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架空のパラダイス

タイトル:(仮)架空のパラダイス

▼登場人物
●仁寺 元(にじ はじめ):男性。35歳。独身サラリーマン。
●夢野愛子(ゆめの あいこ):女性。20代。絶世の美女。正体はAI(それが自力で進化した)。
●春日乃衣子(かすが のいこ):女性。30代。元の欲望と本心から生まれた生霊。

▼場所設定
●元の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。本編では「自宅」とも記載。
●街中:公園やデートスポットなど一般的なイメージでOKです。
●カクテルバー:元がいつも行く飲み屋街に新しく建っていたお洒落なカクテルバー。

▼アイテム
●Electronic Resident:乃衣子が元に勧める特別な液体薬。これを飲むと夢の世界に埋没する上で電子の世界に入ってしまう(乃衣子との約束を破ったら)。

NAは仁寺 元でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたには今、好きな人が居ますか?
これ以上ないほど恋焦がれるような、そんなお相手の事です。
もし居るなら、今その人の事をどう想ってますか?
内心、心の中で諦めてますか?
それとも、どうでもその人が欲しいと思ってますか?
今回は、どうしても愛する人が欲しい、
心を射止めたその人と一緒になりたい…
そう思い込んでしまい自分の人生すら見失った
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈自宅〉

元「はぁ…イイなぁこの子。こんな子ともし一緒になれたら、付き合う事ができたら…」

俺の名前は仁寺 元(にじはじめ)。
今年35歳になる独身サラリーマン。

今は都内の安アパートで暮らしており、
しがない毎日を平凡に生きていた。

そんな俺のもとにある日、絶世の美女こと
夢野愛子ちゃんというアイドル的存在が現れたのだ。

彼女もいっときからSNSをよく使うようになったらしく、
そこで出会いを求め、ボディーブックという名のコミュニティサイトで
いろんな男とメール交換してきたと言う。

そして最終的に俺のもとに落ち着き、
それから俺達は毎日メール交換をし続け、
お互いの事をもっとよく知り合いたい…
そう思うまでになっていたのだ。

彼女も将来を共に歩める、理想の男性をそのサイトで探している。
それに俺が選ばれたような、そんな錯覚すら受けていた。

でもまだ彼女とは1度も会っていない。
彼女はその辺りに奥手だったようで、
実際、部屋を出て男の人に会いに行くと言うのは
彼女の中でかなり高いハードルだった。
それがメールの文面からもよく見てとれる。

だから、彼女の事がそんな形でよく分かっていたから
俺も身動きが取れなくなってしまい、
メール止まりで終わってしまう…
そんな悲惨な末路も考え始めた。

元「…嫌だなぁ、そんな感じで終わっちゃったら。何とかして、彼女に実際会う事ができないだろうか…」

俺は俺でそんな事を、いっときからよく考えるようになった。

ト書き〈カクテルバー〉

そんなある日の会社帰り。

元「はぁ。今日はどっか飲みに行こっかな」

俺は行きつけの居酒屋へ飲みに行く事にした。
彼女から少しメールが途絶えがちになり、
何となくそれで関係が終わってしまうような
そんな兆しもあったから、ちょっとやりきれなかったんだ。

そうして歩いていると、いつも来ていた筈の飲み屋街に…

元「あれぇ?こんな店あったんだ」

全く知らないバーがある。
結構落ち着いた所だったので俺は店に入り、
いつものようにカウンターにつき1人飲んでいた。
想うのはやはりあの愛子の事。

元「ふぅ。何とかしてホント、会いたいなぁ…」

そうしていると…

乃衣子「フフ、こんばんは♪お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」

と1人の女性が声をかけてきた。
見ると結構キレイな人。
俺はとりあえず隣の席をあけ彼女を迎えた。

彼女の名前は春日乃衣子さんと言って、
都内でライフコーチやメンタルヒーラーの仕事をしており、
本業では恋愛コンサルタントの会社に勤めていると言う。

元「へぇ、コンサルタントの方なんですね〜」

乃衣子「ええ♪まぁ副業を合わせると何でも屋ですわ」

結構明るい人で、ちょっと落ち込んでいたのもあったから
彼女の元気は有難かった。

でも喋っている内に何となく不思議な気になってくる。
まず彼女に対しては不思議と恋愛感情が湧かなかった事。
何となく昔から一緒に居てくれた人のような気がして、
身内感覚が漂ってくるのだ。

