2023-24シーズン:埼玉ワイルドナイツの新加入選手を数値的に比較してみた
みなさんこんにちは
チーフスやブルーズとの試合が近づいた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか
リーグワンの各チームの新加入選手分析の2回目は前シーズン準優勝の埼玉ワイルドナイツになります
以下、第1回と同様に定義を示しておきますが、今回は定義に「出場時間が50分以下の試合はデータ収集対象から外すものとする」を追加しています
理由としては大学生側の出場時間が70分を超える一方で、リーグワン側は戦略的な交代が多いために出場時間の平均が下がる傾向にあるためです
大学生の分析は直近の三試合を対象とし、リーグワン側の選手に関しては「比較をするポジションとして出場している直近の二試合」を対象とする
JSPORTSオンデマンドで配信されている映像を分析対象とし、当該試合が配信期限を過ぎている場合はそれに応じて対象試合を減ずるものとする
大学生と比較するリーグワン側の選手はUNIVERSISの独断と偏見で決めるものとし、意見・要望等は必要に応じて受け入れるものとする
出場時間が50分以下の試合はデータ収集対象から外すものとする
前回と同じく比較対象の選手は独断と偏見で決めています
ご意見ありましたらコメントまで
※Adj. Numbers:大学生の三試合のスタッツの平均値について、大学生側の出場時間とリーグワン側の選手の出場時間とを比べて数値を補正したもの
それでは順番に見ていきましょう
タニエラ・ヴェア - PR (東洋)
Player Analysis - タニエラ・ヴェア
ヴェア選手は東洋が誇る強烈なペネトレーターで、恵まれた体格を活かして相手ディフェンスの突破を図る体の強い選手です
配信期限の関係で二試合の分析になってしまいましたが、ボールタッチの回数は平均13回とチームから多くのキャリーを求められるだけの信頼を得ていることがわかります
主な立ち位置としては9シェイプへの配置となっており、傾向的には中央よりもサイドに立っていることが多いようです
ラックからダイレクトでパスを受けるシーンの多くはシェイプとしてキッチリとして形をとっているというよりかは、どちらかというと味方のゲインに合わせてアングルをつけて0.5チャンネル〜1チャンネルと呼ばれるようなラックに比較的近いエリアへ走り込んでボールをもらうシーンが多かったように思います
一方でパスをするようなシーンはほとんど見られておらず、一度あったシーンに関してはこぼれ球を近場の味方に渡すくらいのものだったので、おそらく戦略的にチームからパスをすることはそこまで求められていなかったのではないかと予想しています
ポッドへの移動を含めてアタックに関しては大きく立ち位置を変えていたりもしたので、ゆっくりしたペースでの移動が多いですが距離的なワークレートは比較的高いように感じました
ディフェンスに関しては比較的精度も高くうまく入れば相手を仰向けに倒すことができるようなシーンもあったので、条件にもよりますが良いタックラーであるということもできるかと思います
立ち位置としてはラック際が多く、あまりフォールディングはしないような印象を受けました
Player Comparison - ヴァルアサエリ愛
ヴァル選手はW杯の2019年大会・2023年大会に日本代表として出場した日本を代表するPRで、ワイルドナイツでは先発を中心にインパクトプレーヤーとして活躍する選手です
数値的には極端に目立つようなものはないですが、これに関してはワイルドナイツの平均的なワークレートが高いことが影響しているかと思います
主なポジショニングとしてはヴェア選手と似た9シェイプ中心の位置で、サポートにもキャリーにも慣れるような形でボールを受けることが多いですね
相手を大きく弾くようなプレーこそ少ないもののプレッシャーを受けて差し込まれることも少ないのでラックが安定しており、キャリーそのものも懐にはいられずに地味に前に出ることができています
ワイルドナイツは順目と呼ばれる「同方向のアタック」をすることが多いためにヴァル選手も大きくラックを挟んで同方向に回ることもあり、素早くしっかりとポジショニングをするワイルドナイツの哲学が見え隠れしますね
9シェイプよりも外のポッドに入ることもあり、柔軟性があるようにも感じられました
