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日本の憲法は変えてはいけないのか。〜選択的夫婦別姓と同性婚〜

2021年6月23日、最高裁判所大法廷は夫婦別姓を認めない民法750条、戸籍法74条1項の規定は合憲である。という判断を下した。


2015年の最高裁判決(最高裁大法廷判決平成27年12月16日民集69巻8号2586頁)では、現実には女性が姓を変えるのが96%以上であるとしても、それは制度的に強制されているのではなく、あくまで両者の合意に基づくものであるから、夫婦同姓を定める規定は「法の下の平等」を定める憲法14条1項に違反しないし、婚姻の効力の一つである夫婦同姓も婚姻をすることについての直接的制約を定めたものではないから、「婚姻の自由」を定める憲法24条にも違反しないという判断をした。

そして今回の決定でも、2015年判決を踏襲し、夫婦同姓を定める民法750条および戸籍法74条1号の規定は憲法に違反しないという判決を下した。

私個人的にはこの判決は妥当だと思う。

2015年判決とこの度の決定で判例を変更すべきほどの理由がなかったからだ。(過去の最高裁判例を変更するというのはそれほど重大な意味がある)

ただし、ここで注意しておきたいのが、最高裁は選択的夫婦別姓を認めず、性差別的な判断をしたというのは全くの誤りであるということだ。

というのはこの度の最高裁の判断はあくまで、夫婦同姓を定める民法や戸籍法の規定が憲法に反するかという問題についてである。社会の実情はどうであれ、婚姻によって夫婦同姓になるのはあくまで「当人の自由意思」によるものであって、制度的にはどちらかを差別するものではないという判断である。

そして選択的夫婦別姓を認めるべきかはあくまで立法政策の問題であって、法改正次第ではどうにでもできるともいえる。


選択的夫婦別姓と同性婚との論点の違い

選択的夫婦別姓が立法政策によって認められる余地があるのに対して、同性婚はどうか。

これは次元の全く違う問題である。

婚姻の自由を定める憲法24条1項では、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、・・・」とある。

つまり現行憲法では「婚姻」という制度自体が異性間で行われるものを想定しているということであって、同性婚をそもそも想定していないということである。

同性婚を認めるべきとする論調の中には「想定していないのだから禁止していない」というものがあるが、確かに禁止はしてはいないが、どこをどう読めば「許容している」といえるのか

つまり、現行憲法のもとでは同性婚は禁止してはいないが、認めてもいないと考えることができそうである。

そうすると、同性婚を認めるべきとする論調の中に「憲法を改正すべき」というものが見られないのはなぜか。

憲法24条1項を一文字変えれば、同性婚を認めることができるはずだ。「両性」を「両者」にすればいい。

同性婚を認めるべきとする立場の人間こそ憲法改正を訴えるべきである。憲法改正の議論はまさしく全国民を巻き込むものであり、国民審査を経て改正すれば、何の異論もなくなるわけである。

同性婚容認の立場の人間が憲法改正を訴えていないのは、同性婚合法化について真摯に向き合っているとは到底思えない。

本当に頭が悪いのか、あるいは同性婚を合法化するつもりがないのか、どちらかでないと全く理解ができない。


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