きのう何食べた?

「きのう何食べた?」
よしながふみ・モーニングKC
1~16 ※連載中・以下続刊

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このnoteを書くようになって
「自分には案外と好きなものがいっぱいあったな」
と改めて気がついたりするのですが、
その中の一つに「グルメジャンル」があります。
といってもバトルをしたりうんちく語ったりは目的じゃなくて、単に「誰かがうまそうに飯食ってる」ものであればそれが一番いいと言いますか。
至高の料理だなんて毎食食べてられませんよ。一日1~3回食事しますからね。簡単でおいしいのが一番で、たまにちょっと洒落てれば十二分です。

本作は最近ドラマにもなって大変人気が出たこともあり、
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
主人公は40代の男性弁護士の「シロさん」。
同棲している「彼氏」とは燃えるようなラブラブ期間は過ぎて、
お互いの老後の話なんかしつつ毎日をコツコツと暮らす、という
ちょっと落ち着いちゃったあとの話です。
もともとよしながふみ作品はそれこそBLの頃から読んでたんですが…そしてモーニングもひところ毎週買って読んでたんですが、本作が始まった時にはそれはもう驚いたものです。
サラリーマン向けと思っていたモーニングでゲイカップルの話。まじかモーニング!面白いことするな!と大変注目してました。

あの頃のわたしグッジョブ。最初から追いかけていて本当によかった。

衣食住で言えば、衣の話も住の話も生活である以上多く出るのですが、
本作は圧倒的に「食」を中心に展開されます。
シロさんはお料理が大好きですが、外見のイメージや職業のイメージからは意外なほど質素な「老後を考えた節約生活」で、特売品を大変上手に使って健康的な献立を毎日丁寧に作ります。
日常のエピソードで、良いことも悪いことも
「はー、ごはんたべよう」
に最後は落ち着くこの安心感。
わたしの好きな一話完結型の展開。この作品には好きが詰まっています。

わたしも40代一人暮らしなのですが、めんどくささが勝ってしまうのと
元来の不摂生がたたって、料理が雑だし肉だの甘いものばかりだのだし、
「バランスのいい献立ってなにをどうすればいいんだ…」
て悩む日々なのですが、ある時気が付きました。
「この漫画のメニュー、真似したらいいじゃない」
って。40代はそんなにがつがついけないんですよ…そして健康にも気をつけないとあっという間にあちこちに祟るんですよ…
シロさんの料理はバランスがいいし野菜も多い。お金もかからない。
たまにジャンクメニューも混じったりするのも、油断を肯定してもらっているみたいで嬉しいものです。
料理をするのはシロさんだけでなく、例えばシロさんの彼氏の同僚や、場合によってはその彼女の回もあったりで、シロさんちだけではなく
「よそのおうち」
の味も知れて、あらー、あなたのところではこうするのねー、なんて、友達の料理を横で見てるみたいな気持ちになれるのもひとつの楽しみです。

よしなが先生は元々
「愛がなくても喰ってゆけます。」
※Kindleあり・太田出版
や、
「西洋骨董洋菓子店」
※Kindleあり・白泉社
など、
「この人そうとう食いしん坊だぞ…」と読んですぐわかるような作品を多く描かれてますので、料理描画は大変丁寧かつおいしそうな仕上がり。
また、ドラマ部分も身につまされるネタや心をぐっと掴まれる点が多く、
料理目的ではない人にもお楽しみいただけるのです。
読めばわかります…読めばわかるのです…(西洋骨董洋菓子店のアレっぽく)

日常のごはんだけでなく、ちょっとしたおやつやいただきものの高級品、季節の果物などもみずみずしく描画され、
「ああ、時期のものを食べるっていいことだな」
「手作り、たまにはしてみようかな」
なんて気持ちもふつふつと湧いてくる良作です。

おなかがすいている時も、おなかがいっぱいな時も、読んで美味しい作品です。

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