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愛する者の仲にも礼儀あり

タイトル:(仮)愛する者の仲にも礼儀あり

▼登場人物
●須藤瑠花子(すどう るかこ):女性。35歳。独身OL。パニック障害の既往歴あり(共依存気味)。気が弱い。
●有田孝明(ありた たかあき):男性。36歳。瑠花子の彼氏。本編では「孝明」と記載。
●通販業者:男性。30代。一般的なイメージで大丈夫です。
●ドクター:男性。50代。孝明の心療内科での主治医。一般的なイメージで。
●軽恵那(かるえな)ノゾミ:女性。30代。瑠花子の理想と欲望から生まれた生霊。

▼場所設定
●瑠花子の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージでOKです。
●街中:デートスポットなど必要ならで一般的なイメージでお願いします。
●カクテルバー:都内にあるお洒落なカクテルバー。ノゾミの行きつけ。
●孝明の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。
●心療内科:孝明の自宅から最寄りにある。一般的なイメージでお願いします。

▼アイテム
●Strength in Reality:ノゾミが瑠花子に勧めるカクテル。何の効果も無い普通のカクテル。
●Love that Assimilates:ノゾミが瑠花子に勧める特製の液体薬。人の体を肉塊に変え、それを食べた人の細胞と心の糧にする効果を秘める。

NAは須藤瑠花子でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは、ずっと愛する人と一緒に居たいと思いますか?
恋人、夫婦…孤独を埋める為、絆を持ち合う為に誰かと一緒に居る…
それは人間として当たり前の理想かもしれません。
でも同時に人間1人で居る時間も大切、という言葉もありますよね。
バランスの問題だとは思いますが、
余り誰かと一緒に居たいと言うその思いが度を過ぎてしまうと、
それにより人生を棒に振ってしまう事もあるようです。

メインシナリオ〜

ト書き〈デート中〉

孝明「だから人間、1人で居る時間も大事なんだよ!なんでそれが分からないんだ!」(そのまま立ち去る)

瑠花子「あ…」

私の名前は須藤瑠花子。
今年35歳になる独身OL。
今日もまた、彼と喧嘩しちゃった。

私はずっと彼と一緒に居たいと思う。
でも彼のほうはそうでもなく、そんなふうにずっと付いて回る私をやはり煙たがり、
時にこうして喧嘩してしまう。

確かに彼の言う事もわかる。
人間1人で居る時も大事、それはわかるのだが、
私は少し前に精神疾患を患った事もあり、
その反動でか「誰かといつも一緒に居たい」と思うようになって、
その気持ちをそのまま彼にぶつけてしまうのだ。

ト書き〈カクテルバー〉

私は少しやりきれない思いを抱え、
その日、久しぶりに飲みに行く事にした。

いつもの飲み屋街を歩いていると知らないバーがあって、
結構よさげな店だったので私はそこに入って1人飲んでいた。

瑠花子「はぁ。孝明、ごめんね…」

自分が彼の負担になっている?
そんな事を思いつつ悩んでいると…

ノゾミ「フフ、お1人ですか?もしよければご一緒しません?」

と1人の女性が声をかけてきた。

彼女の名前は軽恵那ノゾミさん。
都内で恋愛コーチやメンタルヒーラーの仕事をしていたようで、
どこか上品ながら、何となく懐かしさを思わせる不思議な人だった。

別に断る理由もないので、私は隣の席をあけ彼女を迎える。
そして改めて軽く自己紹介し合い、それから暫く談笑していると、
また不思議な気になってきた。

「昔どこかでいちど会った事のある人?」
のような気がしてきて心が和み、そのせいでか
今の自分の悩みを何となく…いや無性に彼女に打ち明けたくなる。
そしてその悩みを解決してほしい…
そんな気にさせられるのだ。

