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サマーネーションズシリーズのイングランド代表の試合展開からW杯を見据えてみた

みなさんこんにちは
まだ夏ですね

今週末から大学ラグビーのシーズンが始まりますが、同時にW杯が開幕するということもあり、番外編としてイングランドのプレビューをしてみようかと思います

対象とした試合はサマーネーションズシリーズのウェールズとの2連戦、アイルランド戦、フィジー戦になります
日本代表がイングランド代表と戦うのは2戦目なので、ちょうどいいですね


過去のメンバー

それでは、過去4試合のメンバーがこちら

ウェールズとの第1戦目はおそらく最終セレクションといった様相でもあったため、W杯のメンバーではない選手も含まれていますね

また、W杯スコッドの全体はこのような感じになります

並んでいるメンバーを見ると誰も彼もが強烈ですね

4試合のスタッツ

対象試合のスタッツはこのようになっています

詳細はこの後の項目で述べていきます

イングランド代表のアタック

イングランドのアタックの起点の多くは9シェイプとなっています
上記のスタッツでは表記していませんが、どの試合でも1/3から1/2ほどの割合が9シェイプを用いたアタックという結果になりました
また、アタックに際して2ndフェイズ以降ではFWの選手が順目に回って繰り返し9シェイプとしてボールをもらっている様子が散見されました
基本的には1−3−3−1感のあるアタック方針のように見えますが、9シェイプにはこだわりがありそうに見えます

とはいえそれはあくまでも傾向であり、キャリー・パス比に関してみると2:3の近似値になることから、一般的にはバランスの良いアタックをしているという事ができるかと思います

アタックの方向性を見ると、ポッド的要素もありながらも若干シェイプ的なイメージもあるかと思います
9シェイプに関しては固定したポジションにセットするばかりではなく、先述したように順目にまわってSHからどんどんボールをリサイクルしてもらう様相が見られています

その際にはポッドの三角形が毎回綺麗に構築されているわけではなく、ラックの真後ろからFWの選手が走り込むことでモーメンタムを生み出すとともに相手のフォールディングによって生まれる優位性を確保しようとしているようにも見えました
SHに入る選手もラックからそのままパスアウトすることもあれば、少し持ち出して走り込んでくるFWを呼び込むこともあるのがミソですね

また、10シェイプに関して見ると少し特徴的な場面も見られ、SOに立つ選手の外側に2人、内側に1人の選手が立っていることもありました
10シェイプのポッドの中にSOが立っているイメージですね
そのため、SHからボールを受けたSOの選手には一方向ではなく複数方向にいくつもの選択肢を持っているということになります
これに関してはどの選手がSOに入っているかということにも左右されるため、一概には言いませんが、選択肢を多く持っているのは一貫して言うことができるのではないでしょうか

一方で、一応スイベルパスのようにバックドアを使うアタックシステムも何度か見られてはいますが主流のアタックムーブではなく、ぱっと見の印象ではポッドを用いたアタックか外に回すかはわかりやすいようにも見えました

その他の特徴として挙げられるのはキック戦略になります
エリア獲得のためのLongが基本的には多いのですが、特徴的なのはBoxの多さになります
自陣深くからの脱出でもBoxを使っていますし、ハーフライン周辺の中盤エリアでもBoxによるハイボールでの競り合いを戦場にしているような印象を受けました

キック戦略に関連する選手を挙げるとすれば、4試合とも先発出場したFreddie Steward選手は全選手の中でも特にハイボールが強く、相手からのハイパントを高い精度で獲得していて、中盤では無類の強さを誇っています

全体的にはバランスのいいアタックを示しているイングランドですが、良くも悪くもSOに入る選手によってアタックのハマる・ハマらないが決まってくるような印象は受けますね

Marcus Smith選手はどちらかというとファンタジスタタイプで、自身がボールを保持している時間が長く、Smith選手からの1パスで崩すと言った印象で個人的には見ています
一方George Ford選手について見ると周りの選手を生かすタイプのように見え、チーム全体のパスワークで相手を崩そうとしているような印象です

そのため、アタックの要所要所での一貫性のなさはちょっとネックになるような気もしています
特に試合を見ていて思ったのは、FWの選手との連携がうまくいっていないシーンが何度か見られていることで、イングランドの特徴でもあるSOの選手が急激なポジションチェンジをすることでアタック方向を変える特徴的な動きにFWの選手がついてこられていないようにも見えました

イングランド代表のディフェンス

ディフェンスは基本的に強いプレッシャーとダブルタックルが重要な要素になってくるかと思います
ライン全体のスピードも早く、特にラックサイドの選手が前に出るスピードは他の国代表のディフェンスと比べても早い印象を受けました
Ellis Genge選手に至っては相手がパスをすることを計算に入れてないんじゃないかって言うくらいのスピードで前に出てますしね

タックルの質そのものはかなり高いと言う事ができるかと思います
アイルランド戦でこそ85%を下回ると言う結果にはなったものの、そのほかは90%を超えているため、基本的な「倒す」というアウトカムはしっかり出す事が出来ているように見えました
ダブルタックルに関して見ても二人がかりで相手を捉え、差し込まれることもなく相手を押し込む事が出来ていたように思います

ディフェンスラインの上がりに関してはCTBの選手までは揃って一つのラインとなって上がるような印象で、南アフリカのように外側の選手が顕著に前に出ると言うこともなく、オーソドックスなディフェンスをしていたように見えます
若干一部のFWの選手で突出することもありますけどね

目立った弱点・必ず崩されるシチュエーションというのは強豪らしくそこまで見てとる事ができませんでしたが、少しだけポッド内の細かいパス、特に10シェイプでのパスワークに翻弄されてビッグゲインを許すシーンも見られたことから、表裏を使ったアタックに細かいパスワークを組み合わせた場合は苦手にしているかもしれません

ピックアッププレイヤー

LO Maro Itoje

 Maro Itoje選手はイングランド代表の中でもLOらしいLOというか、かなり勤勉なタイプであると推測しています
タックルも強いですし、アタックでもボールキャリーからサポートと様々な役割を高いレベルでこなしていますね
ビッグゲインを切ることこそ少ないものの、安定したアタックには必要不可欠かと思います

特にラインアウトに関してはアタックでもディフェンスでも重要な役割を果たしているように見えました
そもそもの高さもありますが、リフターとのコンビネーションでより高い位置でのボールキャッチを実現していて、デフェンス面でも相手にかなりのプレッシャーをかけています

SO Owen Farrell

良くも悪くも注目を浴びる選手というか、タックルに関しては正直諸々の改善点がある選手であると思っています
タックルがそもそも高いですし、ノーバインド気味で肩を当てに行くので、それは当然反則になるでしょうと言わんばかりのプレーが若干多めです

一方でSOとしてのゲームコントロールに関してはMarcus Smith選手、George Ford選手にはないセンスを有していると思っていて、視野も広くパスワークにも優れていることからアタックのタクトを振る能力に関しては極めて優れているという事ができるでしょう

キックを用いたゲームコントロールもうまく戦略的にアタックを組み立てるタイプなので、どこで崩すか・どのようにアタックするかという意思決定者としても優れているように見えました

まとめ

イングランド代表は現時点では世界ランキングこそ全盛期から少し下がったものの、選手層の厚さや一人一人の強さという点で見ると他国と比べても遜色ないレベルのチームであり、アルゼンチン代表と同様に日本が乗り越えるべき壁として存在しています

日本代表との試合時点ではFarrell選手の出場停止期間が明けていないので、SOにどちらの選手が入るかなど楽しみな点がいくつもありますね

今回は以上になります
それではまた!


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