち込むことはできていたかと

また、よかった点としてはオーバーのクオリティのところが目立っていましたね
東洋はかなりブレイクダウンにプレッシャーをかけてきているようには見えましたが、大東文化が早くかつ的確なオーバーをしていたことによってプレッシャーを分散させ、テンポの早いアタックにもつなげることができていたのはよかったと思います

キック戦略としては複雑な部分はなく、終始基本的な蹴り合いに徹していたように見えました
12番のヴァイレア選手が要所要所でキッカーとなり、10番の小田嶋選手と合わせて上手い具合に蹴り合いに挑んでいました

大東文化のキャリー

キャリーのクオリティ自体はかなりよかったように思います
所々強いプレッシャーを受けるシーンこそありましたが、徐々に前に出ることができていました

キャリアーとして目立っていたのは先述したように12番のヴァイレア選手と13番のラトゥ選手だったのではないでしょうか
ポッドの先頭の選手としてボールをもらいにいくシーンもあり、ボールを持った際には必ずと言っていいほど前に出ることができていたように思います
あとは3番のフィナウ選手も目立っていましたね

キャリーを細かく見ていきましょう
回数としては前後半合わせて97回のキャリーが生まれており、回数としては東洋よりもキャリーをしているちう結果になっています
特に前半は相手の倍近い数のキャリーをしていることもあり、ポゼッション的にもかなり優位に試合を進めていたように見えました

今回の試合でポイントになったのは、この「ポゼッション」の部分にあるかと思います
東洋はもちろん昨年度に引き続き攻撃的なラグビーをするチームであり、今回の試合でもボールを持った際には何度もチャンスを作りトライまで取り切ることのできるようなチームでした
そのような相手に対して今回の試合展開をもたらすことができたのは、ポゼッションで優位に立ったということが大きいのではないでしょうか

キャリーを細かく見ていくと、9シェイプが41回と最も多くなっており、10シェイプは2回とほとんど見られていません
一方でシェイプ外のアタックは26回見られていたことから、大東文化は9シェイプをアタックのキモとし、随時BKへボールを回すことでアタックを構築しているということができるかと思います

大東文化のパス

パスの回数を見ていくと、キャリーパス比は大まかに3:4となっていることから若干キャリーの比率が高いということができるかと思います
実際、要所要所でピック&ゴーのようなパスを介さないアタックを見せる時もあり、パス回数は結果的に少ない傾向を見せていたと考えられます

種別に見ていくと、キャリーと同様に9シェイプへのパスが最も多いという結果になっており、ラックからバックスラインへのボールの供給はそれに比べると半分程度の数となっています
このことからも、アタックの中心になっているのは9シェイプということが言えるかもしれませんね

バックスラインへとボールが渡ったあとは、10シェイプへのパスが2回、バックスライン上でのパスワークが19回起きており、多くがバックスライン上でのパスワークとして完結しているということができます
一方でエッジでのキャリーに比べると中央エリアでのキャリーが少なかったことやキャリーの比率が高かったことを考えると、ラックからパスアウトされたあとはそこまでパス回数を重ねずにキャリーに至っているということができるかと思います

細かいパスワーク自体はそこまで見られず、一応ポッド内でのパスワークやバックドアへのスイベルパスも見られてはいましたが、戦術のメインストリームという感じはしませんでしたね
どちらかというと、アングルをつけたポッドアタックなど、ダイレクトプレーと呼ばれるようなシンプルなアタックをしていたように見えました

大東文化のディフェンス

タックル成功率も高く、タックル回数も数をこなしていることから、基本的にはディフェンスはうまくはまっていたということができるかと思います
トライを取られたパターンとしてはモールからのトライなどがあったため、ディフェンスを崩されてトライまで持っていかれるパターンはそこまでなかったかと思います

タックルの質としてはダブルタックルにしっかりと入ることができていたので、相手に圧倒されるというシーンはほとんどなかったかと思います
特に東洋のペネトレーターを務めるヴェア選手やマークス選手にそこまでビッグゲインを切られなかったということに関して言えば、相手を勢いづけずに済んだことにつながっていたかもしれません