ノゾミ「そうなんですか?彼氏さんとの間がうまくいってないと?」

瑠花子「え、ええ。なんか私の押しが強いようで、いつも煙たがられてるんです」

それから私は今悩んでる事の全ての彼女に打ち明けていた。

ノゾミ「なるほどねぇ。あなたはいつも誰かと一緒に居たい、それが愛する人なら尚更の事。そう思いながら彼のプライベートにまでズカズカ入ってしまい、それで結局、嫌われちゃうと」

瑠花子「え、ええ、まぁ…。でも私なりに気を遣ってるつもりではいるんですが…」

ノゾミ「でも毎日50通のメールとかトイレの中まで付いて行くなんて、それはちょっと行き過ぎだと思いますけど?」

瑠花子「ええ、わかってるんです!わかってるけど私…」

私は自分の精神疾患の事について話した。
少し前に私はパニック障害に罹った事があり、
本当に「死んでしまうんじゃないか!?」と言う苦しみを何度も味わった。

そして元から誰かとワイワイ一緒に居たいと言う性格も手伝って、
特に付き合ってる今の彼氏とは1分1秒でも長く一緒に居たい…
多分臆病からそんな気持ちになっていたのだ。
その臆病とパニックがおそらく、共依存のようなものを生んでいたのだろうか。

今でもパニック発作に襲われる事があり、
昔ほど強くはないけどその時を思い出してしまい、
そんな時は特に彼に頼りきってしまう。

自分が苦しい時に電話するものだから、それは昼夜問わず、
彼にとっては大変な迷惑になっていたろう。

ノゾミ「なるほど、そう言うわけですか」

瑠花子「もしこのまま嫌われちゃったらどうしよう…そんな不安と恐怖がまた高まって…」

私の両親は比較的冷たく、そんな私に理解を示さない。
だから私は一人暮らしを始め何とか自力で生活しようとしていた。
そんな矢先でもあったから、彼の存在は特別だったんだ。

彼も私の状態に一応理解は示してくれたが、
でもさすがにその調子を繰り返していくと
彼のほうでも堪らないだろう。

ノゾミ「分かりました。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。私が少しお力になりましょうか?」

瑠花子「え?」

そう言って彼女は指をパチンと鳴らし、
一杯のカクテルをオーダーして
それを私に勧めこう言ってきた。

ノゾミ「それは『Strength in Reality』と言う特製のカクテルでして、それを飲めばあなたの心は強くなり、比較的、彼に頼りきりの生活から逃れる事ができるでしょう」

瑠花子「…は?」

ノゾミ「ただのカクテルじゃないと言うのはその点で、いちど飲めばそのカクテルの効果はその人の中にずっと宿り続けます。ただ現実の恋に強くなると言うだけで、様々なトラブルに打ち勝つのはやはりあなた自身の力が必要です」

ノゾミ「ですのでそのカクテルの効果は、あなたにとってただのきっかけ。でも全ての人がそのきっかけを大事にし、その次の恋に向かっていくのです。つまり人生のハードルを越えるというのは、自分で培ってきた経験を土台にし、乗り越える方法を自分で編み出すと言う事」

ノゾミ「フフ、なかなか信じられない気持ちは分かります。でも今の心の弱さを強くする為には、新しい物事に向き合う時の覚悟も必要ですよ?」

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
私は少し変わっていた。
それまでのように彼につきっきりにならず、
また1人で居る時も何となく心が安定して、
いわゆる普通に恋をする事ができていたのだ。
これもあのカクテルの効果だったのか。

(デート)

瑠花子「フフフ♪」

孝明「ハハハ♪」

2人で居る時も和気藹々としながら絆を持ち直す事ができ、
このまま行けば無難にゴールできる…そんな気持ちになれていた。

ト書き〈トラブル〉

でも…

瑠花子「ウソ…百合子って一体誰よ…」

私が変わったのと同時に彼の様子も少しずつ変わってしまい、
それが気になってある日、彼の目を盗んで彼の携帯を見た時、
その着信履歴に「百合子」という名前が連続してあった。

瑠花子「もしかして浮気…」

そう思ったのだが、気の弱い私はなかなかその事を彼に言えない。

(カクテルバー)