ディフェンスに関してはラックに近いエリアを張っていることが多く、一つ一つのタックルの精度はかなり高いものとなっていました
基本的に相手の上に立つことができていますし、「プッシュダウン」と呼ばれるような「相手を引き倒すようなタックル」をすることが多いために立ったままプレーが完結し、ディフェンスラインへの参加がスムーズになっていましたね
Challenge to LeagueONE
キャリー単体やボールタッチの回数的にはヴェア選手が上回っているということができますが、戦術的な動きの部分ではヴァル選手に軍配が上がるといった感じでしょうか
もちろん今回のスタッツには反映されていませんがセットピースの部分の要求も高いものがあると思いますし、ボールに関わらない部分でのワークレートが求められてくるのだと思います
大学生同士のマッチアップということを無視するとキャリーの質に関してはヴェア選手は優れているものがあるように見えます
体の使い方もそうですがアングルの付け方の妙で相手と正対しないようにキャリーをしており、相手のタックルをずらすような動き方をしています
ヴァル選手はビッグゲインをあまり求められないポジションということもあってかどちらかというと安定したキャリーをしていますしね
一方でワイルドナイツ、ひいてはリーグワンレベルのフロントローに求められるスキルとして「バックドア(ポッド裏のアタックライン)に向けてのスイベルパス」が挙げられるかと思います
大学レベルでも得意としている選手とは思いますが、チームから求められている役割的にヴェア選手は基本的にスイベルパスを求められておらず、試合でもほとんど使っていません
この辺りの細かいスキルの部分でリーグワンへのアジャストは求められるかと思います
シュモック・オライオン - FL (慶應義塾)
Player Analysis - シュモック・オライオン
シュモック選手は慶應義塾ではLOを務めており、アタックとディフェンスの両面で体をキッチリ張るタイプのFWです
キャリーに目立って強烈な部分はないものの安定したプレーを見せており、慶應の堅実なアタックを支えていた存在であるということができます
立ち位置としてはエッジから見て2つ目のポッドに入ることが多く、戦略の影響か10シェイプというよりは9シェイプとしてキャリーをすることが多いように見えました
ポッド内では中央、サイドのどちらも担当しており、ボールをもらったらパスよりもキャリーを優先してプレーするような様子でした
スイベルパスのような後ろとの繋ぎをすることもありましたがメインの役割ではなく、キャリーに対して信頼を置かれているような印象でした
一方でアタックポジションが曖昧になっているシーンも散見され、積極的にボールをもらいにいくといった姿勢はそこまでなかったようにも思います
体の強さはあるとは思いますがゲインを切る回数もそこまで多くなく、なんとかラックを安定させることができるといった感じです
ディフェンスに関しても少し受け気味のタックルをするに留まっており、ラックサイドを見ていることが多いような形です
大きくフォールディングなどによって位置を変えるようなシーンは少なく、定位置をキッチリと張っているような感じですね
延原秀飛 - NO8 (帝京)
Player Analysis - 延原秀飛
延原選手は帝京のアタックの中核を担う運動量のあるNO8です
様々な位置に顔を出しながらアタックに絡み、ディフェンスも堅実に役割を果たすようなプレーをしており、同チームの青木選手や奥井選手のような派手さはないものの地味な仕事を淡々とこなすことのできる稀有な選手ですね
主な立ち位置は9シェイプで、位置を固定せずに参加してキャリーもサポートもこなすような形のプレーが多いです
ボールタッチのアウトカムの多くがキャリーとなっており、コンタクトが強いので相手をしっかりと弾くことができるのが特徴かと思います
少し姿勢の高さはありますが大学ラグビー全体のタックル姿勢の低さも相まってかチョークで抱えられるようなこともほとんどなかったですね
ラックへのサポートも堅実で、勤勉に多くのラックにサポートとして入っていましたね
ブレイクダウンに仕掛けてくるようなチームがそこまで多くなかったこともあって相手を大きくブロウしなければいけないシーンも少なく、ラックの安定化に貢献していた印象です