ディフェンスのスタイルとしてはしっかり前に出ることはできていましたが、個人的に気になったのはキックに対するチェイスの部分ですね
ある程度意図的に競り合うようなキックを蹴った時は1stランナーが確実に詰めて相手にタックルをすることができていましたが、少し中途半端に伸びてしまったようなキックの際はコネクションが切れてしまうこともあり、かつあまり前に出ることができていませんでした

東洋のアタック・ディフェンス

東洋のアタックシステム

基本的なアタックシステムとしては1−3−3−1のようなスタイルを取りながらも、FWの選手とSHが柔軟に動いてキャリーに持ち込んでいるようなシーンもあることから、主に意思決定者になりうるSHやSOの選手以外にも、チャンスと見ればそこに走り込むなどの裁量権を他の選手も持っているように見えました

そのためシェイプは崩れてしまっているように見えるシーンが多く、整った形でパスからキャリーにつなげたシーンはほとんどなかったのではないかと思います
一方で走り込んできてもらう選手には4番の森山選手や6番のヴェア選手、13番のマークス選手などが挙げられ、その選手が先頭を切ってキャリーに持ち込んでいるような印象を受けました
セットピースの部分では無類の強さを誇る5番のウーストハイゼン選手ですが、アタック全体を通じてみると少し淡白かもしれません

ただ、今回の試合の中では、普段の試合と比べるとヴェア選手のボールタッチの回数は少なかったように思います
それが意図的だったのか結果的にそうなったのかは計りかねますが、ポゼッションを確保できず自分たちのアタックができなかったことと合わせて敗北の要因の一端を担っているかもしれませんね

そのような自由度の高いアタックの中で10番の天羽選手はのびのびとプレーしており、状況判断をしてアタックの方向性を変えながらも自分でキャリーに持ち込んだり、パスのタイミングをずらすことによって相手のディフェンスラインの中にギャップを生み出すことにも成功していました
単なるパスマシーンではないところで高評価ですね

アタックのテンポに関しては比較的、というよりもかなり早い傾向にあったかもしれません
おそらくは清水選手が早い球出しを意識していたからか、味方選手がラックを越え切ってさえいればボールを受け取りに行き次のアタックへとつなげていたように思います

一方で店舗が単に良すぎるというのも考えもので、チーム全体の傾向として、アタックを落ち着かせるということがそこまで意図的にできていなかったようにも見えました
もちろんブレイクダウンでプレッシャーを受けてなかなか球出しができないシチュエーションも散見されましたが、キープした方が良い場面で東洋側が我慢できずにボールを出してしまう場面も見られ、必ずしも思ったようなアタックができていたとは限らないかと思います

また、ラックに少し人数をかけすぎているように見えるシーンもありましたね
大東文化はその辺りの見極めが比較的早く、東洋の個人個人の選手が前に出ることができていたことと合わせて、ラックの上でのファイトはそこまで起きていなかったように感じます
その中で近くにいる選手がラックによってしまい、アタックのためにポジショニングをして立っている選手が少し減ってしまっていたのは残念だったかと思います

キック戦略に関しては大東文化と同様にそこまで複雑な様式は見られず、基本に忠実な蹴り合いと、時々織り交ぜられるPuntを用いた競り合いに持ち込む形式をとっていたように思います
15番の石本選手は若干自分でカウンターに持ち込むことを好んでいるようにも見え、大東文化のプレッシャーが甘い時はカウンターで前進を図ることができていました

東洋のキャリー

キャリー回数は86回と若干大東文化に劣る数値となっていますが、トライ数は互角となっていることから、より効率的なスコアができているということができるかもしれませんね
実際のアタックでもフェイズを重ねに重ねたトライというのはなく、モールトライやセットピースからの数フェイズなど、フェイズ的にコンパクトなアタックをしていたように見えました

キャリーを細かく見ていくと、回数としては9シェイプでのキャリーが27回と最も多くなっており、一方で10シェイプは4回と大東文化と同水準のアタック傾向を示しているということができるかと思います
試合を見ていたイメージでも一応10シェイプの位置に選手が立っていることもあるのですが、多くはそのままダミーとして前に走り抜けることが多く、10シェイプはそこまで重要視されていないということがわかりました

