5.マイナンバーカードは金もうけと監視のため?―個人情報だだ洩れで大丈夫!
(書きかけの項目です。ご意見などありましたらunitekyoto2020@gmail.comまでお寄せください。)
♤マイナンバーとマイナンバーカードは別物
マイナンバーとマイナンバーカードは混同されがちですが、別物です。
マイナンバーは強制的に割り当てる12桁の個人番号で、目的は行政の効率化。使用者は公的機関(国自治体などの各機関)に限定され、トラブルが起きた時の責任は国が持つことになっています。
マイナンバーカードは希望者が任意で持つもので目的は本人同意のもと個人情報を活用すること。マイナンバーが法律で定められ厳重に管理されているのに対し、マイナンバーカードは民間が活用しやすいようにと「マイナポータル利用規約」で定められ、トラブルは自己責任。法律は国会で決めないと変えられませんが、利用規約は政府が利用者の知らない間に自由に変えることができます(知らない間に利用範囲を拡大していくこともできてしまいます)。
♤個人情報は金のなる木・住民監視も
マイナポータルの利用規約には、「(マイナポータルから外部の口座確認サービスを通じ)金融機関に対し口座情報を照会することに同意する」とあり、金融に関わる重要な個人情報も政府がお墨付きを与えた民間企業は見ることができます。金融情報、医療・健康に関わる個人情報は商品価値が高くお金になるため、どの企業も喉から手が出るほどほしい情報です。
たくさんの情報を紐づけるほど、商品価値は高くなる上、住民監視もできるようになります。今後のマイナンバーカードについて、政府は運転免許証、在留カード、障害者手帳、年金情報、資格情報、図書館カードなどにも「サービス拡充」と言っています。個人情報を紐づけるほどに私たちは丸裸にされてしまいます。
♤強引な健康保険証との紐づけ
企業が儲かり、住民監視もできるマイナンバーカード、たくさんの人に持ってもらわなければ意味がありません。そこで政府は莫大な税金を使ってマイナポイントを付け普及を進めましたが、情報流出の危険や監視されたくないと考える人、そもそも自分でカードを作れないデジタル弱者など一定数の人はカードを作りません。それを強引に作らせようとしたのが河野太郎デジタル担当大臣による「健康保険証とマイナンバーカードを一体化させ、紙の健康保険証は廃止する」発言でした。この発言は、国会はもちろん閣議決定さえされず出されたことが野党ヒヤリングで確認されました。
日本の国民皆保険制度は紙の健康保険証でだれでもいつでもどこでも重い負担なく医療を受けられる世界に誇れる制度です。その紙の健康保険証を無くすことになれば、国民皆保険制度の崩壊につながりかねません。そのように重大なことを、政府は何の根拠も制度設計もなく突然なくすと言い、「資格確認証を発行する」などその場しのぎの対応を続けています。紙の健康保険証をなくすと決めたことによって、どれだけムダに税や人手が使われていることでしょう。マイナンバーカードをめぐる問題は統治機構が壊れている象徴のようです。
♤マイナンバーカードは利権の温床
マイナンバーカードはデジタル公共事業と言われます。これまでに費やされたマイナンバー関連予算は2兆円以上。巨額の費用はITシステム開発会社5社(富士通、日立製作所、NTTデータ、NEC、日本IBM)が行政システムに食い込むことで、開発、維持、手直しと継続的に独占できる構造になっています。マイナンバー関連業務の入札は8割以上が随意契約や一者応札で競争がなく、日本IBMを除く4社は自民党の政治資金団体に多額の献金をしています。
マイナンバーカード発行などの事業を担う「地方公共団体情報システム機構」(J―LIS)の主要ポストは天下り。政・官・業の癒着と利権構造。マイナンバーでデジタル化はできているのですから、住民のためのデジタル化にマイナポータルやマイナンバーカードといったお金や手間のかかるアナログなモノは要らないはずです。
♤情報流出の危険
個人情報は分散化させないと漏洩した時の被害が大きく、取り返しがつきません。マイナンバーがある国でもほとんどは共通番号でなく分散化させて厳重に管理しています。それでも情報漏洩は絶えません。マイナ保険証では、他人の情報が誤登録、他人の口座、他人の証明書が紐づけなど、マイナンバーカードによる深刻なトラブルが相次いでいます。
原因は人為ミスと言われていますが、ミスが起きないようにできていない制度設計に問題があるということでシステム自体の不備と言えます。そのような不完全なシステムに重要で貴重な個人情報を次々紐づけしていったら、ハッカーの恰好のターゲットになることは容易に想像できます。ハッキングの被害は計り知れません。
♤個人情報保護とデジタル弱者のために
個人情報を守るため、自分の情報の開示を求め、本人の同意が無い限り自己情報の流用を認めない「自己情報コントロール権」は必須ですが、法律にその権利は明記されていません。個人情報保護委員会も権限が弱く、権限はデジタル庁に集中しています。
デジタル化を安全に進めるためにも、マイナンバーに紐づける情報は限定し、自己情報コントロール権を法律に明記すること、個人情報保護委員会をデジタル庁と切り離し権限を強めることが不可欠です。また、デジタル化が進む台湾では、デジタル弱者のためにアナログも残しているとのこと。災害時の停電を想定しても全てデジタル化するのでなくアナログを残すことも必要です。大切な個人情報を儲けや監視の手段にされないよう国や行政をチェックし、軌道修正を求めていくことが重要です。
〔参考リンク―もっとよく知るために〕
巨額の予算と利権の巣窟に不安…9月発足の「デジタル庁」に群がる“ITゼネコン”(2ページ目) | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)
相次ぐマイナトラブルで総務官僚“天下り”団体が「利権拡大」焼け太り 血税使い予算6倍増!|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
荻原博子著『マイナ保険証の罠』(文春新書、2023年)
「くらしを良くするレシピ」の表紙にもどる
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