ディフェンスとして守っているエリアの影響もあってかタックルに極端な多さはなく、しっかりと相手の上に乗ることができる正確なタックルをしていたのが印象的でした
一方で外国出身選手のキャリーとは相性が悪いようで、いくつかのミスタックルはそういった選手とのマッチアップで生まれていました
ただ、相手のFWのポッドに対してしっかり前に出ることができるので、大きく相手に前に出られるようなシーンはなかったように感じています
シュモック/延原 v 福井翔大
Player Comparison - 福井翔大
福井選手は東福岡高校を卒業後に直接リーグワンに進んだ数少ない選手で、早い段階で才能を開花させて日本代表にも選ばれた才能豊かなバックローです
高校時代から突出した才能を誇り、機動力と強さを兼ね備えた選手としてワイルドナイツの勝利に貢献していますね
主戦場はそこまで固定されているような印象はなく、9シェイプにも10シェイプにもエッジにも顔を出すようなオールラウンダーな選手です
どのエリアでのキャリーにも対応できるような強さとどのエリアにも移動してセットできるような機動力があるため、プレー参加回数がすごいことになっていますね
福井選手の能力を語る上で外すことができないのはやはり「走力」でしょう
おそらくリーグワン全体の同ポジションの選手たちを見ても最上位に来るほどのスピードがあり、ラインブレイクして独走したBKの選手に追いついてサポートに入ることができるほどの走力を有しています
もちろんパナソニックの優秀なゲームメイカーの存在あってのことですが、福井選手はポジショニングもいいので相手とすれ違う形でビッグゲインをできるような動きを見せたり、エッジに立ってグッとアタックライン全体を押し上げるようなプレーも見せています
ワイルドナイツのテンポに極端な速さがないこともあってラックへのサポート能力も高く、連続してラック参加ができるほどのワークレートを示しています
9シェイプに入った時はスイベルパスを見せるような器用さもあり、単にペネトレーターとしての役割というよりかは「優れたサポーター」としての能力が高いような印象です
ディフェンス面で言うと、自身の走力を生かした機動力を使うことでタックルレンジはかなり広くなっていると感じています
手足も長く物理的なレンジも広いために相手に大きく外されるシーンも少なく、30回のタックルシーンに対してミスが1回と堅いディフェンスを見せていました
Challenge to LeagueONE
シュモック選手と延原選手に共通して「今後求められるであろう能力」を挙げるとすると「機動力」と「攻撃性」になるかと思います
後者は「積極性」とも言い換えることができるかと思いますが、新加入の良選手は全体的に見るとプレーの参加密度が低く、チームの攻防に大きな影響力があるとは言えない状況にあると思います
ワイルドナイツをワイルドナイツたらしめているのは「全員の均一かつハイレベルな運動量」なので、影響力の強い選手に寄りかかるようなプレーはあまり求められていないと感じています
チームの動きに合わせるだけではなく、「自分を生かしたラグビーを作らせる」ようなプレー貢献が求められることでしょう
また、前者の機動力についてもワイルドナイツでは必要になってくる能力であると感じており、今回は福井選手をピックアップしましたが同じような体格の同ポジションには大西選手がおり、福井選手と同様に様々なエリアでアタック参加して体を張ったディフェンスができる選手になっています
シュモック選手も延原選手も体を張ると言う点では十分なスキルを見せているとは思いますが、リーグワンでワイルドナイツの一員として戦っていく以上「走力」という部分で能力の向上は必要になるかもしれません
加えていうとディフェンス時のブレイクダウンへの仕掛けに関しても勘とスキルを磨いていくことは求められてくるかと思います
体格は違いますがワイルドナイツにはガンター選手やボーシェー選手、布巻選手といったタックルとブレイクダウンのスペシャリストがおり、ブレイクダウンへのプレッシャーと低い姿勢でのアプローチが必要になります
シュモック選手も延原選手も大学レベルの試合ではそこまでブレイクダウンへのアプローチはしていなかったと思うので、この辺りのスキルもコンゴ見ていきたいですね
萩原周 - SH (明治)
Player Analysis - 萩原周