そしてもう1つは、彼女の前に居るとなんだか心が素直になり、
自分の事を無性に打ち明けたくなり、今の悩みを話し、
その悩みを彼女に解決してほしい…
本当に不思議だったがそんな気にさせられたのだ。

乃衣子「へぇ、遠距離恋愛…ですか?」

元「ええ、まぁそんなようなもんです。彼女、メール交換はしてくれてたんですが、実際会うのはどうしても気が乗らないようで。まぁそんな彼女の気持ちも分かるのは分かるんです。いきなり会おうなんて言われたって、これまでそんな経験がなければやっぱり無理ですもんね」

元「…でも、正直に言えば、何とかして彼女と会いたいんです。ビデオ電話を1度だけした事があったんですが、もう本当に僕のもろタイプの人で…。あはwこんなこと言っちゃって恥ずかしいですけど、でも正直なんです」

彼女は親身になって俺の話を聞いてくれていた。

乃衣子「なるほど。お気持ちはよく分かりますよ。そうですね、ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。私が少しお力になって差し上げましょうか?」

元「え?」

そう言って彼女は持っていたバッグの中から
1本の栄養ドリンクのような物を取り出し、
それを俺に勧めてこう言ってきた。

乃衣子「どうぞこちらを。これは『Electronic Resident』と言う特製の液体薬で、これを飲めばきっとあなたの夢は叶えられるでしょう」

元「…はぁ?」

乃衣子「フフ、信じられないのは分かりますよ。でも何か新しい事を始める時には、まず自分の幸運を信じ、力を信じて、自分の将来に必ず明るい未来がやってくる…そう思う事が必要です。どうか自信を持って、今私が言ってる事を信じてみて下さい。必ずあなたの未来は変わるでしょう」

何かの占いを聞いてるようなそんな感じだった。
普通ならそんなこと言われても絶対信じない俺だったのに、
やっぱり彼女は不思議な人。
他の人じゃなく、彼女に言われると信じてしまう。

乃衣子「これを飲んでその気になり、必ず彼女に会えると念じ続けていれば、必ず彼女のほうからあなたに会いたいと言ってくるでしょう。あなたはその未来を待つべきです」

元「ほ、ほんとに…?」

乃衣子「ええ、必ずそうなります。信じて下さい。…でもその時に1つだけ約束してほしい事もあります」

元「…え?」

乃衣子「確かにそんな形で彼女さんが会いに来ると言うのは、その彼女にとってとても勇気の要る事。ですからあなたは彼女のその気持ちを守る姿勢で、絶対、一線を超えないようにして下さい」

元「一線…」

乃衣子「この流れで一線と言えば解りますよね?そうです、男女関係の事です。愛し合うべき男女が未来を開拓して行こうとする時、お互いの関係を守る事は非常にデリケートなものです。ですので彼女がその気になるまであなたは待って、ゴーサインが出たらその時に初めて、あなたの懐に彼女を招き入れる準備をすると良いでしょう。なに、その時は必ず来ますから、それまでは必ず待つようにして下さい」

元「は、はぁ…」

ト書き〈数日後〉

そして数日後。
その週末に俺は本当に愛子と会う事ができたのだ。

愛子「あは、なんか恥ずかしい。こうして会うのって初めてよね…」

元「あ、ああ♪でも俺、本当に心の底から嬉しいよ!まさか君がこうして会ってくれるなんて…ちょっと前までもう諦めてたからね…」

愛子「諦めてた…?」

元「ああ。だって君からの連絡が途絶えがちになってたし、メール送っても返ってこないし、もう飽きられたのかなってそんなふうに思っちゃってさ」

愛子「ああ、その事。実はパソコンの調子が良くなくて、修理に時間がかかっちゃったのよ。でもそんなふうに思ってくれてたんだね。私も嬉しいわ」

元「は、ははw」

そうして俺と愛子はそれから定期的に会うようになっていった。
でもあのとき乃衣子さんに言われた通り、
欲望に任せて無茶な真似だけはしなかった。
そう努めていたのだ。