ノゾミ「浮気?」

瑠花子「ええ、たぶんしてると思います…」

ある時、また偶然あのバーで会ったノゾミさんにその事を打ち明け、
どうすれば良いのか…それを相談していた。

ノゾミ「でもそんな事、彼に直接言って確かめる以外方法は無いかと」

瑠花子「それはわかってるんです。でも私には…そんな事とても言えない…」

ノゾミ「どうしてですか?浮気されたのはあなたのほうなんですよ?悪いのは彼。ここで自分の気持ちを正直に言えないでどうするんです?ずっと彼と一緒に居るつもりなら、こんな事も解決する力を身に付けないと」

彼女の言う事は一々わかる。
でもやっぱり私にはそれが出来ない。
それが理由で喧嘩して捨てられたらどうしよう…
その気持ちが先に湧いてしまい、持ち前の臆病が祟って
自分の言うべき事すら言えなくなるのだ。

そんな私をノゾミさんは叱った。

ノゾミ「あなたは何かに頼って強くなるより先に、自分が強くならなきゃダメです。私が前にあなたに勧めたカクテル、実を言うとあれはただのお酒なんです。何の効果もなくて、ただあなたの気持ちを和らげて、その上で強くしてあげよう…そう思って言ったまで。まぁ嘘も方便と言いますからね」

ノゾミ「つまりあなたは自分で強くなれて居たんですよ?その気になれば彼との関係は修復できる、そうじゃありませんか?」

瑠花子「……」

彼女の言う通りだ。
でも私は彼の事を愛し過ぎてしまったんだろうか。
彼女の今言った事も心の中で素通りしてしまい、
彼と別れる事が怖い…それだけになってしまった。

ト書き〈翌日〉

そして翌日。
それでも私はノゾミさんが言った事が正しいと思い、
彼女の言う通り、私も自分の思う所を彼に伝えた。

すると彼は怒ってしまい…

孝明「あーもううるさいなぁ!だから仕事の関係で付き合ってるだけって言っただろ!彼女とは、お前が思ってるような関係でも何でもないんだよ!そんなに俺のことが信じられないのかよ!」

この時も、私があんまりしつこくその事ばかりを言ったからだろう。
でも勢いと言うのは恐ろしいもので、
一旦そうして彼を疑うような姿勢をとると
その勢いで元の気持ちに戻れなくなってしまう。

そしてついに…

孝明「…俺、お前の事が本当に好きなんだよ?俺が本当に愛してるのはお前だけなんだ。…でもそんなに疑ったりして、俺の事をどうしても信じられないって言うんなら、俺達もう終わりなのかもな…。そんなお前と一緒に、これから将来を歩いて行くなんて、ちょっと自信がないよ…」