萩原選手は明治のアタックのテンポを生み出す小気味いいパスワークを見せるSHで、チャンス時の走力も兼ね備えた攻撃的な選手です
自身のキャリーこそ少ないものの数少ないチャンスでラインブレイクができるので得点にも絡むシーンが何度も見られています
特徴というほどではないですが何試合か通して見るとパス回数に幅があるのが気になるところですね
セットピースからのパスアウトもラックからのパスもひっくるめて見ているのですが、20〜30回ほどの差が出ている結果となっています
予想にはなりますがパス回数の少ない試合が試合展開的にピック&ゴーが多くFWがキャリーしている試合やそもそもインプレーの時間が短い試合だったようにも思うので、自分から展開を変えるようなプレイングイメージではなさそうにも見えました
特にラックからの球捌きの部分が優れており、少しの持ち出しも挟みながらテンポよくボールを動かしています
大きく相手ディフェンスラインの裏を取るようなコースは取らないもののラックまでの到達も早く、ある程度ゲームの流れをコントロールしながら明治のアタックに勢いをもたらしていたように思います
ディフェンスに限定していうともう少し精度の部分で向上する必要があるようには感じました
ディフェンス時の位置どりとしてはラックの真裏よりもラックサイドにいることが多いのですが、大学レベルでは戦略的にラックサイドを攻めることは少ない傾向も相まってディフェンス時のコリジョンに関わることはそこまで多くない印象です
ただタックルシーンの少なさの割にミスも目立っており、後述しますがこの辺りはもう少し改善してもいいかもしれません
Player Comparison - 小山大輝
小山選手はリーグワンのSHの中でもアグレッシブな姿勢と走力を誇るワイルドナイツの主力です
テンポこそ最速ではないかと思いますがゲームの流れのコントロールがうまく、味方の動きに合わせて流動的にプレーを変えることができる器用な選手でもあります
ワイルドナイツのアタック傾向も相まってパス回数がかなり多く、交代で先発・リザーブを務めることの多い内田選手が比較的早めに出てくるために出場時間が限られていても一定のパス水準を見せています
ラックまでの到達も早いのでゲームのテンポを意図的に変えることが容易で、視野も広いのでどこにボールを動かせばいいかの判断も精度の高さを見せています
特徴的な部分ではプレー中のキックが少ないことでしょうか
小山選手のスキルによるものかワイルドナイツの戦略的な要素から来るのかは分かりませんが、数値的にはSHからのキックは少なめとなっています
試合を見た感じではBoxが少し長めに伸びている時もあるので、もしかするとそこまで得意とはしていないのかもしれませんね
ディフェンス面では精度の改善の余地はあるかと思いますが、ディフェンスでのコリジョンに関わる機会が多くなるくらいにはディフェンスラインの隙間を埋めているということもできるかと思います
他のチームのSHの選手にも言えることかと思いますが小山選手は「空間を埋める」勘とスキルに優れており、視野も広いので相手の動きに合わせて立ち位置をすばやく適切に変えることができています
相手がライン上で回している時は適切なタイミングでラック周りのディフェンスに参加し、相手がキックするような様子を見せたらすばやくボックスエリアを埋めたりとこのあたりの勘は大学レベルとは違うものがあるように感じました
Challenge to LeagueONE
単純な数値の観点で言うと、リーグワンの方がパス回数が多くより高いワークレートが求められると言うことができるかと思います
ワイルドナイツは明治以上に大きくボールを動かすチームなのでラックが形成される位置も大きく動くチームになっています
それだけ伸びる移動距離に多くのパス回数が求められるので、いかにワークレートを高い水準でキープするかは重要になってくるでしょう
アタックではサポートの動きの部分でも少し感覚が変わってくるところもあるかもしれません
そもそもリーグワンでは選手全体の走力が上がるので大きく前に出た時はそれ相応のスピードでサポートをすることが求められます
そのあたりの肌感覚というか、「味方がどこで前に出るか」と「味方のビッグゲインに反応できるか」といったところが必要になってきそうです
キックに関して見ると逆に萩原選手のキック精度は武器になってくるような気もしています