それ以外のシェイプ外のキャリーに関しては26回のシェイプ外キャリーのうち11回が中央エリアでのキャリー、15回がエッジエリアでのキャリーとなっていることからも、アタックの方針としては中央エリアで強いプレイヤーを当てながら、外の優れたランナーにボールを回してゲインを測るという形になるかと思います

11番の杉本選手や14番のボンド選手はランニングスキルに長けており、いいところでボールをもらうことのできる才能と、しっかりと前に出ることができるという才能に溢れています
自身でチャンスメイクをすることもできますし、チャンスをトライまで変えることのできる選手でもあるように感じました

細かいところでは後半にかけてOtherに分類されるようなキャリーが増えているところが特筆すべき点でしょうか
前半に比べると後半の方がアタックする時間が増えていることも要因の一つだとは思いますが、それと同様に後半はポゼッションのやり取りが増えて結果としてOtherに分類されることが増えたのかと予想されます

東洋のパス

こちらも大東文化と同様ですね
そこまで凝ったプレーやサインプレーをしているというわけではなく、ダイレクトプレーと呼ばれるようなパスを少なくキャリーまで持ち込むようなスタイルに比較的近いアタック傾向を示していたように思います

キャリー・パス比は約2:3という値をとっていたため、大東文化に比べるとパスも多い一般的な傾向を示していたように感じます
ただ、大東文化に比べるとピック&ゴーのようなパスを介さないアタックというのはそこまで盛んではなかったように思うので、結果としてパスの割合も一般的なものに収束したのではないかと考えています

細かく種別に見ていきましょう
もちろん最も多いのはラックから9シェイプへのパスで、全体で28回となっています
一方でラックからバックスラインへのパスアウトは18回となっているわけですね

ラックからの動きとしてはほぼ大東文化と一緒で、4回の10シェイプへのパス、24回のバックスライン上でのパスワークという数値となっています
外に展開する時もある程度は規定がありながらも、複雑なパスで中央エリアに相手選手を固めるというよりかは「相手を寄せてシンプルに外を狙う」という形で見ているような気がします

それ以外の工夫としてはほとんど目立ったところがなく、あえて挙げるとすればバックドアへのパスが数回あったことですかね
とはいえ、チャンスに繋がるようなプレーでもなかったですし、どちらかというと大東文化の選手のノミネートミスで今回の試合でのラインブレイクは生まれていたように思います

東洋のディフェンス

タックルは基本的には問題ないかと思います
成功率は完璧と比べると若干低い数値を取っていますが問題のない範囲で、ミスタックルの多さは総タックル数の多さでカバーをすることができるかと思います

ディフェンスは極端に前に上がることの少ない一般的なスタイルで、ブレイクダウンでプレッシャーをかけたりと随所でターンオーバーを狙おうとする姿勢が見えました
実際にジャッカルを成功させたシーンもありますし、大東文化のオーバーのクオリティがもう少しだけ低かったらもっと多くのターノーバーをもたらすことができたかと思います

また、セットピースのディフェンスという観点でも大東文化を上回ったシーンがあるように見えていて、特にスクラムのシーンでは大東文化の選手がクイックでボールを出さなければいけない状態に追い込まれていたことからも、そのプレッシャーの強さが見て取れるかと思います

まとめ

昨年度旋風を巻き起こし、ここまで勝ち星を積み上げてきた東洋大学でしたが、ここで大東文化大学に土をつけられることとなりました
今回このような結果となった要因としては「ポゼッションで勝負を据えることができなかった」という点に原因があるのではないかと考えられ、大東文化がうまく自分たちのアタックを続けながら総じて良いアタックをしていたように思います

東洋大としてはヴェア選手が抑え込まれるシーンが多かったのも問題点として挙げられるかと考えていて、ペネトレーターが不在、もしくはハマっていない時にどのような方針で進めていくかを考えていく必要があるのかもしれません

今回は以上となります
それではまた!

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