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誰も知らない殺人

タイトル:(仮)誰も知らない殺人

▼登場人物
●メアリー・ルウ:女性。37歳。独身OL。自己顕示脅迫障害に罹っていた。
●サイファ:男性。享年32歳。メアリーの元恋人(婚約していた)。アル中。自殺する。
●トッティ:男性。40歳。メアリーの恋人。メアリーを愛している。少し喧嘩っ早い。
●バルナバ:男性。65歳。メアリーのストーカー。メアリーが住むアパートから最寄りのアパートに住んでいる。
●警察1:男性。55歳。ベテランの警部のイメージでお願いします。
●警察2:男性。45歳。警察1の助手のような存在でOKです。
●精神科医:男性。60歳。警察お抱えのドクター。メアリーの精神鑑定を請け負う。

▼場所設定
●メアリーの自宅:カリフォルニア市内にある一般的なアパートのイメージで。
●警察署:こちらもカリフォルニア市内にある一般的なイメージでOKです。
●サイファの部屋:どこにでもある一般的なアパートのイメージでお願いします。
●街中:メアリーの自宅アパートから道を1本挟んで向かいのアパートがある。

NAはメアリー・ルウでよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは前に付き合っていた恋人と今の恋人とを比べた事がありますか?
誰かの歌の歌詞にもあるほど有名なこのフレーズは
おそらく人の恋愛をそれなりに支配してしまうもの…
そう言って過言じゃないかもしれません。
今回は、純粋な善意が悪意に変わってしまった、
或る女性にまつわる怖いお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈メアリーの部屋〉

メアリー「ああ、やめてトッティ、今はその気になれないの…」

トッティ「なぜだ?どうしてだよ?」

メアリー「わからない。まだ気持ちが落ち着かないの」

トッティ「もう落ち着いても良い頃だろう。君が前に付き合っていたその人が亡くなってもう5年になるんだ。誰だってそんな過去があっても、次の幸せを見つけて歩いて行くもんだよ」

メアリー「でも…」

トッティ「あーそうかい!君はいつまでもそうやってウジウジしてるんだな!いや、ウジウジしてるだけじゃない。君は前のその男と僕を比べているんだ!いつだって比べてる!」

メアリー「そんな事ないわよ!お願いだからもうやめて!」

トッティ「…ごめん、少し言い過ぎた」

私の名前はメアリー・ルウ。
今年37歳になる独身OLで、今新しく付き合ったこの彼氏、
トッティと結婚しようかどうか迷ってる。

私には前に付き合っていた男の人が居て、
その人の事をまだ愛していたのだ。

(1人で悩む)

メアリー「ああ、サイファ…、どうして死んじゃったのよ。私これからどうすれば…」

ト書き〈トラブル〉

そんな私の周りで、ある日からトラブルが起きるようになっていた。

電話「リンリーン!リンリーン!」

うちの固定電話に毎晩かかってくるこの電話。
相手はおそらくストーカー。

私が住んでいるこのアパートから
1本通りを挟んですぐにあるアパートの住人。
名前はまだ知らないが初老の男のようで、
そいつが以前私の周りをうろついていた事があり、
実際、家の前までついてこられた事もある。

トッティ「なんだって!?そんな奴が居るのか!よし、俺が守ってやる」

とトッティは言うが、無茶なことして事を大袈裟にはしてほしくない。

メアリー「なんで私の周りでこんな事ばかり…」

過去の悲惨な自分の人生を思い出しつつ、
私は今のこの生活もかなり悲観していた。

警察に言ったところで何がどうなるでもない。
まだ被害らしい被害は1つも出ていない。

ただ付いてきた、今でも変わらず電話をかけてきているかもしれない…
そんな状況証拠ばかりで、
あの向かいの男が犯人だと言う確たる証拠は何もない。
ずっと前に1度だけあの男から電話がかかってきて以来、
私は怖くて電話に出ていなかったのだ。
非通知でかかってくる電話番号は全部無視していた。