ワイルドナイツの戦略的にはSHからのキックはそこまで多くないのが現状ですがハイボールに強い選手は多く、ボックスキックの精度が高い萩原選手が選手選考に絡んできた場合は少しチーム全体の動きが変わってくるかもしれません
最後にディフェンス面での貢献です
両者ともに圧倒的な精度があるとは言えないタックルですが、小山選手の方がタックルシーンが多いという結果になっています
リーグワンでは大学以上に戦略的にボールの持ち出しをする選手が増えるためにラック際のディフェンスが重要になり、そこでいかにSHから体を張ることができるかといったところが重要になってきます
大学レベルでの明治の攻防ではFWが堅く押さえていたエリアですが、リーグワンでは相手アタックの距離感が変わってくるのでディフェンスラインもそれに応じて幅感が変わり、SHが担当するエリアも変わってくる印象です
体格的に厳しい戦いにもなるかと思いますが、このあたりの体の張り方や精度は変えていく必要もあるかもしれませんね
谷山隼大 - CTB/NO8 (筑波)
Player Analysis - 谷山隼大
谷山選手は筑波大学でキャプテンを務め、自らが先頭に立って筑波のラグビーを動かし続けてきたポテンシャルの高い選手です
各大学のNO8の中では軽量の部類に入るかと思いますが体が強く、BKもこなせる走力があるためにキャリーで大きく前に出ることができる「強い選手」ということができるでしょう
ボールをもらう位置は比較的フリーになっており、ポッドに入ることもあれば単独でキャリーをしたり、時にはエッジに入ることもあったりと自由なポジショニングをしている印象です
積極的にボールをもらいにいって相手を崩しにかかるというよりは「ボールがくればチャンスを生み出すことができるポジション」に立っている感じですね
全てのキャリーで前に出られるというわけではないですが懐が深いキャリーをしており、相手にタックルされても手を自由にしてオフロードパスを繋いだりと器用さも見せています
コンタクトへ向かうコースも相手を弾きにいくわけではなく、どちらかというと相手と相手の間をスピードで貫くようなコースどりをしています
筑波の選手は全体的にパスが優先順位高めになっていることもあって繋ぐ意識が高く、谷山選手もそれに応じてボールをもらう際には「良いコース取り」をしているように見えます
パスもNO8にしては若干多い数値となっていますがバックドアへのスイベルパスはほとんどなく、FWとしての表裏の使い分けではなくBKの選手に近い感覚でパスを放っているような気もします
パス自体は精度が少し気になるところで、ロングパスも放ることはできますが少し相手の取りづらい位置に飛んでいるシーンも散見されていました
また谷山選手の代名詞といえばハイボールキャッチでしょう
大学一年時から稀有な才能を見せており、高い身体能力を活かした跳躍力と体の強さでかなり高い精度でボールを獲得することができています
筑波がキックからの再獲得を戦略のメインに置いていないこともあって再獲得を狙ったハイボールへの仕掛けをする機会は多くはありませんでしたが、相手から蹴り込まれたハイボールはほぼミスなく取っていた印象です
Player Comparison - ダミアン・デアレンデ
デアレンデ選手は南アフリカ代表でも先発の座を勝ち取っており、強いキャリーと万能性を活かしてチームにチャンスをもたらす世界でもトップレベルのインサイドCTBです
南アフリカ代表ではキヤノンに所属するクリエル選手と中盤を固め、ボールを動かしたり自身でボールを持ち込んだりとワークレートの高さを見せています
ワイルドナイツでもその能力とスキルを遺憾なく発揮しており、BKの選手としては比較的多いボールタッチを見せています
最近はSO的な役割を果たす時間も長く、ゲームをコントロールして動かすことのできる能力も発揮していますね
プレー選択もバランスが良く、相手との間合いの取り方も上手いためにボールを動かすことがある一方、CTBらしい前に出るモーメンタムを見せるシーンもあり、インサイドCTBとして極めて高水準にあるといえます
視野の広さと遂行力、判断力の良さも光っており、ポジショニングが早いことからゲーム全体の勢いを殺すことなくボールを動かすことに成功しています