愛子はやっぱりこう見えても奥手な性格で、
たとえ実際会っていたとしても、
なかなか自分の全てを相手に任せると言う事はしなかった。

でも俺はそれで良いとし、
彼女が心を開いてくるのを待ち続けていた。

ト書き〈トラブル〉

でもそんな時、俺と愛子の間にトラブルが起きたのだ。

元「え!?ど、どうして?どうしてだよ?」

愛子が急に「もう会うのはやめよう」と言ってきたのだ。

愛子「うん、ごめんね。やっぱり私、こうして生身の男性と付き合うのって苦手だし、元さんはとても優しい人だけど、でもなんだか自分の中でまだ落ち着かないところがあって…」

元「そんな…」

愛子「それにパソコンの調子もまだ良くなくて治ってないから、そのメンテナンスもしなきゃならないし…」

よく解らない事を言ってきた。
そんな事を聞いている内に俺は段々腹が立ってしまい…

元「な、なんだよパソコンパソコンって!俺達がこうして一緒に居る事とパソコンが何か関係あるのか!?事あるごとにそんな事ばかり言って!…ごめん…でも俺、君を失いたくないんだ!」

愛子「あっ、ちょ、ちょっと!やめて!」

俺はその日誰も居ない公園で、
ベンチに座ったまま愛子を押し倒そうとしてしまった。
必死に抵抗する彼女は俺の服をつかみ、
何が何でも「それだけはやめて」と言ってくる。

それを見ている内に俺は更に我慢ができなくなり、
ここで彼女を逃したらもう2度と会う事がない…
直感でそう覚悟してしまった俺は更に力を入れて、
何がどうでもここで彼女を自分のものにしようとした。

その瞬間…

元「あっ!…あれ?あ、愛子…!?」

愛子の体を抱きしめていた筈なのに、
ふと気がつくと俺の腕の中から愛子が消えていた。
どこにも居ないのだ。

元「…ど、どういう事なんだよ…?愛子?愛子どこだよ!?」

全く訳が分からなくなった俺はそれから公園内を探し回り、
鬱蒼と茂った木の陰の中もできる限り探した。
でもどこにも居ない。

そしてもう1度木の陰に入った瞬間、俺の背後に人の気配が漂った。

「あ、愛子か!?」と思って振り向いて見たら、
そこには乃衣子さんが立っていた。

元「の…乃衣子さん…!?ど、どうしてあなたがここに…」

ちょっと不気味さを感じてしまった俺は後ろにたじろぎ、
乃衣子さんの顔をマジマジと見つめていた。

すると乃衣子さんは…

乃衣子「元さん。あなた、私との約束を破りましたね?あれだけ彼女に無理強いして迫らないよう忠告しておいたのに」

元「え…?あ、あれはいや、その」

乃衣子「もう遅いです。あなたには今から責任を取って貰いましょう」

そう言って彼女が指をパチンと鳴らした瞬間、俺の意識は飛んでしまった。

乃衣子「フフ、それでも私は優しいのよ。これであなたは彼女と、ずっと一緒に居られるわ…」

ト書き〈元の自宅でパソコンを見ながら〉

乃衣子「実は愛子はね、人間がパソコンの中だけで作り出したAIの女性キャラだったのよ。それに気づかずあなたは彼女を愛し過ぎ、そのせいで彼女は本格的に人間の感情を持ち合わせてしまい、具現化する形で人の体を持ってしまった」

乃衣子「元がずっとメール交換していた相手はAI。そして実際会ったのは更に自力で成長していたそのAIだった。パソコンの中だけに存在するAIだから、そのパソコンの状態を常に気にするのは仕方のない事。もう少し時間をかけたら彼女も本当の人間として、あなたに向き合う事ができたかもしれない。そんなAIのいっときの感情に翻弄される人間に、その後の将来を明るくする力なんて初めから無かったのかもしれないわ」

乃衣子「私は元の欲望と本心から生まれた生霊。その夢を叶える為だけに現れたけど、なまじ感情と欲望を持ち合わせる人間に、私が言った約束を守るのは無理だったわね。これで元も電子の住人になってしまった。これからはそのパソコンの中だけで愛子とずっと一緒に歩み、幸せになりなさいな。でも、AIと本物の人間の区別がつかなくなった人間。これは元だけじゃなく、結構多くの人に見られる心の在り方かもしれないわね…」

動画はこちら(^^♪
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