ト書き〈事件〉

でもそれから僅か数週間後、事件が起きた。

警察1「…それでトッティとバルナバが格闘し合った末に、お互い持っていたこの刃物で互いを刺し合い殺し合ったと?」

メアリー「え、ええ…」

警察1「ふむ」

警察2「警部、ちょっと…」

警察1「ああちょっと失礼」

私の部屋には警察が来ていた。

あの初老の男の名前はバルナバと言ったらしく、
彼はまた私に気づかれずついて来ていたようで、
私が仕事から帰って家に戻った瞬間、
私の体を押すようにして彼も入ってきて、
そこで私を襲おうとした。

でもこの日、丁度トッティと部屋で会う約束をしており、
襲われかけたその瞬間にトッティは部屋に飛び込んできてくれた。
そこで格闘が始まり、
バルナバは懐に隠していたナイフを取り出しそれを見せつけ、
トッティはこの部屋の包丁を手に取ってバルナバに向かった。

そしてお互いを刺し合ってしまい、2人とも帰らぬ人となってしまった。

メアリー「うう…ううう…」(泣く)

警察1「メアリー、どうか落ち着いて。コーヒーでもいかがです?」

メアリー「いえ…」

警察1「新たな進展が出てきたようです。またお伺いしますのでその時はよろしく。あ、護衛の見張りをつけておきますのでどうかそのつもりで」

警察2「まぁ安心して下さい。我々があなたを守りますから」

そう言ってとりあえず警察は引き上げた、

ト書き〈進展〉

それから数日後。
あのとき警察が言ってたように、やはり新たな進展が見えたらしい。

メアリー「ちょ、ちょっとそれってどう言う事ですか!なんで私が…」

警察1「あなたの言われたトッティの死亡時刻と、あなたを襲い、トッティと格闘した末に果てたと言うこのバルナバの死亡推定時刻とがどうも合わないんですよ。鑑識で裏も取りましたので間違いありません」

警察2「あなた、嘘をついて居ますね?」

メアリー「は、はぁ…?」

私は結局、任意で警察に連れて行かれた。

ト書き〈警察〉

メアリー「もっとちゃんと調べて下さい!私は嘘なんかついてません!」

警察1「調べた上でこの結果になってるんです。どうか落ち着いて。…あなたの過去も少し調べさせて頂きました。あなたは前に付き合っていた人・サイファと結婚の約束もして居たそうですね?」

メアリー「…」

警察2「でもサイファと言うこの男は少し無謀な性格で、おまけにアル中の気(け)もあり、そんな無茶が祟って不治の病に侵されて居た。そして自分のアパートの部屋で自ら命を断ったそうですね。…その時あなた、どこに居ました?」

メアリー「はぁ?…そ、そんなこと、その時に全部警察にお話しした筈ですけど…?」

警察2「ええ、その記録も残っていますよ。こちらですね?」

その時に取られた調書を、彼はバンと机に放り出した。

警察1「あなたは彼のアパート近くに居た。でも彼のアパートには入って居なかった。買い物をして居たから、そう言われたそうですね?おまけにサイファは直筆の遺書まで残しており、首を吊ったそのロープにも彼の指紋しか付いていなかった。お膳立てがしっかりできた上で、我々もあなたの証言を信じた訳です」

メアリー「お、お膳立てって…!」

警察2「我々は改めてあの周辺の店を調べました。それも徹底的にね。あの界隈には店が3軒しかなくて、その3軒とも防犯カメラを設置してあります。でもあなたの姿はどこにも写っていません」

メアリー「そ、そんなの…!」

警察2「ええ、それが直接的な証拠にはなりませんが、あなた、本当はどの店にも立ち寄って居なかったんじゃないですか?」

メアリー「…さっきから、何が言いたいんです?」

警察1「そこなんですよ。我々は、あなたが彼の自殺を幇助したと見ています」

メアリー「な、何を馬鹿な事を…」

警察1「我々もこれまでは到底信じられませんでしたけどねぇ。でも先日あなたに受けて貰ったあの精神カウンセリングのテスト、その結果を見た以上、やはり『新たな進展』を無視する事は出来なくなりました」

(回想シーン)

精神科医「おそらくその時に彼への善意が曲がってしまい、彼女の純粋に彼を愛そうとしていたその情愛は、彼への思いを招き入れてしまったんでしょう。自己顕示強迫障害、この特徴項目にも今の彼女の症状は悉く当てはまります」

