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河童が覗いたインド

河童が覗いたインド
妹尾河童・新潮文庫
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ひとつ前に「ヨーロッパ」の感想文も書きましたが、インドのほうが!さらに!字が細かい!!
いやーーこれ絵も緻密だし、ムックサイズとかせめて新書サイズぐらいにはならなかったもんかな…ジャンプサイズとかでもいいんだけど…
本の情報調べるんで検索したら老眼にはキツイという感想文を見かけて、老眼出てない目でもなかなかキツイぞ…てアピールしたい…これからこちらの本読む予定がある方、拡大鏡などご用意するのをオススメしますよ…

ということで、「ヨーロッパ」は22カ国分を一冊に、でしたが、こちらは一冊丸々っとインドな旅行記です。
しかもまえがきや說明無しでいきなりカルカッタの記事から始まっちゃってて、なんかこう…この本のあらましとかさあ…!!て、邪道ながらあとがきから読んだら、どうやらこれ連載作品のまとめですね?
しかも6年ほどにわたる長期のものだったようで…なるほど…それでこの密度……連載ものって一回一回を高めの温度で描くから、一冊にまとまると結構な高温になっちゃいますよね…これは…いっぺんに読むのにむいてない本ですよ……情報量が多い……

1978年と1983年の二度、それぞれ一ヶ月半の滞在情報を元にこちら描かれたもののようで、計三ヶ月…もちろんこの密度なわけだけど、結構悪くない期間歩いてまわれてないかしら?…なんて一瞬思っちゃったりしましたが、40年前だなんてインドの基本知識を入れる・調べるだけでも大変なことでしたよね…ネット触れるようになって20年以上にもなると、不便だったころを何も思い出せなくて本当にいけません…ググって地名や地図や写真が出るのってほんと…なんて便利なのかしら…びっくりするね……

先の大槻ケンヂさんの本でも

インド行ってましたけど、昔はね、行ったら人生変わるとかカルチャーショックのとんでもないのを浴びるとかでえらい人気でしたものねインド…いやもちろん私も行って大変に魅力的な国というのは知っているのですが、それでもこの一冊の中身はとんでもない熱量ですよ。
また巻末の解説が椎名誠さんなんですよね。大火災に爆薬入れて鎮火させるみたいなアレかな…解説っていうか、この本がいかに面白いかをめちゃくちゃ高い温度で書き連ねてるもんな…

この本、インドの歴史、文化、土地(地理)、風習、産業、交通などなど、内容がとにかく…とにかく多い…これ一冊読み切って直近のデータを更新したら、ちょっとしたインド博士じゃないだろうかな…お恥ずかしながら熟読まではわたし全然がんばれてないんですけれど、それでも何日かインド滞在したみたいな気分ですもんね…そのうちガンジーの伝記とかインドの歴史とか目を通してみよう…

これだけの本を作りながら、妹尾さん、インドについて…とお話をする人に対して
「それがインドという国を表現するのに、最も適切なエピソードであるかどうかには、少し疑問があるような気がします」
と書かれていて、なんて丁寧な考えをする人なんだろうと感心しきりです。
「ぼくも同じような過ちを、このインドのレポートの中で、犯しているかもしれない」
ともあり、「短い旅の間に「覗いた」インドにすぎない」とのことで…そうなんですよね、長い生活の中でしか見えないその国のことを知ってからこその経験だったりするんですよね…国内でだってそうなんだから、他国だと理解が体感に変わるまでに大きく長い手間や時間がかかるものだと思います。
そこは旅をする側は勘違いしてはいけませんよね。

小説やルポ等と違って通しのストーリーがあるといったわけではない本なので、感想が「面白かった」「挿絵の緻密さが素晴らしい」「情報の密度が高い」といったことぐらいしか書けず…読んでみないとこの面白さわからないと思うんですよね…ということで、興味がある方は是非にと思います。
上記の通り、あらましを知りたかったんで版元(新潮社)の解説文読んだら
【スケッチブックと巻き尺を携えて、“覗きの河童”が見てきた知られざるインド。空前絶後、全編“手描き”のインド読本決定版。】
てだけで、「欲しい情報それでなく!!」て一瞬思ったものの、
「ああまあ…これ以外を言うのも野暮かもしれないんだよな…」
て思い直したりもしましたし。
人ひとりがこんなに多岐に渡る点に興味を持って、優しく丁寧な筆致で国を描くて、他にあまり例を見ないので。

好奇心とリスペクトてとても貴重なものだなあ、と感じたくなったらこの一冊をちょっと開いてみると、日頃気にしてなかったものが目につく人になるかもしれないです。

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