器用さも兼ね備えているので少し崩れたぐらいで判断が揺らぐこともなく、その場その場で適切な判断を下すことができるのが素晴らしいですね
南アフリカの選手ということもあって体の強さがフォーカスされることも多いですが、個人的にはワイルドナイツのラグビーにハマっている要素としては「キックスキル」も挙げられるかと思います
アウトサイドCTBに入ることが多いライリー選手も多いですが、彼以上にデアレンデ選手はキックの判断と蹴り込む距離感がうまく、判断も優れているので相手の動きを大きく後ろに押し込むことができます
一方ディフェンスに関しては新加入の選手にもチャレンジできる部分もあり、単純な一つ一つの精度に関しては少し低めの数値となっています
ワイルドナイツはチーム全体のワークレートが高いので万が一1人がタックルを外しても湧き出るようにサポートの選手が出てくるので致命的なピンチになるシーンは多くないですが、この辺りは今後も見ていきたいですね
Challenge to LeagueONE
メディアのインタビューによれば谷山選手はCTBへのコンバートを希望しているとのことなので、今回はデアレンデ選手と比較をすることになりました
比較対象とした試合内での役割が違うので簡単には比較はできませんが、デアレンデ選手に求められる数値が一つの目標というようにも考えられるので、今回のような形をとっています
ボールタッチの回数がそもそも違ってはいますがデアレンデ選手はボールタッチが多い方だと思うので、このあたりの回数がCTBにコンバートした場合に求められるということは予想できるかと思います
谷山選手は直近ではFWとしてプレーしていたので同じようなプレー回数でもボールをもらう位置やシーンが変わってくることも予想され、アジャストが必要な部分になってきそうですね
個人的には谷山選手のハイボールキャッチのスキルはワイルドナイツの中でも武器になってくるかと思います
ハイボールキャッチの名手としては後述する野口選手もいますが、野口選手はバックスリーなのでハイボールキャッチから再獲得を狙うシーンが限られてきています
その中で谷山選手がCTBのポジションからハイボールでの再獲得が狙えるようになると戦術の幅が広がってくるかもしれません
ワイルドナイツには松田選手や山沢兄弟のようなキックの優れた選手が揃っており、十二分に武器にしていくことができるでしょう
あとはディフェンス時の距離感の部分でしょうか
谷山選手は体を張り続けることができる選手ですがタックルミスも少なくない数起きており、多くが外側のエリアで起きています
走力はありますが絶対的なスピードではなく重心移動も少し苦手としている印象で、細かいステップで外されたりスピードで振り切られるようなシーンが見られています
BKであればこういう部分でもコミットは重要になってくると思うので、これからの成長に期待ですね
谷口宜顕 - FB (東海)
Player Analysis - 谷口宜顕
谷口選手は東海大学でバックスリーを務める選手で、若干小柄ですが走力を活かしてエッジエリアを主戦場とする選手です
同級生の武藤選手と共に何度も相手ディフェンスを崩しており、様大外でのランニングを武器にアタックにスピード感を出していました
WTBを務めているだけあってエッジでのプレー回数が多く、大外でボールをもらってはグラウンドを駆け上がっています
体の強さもあるので正対されてもコンタクトで上回ることができるシーンも多く、コンタクトから一歩前に出ることができるという強みを持っています
ランニングコースもいいのでトライにつながら雨ような動きもなん度もしていましたね
逆にポジショニングとしては外寄りをキープしているので戦略的に中央に寄るようなシーンはそこまで見られず、たとえばキャリアーの内側で内返しを狙うようなポジショニングはしていなかった印象です
外での勝負がメインで、中央エリアでスピードを生かして振り切るようなシーンはあまり見られませんでしたね
キックはそこまで見られず、蹴ったとしてもバックフィールドを押さえているときに蹴り返しとしてロングキックを蹴るような場面くらいですね
回数も少ないのでこの辺りは判断が難しいところです
キック処理に関しても相手との距離があるシーンが多く、競り合うような場面でどのような動きをするかは見てとることができませんでした
ディフェンスに関していうと少し前がかりに動いていたような印象で、バックスリーにしては少し浅めに守っていたように見えました
