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イラクでチャリ爆走してたらシーア派の高位ウラマーに謁見したりテレビ出演する事になった話②

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運命の出会い

ホテル所有者(真ん中奥)この後世話になる連れの兄貴(左から2番目)


ホテルまで500mぐらいのところに辿り着き検問所を抜けようとした時にまたいつも通り話しかけられる。荷物で肩が痛かったので正直早めに終えたいなぁと若干顔を引き攣らせながら写真撮影に応じていると少し英語が話せる2人組がいた。

「今日はどうしたんだい?」「今ホテルに向かってるところですね」「え、そうなの?俺ホテル持ってるからそんなところ泊まらずに俺のところ来なよ。聖廟見に来たんでしょ?案内してあげるよ。無料だよ。」

頭の中がクエスチョンマークで溢れる。「俺ホテル所有してるから泊めてあげる???」旅行しまくってるとこういう美味い話は大抵詐欺である。トルコのぼったくりでは有刺鉄線を乗り越える逃走劇を繰り広げたし、ベトナムでは日本人の半グレ詐欺グループのぼったくりを上手く切り抜けたらその詐欺師にスカウトされたこともある。って感じで警戒心MAXになりながら「この人についていってもネタとしては面白そうだな〜」という悪い考えが浮かんでしまった。

検問所のイラク軍人も「そうしなよ、彼優しいし色々手助けしてくれるよ」と唆してくる。その時点でイラク滞在4日目であり、最初は見た目異分子でしかない極東の人間である私にイラクの軍人や警察官は警戒心をもって話しかけてくるがそれは仕事柄そうなのであって、挨拶自己紹介した後は熱烈歓迎の至れり尽くせりだし、他国の腐敗した役人とは違って信用してもいいかなと思えた。

まぁ仮にこの人が詐欺師だとしてもこんな数百メートル間隔で武装した軍人がいるある意味安全な場所に近いし、最悪どこか駆け込んで助けを求めれば逃げ切れるしネタとしては美味しいか。限界旅行ツイッタラーの血が騒いでしまった。


その2人組についていくとどうやら聖廟周辺の検問所を通らないと出入りできないエリアである。あれれこれ本当に無料でホテル泊まれるやつかよ。

「ここが俺のホテルだよ」と案内されたところは凄い綺麗なホテルであった。思わず変な声が出る。シーア派の巡礼者達が出入りしておりロビーでチェックイン手続き待ちで座っていると「チャイ飲む?疲れたでしょ。お腹空いてるだろうし聖廟見にいくでしょ?荷物置いて一息ついたら連れていってあげるから落ち着いたらまた声かけてね」

案内してもらったホテル

案内された部屋も屋根裏部屋とかではなく普通の客室である。淹れてもらった中東特有の激甘チャイを啜りながらよく分からなくなってきた。

ホテル使ったぼったくりなら女寄越して美人局からの警察かマフィアが流れ込んでくるパターンか、チャイに睡眠薬盛られて昏睡強盗なんだろうけどその気配は微塵もない。チャイは他の巡礼者と思しき家族連れが普通に飲んでいたのものだった。

昼ごはんがまだでお腹空いていたので「ちょっと外でご飯食べてきますわ〜」と言ったら「観光する?少し支度するから5分だけ待ってて」と言われた。彼が戻ってくると一緒に街中歩くことになった。まだこの時点で半信半疑であったが聖廟見にいくのは現地人いた方が面倒ごと少ないだろうなと思い、有り難く同伴してもらうことにした。結局3人ぐらいついてくる。

ホテルを出て目の前にあるチャイの屋台でとりあえず一杯頂く。その間にもう1人がカレーを持ってきた。「これは巡礼者に無料で配られてるご飯だよ」

カレーの炊き出しに群がる巡礼者達
巡礼者は無料でこのカレーを食べられる
このカレーはとても美味しかった

このカレーが美味しくて結局3杯食べた。腹拵えを終えた後チャイ飲まない?と聞かれ飲みたいと答えたら奢ってもらってしまった。シュクランシュクラン(ありがとうありがとう)と感謝しながら激甘チャイを飲む。元々甘い物は好きでは無いのだがどこへ行っても出てくるので段々なれてきて美味しいと思い始めていた。猫舌でハフハフさせながら頑張って飲み干し聖地に向かう。

イラクで一般的なチャイの屋台

聖地の中へ

聖地に入る検問所、男女で隔てられている

検問所に差し掛かりボディーチェックを受ける。同伴者の彼が「彼は日本人だし大丈夫だよ」と言うとチラッとスマホや財布に目をやっただけであっさり通される。

モスクまでの道に並ぶ商店街

聖廟まで続く商店街は多くの巡礼者で賑やかであった。さっきカレー3杯食べたばっかであったがまだお腹が空いてたからケバブでも買おうとしたら彼が財布を出そうとした手を止めてきた。奢られた時に申し訳なさそうな顔をする女の子の気持ちになった。

ここカルバラには二つの大きな聖廟がある。兄であるイマーム・アッバースと弟であるシーア派第三代イマームであるイマーム・フセインを祀ったお墓、聖廟及びモスクが存在している。イスラム教って偶像崇拝ダメなんじゃ無いの?と思う方がいるだろうがシーア派はかなりゆるく街中にこの2人の英雄の肖像画が掲げてあるのをイラク国内だとよく観測する。

まずはホテルに近かった兄イマーム・アッバース聖廟の方に向かった。モスクをぐるっと回りアラビックタイルで彩られたモスクを堪能した。そしたら連れの彼が中に入ろうと提案してきた。僕はイスラム教徒では無いのでよほど観光地化されたモスクでなければ入れないのは知っていた。

イマーム・アッバース聖廟

サウジアラビアに渡航した時も結局メッカとメディナは聖地はおろか都市にすら入れなかった。これは至って普通で逆にクルアーンの開端章を暗唱しイスラム教徒の証明書を得れば簡単に入れるがイスラム教に入信した後の棄教は死罪である。過去に欧米の冒険者達がイスラム教徒であると偽って入境した記録は存在するがあまりに冒涜的なので大人しく観れる範囲で観光していた。

という事を考えていると連れの彼はスタスタと歩き出しモスク前の広場で靴を脱ぎ入り口にいる警備員に話しかけ始めた。「彼は日本人でイスラム教徒ではないんだけど自転車でカルバラに遠路はるばるきたんだ。彼にモスク内を見学させてやってほしい」

いや俺バグダッドからは普通に乗り合いタクシー乗ってきたんやけどな。カルバラ市内自転車乗ってたのを勘違いしているらしい。まぁこのタイミングで切り出しづらいのでその通りだという顔をしながらアラビア語で自己紹介と今日の行程をカタコトで伝えた。そのスタッフは俺には権限ないから上の人に聞いてくれと別の場所を指し示した。

指示通りに進むと受付のような場所があったので先ほど話した事を繰り返す。「非イスラム教徒か…、普通は当然ダメなんだけどそこまで言われるとちょっと上の人に聞いてみないとわからないな…..、少し待っててね電話するから。」そう答えると僕ににっこり笑いかけた。遠路はるばる珍しい日本人がチャリで来たというインパクトは大きかったらしい。


続く③

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