瑠花子「え…」

彼は私とずっと一緒に居たいと言ってくれた。
でも私の心と姿勢がそんなだったから、彼のほうでも素直になれず、
ついに別れ話が飛び出してしまったのだ。

そして私がちゃんと謝る前に、彼は立ち去ってしまった。
彼も今までの私との付き合いで、心が疲れきっていたんだろうか。

ト書き〈カクテルバー〉

瑠花子「わあああ!もう終わりよぉ…!」

私はまたあのカクテルバーへ飲みに行き、
そこでまた偶然出会ったノゾミさんに悲しい気持ちと愚痴を聞いて貰い、
慰めて貰いながら大泣きしていた。

あれから何度も彼に連絡したのだが、なかなか取り合ってくれない。
偶に電話に出れば「うん…うん…」とボソボソ話すだけで、
前みたいな関係には本当に戻れなかった。

あんな事を言ったから。
私の性格がこんなだから。

その自分への恨みと、
私にそうしろと仕向けたノゾミさんへの怒りのような気持ちもあいまって、
私はもう訳が分からなくなっていた。

ノゾミ「そんなに泣かないで。私も悪かったです。あなた達の関係をもう少し把握しておくべきでした」

瑠花子「今更そんなこと言ったって…」

ノゾミ「分かりました。こうなったのは私の責任でもあります。その責任をとって、ずっとあなたが彼と一緒に居られるようにしてあげます」

瑠花子「グス……え?」

そう言って彼女は持っていたバッグから1本の液体薬を取り出し、
今度はそれを勧めて私にこう言ってきた。

ノゾミ「これは『Love that Assimilates』と言う特製の液体薬で、この前のようなインチキなお酒じゃありません。本当にあなたの望みを叶えてくれて、あなたが今理想に思われているその通りの事が起きるでしょう」

ノゾミ「でも強制は致しません。このお薬の効果は強く、おそらくいちど飲んでしまえば、あなたはもう2度とこれまでの生活に戻る事はないでしょう。それでもし良いのなら、その覚悟がおありなら、ぜひどうぞ。あなたの人生です。あなたがお決め下さい」

少し怖い事を言ってると思ったが、
「これまでの生活に戻る事はない」
この言葉が私には、
「これまでのような臆病な生活に戻る事はない」
と言うようにきこえ、私は今の悲惨な状況から脱するべく、
そしてこれまでの自分を本気で変えたいと思い、
その液体薬を手に取って一気に飲み干した。

その瞬間もう1つ、ノゾミさんに覚えた不思議な魅力がある。
それは、彼女に言われたらその気になり信じてしまう事。
きっとあのカクテルを勧められた時も同じ状態だったのだ。

ト書き〈孝明の自宅〉

それから数日後のある日の事。
孝明の家に通販業者がやってきた。

業者「すいませーん、ハンコか何かお願いしまーす」

孝明「じゃぁハンコで、ありがとう」

(部屋の中)

孝明「高級ボンレスハムか。できればあいつと一緒に食べたかったんだけどなぁ。でもまだ少し気持ちが。でもまぁもう少ししたらまた電話して、仲直りしよう」

彼は私の事を考えてくれていたようで、
仲直りしようって気持ちになってくれていた。
私は嬉しかった。

そして届いたボンレスハムを食べた後、彼の様子が変わった。

孝明「ん、なんか今声聞こえた…?瑠花子…?」

瑠花子「フフフ♪これでもうず〜〜っと私たち一緒だね♪私はこれからずっとあなたの中に住み続けるわ。これからもどうぞよろしくね〜♪ウフフ♪」

孝明「な、なんだよこれぇ!?」

それからは、孝明の体内から私の声が鳴り響き、
その声はずっと消える事なく、昼夜問わず孝明に話しかけていた。

ずっとそうして声が聞こえるもんだから孝明もついに堪らなくなり、
最寄りの心療内科に駆け込んで…

(心療内科)

孝明「先生!お願いです!この声、どうか消して下さい!!今もずっとなんか心の中から鳴り響いてるんですよぉ!うわぁあ!ちょっと黙ってくれえ!!」

ドクター「ちょ、ちょっと落ち着いて…!」

ト書き〈心療内科を外から眺めながら〉

ノゾミ「フフ、私は瑠花子の理想と欲望から生まれた生霊。彼女の夢を叶える為だけに現れた」

ノゾミ「私が最後にあげたあの液体薬は、人の体を肉塊に変え、それを食べた人の細胞と心の糧にするもの。そんな効果を秘めていたのよ。肉塊に変わった瑠花子と、孝明が通販で注文していたボンレスハムとをすり替えておいた。だから孝明は瑠花子を食べた事になり、瑠花子はずっと孝明の中に宿り続ける事になる」

ノゾミ「フフ、それにしても、あんなに狂っちゃうなんてねぇ。『君とずっと一緒に居たい』なんて言いながらいざそうなると堪らなくなって、次は追い出そうとするものなのかしら?やっぱり人間、1人で居る時間も大切よね。バランスを見失うと、得てして愛する誰かを狂わせてしまう…そんな事も人の世界にはあるみたい。愛する者の仲にも礼儀あり、か」

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