前に出る判断は悪くなく、必要に応じてきっちりと詰めるので相手に崩されるようなシーンもそこまで多くなかったですね
タックルミスも何度かありましたが致命的なエラーにはなっていなかった印象です
Player Comparison - 野口竜司
野口選手はW杯の経験こそないものの日本代表に絡む活躍を何年も続けてしていた選手で、リーグワンを代表するハイボールキャッチの名手となっています
キック力もあるため、自分で空高く蹴り上げて自分で獲得する一連の流れは皆さんも何度も見た光景かと思います
アタックではエッジに固定されているかのように中央に寄ってくることが少なく、ボールタッチは少ないながらも常に外でチャンスを狙うようなポジショニングをしています
ワイルドナイツはSOやCTBにキックを得意とする選手が揃っているので、野口選手のポジショニングを生かしてキックパスを狙うシーンが多く見られていますね
スピード単体で見るとより速い選手がいるかと思いますが、野口選手はポジショニングとトライに対する嗅覚で何度もゴールラインを超えており、決定力という点で優れたものを持っていると思います
ステップを用いた体の使い方もよく、姿勢を崩さないのでステップからグッと前方向に動くことも得意としている印象です
またアタックでもディフェンスでもキックに対する嗅覚があり、アタックではキックパスに反応し、ディフェンスでは相手がキックを蹴ってきそうな様子を見せるとしっかり後ろのエリアに下がったりとゲーム理解度の高さと優れたゲーム勘を見せています
ワイルドナイツはバックフィールドは2人の選手で守ることが多いので野口選手はフロントラインに入って浅めに守っていますが、こういったキックに対する勘の部分で危機管理能力が高いために無駄な空間を生まないようになっています
Challenge to LeagueONE
同じようにエッジエリアを主戦場としてプレースタイルも比較的に似ている両選手ですが、「ワークレート」と「キッキングプレー」の部分で野口選手が一歩前に出ているような印象ですね
他は数値的に野口選手が上回っていてもそこまで大きな差ではないと思うので、上記の2点に注目していきたいと思います
谷口選手も比較的ボールに絡んでいる方とは思いますが野口選手はそれ以上にボールに触っており、キャリー一回あたりの影響力もかなり高くなっているように思います
自らのランニングでチャンスを生み出すという点でも野口選手は良さを遺憾なく発揮しており、谷口選手としてはチャンスで取り切ることを「最低条件」としてチャンスを生み出せるようなプレーをしていきたいところですね
キックに関しては野口選手の独壇場というか、一般的な水準以上にキックに関わるプレーが多いように思います
最近はSOとFBで裏を守ることも多いためにバックフィールドでWTBがボールに触れる機会も変わってきており、大学とは違うプレークオリティを求められることになります
野口選手レベルのキック処理を谷口選手が求められるわけではないかと思いますが、WTBの選手のキッキングプレーの水準によって外側でのエリアでのカードの切り方が変わってくるので、今後の谷口選手のプレーが気になるところですね
ディフェンスに関してはそこまで極端に離れた水準ではないかと思いますが、いかんせんリーグワンになると強度とスピード感が大きく変わると思うので、谷口選手がどれくらい適応と成長を見せることができるのかが重要になってきそうですね
特にWTBは外国出身選手も多いポジションであり広いスペースを与えてしまうと勝負に負けてしまう場面も多く、動き方のレベル感にはアジャストが必要そうです
まとめ
ワイルドナイツは常にリーグでの上位をキープするチームで、今回分析した選手以外にもリーグトップレベルの選手がゴロゴロしています
今年のリクルートも「ワイルドナイツらしい」選手をとっているとは思いますが、正直これまで通りのプレースタイルではなかなかスターティングに名を連ねることは難しいかと思います
大学レベルではトップ水準を走ってきた選手たちですがポジションのコンバートを挟む選手も多く、求められる水準は大きく上がってくるかと思うので、成長がとても楽しみですね
今回は以上になります
それではまた!
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