警察1「自己け…なんですと?」

精神科医「自己顕示強迫障害です」

警察2「聞いた事ないですね。そんなのがホントにあるんですか?」

精神科医「今回、新しく医学会で作られた病名です。何かをきっかけに精神が膨大な負荷を受けた場合、心の中に自分で新しく虚像を造ってしまい、幻覚幻聴のようなその虚像にその人の心身が支配されると言う病気です。おそらくそのきっかけの何かと言うのが、警部達が調べ上げたサイファの自殺の真相、その真相におそらく関わっていたメアリーとの関係にあるのでしょう」

警察1「つまり?」

精神科医「メアリーはそれでもサイファの事を愛していたようです。でもその愛する彼が自分を殺してくれとメアリーに迫り、彼女も居た堪れなくなって彼の言う通りにした。おそらく『最後は愛する君の手にかかってこの世を去りたい』そんな事を言ったんじゃないでしょうか」

警察2「で、彼女は変わったと?」

精神科医「ええ。おそらく罪の意識です。自分が彼を殺害してしまったと言うどうしようもない精神的苦痛がやってきて、その苦痛がその後、彼女の心の中にサイファの虚像を自ら造り上げてしまった。彼ならこんな時どうするか、どんな事を言うか、どう感じるか、そんな事を思う内に彼女の心は段々サイファに支配され、別の人格となって彼女の内に住み着いていた…そう言う事だと思います」

警察1「そのもう1つの人格…彼女の中に住むサイファの人格が、今回無茶をしてトッティとバルナバとを殺したわけか?」

警察2「確かにそう考えれば辻褄は合います。それに周りの状況証拠も…」

ト書き〈時制をストーリー現在に〉

警察1「あなたは彼が自らこの世を去るのを助けてしまった。その罪の意識に苛まれ、あれだけの無茶をして自分のアリバイまで作ろうとした。そしてそのアリバイ作りは自分のものだけじゃなく、トッティとバルナバのアリバイにまで影響する形で」

警察2「おそらく今回の事件の真相はこうでしょう。トッティは先にあなたのアパートに来ていた。そこであなたの中の別の人格…つまりサイファの人格が働いて、トッティに自分を奪われる前に彼を殺した。トッティの刺し傷はあなたの家の包丁のものだったんですよ」

警察1「そしてトッティの遺体をクローゼットに隠し、そのあと本当にストーカー行為を働いて部屋の中に侵入してきたバルナバを、同じくその包丁で刺し殺した。あなた、トッティの傷に2度、包丁を差し入れてますね?その2度目の刃物はあのバルナバが持参していたナイフです。それにクローゼットからはトッティの毛髪も見つかった」

メアリー「そ、そんな事…私何も覚えてない。トッティとバルナバはホントに私の部屋で落ち合ったんです!」

警察2「いいえ。その時のバルナバのアリバイも裏が取れました。バルナバはそのとき向かいのレストランに居たんです。死亡推定時刻の時間のズレが13時間と言うのはどう見てもおかしいでしょう。あなたは殺人の素人ながら、そこまで頭が回らなかった…としか言いようがないですね」

警察1「それにトッティの体内から睡眠薬も検出されました。眠らせた後で、あなたの中のサイファが邪魔になったトッティを殺害したのでしょう」

メアリー「そんな…。でもトッティはいつも睡眠薬を常備してました…」

警察1「1度に5錠も飲みますか?それに夕方、あなたに会う前に?」

私は結局そこで全てを自白したようで、改めて逮捕されたらしい。
サイファと、トッティと、バルナバを殺した容疑で。

(その後)

警察2「恐ろしくも、分かりづらい事件でしたねぇ」

警察1「まぁ本当にストーカーが現れたから、そいつに罪をなすり付ける形で今回の犯行に便乗したんだろう。サイファからしてみればこれは便乗殺人だ」

警察2「似たような事件が起きない事を祈るばかりです」

警察1「ああ全くその通りだ。でもあの精神科医も言ってたように、1分1秒毎に人の心は変わるものらしい。また掘り出し物的な感覚で新たな病名でも拵えられて、それによる未知の犯罪が起きる事は避けたいものだ」

警察2「…もう祈るしかないですね、そこまでくると」

動画はこちら(^^♪
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